ノンフィクションはこれを読め!

冬木 糸一

1989年生。フィクション、ノンフィクション何でもありのブログ「基本読書」運営中。Amazonのアソシエイトとして、冬木糸一は適格販売により収入を得ています。

(2024年当時)

冬木 糸一の記事

AUTHOR

121記事

世界をより鮮明に理解するために──『ホワット・イズ・ディス? むずかしいことをシンプルに言ってみた』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

世界をより鮮明に理解するために──『ホワット・イズ・ディス? むずかしいことをシンプルに言ってみた』

すべての人間が一カ所に集まってジャンプしたり 、 光速に近いボールを投げたらどうなるか? といった現実的にはありえない質問に対して、ユーモアたっぷりのイラストと科学的に正確な解説を添え、愉快に物理や数学のおもしろさを体験させてくれた前作『ホワット・イフ』。 その著者ランドール・マンローによる最新作が、本書『ホワット・イズ・ディス?』である。こちらもまた、一冊

宇宙植民の可能性を問う──『宇宙倫理学入門──人工知能はスペース・コロニーの夢を見るか?』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

宇宙植民の可能性を問う──『宇宙倫理学入門──人工知能はスペース・コロニーの夢を見るか?』

近年イーロン・マスク率いるスペースX社を筆頭に、民間企業による宇宙開発が加速している背景がある。本書は「宇宙倫理学」と書名に(聞き慣れない言葉だ)入っているように、そうやって人間が宇宙に出ていく際に不可避的に発生する倫理/哲学的な問いかけについての一冊だ。 そうした説明だけをきいてなるほど! 宇宙での倫理を問うのねわかるわかる! とはならないだろうから(僕も

不健康な脳から健康な心を推論する──『脳はいかに意識をつくるのか』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

不健康な脳から健康な心を推論する──『脳はいかに意識をつくるのか』

近年機能的磁気共鳴画像法(fMRI)など新技術の出現で脳の活動がより精確に観測できるようになり、脳科学/神経科学は飛躍的に進歩した。そうなると気になるのは、我々が「意識」や「心」と言っているものはいったいなんなんだという問いかけである。 幾つもの神経科学方面の本がその謎に挑んでいるが、本書は「機能不全に陥った脳を調べ、健康な脳と比較・検証することで心を推論す

適切な移民政策とは何か──『移民の経済学』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

適切な移民政策とは何か──『移民の経済学』

トランプ次期大統領が不法移民のうち犯罪歴のあるものを強制送還する、メキシコとの間には壁をつくると発言していることもあって、今移民をめぐる問題が熱い。しかし、実際のところ「移民はどのような影響を国(の政治や治安、労働環境)に与えている」のだろうか。アメリカの不法移民は1100万人にものぼるとされているが、仮に彼らを全員強制送還したとしてアメリカ経済にはどのよう

酒、悪態、怠惰、ストレスを肯定する──『悪癖の科学 その隠れた効用をめぐる実験』 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

酒、悪態、怠惰、ストレスを肯定する──『悪癖の科学 その隠れた効用をめぐる実験』

時間は充分にあったはずなのに、締め切り間際まで仕事がはじめられない。ついつい悪態をついてしまう。酒を飲んではいけない時に飲みすぎる──いわゆる「悪癖」はままならない人生に常につきまとう影のようなものだが、本書はそこに切り込んで「実は、悪いと言われていることにも効用があるんじゃないの?」と問いかけてみせる。そうだったら実に嬉しい話だ。 本書では1章が「セックス

宇宙における生命の普遍的特性──『生命、エネルギー、進化』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

宇宙における生命の普遍的特性──『生命、エネルギー、進化』

本書は『生命の跳躍』、『ミトコンドリアが進化を決めた』のニック・レーンによる「生命の起源と来歴を語る」一冊だが、これが圧巻の内容である。前作までの内容を取り込みアップデートをかけた上で、生命の起源をめぐる問題に真っ向から挑み、多様な分野にまたがる議論を総括しながら、宇宙における生命の普遍的特性とまでいえる、説得力のある結論を導き出してみせる。 どんな法則が、

