
『あなたがあの曲を好きなわけ 「音楽の好み」がわかる七つの要素』「好みの違い」はこわくない
音楽は好きでも、音楽の話をするのはわりと苦手だったりする。 自分が微妙だと思うアーティストを好きと言われたら返答に困るし、一見好みが近いように見えても実は「良い」と感じているポイントが全然違って噛み合わないこともある。 同じ曲を聴いても、人によってなぜこれほど感じ方が異なるのか。自分が大好きな曲があの人の琴線には触れず、あの人が最高だと言う曲はなんだかピンと
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音楽は好きでも、音楽の話をするのはわりと苦手だったりする。 自分が微妙だと思うアーティストを好きと言われたら返答に困るし、一見好みが近いように見えても実は「良い」と感じているポイントが全然違って噛み合わないこともある。 同じ曲を聴いても、人によってなぜこれほど感じ方が異なるのか。自分が大好きな曲があの人の琴線には触れず、あの人が最高だと言う曲はなんだかピンと

「明鏡止水 武のKAMIWAZA」というNHKの番組をご存知だろうか。格闘家でもある俳優の岡田准一が司会を務め、武道各流派を率いる一流の武術家たちが集結し、真髄を語り秘儀を披露していく。録画をして繰り返し観るほど私の好きな番組だ。 『シャーロック・ホームズの護身術バリツ:英国紳士がたしなむ幻の武術』には技の説明のため120点を超える写真が掲載され、中には袴を

ボクシング、駅伝、サッカー、ラグビー...。年末年始はスポーツ観戦三昧という人は多かっただろう。 森合正範『怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ』(講談社)はスポーツノンフィクションとはこうでなくちゃという熱い作品だ。 言わずもがなだが、井上尚弥は日本が誇る天才プロボクサーで、2023年12月26日、主要四団体(WBA、WBC、IBF、WBO)のバンタ

まだ学生だった頃の話である。その日、山手線のある駅で待ちぼうけを食っていた。ふと周りをみるとギャラリーがある。ガラス張りで見通しがきくし、これなら待ち人と行き違うこともなさそうだ。それに暇つぶしに絵画鑑賞なんてしゃれてるじゃないか。そう考えて足を踏み入れたのが間違いだった。 入ると、若い女性が満面の笑みで寄ってきて絵の説明をはじめた。熱心だなと好印象を抱いた

プロ野球がキャンプインし、いよいよ開幕がみえてきた。そんな心躍るタイミングで、抜群に面白いスポーツノンフィクションが出版された。 昨年のプロ野球は、阪神タイガースの38年ぶりの日本一で盛り上がった。優勝を意味する隠語である岡田彰布監督の「アレ」は、「A.R.E.」というチームスローガンになり、年末の新語・流行語大賞にも選ばれた。大阪の街は虎一色に染まり、優勝

2023年も押し詰まった、ある日のあさイチの映画館。シネコンで一番広いスクリーンなのにほぼ満席だ。「PERFECT DAYS」が公開されて1週間で評判はうなぎのぼりである。年末の仕事を終えて私が3日前に予約したときは1/3ほどの埋まり方だった。 中高年のカップルが多い。ポップコーンと飲み物はだいたい女性が持っている。男性は座席の場所を探し奥に入ろうとして「こ

2021年3月初旬「美術家」の篠田桃紅さんが亡くなったというニュースが流れた。享年107。一世紀以上、日本の美術界で独特の光を放ちつづけた存在である。5歳のときに父親から書の手ほどきをうけ、戦後まもなく墨を用いた抽象表現という新たな地平を切り開き、1956年に渡米。ニューヨークで評価され日本に帰国後は、膨大な作品を制作した。 言わずもがな、だが、このプロフィ

「東京五輪の招致は、僕でなければできなかった」 東京五輪・パラリンピックが閉幕して1年後の2022年7月、男は若い記者にそう胸を張った。男の名は高橋治之。世界的な広告会社「電通」で専務まで務めた後、コンサルタント会社代表に転じ、東京招致委員会では「スペシャルアドバイザー」の肩書を持っていた。「スポーツビジネスの第一人者」との呼び声も高い人物だ。 「まず僕が数

2022年8月10日、北九州市小倉駅近くの旦過市場に隣接する「昭和館」という映画館が焼失した。もらい火ではあったが、創業83年の歴史を見てきた映写機もフィルムもスクリーンも、たくさんの映画スターのサインや小説家の手紙も何もかもが燃えて無くなってしまったのだ。 残ったのは「昭和館①②」というネオンサインとチケット売り場の表札だけ。 祖父が創業し、父から後を継い

