ノンフィクションはこれを読め!

世界史

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361記事

『ヴィクトリア朝時代のインターネット』 書影

世界史 / 「解説」から読む本

『ヴィクトリア朝時代のインターネット』

インターネット30周年を祝うイベントが開かれていた1999年頃、ネット関連の会議などで頻繁に話題に上る本があった。それは、その前年に出版された本書『ヴィクトリア朝時代のインターネット(The Victorian Internet)』という不思議なタイトルの本だった。これを読んだ関係者が、「たかだか数十年の歴史しかないとされるインターネットだが、実はそのルーツ

『[完訳版]第二次世界大戦 1』英国式「カントリー・ジェントルマン」人生! 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『[完訳版]第二次世界大戦 1』英国式「カントリー・ジェントルマン」人生!

国家がひとりの勇敢な人間によって救われることがある。ウィンストン・チャーチル(1874-1965)は第二次世界大戦中に英国首相となり、連合国側を勝利に導いた。後に彼は長大な大戦回顧録を執筆しノーベル文学賞を受賞した。 チャーチルが戦時内閣の首相になってから、英国内はドイツ空軍の猛烈な爆撃にさらされた。ロンドン市内は連日のように空爆を受けたが、彼はラジオを通じ

『MOCT 「ソ連」を伝えたモスクワ放送の日本人』日露をつなぐラジオの架け橋 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『MOCT 「ソ連」を伝えたモスクワ放送の日本人』日露をつなぐラジオの架け橋

2022年2月24日、ロシア連邦がウクライナへ軍事侵攻を開始した。ロシアは東側諸国の多くを敵にまわし、カレンダーなどでマッチョな姿を披露していたプーチン大統領は、今では悪の首領のようにとらえられている。インターネットが発達した今、ロシアの中にも反体制派がいることを多くの人は知っているが、戦争が始まり1年が経っても和平への道は見えてこない。 東西冷戦時代、日本

『海賊たちは黄金を目指す』未知の「南海」に挑んだ海賊たちの冒険記 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『海賊たちは黄金を目指す』未知の「南海」に挑んだ海賊たちの冒険記

1680年4月5日の夜明け、イギリス人を中心とした331人のバッカニアが遠征の途に就いた。この遠征は現在のパナマ領内に横たわるダリエン地峡を大西洋側から徒歩で越え、太平洋側のスペイン植民地を襲撃するという、途方もなく野心的な試みであった。彼らの行く手にはこれまで何度もヨーロッパ人を拒み続けてきた鬱蒼としたジャングルと連なる山々が待ち構えているのだ。 この遠征

『焼き芋とドーナツ』「わたし」でつながる女性史 書影

社会 / 世界史

『焼き芋とドーナツ』「わたし」でつながる女性史

初めてフェミニズムに触れたのは10代の頃、上野千鶴子氏の『セクシィ・ギャルの大研究』がきっかけだった。もちろん現在の岩波現代文庫版ではなく光文社のカッパ・サイエンス版で、タイトルだけ見てそそくさとレジに持って行ったのをおぼえている。 ところが読みはじめて面食らった。そこには10代男子が期待していたようなスケベな話は一切なく、むしろこちらのスケベな視線そのもの

『イラク水滸伝』謎の湿地帯をめぐる圧巻のノンフィクション! 書影

生物・自然 / 世界史

『イラク水滸伝』謎の湿地帯をめぐる圧巻のノンフィクション!

本書を手に取った人は幸せである。なにしろ世界初の報告をいち早く日本語で読むことができるのだから。それも公的機関がまとめたような無味乾燥な調査レポートではなく、抱腹絶倒の冒険譚として読める。これはもう何を措いても読むしかない一冊だ。 イラクに〈アフワール〉と呼ばれる湿地帯がある。ティグリス川とユーフラテス川の合流地点付近にひろがる湿地帯で、かつては日本の四国を

「一寸先は闇」の未来を予測する文理を超えた歴史学者の力業!『未来とは何か』 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

