ノンフィクションはこれを読め!

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3,645記事

『あなたがあの曲を好きなわけ 「音楽の好み」がわかる七つの要素』「好みの違い」はこわくない 書影

おすすめ本レビュー / アート・スポーツ

『あなたがあの曲を好きなわけ 「音楽の好み」がわかる七つの要素』「好みの違い」はこわくない

音楽は好きでも、音楽の話をするのはわりと苦手だったりする。 自分が微妙だと思うアーティストを好きと言われたら返答に困るし、一見好みが近いように見えても実は「良い」と感じているポイントが全然違って噛み合わないこともある。 同じ曲を聴いても、人によってなぜこれほど感じ方が異なるのか。自分が大好きな曲があの人の琴線には触れず、あの人が最高だと言う曲はなんだかピンと

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『日本最後のシャーマンたち』/霊魂との対話

本書はベルギー生まれの日本学者、ミュリエル・ジョリヴェが著した一冊だ。フランス語圏の読者に向けて出版したものを、逆輸入で日本語に翻訳し発刊された。日本の伝統的なシャーマニズムに焦点をあてており、現代社会においてシャーマンと呼ばれる存在がどのように変遷してきたかを説明している。 タイトルに「最後の」とあるのは、実際に彼女達(ほぼ女性)が生きている世代が今で最後

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『死の貝――日本住血吸虫症との闘い』奇病撲滅に挑んだ人々の生きた証と、罪なき貝の悲劇

天正10年(1582年)、甲斐の名門戦国大名・武田家が織田信長の軍に攻められ、今まさに滅亡しようとしていた。追い詰められた武田勝頼に、律義にも暇乞いに来た足軽大将がいた。 最後まで殿の供をするのが武士の務めではあるが、もはや歩けない。勝頼は豊後の姿を見て、その気持ちだけで十分であるぞ、と涙を流していたわった。これが水腫脹満を記録した最古の文献と考えられている

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『アトムの心臓「ディア・ファミリー」23年間の記録』余命10年、娘を救う人工心臓の開発に挑んだ町工場の矜持

新型コロナパンデミックのころ、通常では救命困難な重症呼吸不全患者のためECMO(体外式膜型人工肺)を装着した姿がニューズ映像となった。あんなにも大規模な装置でなれば救命できないのか、と驚かされた人も多いだろう。命を助ける装置の開発は困難を極める、ということは想像に難くない。 本書は先天的な心臓の難病を抱えて生まれた娘を持つ、本来医療とは無縁の町工場の社長と家

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先月出た本 2024年6月

文庫化されたら世界が滅びる、とまで言われていた『百年の孤独』の文庫版発売に世が沸き返っています。この大作が話題になったことで、読書案内や読書術の本にも注目が集まっているようです。ではノンフィクションジャンルの6月はどうだったのでしょう。まず押さえておきたいのがジャック・アタリの新作 もともと種の保存のために行われた「知識の受け渡し」。歴史の中では、一神教によ

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無限大のドルを求めた果てに逮捕された男の転落記──『1兆円を盗んだ男』

この『1兆円を盗んだ男』は、『マネー・ボール』や『最悪の予感』などで知られるマイケル・ルイスの最新作。今回彼がテーマに選んだ人物は暗号資産取引所FTXを立ち上げ莫大な富を築き上げた後、2022年に逮捕されてしまった男サム・バンクマン=フリードだ。 マイケル・ルイスといえば複雑な題材であっても見事な一本筋の通ったストーリーに仕立て上げるノンフィクションの名手だ

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『絶海 英国船ウェイジャー号の地獄』上半期もっとも興奮したノンフィクション。

1793年にグレートブリテン王国(イギリス)とスペインとの間に「ジェンキンスの耳戦争」という海上の覇権を争う戦争が勃発した。ローバート・ジェンキンスという商船の船長がスペイン当局に拿捕され耳を切り落とされるという事件への報復という名目で、イギリス側が宣戦布告したためにこのような名前で呼ばれるようになった戦争だ。 この戦争はやがてオーストリア継承戦争にまで拡大

『定年後に読む不滅の名著200選』読書三昧の定年後はステキだぞ! 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『定年後に読む不滅の名著200選』読書三昧の定年後はステキだぞ!