彼の強さを確認するのは容易い。たとえば「井上尚弥 パヤノ」で検索してみよう。それだけで何本もの動画を見つけることができる。 2018年10月7日、横浜アリーナで行われたこの試合は、バンタム級最強を決めるトーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ」の一回戦であるとともに、WBA世界バンタム級タイトルマッチでもあった。 勝負は一瞬でついた。王者の井上

ワクチンを開発した科学者パスツールは「Chance favors the prepared mind.(幸運は用意された心のみに宿る)」という言葉を残している。準備する心によって偶然に気づくことができるのだということだろう。心構えはとしては納得できる、と同時に疑問が湧いてくる。チャンスそのものを増やしたり、再現性を高めることはは可能なのだろうか。 本書の射程

「走る哲学者」為末大氏自身の手による初の書き下ろし、しかも編集担当が元DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集長の岩佐文夫氏ということで、期待値は出版前から否応なしに高まっていたが、実際に本書を読んでみると、それを遥かに上回る内容だった。 私のような昭和生まれ昭和育ちにとってのスポーツは、『巨人の星』や『あしたのジョー』に代表されるような、ただひたす

大切なことはいつも“向こう側”からやってくる。不意に、思いもよらないタイミングで。 今年の夏はひさしぶりに一家で旅をした。行き先は香川。家族旅行はコロナ以降ご無沙汰だったので、てっきり海外にでも行きたいと言い出すものとばかり思っていたが、妻と子どもたちで話し合ううちに、どういう流れか「本場の讃岐うどんの食べ歩きがしたい」と盛り上がったらしい。 そうと決まれば

この『KEIRIN: 車輪の上のサムライ・ワールド』は、英国人記者が語る日本の競輪論である。日本でどのように競輪が生まれ、育ち、危機を乗り越え、そして日本ならではの独特な魅力はどこにあるのか、それを一冊を通して語り尽くしていく。 それにしても、なぜ英国人記者が日本の競輪を語っているんだと疑問に思うかもしれない。その理由は簡単で、著者のジャスティン・マッカリー

「義理の父」というのはなんとも不思議な存在である。妻と出会わなければ知り合うこともなかった男性が、結婚した途端、父親になるのだ。世間の約束事といえばそれまでだけど、だからといって、いきなり仲良くできるとは限らない。どう接していいかわからず、ぎくしゃくしてしまう人も多いのではないだろうか。 本書を読んで、そんな範疇にはおさまらない親子関係もあるのだと知った。著

小川洋子さんが綴る物語は美しい。小説も随筆も、ざわついた心を落ち着かせてくれる。一言一言考え抜かれたであろう言葉に、忘れていた思い出が呼び覚まされる。 16篇の随筆で作られた本書は、身体の一部分や切り取られた一瞬の動きを描く。それぞれに添えられた一枚の写真が、その物語が本当にあったことを裏付けてくれる。 私は60代の小川さんと同年代なので、本書に書かれている

艾未未(アイ・ウェイウェイ)は、中国の現代美術家、活動家、建築家である。彼の作品は、社会的・政治的批判、人権、文化的アイデンティティをテーマとすることが多く、作品はインスタレーション "Remembering" など、2008年の四川大地震に関連した一連の作品で国際的に有名になった。 "Remembering"は四川大地震で娘を亡くした両親の文章を、通学カバ

すべてはつながっている ミクロからマクロ 闇から光 いつの日か銀河の理を 知ることができるだろう 現代アーティスト新井文月。新井は幼少より足の病気で非常に内向的な性格であった。生まれ育った群馬では、友人達が大自然の中で走り回る一方、ひとり黙々と広告のチラシ裏に鉛筆で絵を描いていた。不思議なことに原因不明の足の病は絵を描くことで治癒され、大人になるにつれ見えな

ショパンコンクールとはショパンの故郷のポーランドで5年に1度開催される、世界三大ピアノコンクールのうちの1つだ。16歳以上30歳以下のピアニスト達が世界中から集まり、予備選を含めファイナルまで計5回のステージで審査される。 1次予選からファイナルラウンドまでの日程は3週間弱。演奏はYouTubeにて配信されるため、世界中の観客が生の感動をチャットで綴る。粛々

世の中を動かした調査報道は、社員寮での会話から始まった。 東京・港区三田に、共同通信東京本社勤務の若手らが住む「伊皿子寮」がある。 「私たち、東京に来てから何もしてないよ。このままだとやばいよね」 2020年8月のある日、寮のロビーでデリバリーの夕食をつまみながら、ふたりの女性記者が話し合っていた。鎌田理沙記者は19年春に入社し、一年間松江支局で勤務した後、