「一寸先は闇」の未来を予測する文理を超えた歴史学者の力業!『未来とは何か』

「一寸先は闇」 と言う言葉があるが、未来は誰にとっても予測不能の世界である。そして「未来とは何か」は、極めて身近でありながらも納得する解答を得ることが非常に難しい問いだ。 その問いに対してオーストラリア在住の優秀な歴史学者が、宇宙物理学・地球科学・生物学・情報科学・心理学・哲学の知見を総動員して、果敢に答えようと試みたのが本書である。 著者のデイビッド・クリ

『半導体戦争 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防』 書影

世界史 / ビジネス

『半導体戦争 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防』

本書は、軍事・経済・生活に欠かせない戦略物資、半導体をめぐる国家や企業の攻防をいきいきと描いたノンフィクションだ。半導体業界の興亡を、個人や企業のミクロなエピソードで紡ぎ、マクロな経済史・産業史へと昇華させる。『石油の世紀』でピューリッツァー賞を受賞したダニエル・ヤーギンをして、「21世紀を理解する上で読むべき一冊」と言わしめた。 著者であるクリス・ミラーは

『政治家の酒癖』酔いが動かした世界。 書影

教養・雑学 / 社会

『政治家の酒癖』酔いが動かした世界。

一説によると人類は1万年以上前から酒を飲んでいたらしい。最も古いアルコール飲料はハチミツを主原料としたミードと呼ばれるものであったとも言われている。紀元前4000年ころには古代メソポタミアでビールが飲まれていたし、ワインは紀元前3000年頃から飲まれていた。人はかくも昔から酒を飲み酔っていたのだ。人が酒を飲む理由は様々だろうが、古代や中世の人々が酒を飲むのに

『武器としてのエネルギー地政学』エネルギーの超基本を徹底解説 書影

社会 / 世界史

『武器としてのエネルギー地政学』エネルギーの超基本を徹底解説

日本でエネルギーがここまで話題になるのは2011年の東日本大震災以来だろうか。ロシアによるウクライナ侵攻に端を発した天然ガス価格高騰、エネルギー価格を中心とするインフレ懸念、カーボンニュートラル取組と、ほぼ毎日のようにエネルギー関連情報がニュースの見出しを飾る日々が続いている。 そうはいっても「そもそもエネルギー問題ってなんぞや」「みな、何を騒いでいるのか」

『THE WORLD FOR SALE 世界を動かすコモディティー・ビジネスの興亡』国際政治経済を動かす商社 書影

世界史 / ビジネス

『THE WORLD FOR SALE 世界を動かすコモディティー・ビジネスの興亡』国際政治経済を動かす商社

2021年に原著が発行されて以降、フィナンシャルタイムズ紙や英エコノミスト誌のブックオブザイヤーなど、数々の経済書賞を総ナメにしてきた一冊が翻訳され、遂に日本語でも読めるようなった。 私たちの生活を支えるエネルギーの物流面でなにが起きているのか。メディアではなかなか取り上げられず、業界人ですら知らないことの多いエネルギー物流マーケットの深層が本書では語られる

『キツネ潰し 誰も覚えていない、奇妙で残酷で間抜けなスポーツ』動物虐待とトライアル&エラーの娯楽史 書影

教養・雑学 / アート・スポーツ

『キツネ潰し 誰も覚えていない、奇妙で残酷で間抜けなスポーツ』動物虐待とトライアル&エラーの娯楽史

競技場に、細長い布の両端を持った男女のペアが十数組立っている。合図とともに、会場にキツネが放たれる。怯えたキツネは競技場を走り回り、やがて布を踏む。その瞬間、男女は力を合わせて布を引っ張り、キツネを宙に飛ばす。繰り返し空に投げられるキツネたちは当然のごとく怪我をしていくが、誰も手当などしない。そして競技が終了に近づくと、参加者は弱ったキツネを憐れみながら撲殺

通史を1人で書き上げる知力に脱帽!『人類5000年史 Ⅳ—1501年~1700年』 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

通史を1人で書き上げる知力に脱帽!『人類5000年史 Ⅳ—1501年~1700年』

ちくま新書で『人類5000年史』というシリーズが刊行中だが、文明の誕生から現代まで人類史を簡潔に一望できる。今回紹介する第4巻では、1501年から1700年までの通史がシリーズ通し番号の第9章・第10章として充てられている。 かいつまんで紹介すると、銃を手に銀を求めて海を渡ったコンキスタドール(征服者)が、交易の時代を押し開いた。宗教改革という狼煙が上がった