本読みは人がどんな本を読んでいるかを気にする。同様に本好きは、自分が読んでいない名著が気になって仕方がない。おそらくHONZの読者もそうだろうが、私はブックガイドと見れば直ちに購入してしまう。そして本書は「定年後に読む」と名打っているのだ。 「人生100年時代」と言われ始めて、寿命が100歳前後まで伸びる話が現実味を帯びてきた。人生を教育・仕事・老後の3ステ

温泉旅館のちょっとええ話、満載! 『宿帳が語る昭和100年 温泉で素顔を見せたあの人』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

温泉旅館のちょっとええ話、満載! 『宿帳が語る昭和100年 温泉で素顔を見せたあの人』

「宿帳」である。旅館やホテルでの宿泊では記入が義務づけられているとはいえ、最近はネットで予約しがちなので、印刷されたものにサインするだけのことが多い。昭和とはいえ、はて宿帳なんかが本になるのかと思って読み始めたが、宿帳そのものの本ではなかった。 全24話、そのほとんどが昭和の大スターと馴染みの旅館の関係についてのお話だ。当然のことながら、ああええなぁと思える

『シャーロック・ホームズの護身術 バリツ 英国紳士がたしなむ幻の武術』その正体とは? 書影

教養・雑学 / アート・スポーツ

『シャーロック・ホームズの護身術 バリツ 英国紳士がたしなむ幻の武術』その正体とは?

「明鏡止水 武のKAMIWAZA」というNHKの番組をご存知だろうか。格闘家でもある俳優の岡田准一が司会を務め、武道各流派を率いる一流の武術家たちが集結し、真髄を語り秘儀を披露していく。録画をして繰り返し観るほど私の好きな番組だ。 『シャーロック・ホームズの護身術バリツ:英国紳士がたしなむ幻の武術』には技の説明のため120点を超える写真が掲載され、中には袴を

『ライチョウ、翔んだ。』このままでは絶滅する…。難題を解決することはできるのか? 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

『ライチョウ、翔んだ。』このままでは絶滅する…。難題を解決することはできるのか?

2015年8月、衝撃的な写真が新聞に掲載された。北アルプスのライチョウがニホンザルに捕食されている姿が初めて撮られたのだ。ライチョウの生息数は激減している。そこに新たな天敵としてサルが加わることは大きな脅威となる。 世界的なライチョウの研究者で信州大学名誉教授の中村浩志は緊急記者会見を開き、マスコミを使って警告した。このままでは絶滅すると。 信州大学農学部卒

『再生』加害者を赦せるか 書影

社会 / 事件・事故

『再生』加害者を赦せるか

読み終えたあとも、まだ消化できないものが残っている。こと読書では、これはマイナス評価ではない。たやすく消化できるものばかりが良い本とは限らないからだ。 この本の消化しづらい感じをどう説明すればいいだろう。とても大切なことが書かれているのに、それを著者と同じように理解するのは難しい、とでも言えばいいか。あるいはもっとわかりやすくするなら、次のような問いに言い換

『地球規模の気象学』 地球の巨大な循環システムが天気を決める! 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

『地球規模の気象学』 地球の巨大な循環システムが天気を決める!

昨年の夏は猛暑だったが、実は2023年は世界的にも気象観測史上で最も暑かったことがデータから裏付けられている。こうした現象を研究する学問は「気象学」と呼ばれており地球科学の一分野である。その対象は風や雲、雨や雪、台風や寒波など「大気の大循環」と呼ばれる地球規模の巨大な循環システムが司っている。 本書はその仕組みを高校生にもわかるように解説した啓発書で、著者は

『最強のコミュ力のつくりかた』コミュ力とは人としての魅力なのだ 書影

医学・心理学 / 教養・雑学

『最強のコミュ力のつくりかた』コミュ力とは人としての魅力なのだ

皆さんはコミュ力に自信がおありだろうか?もしそれほど自信がないのであれば、本書の冒頭に記されている言葉はかなり衝撃的なはずだ。本書はこのような書き出しから始まる。 あなたの言葉が伝わらないのは、あなたに人としての“魅力”が欠けているからである。 どうであろうか。バットか何かでぶん殴られたような衝撃を受けないだろうか?かく言う私もコミュ力が低いことを自認してい