著者は現代美術作家の杉本博司。ロサンゼルスのアート・センター・カレッジ・オブ・デザインで写真を学び、その後ニューヨークに移住し今も第一線で制作を続ける。代名詞である「海景」「劇場」「建築」シリーズは、メトロポリタン美術館をはじめ世界有数の美術館に収蔵されている。 経済学科出身ということもあり、エッセイの中には資本と欲望についての考察がある。マルクスの『資本論

競技場に、細長い布の両端を持った男女のペアが十数組立っている。合図とともに、会場にキツネが放たれる。怯えたキツネは競技場を走り回り、やがて布を踏む。その瞬間、男女は力を合わせて布を引っ張り、キツネを宙に飛ばす。繰り返し空に投げられるキツネたちは当然のごとく怪我をしていくが、誰も手当などしない。そして競技が終了に近づくと、参加者は弱ったキツネを憐れみながら撲殺

「ねえねえ、ちょっと聞いて。おもろい話が、あんねんけど」。そう話しかけられたような、「京都の下町」での上質な、極上の、世間話を聞いているような、そんな親しみの湧く本です。 著者の通崎睦美さんは、1967年京都市生まれの「クラシック音楽の分野で世界唯一の木琴奏者」であるだけではありません。 木琴の巨匠・平岡養一さん(1907~1981)の評伝『 木琴デイズ 平

本書はNFT(Non-Fungible Token)の特性についてアート・法律・会計・税務など各ジャンルのスペシャリストが解説し、これから拡大するビジネスと社会を提示した一冊だ。 NFTアート購入のニュースが相次いで報道されている。2021年3月、Twitter創業者ジャック・ドーシーの初ツイート画像が291万ドル(約3億円)で落札。2022年1月にはジャス

書名をみて「ん?」と思った。 「切り札?変革できるか?答えはもう出ているのでは……」 首をひねりながら手に取ったのだが、はたせるかなこのタイトルは反語だった。 書名の脇に添えられた、しかめ面のイラストがそのことを物語っている。 著者は月刊誌『近代柔道』を主な舞台に、30年以上にわたり柔道界を見続けてきたジャーナリスト。本書は日本柔道界への渾身の提言である。

雪の上を遊ぶおもちゃの板を、一つのスポーツ、一つのビジネス、一つのカルチャーに育てあげたアメリカ人の自伝である。泥臭く地べたを這いつくばりながら0から1を作り上げたThis is Americaとも言えるストーリーである。その男の名は、ジェイク・バートン、スノーボードのメーカーとしてもっとも有名で巨大なブランドを立ち上げた男である。 はじめに断っておくが、評

野球ファンであれば知らない人はいない「孤高の天才」、落合博満。選手としては、日本プロ野球史上で唯一、三冠王を3度達成した。監督としては、中日ドラゴンズを率いた8年の間に、球団は毎年ペナントレースでAクラス入りし、日本シリーズに5度進出、2007年には日本一に輝いた。 本書は監督時代の落合に中日の番記者として密着した著者によるスポーツドキュメンタリーである。だ

週刊誌の発売日を指折り数えて待つことなんて久しくなかった。 発売日には文書砲そっちのけで、まずこの連載のページを開き貪り読んだ。 スポーツノンフィクションの傑作といえば、誰もが山際淳司の『江夏の21球』をあげるだろう。もちろん異論はない。ただあの作品は「永遠のマスターピース」というべき傑作だし、ぼちぼち新しく語り継がれる作品が現れてもいいのではと思っていた。

2021年9月5日、新型コロナウイルスの影響により1年の延期を経て開催された東京パラリンピックの閉会式が行われ、13日間にわたる大会が幕を下ろした。 テレビ観戦で感じたことは、あたりまえかもしれないが、車いすバスケでも、ゴールボールも、車いすテニスも、障害ある選手達がプレーとして成り立っていたことだ。見る前は概念として理解していたのだが、実感がなかった。それ

チャールズ・ラング・フリーア。知る人ぞ知る世界有数の日本美術コレクターだ。大富豪ロックフェラーとならぶ美術蒐集家で、世界有数の東アジア美術を収蔵する美術館が彼の名を冠して建てられている。 なかでも日本美術への思い入れが強く、数多くの日本美術をあつめている。コレクションは遺言にもとづき米国連邦政府に寄贈され、今ではワシントンDCのフリーア美術館としてアジア文化