『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』サイバー空間での米中ロ覇権争い 書影

社会 / 世界史

『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』サイバー空間での米中ロ覇権争い

生々しいロシア-ウクライナの攻防が日々ニュース映像を通して伝わってくる。ただ、今回の戦争はそれが全てではない。目に見えない攻防が今まで以上に激しさを増している。 今回の戦争が一線を画すのは、両陣営ともにサイバー空間を多用し、「ハイブリッド戦」というサイバー攻撃と武力攻撃を組み合わせた戦いを繰り広げていることである。ハッキングなどのサイバー攻撃だけでなく、スパ

正しい歴史観を持ってウクライナを理解するために『中学生から知りたいウクライナのこと』を読もう! 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

正しい歴史観を持ってウクライナを理解するために『中学生から知りたいウクライナのこと』を読もう!

ウクライナについてのニュースを連日見ているのに、その国について何も知らなかった。恥ずかしい限りである。いかに知識がないかを思い知らされながら、新型コロナウイルス感染症 COVID-19のことを思い浮かべていた。医学を学んだのだから、それについては相当な基礎知識がある。なので、一般の人のウイルスについての知識の貧弱さや、ワイドショーなどでのとんでもないコメント

『ソーニャ、ゾルゲが愛した工作員』ゾルゲに見出され歴史を動かした「主婦」 書影

人物 / 世界史

『ソーニャ、ゾルゲが愛した工作員』ゾルゲに見出され歴史を動かした「主婦」

ロシアのウクライナ侵攻により核戦争の脅威が現実味を持って語られるようになっている。こうした緊張感のある状態は東西冷戦以来であろう。実は冷戦を生み出すにいたる、核の軍事バランスを作りだすのに、大きな役割を果たした一人の主婦がいたことはあまり知られていない。彼女のコードネームはソーニャ。三人の子供の母であり、妻であり、ソ連軍情報部(GRU)の将校であり、腕利きの

『物語 ウクライナの歴史』は、どんな人に読まれているのか? 書影

世界史 / 併せて読まれたこの一冊

『物語 ウクライナの歴史』は、どんな人に読まれているのか?

ウクライナへの軍事侵攻後、ロシアやウクライナ、そして地政学といったジャンルに関する本が注目されています。中でも最も売れているのが『物語ウクライナの歴史』です。軍事的な視点での本も多い中、多くの人が手にとったのは2002年に発行された、歴史の本だったということに興味を持ちました。 今回は久しぶりに、この『物語 ウクライナの歴史』の各種データから売れ方、読者層を

エネルギー問題から読み解く『新しい世界の資源地図』 書影

世界史 / ビジネス

エネルギー問題から読み解く『新しい世界の資源地図』

2022年2月、ロシアによるウクライナ侵攻を目の当たりにし、世界に激震が走った。そしてその傍ら、エネルギー市場も世界的なショックの渦中にある。 戦時においての戦略物資、石油・天然ガスの重要性に私たちは改めて直面している。第二次世界大戦から80年がたつが、エネルギーを巡る地政学のダイナミズムという本質は、21世紀も変わっていない。 そんな絶妙なタイミングで「ピ

エネルギー問題の道標『エネルギーをめぐる旅』 書影

教養・雑学 / 世界史

エネルギー問題の道標『エネルギーをめぐる旅』

帯には赤字で「驚嘆必至の教養書」「エネルギーがわかると世界がわかる」、これは面白そうだ。しかもAmazon Audibleで聴けるとあって、移動中や家でくつろいでいる時に読みすすめられるのもうれしい。 著者はJX石油開発でオイル事業に長年携わってきた古館恒介さん。帯文にもあるとおり、エネルギーを軸にこれからの世界を理解するための必読の書だ。 正直、日本人でエ