万物は進化する──『進化は万能である:人類・テクノロジー・宇宙の未来』 書影

サイエンス / 生物・自然

万物は進化する──『進化は万能である:人類・テクノロジー・宇宙の未来』

『赤の女王 性とヒトの進化』で魅力的に性の仕組みを解説し、『繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史』では「現代ほど良い時代はかつてなかった」という単純な事実を、膨大な例証と共に指摘してきたマット・リドレー最新作とあれば読まないわけにはいかない。今作のテーマは『進化は万能である:人類・テクノロジー・宇宙の未来』という書名通りに「進化」である。 進化はリドレ

読書会の楽しみが十全に詰まった一冊──『プリズン・ブック・クラブ コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

読書会の楽しみが十全に詰まった一冊──『プリズン・ブック・クラブ コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年』

あなたは読書会に参加したことがあるだろうか? 読書会とは言ってみれば、本を読んで、集まって、語り合うというただそれだけの会のことだが、これがなかなか奥が深い。本はどうしたって読むのはひとりだが、3人いれば3通りの読み方があり、たとえ「この作品がおもしろい/つまらないのはなぜなのか?」ということであっても突き詰めて話し合うことで読みの違いが明確になる。友人同士

新時代への議論の基礎──『人間さまお断り 人工知能時代の経済と労働の手引き』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

新時代への議論の基礎──『人間さまお断り 人工知能時代の経済と労働の手引き』

この数年、怒涛のように人工知能関連本が刊行されたこともあって、今となっては「人工知能によって雇用は失われます!」と危険性を指摘するだけの本は真新しくもおもしろくもない。本書もその類の本なのかと思っていたが、議論は既存の同ジャンルノンフィクションに比べても一歩先に進んでおり、未来予測も頷くところ多しで予想を裏切って大変楽しく読ませてもらった。 最初に本書の内容

虫だらけの惑星──『昆虫は最強の生物である: 4億年の進化がもたらした驚異の生存戦略』 書影

サイエンス / 生物・自然

虫だらけの惑星──『昆虫は最強の生物である: 4億年の進化がもたらした驚異の生存戦略』

昆虫は最強の生物である──と断言されると、人類じゃなくて? と疑問が湧いてくるが、まあ「最強」の定義次第といったところだろう。たとえば、人類はこの地球上に種そのものを脅かす天敵はいないわけで、その観点からいえば「人類は地球最強の生物」といってもいいだろう。 しかし、別の観点からすると、これまでに発見され、命名された昆虫は100万種、名前もついていないものも含

史上最強のナード──『最初のRPGを作った男ゲイリー・ガイギャックス〜想像力の帝国〜』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

史上最強のナード──『最初のRPGを作った男ゲイリー・ガイギャックス〜想像力の帝国〜』

君は『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(Dungeons & Dragons :以下D&D)を知っているか。 D&Dは紙と鉛筆とサイコロ、世界観や数値が記載されたルールブック、それに自身の想像力/対話を駆使して複数人で行うテーブルトークアールピージー(以下TRPG)である。1974年に発売された本作は世界中で流行し、プレイヤーが冒険者になりきってファンタジー世界を

音による宇宙史の記録──『重力波は歌う アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

音による宇宙史の記録──『重力波は歌う アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち』

本書は発売(6/16)とほぼ同日に重力波2度目の観測成功が発表され、即日で重版が決まったというあまりにも出来過ぎな1冊だ。とはいえ単なる偶然と片付けるのも味気ない。これは、人類がこれまで観測できなかった「音」が宇宙に満ちている1つの「確証」であるのかもしれない。 もう少し具体的に紹介すると本書『重力波は歌う アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち』は重

剣のように強い力を持った本の記録──『戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)』 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

剣のように強い力を持った本の記録──『戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)』

紀元前から人類は図書館と共にあったが、それは場所が戦地にあってもかわらない。人はいかなる時であっても──というよりかは、過酷な状況にあってこそ書籍を求めるのかもしれない。 本書『戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)』は「第二次世界大戦時に、強いストレスに押しつぶされそうになっている兵士たちの心を癒やすため、海を渡って兵隊らに行き渡った書籍」についての歴史