芥川賞作家によるADHDをめぐる私ノンフィクション 『あらゆることは今起こる』 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

芥川賞作家によるADHDをめぐる私ノンフィクション 『あらゆることは今起こる』

『あらゆることは今起こる』、芥川賞作家・柴崎友香さんの最新作である。いかにも小説っぽいタイトルだが、そうではない。柴崎さんが40代の後半でADHD(注意欠如・多動症)と診断を受けられ、治療薬のひとつであるコンサータを服用、いかに変わられたか。その自分の経験からADHDやASD(自閉スペクトラム症)といった発達障害について考えていかれるノンフィクションである。

『米特殊部隊CCT 史上最悪の撤退戦』これまであまり語られてこなかった戦闘管制員の物語 書影

教養・雑学 / 人物

『米特殊部隊CCT 史上最悪の撤退戦』これまであまり語られてこなかった戦闘管制員の物語

大英帝国の力がシーパワーに支えられていたとするならば、アメリカの覇権はそれに加えてエアパワーに支えられている。このエアパワーを支える存在のひとつが米空軍特殊部隊CCT(戦闘管制員)である。米軍の特殊部隊といえば陸軍のデルタフォースと海軍のネイビーシールズが特に有名であろう。これらの組織はハリウッド映画などを始め様々な娯楽作品にも登場している。しかし、本書の著

『硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ』今も1万人の遺骨が見つからない。日本政府に遺骨収集への考え方を問う 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ』今も1万人の遺骨が見つからない。日本政府に遺骨収集への考え方を問う

太平洋戦争末期、小笠原諸島の硫黄島でアメリカ軍と栗林忠道陸軍中将率いる日本軍の激戦があったことは、クリント・イーストウッド監督の映画『硫黄島からの手紙』で若い人にまで広く知られている。 日本軍兵士約2万3000人のうち戦死者は約2万2000人。だが1万人分の遺骨がいまもなお見つかっていないということを知っているだろうか。 著者の祖父は小笠原諸島父島の防衛に携

『首都直下 南海トラフ地震に備えよ』東日本大震災は「まだ終わっていない!」 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

『首都直下 南海トラフ地震に備えよ』東日本大震災は「まだ終わっていない!」

2024年の元日に能登半島地震が発生し、多くの犠牲者が出た。現在も復興作業が続けられている最中だが、その後も千葉県・房総半島沖で地震が頻発するなど、日本列島周辺の地盤変動が止まらない。 巨大地震と津波が東北・関東地方を襲った東日本大震災から13年が経ち、多くの人が「日本は地震国」であることに改めて気づかされた。それ以後も熊本地震や北海道胆振(いぶり)東部地震

ボクシングから駅伝までスポーツ三昧だ!(本の雑誌3月 春宵かくれんぼ号) 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

ボクシングから駅伝までスポーツ三昧だ!(本の雑誌3月 春宵かくれんぼ号)

ボクシング、駅伝、サッカー、ラグビー...。年末年始はスポーツ観戦三昧という人は多かっただろう。 森合正範『怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ』(講談社)はスポーツノンフィクションとはこうでなくちゃという熱い作品だ。 言わずもがなだが、井上尚弥は日本が誇る天才プロボクサーで、2023年12月26日、主要四団体(WBA、WBC、IBF、WBO)のバンタ

味の素営業マンの密着ルポ『地球行商人』がすごい!(本の雑誌2024年2月 綿入れ雪おろし号) 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

味の素営業マンの密着ルポ『地球行商人』がすごい!(本の雑誌2024年2月 綿入れ雪おろし号)

外国人が日本を観光したいという大きな目的のひとつが「食」だという。一昔前のようにスシ、テンプラの時代は過ぎ去り、ラーメンや牛丼など、ネットで紹介されたファーストフードにも人気が集まっている。確かに日本は何を食べても美味しい。 ならば世界に日本の食を紹介しようという大規模な試みをしているのが味の素食品である。 『地球行商人 味の素グリーンベレー』(中央公論新社

マレーシア出身医師の一代記『逆転力、激らせろ』が面白い!(本の雑誌2024年1月 鏡餅てんてこ舞い号) 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