『怪異猟奇ミステリー全史』老後の楽しみ、永久保存版ブックガイド 書影

教養・雑学 / 世界史

『怪異猟奇ミステリー全史』老後の楽しみ、永久保存版ブックガイド

私が小学生のとき、と言えば半世紀も前の話になるが、教室には必ず学級文庫があった。本の裏表紙には貸出カードが付いていて、借りた人の名前を書いて、誰がどの本を読んだかが分かるようになっていた。同じ本を読んだ友だちと内容を話し合うのがとても楽しかったのをよく覚えている。学級文庫をコンプリートすることが自分の課題だった。 その時代、本を読むことが好きな子は、みんな同

『ドードーをめぐる堂々めぐり 正保四年に消えた絶滅鳥を追って』絶滅の鳥、最後の一羽は江戸を旅した? 書影

世界史 / 日本史

『ドードーをめぐる堂々めぐり 正保四年に消えた絶滅鳥を追って』絶滅の鳥、最後の一羽は江戸を旅した?

ドードーという鳥を知っているだろうか。『アリスの不思議な旅』に出てきた変な鳥を思い浮かべる人、あるいは「ドラえもん」で絶滅鳥類として知った人もいると思う。鳥とは思えない太って滑稽な姿は一度見たら忘れられない。17世紀半ばにインド洋モーリシャス島で絶滅した飛べないハトの仲間である。 ある日著者はロンドン自然史博物館のサイトで「ドードーが日本に旅をしていた」とい

『SS将校のアームチェア』ユダヤ系歴史家の調査が 「一般のナチ」の姿に迫る 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『SS将校のアームチェア』ユダヤ系歴史家の調査が 「一般のナチ」の姿に迫る

本書の著者、ダニエル・リーは第2次世界大戦を専門とする歴史家で、ユダヤ系英国人でもある。あるとき彼に依頼が舞い込んだ。依頼主はヴェロニカという女性だ。彼女の母が故郷のチェコで購入したアームチェアを修理に出した際、座面の中からナチスに関する書類が出てきたという。依頼は、なぜそんな物が椅子の中に隠されていたのかを調査してほしいというものだった。 書類は1933〜

この世の不幸が集まったような清の女性の暮らしを体験『私がクリスチャンになるまで――清末中国の女性とその暮らし』 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

この世の不幸が集まったような清の女性の暮らしを体験『私がクリスチャンになるまで――清末中国の女性とその暮らし』

1873年から1879年、中国の田舎でキリスト教を広げる活動をしたアデル・M・フィールドというアメリカ人女性がいた。本書は、アデルが宣教先の中国人女性たちの人生を聞き取ったものだ。 日本だと明治7年、徴兵令がはじまった年、この頃の中国人女性の人生と暮らしはどのようなものだったろうか。 庶民の人生を伝える書物はどの国でも少ない。日本でももちろんそうだ。私たちが

英国コメディアンによる『税金の世界史』 書影

社会 / 世界史

英国コメディアンによる『税金の世界史』

金融所得課税や経済政策の財源論など、2021年10月の衆議院選挙でもなにかと話題になった税制度。日常生活にも、国家運営にもかかわる、大事な論点である。一方で、ひと口に税金といっても、制度は複雑怪奇で分かりづらく、とっつきにくい。税金と聞いただけでアレルギー反応を示してしまう人もおおいだろう。 ムズかしい問題に分かりやすい切り口をあたえてくれるのは、『歴史』だ

『暁の宇品』日本はなぜ「海の戦争」で敗れたのか 書影

人物 / 世界史

『暁の宇品』日本はなぜ「海の戦争」で敗れたのか

新刊が出たと聞けば、迷わず購入する著者がいる。内容を事前に確かめることはない。なぜならその人が書くものに期待を裏切られたことはこれまで一度もないからだ。 堀川惠子氏は、当代最高のノンフィクションの書き手のひとりである。著作はいずれも高い評価を受け、受賞歴も数知れない。本書も凄い本だった。すでに膨大な文献が世に出ている太平洋戦争について、これまでにない新しい視

『中世ヨーロッパ ファクトとフィクション』「暗黒時代」という神話はなぜ生き残ってきたのか 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『中世ヨーロッパ ファクトとフィクション』「暗黒時代」という神話はなぜ生き残ってきたのか