科学すること、あるいは科学者であること──『右脳と左脳を見つけた男 - 認知神経科学の父、脳と人生を語る』 書影

サイエンス / 人物

科学すること、あるいは科学者であること──『右脳と左脳を見つけた男 - 認知神経科学の父、脳と人生を語る』

著者であるマイケル・S・ガザニガは書名にも入っているように認知神経科学を創りあげた(名付けた)人間である。てんかん発作を抑えるため当時まれに行われていた右半球と左半球をつなぐ脳梁を切断した患者を対象にした実験で、右脳と左脳がそれぞれ役割を分担しながら別個に働く現象を観察し、以後分離脳研究を中心として驚くべき実験成果を次々と生み出してきた。 本書はそんな輝かし

お金の何が、世界を"動かして"いるのだろう?──『貨幣の「新」世界史――ハンムラビ法典からビットコインまで』 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

お金の何が、世界を"動かして"いるのだろう?──『貨幣の「新」世界史――ハンムラビ法典からビットコインまで』

貨幣の歴史について語った本は数多い。 それだけに「新」といえるほどの新機軸を打ち出せるものかと思っていたのだが、本書は貨幣の定義を通常よりも拡張し 『そこで私は、お金は価値のシンボルだという定義にたどり着いた。』 としてみせることで、より広い視点、それも生物学、宗教、脳科学と一見貨幣とはあまり関係なさそうな分野まで内包し、様々な角度から光を当てた貨幣史を語る

そもそもなぜ地球外天体は地球に到達するのか?──『ダークマターと恐竜絶滅―新理論で宇宙の謎に迫る』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

そもそもなぜ地球外天体は地球に到達するのか?──『ダークマターと恐竜絶滅―新理論で宇宙の謎に迫る』

書名に入っている「ダークマター」と「恐竜絶滅」、どちらもなんてことない単語であるが、かけ離れた関係性の単語なだけに、とてつもなくうさんくさい!「ダークマターとブッダ」ぐらいに意味がわからない! なんてうさんくさい本なんだ! と一目見た時につい思ってしまった。 とはいえ著者は『ワープする宇宙―5次元時空の謎を解く』など数々の著書/実績に加え、ハーバード大学の教

脳科学について知りたい人へ最初に渡したい一冊──『メカ屋のための脳科学入門-脳をリバースエンジニアリングする-』 書影

サイエンス / 生物・自然

脳科学について知りたい人へ最初に渡したい一冊──『メカ屋のための脳科学入門-脳をリバースエンジニアリングする-』

「メカ屋のための」とあるように、本書はエンジニアに向けた脳科学本である。 「なぜわざわざ特別にエンジニア向けに脳科学入門が書かれなくてはならないのか? 一般人向けに書けばいいではないか」と疑問を抱くかもしれないが、なるほどもっともな話ではある。 それはまず第一に、著者が東京大学工学部の機械系、情報理工学研究科、工学研究科で講義を受け持っている、機械系かつ生物

加速するテクノロジーといかにして付き合っていくべきか──『人間VSテクノロジー:人は先端科学の暴走を止められるのか』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

加速するテクノロジーといかにして付き合っていくべきか──『人間VSテクノロジー:人は先端科学の暴走を止められるのか』

最初に『人間VSテクノロジー:人は先端科学の暴走を止められるのか』という書名を見た時、うーんこれはどうだろうかと思ってスルーしかけたのだが試しに読んで正解だった。これはテクノロジーが急速に進歩し、議論が追いていかれてしまっている今こそ読むべき一冊である。 書名からスルーしかけたのは「テクノロジーは人間と対立的に語られるべきものではなく、もたらされるリスクと利

全世界の本を分析した研究記録──『カルチャロミクス 文化をビッグデータで計測する』 書影

サイエンス / 教養・雑学

全世界の本を分析した研究記録──『カルチャロミクス 文化をビッグデータで計測する』

世界中に存在する本の内容を読み取ってデータ化し、さまざまな形で利用できることを意図したグーグル・ブックス・プロジェクトが立ち上げられた時、そんなことができるのか(分量的な意味でも権利的な意味でも)と疑問に思ったものだ。それが今では、著作権侵害などさまざまな課題を残しつつも事業は継続し、検索した時にお世話になることも増えてきた。3000万冊以上の本をすでにデジ