マレーシア出身医師の一代記『逆転力、激らせろ』が面白い!(本の雑誌2024年1月 鏡餅てんてこ舞い号)

なんと16年ぶりにこのコーナーを担当させてもらうことになった。北上さんのいない本の雑誌にまだ違和感があるけれど、全力で面白いノンフィクションを紹介していくつもりだ。よろしくお願いします。 現在、巷のノンフィクション本で流行っているのは、 ウォルター・アイザックソン『イーロン・マスク』 (井口耕二訳/文藝春秋)と 黒柳徹子『続 窓ぎわのトットちゃん』 (講談社

『もしも世界からカラスが消えたら』『カワセミ都市トーキョー』”鳥ノンフィクションに外れなし!” 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

『もしも世界からカラスが消えたら』『カワセミ都市トーキョー』”鳥ノンフィクションに外れなし!”

鳥ノンフィクションに外れなし 長くノンフィクションを読んでいるからこそ、確信をもっていえる。私は鳥好きではないが、「鳥」が魅力的な生き物なのは認める。だがそれよりも鳥の研究者が熱意に満ちた変人、いや硬骨漢なのだと思う。 カラスの研究者である 松原始 もその一人。『もしも世界からカラスが消えたら』(エクスナレッジ)では、生物の進化史に、カラスという種がいなかっ

そうだ、インド・ネパール料理店へ行こう!『カレー難民の謎 日本を制覇するインネパ』 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

そうだ、インド・ネパール料理店へ行こう!『カレー難民の謎 日本を制覇するインネパ』

不思議だと思っていた。にぎやかな下町に住んでいるとはいえ、徒歩圏内に「インド料理店」が五軒もある。うち一軒はビリヤニなどもメニューにあるホンモノのインド料理店だけれど、他の四軒は「インド・ネパール料理店」で、メニューも値段もえらく似通っている。 さらに不思議に思ったこともある。ちょうど5年前、トレッキングでネパールへ行った時にわかったのだが、カレーがほとんど

『津波―暴威の歴史と防災の科学』国際語「Tunami」の歴史と減災を知る好著! 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

『津波―暴威の歴史と防災の科学』国際語「Tunami」の歴史と減災を知る好著!

「Tunami」は英語の辞書にも載っている数少ない日本語起源の国際語である。本書は津波に関する歴史的な逸話を、最先端の研究成果をもとに紹介した自然災害の啓発書である。 オックスフォード大学が一般市民向けに科学をわかりやすく説くシリーズの1冊で、津波はどのように起きるか、人間はどう対処してきたかについて分かりやすい図版を加えて丁寧に解説する。 著者はオーストラ

『評伝クリスチャン・ラッセン』なぜ日本で人気なのか 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『評伝クリスチャン・ラッセン』なぜ日本で人気なのか

まだ学生だった頃の話である。その日、山手線のある駅で待ちぼうけを食っていた。ふと周りをみるとギャラリーがある。ガラス張りで見通しがきくし、これなら待ち人と行き違うこともなさそうだ。それに暇つぶしに絵画鑑賞なんてしゃれてるじゃないか。そう考えて足を踏み入れたのが間違いだった。 入ると、若い女性が満面の笑みで寄ってきて絵の説明をはじめた。熱心だなと好印象を抱いた

『異常殺人 科学捜査官が追い詰めたシリアルきらーたち』「黄金州の殺人鬼」を追い詰めたCSI捜査官の捜査記録 書影

社会 / 事件・事故

『異常殺人 科学捜査官が追い詰めたシリアルきらーたち』「黄金州の殺人鬼」を追い詰めたCSI捜査官の捜査記録

本書に記載されている調査によると、現在アメリカ国内で活動中の連続殺人犯の数は2000人ほどだという。その多くは孤立者でもなければ社会ののけ者でもない。彼らはごく普通の社会生活を営み、友好的な隣人として振る舞うすべを知っている。一方で自分の行動が倒錯したものであることは理解しており、しばらくの間は犯行を止めることができるのだが、やがて殺しの衝動が逮捕へ恐怖を凌

『Mine! 私たちを支配する「所有」のルール』現代社会の所有概念とは? 書影

社会 / ビジネス

『Mine! 私たちを支配する「所有」のルール』現代社会の所有概念とは?