「中世ヨーロッパ」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。「疫病と飢饉」、「魔女狩り」、「異端審問」……。代表的なものを挙げたが、いずれにせよ、西ローマ帝国が滅んだ5世紀末からの約1000年間に明るく進歩的な印象を抱く人は少ないだろう。 だが著者は、そうしたネガティブなイメージはここ200年ほどの間に私たちに植え付けられた誤解だと説く。本書には、中世に関する11

そうだったのか! 新しい知識を得る快感ここにあり『西暦一〇〇〇年 グローバリゼーションの誕生 』 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

そうだったのか! 新しい知識を得る快感ここにあり『西暦一〇〇〇年 グローバリゼーションの誕生 』

本を読む楽しみはいくつもあるが、全く知らなかった知識を得るのは最大の醍醐味ではないか。この『西暦1000年 グローバリゼーションの誕生』は、そんな一冊。これまで脳に蓄えてきた常識が一気に覆さえていくような快感を味わうことができる。 一般的にグローバリゼーションといえば、15世紀中頃の大航海時代から始まるとされる。しかし、この本の著者、イェール大学歴史学教授の

バックパッカーのリアルな生態を描き出す、小説家による旅行記──『四分の一世界旅行記』 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

バックパッカーのリアルな生態を描き出す、小説家による旅行記──『四分の一世界旅行記』

この『四分の一世界旅行記』はSF・奇想短篇集の『半分世界』でデビューし小説家として活躍している石川宗生によるバックパッカーとしての旅行記である。四分の一世界旅行記と題されているように、訪問する場所は中央アジア、コーカサス、東欧の15カ国。世界一周でもなければ、アマゾンの奥地にひそむ巨大ナマズを見つけるみたいなビッグ・テーマや企画がある旅ではない。旅が好きな作

国際政治経済を動かすコモディティ商社『The World For Sale』 書影

世界史 / ビジネス

国際政治経済を動かすコモディティ商社『The World For Sale』

日本語翻訳版が待ち遠しい一冊だ。 ESG意識の高まりから、CO2を排出する従来型エネルギーへの風当たりはつよく、石油や石炭といったエネルギー資源は苦境にたたされている。そんな悪環境下でも最高益をたたき出しているエネルギー関連企業群がいる。今はやりの再エネ企業ではない。コモディティ商社という業種だ。 ウォールマートやアマゾンが消費材を人びとに届けると同じように

『危機の世界史』 書影

世界史 / 「解説」から読む本

『危機の世界史』

本書は序文から思わずぎくりとするようなことが書かれている。いわく「いまの時代は安定しているように思えるが、現在の状況がひっくり返らないという保証はない……パンデミックは簡単に起こりうる」。さらに「核戦争も起こりうるし、環境災害が待ち構えているかもしれない」と続く。 これは歴史の本ではあるが、オーソドックスな歴史書ではない。著者が目を向けているのは、何らかの形

これから先も、株式会社は必要か 『株式会社の世界史 「病理」と「戦争」の500年』 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

これから先も、株式会社は必要か 『株式会社の世界史 「病理」と「戦争」の500年』

“コロナ禍による大恐慌は「株式会社」の終焉を招くのか”本書のオビには、こんな惹句が躍っている。『ブルシットジョブ―クソどうでもいい仕事の理論』という本が話題になったり、自らの会社を自虐的に扱う態度が横行しているように、我々は「株式会社」の扱いに大いに困っているように見える。 この時期に「株式会社」について考察を深めておくことは非常に有意義だと感じ、私はこの本

『黒魔術がひそむ国 ミャンマー政治の舞台裏』 大統領の誕生日は国家機密!? 書影

民俗・風俗 / 世界史

『黒魔術がひそむ国 ミャンマー政治の舞台裏』 大統領の誕生日は国家機密!?