"脱絶滅"が生態系の復活を可能にする──『マンモスのつくりかた: 絶滅生物がクローンでよみがえる』 書影

サイエンス / 生物・自然

"脱絶滅"が生態系の復活を可能にする──『マンモスのつくりかた: 絶滅生物がクローンでよみがえる』

リョコウバト、ドードー、何より有名なマンモスなどこの世界では絶滅が後を絶たない。 人間による乱獲や森林の伐採などによる環境変動によってみすみすと絶滅させてしまった場合などは、人間の愚かさの象徴として語られることも多いが、そうはいっても気候の変動なり生態系の変化なりで絶滅というのはいつだって起こりえるものだ。であればこそ──一度絶滅したはずの生き物を現代に復活

君たちが大好きだ。心から──『これで駄目なら 若い君たちへ――卒業式講演集』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

君たちが大好きだ。心から──『これで駄目なら 若い君たちへ――卒業式講演集』

ヴォネガット最後の著作となったエッセイ集『国のない男』が2007年に日本でも出版され、その当時すでに、ほとんどのエッセイが訳されていたことから「ああ、これがエッセイとしては最後かぁ……」と感慨深く読んだのを今でもよく覚えている。『スローター5』などに代表される厳しい現実や愚かな人間を直視しながらも「そういうものだ(So it goes)」と言ってのける彼の優

見えない場所で起こり続ける壮絶な攻防──『スパム[spam]:インターネットのダークサイド』 書影

サイエンス / 社会

見えない場所で起こり続ける壮絶な攻防──『スパム[spam]:インターネットのダークサイド』

LINEがあるのでキャリアメールを開くことはなくなってしまったが、たまに開くと山のようにスパムメールがたまっている。普段使いのGmailにもたまにスパムメールはきているようだが、自動判定され目に触れる前にほとんどの振り分けを行っていてくれる。 時にミスって重要なメールを迷惑メールフォルダに入れているのはご愛嬌だが、もちろん普段は助かっている。その振り分けを見

真実はひとつ。人はそれにたくさんの名前をつけて語る──『千の顔をもつ英雄』 書影

社会 / 世界史

真実はひとつ。人はそれにたくさんの名前をつけて語る──『千の顔をもつ英雄』

果たして、英雄に惹きつけられない人がいるだろうか? といえば、もちろんいるにはいるのだろうが、大抵の場合英雄とは憧れ、理想的な対象として存在している。神話におけるヘラクレス、あるいは仏教におけるブッダ、アーサー王にイエス・キリスト。神話クラスの人間でなくとも数十数百といった年数を語り継がれてきた民間伝承やお伽話には数限りなく人間の弱さを克服し前に進む英雄の姿

読み終えたが最後、徹夜はできなくなるだろう──『眠っているとき、脳では凄いことが起きている』 書影

サイエンス / 医学・心理学

読み終えたが最後、徹夜はできなくなるだろう──『眠っているとき、脳では凄いことが起きている』

多くの人間は一日に6〜8時間ほどの睡眠をとる。そうなると、ごくごく単純に計算して人生の4分の1から3分の1を睡眠に費やしていることになる。それなのに睡眠のことはあまり意識されない。あって当たり前、時にはちょっとぐらいすっとばしても構わないものだと思われている。 しかし、かつて安眠が今ほど保証されていない時代のことを考えれば、6〜8時間も睡眠をとるのはとてつも

意識は過大評価されている──『意識と脳――思考はいかにコード化されるか』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

意識は過大評価されている──『意識と脳――思考はいかにコード化されるか』

意識をめぐる本は最近も『意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論』や『意識をめぐる冒険』が本職の神経科学者によるノンフィクションとして発表されるなど、翻訳(と出版)が比較的に途絶えない分野である。本書の著者もまた本職の認知神経科学者ではあるが、特異性は徹底した実証に基づく意識の定義、およびその応用可能性についての地道な記述であろう(他の著者が実証に