「私のもの!」という感情が私たちの生活にどのような影響を及ぼすのか。本書を読むと、何気なく過ごしていた日常が全く異なって見える。「座席のリクライニングはどこまで自由に倒せるのか?」「ディズニーランドでお金を支払って最前列でショーを観れるのは、平等なのか?」意識せずにはいられなくなる。 「所有を設計する」とは耳慣れない言葉であるが、社会には「所有」を生かした工

『私がしたことは殺人ですか?』25年の時を超え、もう一度「尊厳死」を問う 書影

医学・心理学 / 社会

『私がしたことは殺人ですか?』25年の時を超え、もう一度「尊厳死」を問う

2024年3月5日、京都地裁はALS(筋萎縮性側索硬化症)の女性患者に関する嘱託殺人及び別の殺人罪に問われた医師、大久保愉一被告に懲役18年(求刑懲役23年)を言い渡した。「生命軽視の姿勢は顕著であり、強い非難に値する」としながらも、現代の医学では治療不可能で身体的自由がきかない患者に対する嘱託による死の定義を示した。 それは、治療や検査を尽くし、他の医師の

『本屋のない人生なんて』本屋だからできることがある 書影

教養・雑学 / 社会

『本屋のない人生なんて』本屋だからできることがある

近所に夜中まで開いている小さな本屋がある。開いているといっても、頑張って遅くまで営業しているという感じではない。店先に並べられた雑誌はかろうじて最新号だが、棚にある書籍は、すべて背表紙が日に焼けて色褪せている。そして店の奥では、本の山に寄りかかるように、おじいさんがひとり眠っているのである。 終電近い時間に前を通ることが多いが、老店主はいつも眠っている。客の

先月出た本 2024年3月 書影

おすすめ本レビュー

先月出た本 2024年3月

新学期が始まりました。考えてみたら昨年の4月はまだまだコロナ禍の中。4月特有の電車や会社の混み方を見て、コロナ前が戻ってきたことを感じています。この時期は対人関係やコミュニケーション、人の心の動きに関する本が手に取られる時期でもあります。そんな季節にぴったりな1冊が登場しています。 それが『夢を叶えるために脳はある』 『進化しすぎた脳』などで話題になった池谷

あれから10年。『「笑っていいとも!」とその時代』が示す未来。 書影

教養・雑学 / TV・動画

あれから10年。『「笑っていいとも!」とその時代』が示す未来。

あれから10年です。 国民的人気番組だった『笑っていいとも!』が約32年間の歴史に幕を閉じた日から、きょう(2024年3月31日)で、ちょうど10年です。 社会学者として、これまでに多くのテレビ論、アイドル論をものしてきた太田省一さんの最新刊は、あの番組を、ただ懐かしむだけではありません。 タモリとはどんな存在なのか。新宿とはどんな街なのか。そして、テレビの

「イノベーションは加速化する」なんてウソや! 『Invention and Innovation : 歴史に学ぶ「未来」のつくり方』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

「イノベーションは加速化する」なんてウソや! 『Invention and Innovation : 歴史に学ぶ「未来」のつくり方』

「やっぱり自分の考えが正しかったんや!」 思わずそう叫びたくなった。 多くはないが、大勢の意見と自分の考えが違っていることがある。気にしなければいいのだが、どうにもモヤモヤする。そのひとつが「イノベーションは加速化する」というやつだ。ウソとちゃうんか。どの程度のことからをイノベーションというのかは難しいけれど、そもそもイノベーションというものはそうそう出てく

『[完訳版]第二次世界大戦 1』英国式「カントリー・ジェントルマン」人生! 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『[完訳版]第二次世界大戦 1』英国式「カントリー・ジェントルマン」人生!