政治家は孤独な職業だと言われる。未来がどうなるかわからない中、たったひとりで決断を下さなければならないのだから、それも当然かもしれない。「政治家と孤独」で思い出すのがノリエガ将軍のエピソードだ。パナマの独裁者として君臨したノリエガは、当初はアメリカにとって利用価値のある(CIAのアセットだった)人物だったが、次第に目の上のタンコブのような存在となり、ブッシュ

『教養としての「中国史」の読み方』 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『教養としての「中国史」の読み方』

日本は、 地理的に遠く離れた世界一の覇権国家であるアメリカと軍事同盟を 結んでいる。 そして世界第二の大国である近隣の中国が最大の貿易の相手国だ。 現在、アメリカと中国の対立が激しさを増している。 日本の立場はまことに辛いものがある。 アメリカの機嫌を損ねない範囲で中国とも仲良くしなければ、 日本の繁栄は覚束ないからだ。加えて、 中国は理解がなかなかに難しい

『ロレンスになれなかった男 空手でアラブを制した岡本秀樹の生涯』 書影

人物 / 世界史

『ロレンスになれなかった男 空手でアラブを制した岡本秀樹の生涯』

社会人になってよく考えることがある。「仕事中に個人として意見したり行動することって、そんなに良くないことですか?」たとえば、あるミーティングで、私自身の意見を述べるときに、必要以上にプレッシャーを感じて「私個人の意見としましては……」なんて、いきなり真面目口調になってしまう。また、ミーティング後に上司から「会社の発言となるから、勝手な意見は言わないように」と

『文化大革命 人民の歴史 1962-1976(上・下)』文化大革命が破壊したもの、暴かれる独裁政権の本質 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『文化大革命 人民の歴史 1962-1976(上・下)』文化大革命が破壊したもの、暴かれる独裁政権の本質

1958年から61年まで続いた大躍進政策の失敗により、中国は数千万人の死者を出す。この政策で中国の経済は破壊され、農村部は崩壊してしまう。農民たちは飢え・過労と地方の共産党幹部の暴力に苦しみながら命を落としていった。この未曾有の失政により、毛沢東の権威は失墜するのである。 国家的な危機を受けて行われた「七千人大会」で劉少奇や彭真、彭徳懐らをはじめとする多くの

『「世界史」をいかに語るか』 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『「世界史」をいかに語るか』

本書は、雑誌「思想」 の特集号に2つの論稿を新たに付け加えて単行本化したものである 。グローバルな時代が訪れ、歴史学もその埒外ではなくなった。 これまでの歴史学では、 研究史の蓄積と資料水準の上昇によって研究対象や時代を狭く限定 していく専門化が進展していた。 このことが歴史学を周辺化させ公の問題への提言能力を喪失させて いったのである。これに対して、グロー

『草原の制覇 大モンゴルまで』 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『草原の制覇 大モンゴルまで』

本書は、「シリーズ中国の歴史」の第3巻である。中国という巨大な隣人。国は個人と違って引っ越せないので、相手を知り理解したうえで上手に付き合っていくしかない。人を知るにはまず履歴書をみるように、国を知るにはその歴史を繙くのが一法だ。 このシリーズは、巨大な中国を「草原、中原(華北)、江南、海域」の4つの地域に分ける。中国は、「東南アジア(海域世界)の北部と内陸

『最期の言葉の村へ──消滅危機言語タヤップを話す人々との30年』 言語とともに消え去っていくものたち 書影

民俗・風俗 / 世界史

『最期の言葉の村へ──消滅危機言語タヤップを話す人々との30年』 言語とともに消え去っていくものたち

タヤップ語。それは、パプアニューギニアの熱帯雨林の奥深くにある小さな村で話されている言語である。そして、その言語はいままさにこの世界から消え去ろうとしている。 「言語はなぜ消滅してしまうのか」。1980年代、当時大学院生だった本書の著者は、その謎を明らかにしたいと切望し、単身で熱帯雨林の奥地に潜り込む。当時、どんな地図にも載っておらず、そこを訪れた白人もほと

『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス

いまからおよそ1万年前、人類は農業を発明した。農業が生まれると、人びとは必要な栄養を効率的に摂取できるようになり、移動性の狩猟採集生活から脱して、好適地に定住するようになった。そして、一部の集住地域では文明が興り、さらには、生産物の余剰を背景にして国家が形成された──。おそらくあなたもそんなストーリーを耳にし、学んだことがあるだろう。 しかし、かくも行き渡っ