体は星くずで出来ている──『スプーンと元素周期表』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

体は星くずで出来ている──『スプーンと元素周期表』

学生時代に元素周期表を見せられて「この対応を覚えるのだ」と言われた時程の絶望はなかなか味わえるものではない。水平りーべ僕の船などと語呂の合わせ方も多くのパターンが編み出されたが逆にいえばそれぐらい覚えることが困難であり「hが水素で……hが2つにoが1つでh2o、つまり水か……って水は水やないかい! 何がh2oじゃボケ! いったい……いったいなぜこんなものを覚

目指せデータ駆動型社会(not ディストピア)──『ソーシャル物理学』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

目指せデータ駆動型社会(not ディストピア)──『ソーシャル物理学』

人々の行動を支配しているルールは存在しているのか。 組織での情報はどのように広がり、どのようにしてアイデアは広がっていくのか。創造的な社会構造を指し示すことは可能なのだろうか。これまでのところ、人間の行動は自由意志によってコントロールされており予測することは困難だというのが常識だった。 その状況が今、変わりつつある。近年はメールが、SNSが、身体に装着する記

「文明」の土台を知るために──『人類を変えた素晴らしき10の材料』 書影

サイエンス / 生物・自然

「文明」の土台を知るために──『人類を変えた素晴らしき10の材料』

本を読んでいる時の紙。家で、仕事場で、ショーケースで、どこにでも存在しているガラス窓。口に含むまでは固形物なのに口に入れるとすぐにとろけるチョコレート。構造物の基礎としてあらゆるところに存在している鉄筋コンクリート。身近で日々接しているというのに、あまりにも当たり前に存在しているのでその凄さや来歴を特段意識したりはしないものだ。 コンクリートとはいったいどの

一人では不可能だった、ワクワクするカオスを生み出すこと『世界の辺境とハードボイルド室町時代』 書影

社会 / 民俗・風俗

一人では不可能だった、ワクワクするカオスを生み出すこと『世界の辺境とハードボイルド室町時代』

対談本はこの世に数多く出ているが、質的にはピンからキリまで玉石混交なジャンルである。最悪のケースとしては、忙しくて文章を書いている暇もない人気の著者や著名人を組み合わせて、その場で即興の言葉を拝借する。お互いのことをよく知らないまま表層的な会話に終始し、それっぽいまとめがあって終わってしまい、読後には釈然としない気持ちが残ることになる。 いやなに全ての対談本

一つを極めれば、他は自ずと理解できる『習得への情熱―チェスから武術へ―:上達するための、僕の意識的学習法』 書影

教養・雑学 / アート・スポーツ

一つを極めれば、他は自ずと理解できる『習得への情熱―チェスから武術へ―:上達するための、僕の意識的学習法』

趣味でも仕事でもいい。 長く一つのことを継続的に行なっていると、そこで覚えた技術、感覚、発想などがよく似た別の分野や、あるいはまったく異なる場面でも「応用」できることに気がついたことがないだろうか。 自分の例を出せば、長年レビューを書いてきた経験が、本職であるWebプログラムの問題解決や、設計思想に影響を与え、逆にプログラムを学んだことがレビューで情報をどの

新しい時代の技術と格差論──『ザ・セカンド・マシン・エイジ』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

新しい時代の技術と格差論──『ザ・セカンド・マシン・エイジ』

新しい技術が出現し既存の労働・雇用状況が変化していくと決まって「技術が労働者を駆逐する」「いや、ラッダイト運動の頃の例からわかるように労働者は別の仕事をするようになるだけだ」という議論が巻き起こる。確かに状況だけみると幾度もの技術革新を得ながらも我々は日々の労働から解放されてなどおらず、概ね嫌だ嫌だと言いながら仕事へ向かい、かつてはなかったが今は存在する仕事

わたしたちの世界は、わたしたち自身だ『生まれながらのサイボーグ: 心・テクノロジー・知能の未来』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