国家がひとりの勇敢な人間によって救われることがある。ウィンストン・チャーチル(1874-1965)は第二次世界大戦中に英国首相となり、連合国側を勝利に導いた。後に彼は長大な大戦回顧録を執筆しノーベル文学賞を受賞した。 チャーチルが戦時内閣の首相になってから、英国内はドイツ空軍の猛烈な爆撃にさらされた。ロンドン市内は連日のように空爆を受けたが、彼はラジオを通じ

『トヨタ 中国の怪物』トヨタの中国進出と創業家世襲に秘められた歴史 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『トヨタ 中国の怪物』トヨタの中国進出と創業家世襲に秘められた歴史

一見関係のないものを掛け合わせると、思いもよらない新しいものが生まれることがある。本書は「中国現代史」と「トヨタ創業家の歴史」を組み合わせることで、これまでにない角度からトヨタの核心部分を描くことに成功している。 異質なものを掛け合わせるには触媒が必要だが、本書では、ひとりの男性がその役割を務める。男の名は、服部悦雄。”低迷していたトヨタの中国市場を大転換さ

逆境を生き抜いた開拓者、かく語りき 『女性が科学の扉を開くとき』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

逆境を生き抜いた開拓者、かく語りき 『女性が科学の扉を開くとき』

かつての米国科学界における女性に対する偏見と差別がここまですごかったのか。いまさら驚くとはお前の認識不足だろうと言われるかもしれないが、にわかに信じられないような内容が次々と語られる。世代が少し違うからかもしれないし、米国と日本の違いもあるかもしれない。ともあれ、そのような状況からジェンダー公正を勝ち取るべく闘った女性研究者、リタ・コルウェルの記録である。

『涙にも国籍はあるのでしょうか 津波で亡くなった外国人をたどって』東日本大震災13年目にあの人を思い出す 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『涙にも国籍はあるのでしょうか 津波で亡くなった外国人をたどって』東日本大震災13年目にあの人を思い出す

新聞や放送局といった組織に属する記者と、フリーランスのジャーナリストの立場は全く違っている。大手メディアを背中に負う取材陣は恵まれた立場にいることをもっと自覚すべきだろう。 思いもかけない不幸に見舞われた人たちが、取材に来たと言われてはじめて会う人を信用する担保は、出された名刺の○〇新聞、××テレビという肩書しかない。どんなに著名で優秀な書き手でも、どこの誰

『世界から青空がなくなる日』 自然のコントロールをコントロールする 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

『世界から青空がなくなる日』 自然のコントロールをコントロールする

アメリカのミシガン湖とデス・プレインズ川をつなぐシカゴ・サリタニー・シップ運河。およそ45kmにわたるその川の一画に、不穏な看板が掲げられている。「危険」、「この先、魚用の電気バリアあり。感電の危険大」。しかし、それほど危険な電気バリアがなぜ川に仕掛けられているのだろうか。 その理由は、わたしたちと自然の複雑な関係を象徴している。サリタニー・シップ運河がまだ

『モサド・ファイル2』イスラエルを影で守る「モサド・アマゾン」たち 書影

社会 / 事件・事故

『モサド・ファイル2』イスラエルを影で守る「モサド・アマゾン」たち

前作『モサド・ファイル』でイスラエル建国以来、同国の「諜報機関モサド」が行ってきた秘密作戦の全貌を明らかにしたマイケル・バー=ゾウハーとニシム・ミシャルのコンビの新刊だ。今回はモサドの諜報員として活躍した女性工作員に焦点を当ててモサドの歴史を浮き彫りにしている。女性工作員というと色仕掛けによる「ハニートラップ」をすぐにイメージされる方も多いと思うが、モサドで

先月出た本 2024年2月 書影

おすすめ本レビュー

先月出た本 2024年2月

冬はどこに行っちゃったの!と言いたくなるような暖かい日が続く2月でした。新学期に向けて、いろいろなジャンルで動きが激しくなってきています。特に投資をめぐる動きは非常に大きく、バブル超えの日経平均や新NISAへの流入などが連日ニュースとして報じられています。とすると気になってくるのが株式市場を支える側の人たちの姿。ということで、今回最初に注目したのが金融ノンフ

『劇的再建』新しい「希望の物語」を提示する一冊 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『劇的再建』新しい「希望の物語」を提示する一冊

熱量の高い一冊だ。読みながらなんども胸が熱くなった。だがこの熱は、著者が抱く強い危機感から発せられたものでもある。 著者は大阪市の中小企業支援拠点「大阪産業創造館」に創業メンバーとして参画しつつ、ビジネス情報誌「Bplatz」初代編集長として多くの経営者を取材してきた経歴を持つ。なぜ、資源もない島国の日本が経済大国になれたのか。この事実がかねてより著者には謎