芸術家として国際的に活動する李禹煥(リ・ウファン)によるエッセイだ。 著者は1936年に韓国で生まれ、活動拠点を日本へ移し、1970年代からは「もの派」運動の支柱として芸術を解体構築してきた。世界中のビエンナーレに出展し、アンディ・ウォーホルやヨーゼフ・ボイスなどアート史に痕跡を残す作家達との交流を経て、ヴェルサイユ宮殿の彫刻プロジェクトも手がける現役のアー

今では中国ものの歴史小説家というイメージが強い北方謙三。だがデビューは大学時代に書いた純文学で、その後鳴かず飛ばず。十年余りボツ原稿を積み上げ腕を磨いた結果、エンターテインメントに転向、ハードボイルド作家として再デビューした。折からの冒険小説ブームにも助けられ次々と新刊を上梓。一時は年間に12冊の単行本を出し「月刊キタカタ」と呼ばれた時もあった。 それから4

2021年の大相撲三月場所は関脇・照ノ富士の優勝で幕を閉じた。この一年、無観客開催や感染力士の休場など、新型コロナ禍で大相撲は大きな試練にさらされてきた。 だがファンは健在だ。おすもうさんへの愛と行動力は半端ない。「スー女」(相撲好き女子をこう呼ぶ)で名高いライター和田靜香さんとイラストレーター&文筆家の金井真紀さんが意気投合し、多種多様の相撲を国内ばかりか

ファッションが突然、僕を襲った。それまでにない感覚だった。 「ファッションには伝える力がある。そして伝わる力がある。 服は言葉を持つ」。そんなことを考えたことはかつて一度も なかった。 アンリアレイジのデザイナーである森永邦彦が、ファッションの原点だと語るのは、予備校で絶大な人気を誇ったカリスマの西谷昇二先生に見せられた一着の服だという。『アバウト・ア・ガー

アートの価値は誰がどのようにして決めるのだろうか。そして価値と値段は比例するのか。 限りなく正解に近い答えが本書にある。まず作品の価値は、コレクターが貴族など高い地位である場合や、高名な作家がどの経緯で描いたものかなど複雑な要因が絡まり決定する。もちろん偽物については論外だが、ビル・ゲイツが所持するレオナルド・ダ・ヴィンチのレスター手稿などは、英貴族レスター

レーニン、トロツキー、ピカソ、マネ、ヘミングウェイ、サルトル、藤田嗣治、ボーヴォワール、後に天才と呼ばれる彼らが、まだ何者でもないころ、通いつめ議論した場所がある。パリのカフェ、モンパルナス界隈のドゥ・マゴやロトンド、モンマルトル界隈のラパン・アジルやラ・ヌーベル・アテヌなどである。 常連となった天才以前の彼らは、自分の仕事スペースを確保するために朝一番でカ

激アツな一冊だった。我を忘れてシャドーボクシングをはじめるくらいに。本書は、36歳のB級ボクサー米澤重隆が日本チャンピオンに挑む日々を、同世代の映像作家がまとめた本だ。私の熱き血潮はどこから湧き上がったのか。冒頭シーンの紹介から始めたい。ドキュメンタリー番組をつくるため、著者は米澤のいるジムに乗り込んだ。 「僕なんかでいいんですかね?」 思わず返答に詰まる。

フェルメールを歩きながら観るような企画展がまかり通っている。 正確にいうと新型コロナウイルス以前は、話題の企画展が開催されれば連日混雑していた。2018年に開催されたフェルメール展は産経新聞の一面に《牛乳を注ぐ女》の絵とその会期が掲載された。日本の企画展は新聞により大々的に宣伝され、1日平均6千人もの入場者を動員する。実際に足を運んでみると1日3千人という数

1940年、皇紀2600年を記念して東京でオリンピックが開催されるはずだった。しかし、日本政府が開催を断念、中止された。それを巡って作成されたNHKスペシャル『戦争と“幻のオリンピック” アスリート 知られざる闘い』を元にした五章の物語がこの本である。 その内容は大きく三つ、戦没オリンピアン、幻の東京オリンピック、そして、1964年東京オリンピックの閉会式だ

著者は編集者、ノンフィクション作家として多くの有名人を取材する中で、一つの仮説を立てるようになる。人の性格はスポーツ歴に影響を受けているのではないか。個人スポーツか集団スポーツか、そして、集団スポーツならばどのポジションを担ったか。本書では、多くの取材をもとに、マラソンに野球、サッカー、格闘技にラグビー、ゴルフ、水泳など、各競技の選手や経験者に共通する性格を