わたしたちの世界は、わたしたち自身だ『生まれながらのサイボーグ: 心・テクノロジー・知能の未来』

「サイボーグ」といえばまず真っ先に、義体が当たり前になった近未来世界を描く攻殻機動隊シリーズや、そのままずばりタイトルに入っている石ノ森章太郎原作の『サイボーグ009』シリーズに代表されるイメージを思い浮かべる人が多いかもしれない。その特徴を一つ上げるならば、生身の人間ではなく一部だったり全体だったりが機械の身体に置き換わっていることだろう。 ところが本書が

『漫画編集者』いかにして漫画は生み出されるのか 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『漫画編集者』いかにして漫画は生み出されるのか

編集者が書いた本や、編集者が受けているインタビューが好きだ。 それはやっぱり「表にはあんまり出てこない部分」だからオモシロイのだろうと思う。本書も含めて我々読者は、最終的にパッケージとして提出されたものを完成品として受け取る。そうした本には大抵謝辞として編集者の名前が挙げられていたり、あるいは雑誌ならば最後に名前がクレジットされていたりするだけで、そこでどの

『S,M,L,XL+: 現代都市をめぐるエッセイ』語り、それ自体が都市であるような 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『S,M,L,XL+: 現代都市をめぐるエッセイ』語り、それ自体が都市であるような

普段、線をぐりぐりと引きながら本を読む。あとで引用しようと思うぐっときた部分に、結論部分に、問題提起の部分に。概ねあとから読み返した時に、そこを起点として他の細部をずるずると思い出せるように引いている。というわけで、本書もいつもと同じように愛用のボールペンを片手に読み始めた。冒頭の畳み掛けるような問いかけから思っても見なかった都市観を提示され線を引き始めてみ

まるで空の劇場『ハイジャック犯は空の彼方に何を夢見たのか』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

まるで空の劇場『ハイジャック犯は空の彼方に何を夢見たのか』

我々は今では飛行機に乗る時に厳重な持ち物の検査を受ける。長い列ができて、それなりに時間がかかることも珍しくない。持ち込みは制限されるし、見られたくないものであってもガサガサとチェックを入れられてしまう。そうした状況への抗議はあれど、多くの人はそれを「仕方がないもの」として受け入れていることだろう。何しろ我々がいるのは9.11以後の世界であり、自分たちの乗った

『「衝動」に支配される世界---我慢しない消費者が社会を食いつくす』衝動をコントロールする為に 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『「衝動」に支配される世界---我慢しない消費者が社会を食いつくす』衝動をコントロールする為に

TwitterやFacebookは常に何らかの更新が発生し続けている。その為ちょっとでも時間が空くと、ついつい「何か新しい更新はないか」と気になって必要以上に何度も確認を行い、そのままだらだらと時間を使ってしまう。そんな情報中毒ともいえる行動を日常的に経験している人も多いのではないだろうか。それはこらえ性がないから──などではなく、そもそも人間の脳は断続的な

さらに積み上げよ!『サイエンス・ブック・トラベル: 世界を見晴らす100冊』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

さらに積み上げよ!『サイエンス・ブック・トラベル: 世界を見晴らす100冊』

HONZ読者の方々は、読みたい本がどんどん積み上がっていく毎日を送られているかもしれない。だが、それをさらに推し進めてくれるのが書評集である『サイエンス・ブック・トラベル』だ。もちろん、書評集なんてわざわざ読まなくたってこの世には読みたい本・読むべき本はたくさんある。油断をすると、ヤツラはいくらでも積み上がっていく。 『神話の力』という神話をめぐる本の中で、

次の世界を知るために『AIの衝撃 人工知能は人類の敵か』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

次の世界を知るために『AIの衝撃 人工知能は人類の敵か』

ディープラーニング、機械学習、人工知能……正確な未来予測は無理でも、だいたいの方向性において人類は「技術的な進歩」を重ねてきたし、これからも重ねていくだろうということは予測できる。そしてその技術的な進歩が今後必ず起こるのがAI分野だ。本書はそのAI分野の「過去」から「現在」そして「未来」までを見通してみせるきっちりとした仕上がりの良書だ。 特に昨今ではディー