
『定年後に読む不滅の名著200選』読書三昧の定年後はステキだぞ!
本読みは人がどんな本を読んでいるかを気にする。同様に本好きは、自分が読んでいない名著が気になって仕方がない。おそらくHONZの読者もそうだろうが、私はブックガイドと見れば直ちに購入してしまう。そして本書は「定年後に読む」と名打っているのだ。 「人生100年時代」と言われ始めて、寿命が100歳前後まで伸びる話が現実味を帯びてきた。人生を教育・仕事・老後の3ステ
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本読みは人がどんな本を読んでいるかを気にする。同様に本好きは、自分が読んでいない名著が気になって仕方がない。おそらくHONZの読者もそうだろうが、私はブックガイドと見れば直ちに購入してしまう。そして本書は「定年後に読む」と名打っているのだ。 「人生100年時代」と言われ始めて、寿命が100歳前後まで伸びる話が現実味を帯びてきた。人生を教育・仕事・老後の3ステ

「宿帳」である。旅館やホテルでの宿泊では記入が義務づけられているとはいえ、最近はネットで予約しがちなので、印刷されたものにサインするだけのことが多い。昭和とはいえ、はて宿帳なんかが本になるのかと思って読み始めたが、宿帳そのものの本ではなかった。 全24話、そのほとんどが昭和の大スターと馴染みの旅館の関係についてのお話だ。当然のことながら、ああええなぁと思える

「明鏡止水 武のKAMIWAZA」というNHKの番組をご存知だろうか。格闘家でもある俳優の岡田准一が司会を務め、武道各流派を率いる一流の武術家たちが集結し、真髄を語り秘儀を披露していく。録画をして繰り返し観るほど私の好きな番組だ。 『シャーロック・ホームズの護身術バリツ:英国紳士がたしなむ幻の武術』には技の説明のため120点を超える写真が掲載され、中には袴を

皆さんはコミュ力に自信がおありだろうか?もしそれほど自信がないのであれば、本書の冒頭に記されている言葉はかなり衝撃的なはずだ。本書はこのような書き出しから始まる。 あなたの言葉が伝わらないのは、あなたに人としての“魅力”が欠けているからである。 どうであろうか。バットか何かでぶん殴られたような衝撃を受けないだろうか?かく言う私もコミュ力が低いことを自認してい

大英帝国の力がシーパワーに支えられていたとするならば、アメリカの覇権はそれに加えてエアパワーに支えられている。このエアパワーを支える存在のひとつが米空軍特殊部隊CCT(戦闘管制員)である。米軍の特殊部隊といえば陸軍のデルタフォースと海軍のネイビーシールズが特に有名であろう。これらの組織はハリウッド映画などを始め様々な娯楽作品にも登場している。しかし、本書の著

外国人が日本を観光したいという大きな目的のひとつが「食」だという。一昔前のようにスシ、テンプラの時代は過ぎ去り、ラーメンや牛丼など、ネットで紹介されたファーストフードにも人気が集まっている。確かに日本は何を食べても美味しい。 ならば世界に日本の食を紹介しようという大規模な試みをしているのが味の素食品である。 『地球行商人 味の素グリーンベレー』(中央公論新社

近所に夜中まで開いている小さな本屋がある。開いているといっても、頑張って遅くまで営業しているという感じではない。店先に並べられた雑誌はかろうじて最新号だが、棚にある書籍は、すべて背表紙が日に焼けて色褪せている。そして店の奥では、本の山に寄りかかるように、おじいさんがひとり眠っているのである。 終電近い時間に前を通ることが多いが、老店主はいつも眠っている。客の

あれから10年です。 国民的人気番組だった『笑っていいとも!』が約32年間の歴史に幕を閉じた日から、きょう(2024年3月31日)で、ちょうど10年です。 社会学者として、これまでに多くのテレビ論、アイドル論をものしてきた太田省一さんの最新刊は、あの番組を、ただ懐かしむだけではありません。 タモリとはどんな存在なのか。新宿とはどんな街なのか。そして、テレビの

まいどお世話になっております、HONZレビュアーの仲野でございます。このたび、『仲野教授の この座右の銘が効く』という本を上梓いたしました。その経緯を、本の中ほどにコラム「この本ができるまで」として書きました。発刊プロモーションとして、ここに掲載いたしまする。いや、ホンマにおもろうて役に立つ本ですから、みなさんよろしく! ******************

社会学者、と聞いて、誰をイメージするでしょうか? 古市憲寿さん、岸政彦さん、宮台真司さん・・・。 世代などによって、かなり異なるかもしれません。 今回、わたしが書いた加藤秀俊先生は、どうでしょう(個人的に教えを受けたので「先生」と呼びます)。 この本を校正していた昨年9月に93歳で亡くなりました。最晩年には『九十歳のラブレター』が広く読まれていたので、そのお

う~ん、あかんがな。読み始めてすぐにそう思った。エッセイとは本来こういうものを言うのだろう。う~ん。なにがあかんか、まずはその話から。 最相葉月さんといえば、押しも押されもせぬノンフィクションライターだ。『絶対音感』を読んだ時の衝撃-テーマへの迫り方の凄さ-は今でもよく覚えている。それだけではなく、エッセイの名手でもある。 ずいぶんと前になるが、「我が心の町

2023年も押し詰まった、ある日のあさイチの映画館。シネコンで一番広いスクリーンなのにほぼ満席だ。「PERFECT DAYS」が公開されて1週間で評判はうなぎのぼりである。年末の仕事を終えて私が3日前に予約したときは1/3ほどの埋まり方だった。 中高年のカップルが多い。ポップコーンと飲み物はだいたい女性が持っている。男性は座席の場所を探し奥に入ろうとして「こ

角幡唯介の名を初めて知ったのは二〇一〇年、『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』を読んだ時だった。心底驚いた。探検――子どもの頃から思い描いていたイメージの探検――などというものは、すでに世の中からなくなってしまったと思い込んでいたからだ。しかし、その本には、真の探検があった。誰も踏査したことがないからというだけの理由で、命を懸けた冒険

「どんな本を読めばよいですか?」 講演会やセミナーなどで、ビジネスパーソンや学生など、さまざまな方とお会いするたびに、必ずこのような質問をいただきます。 そのように聞かれる私はじつはかなり当惑している、というのが正直なところです。もちろん、お尋ねの意図が明確な場合には、できるだけその質問の意図に沿った形でお答えするようにしてはいますが……。 たとえば「ファイ

人生でもっとも長いおつきあいの書店は、紀伊國屋書店新宿本店である。かれこれ35年。つきあいが長くなれば倦怠期だってありそうなものだが、半日滞在しようが、週に何度も通おうが、いまだに飽きることがない。行くたびに発見や刺激があるのだ。こんな素晴らしい場所、他にあるだろうか。 本書は新宿本店で25年間にわたり文学書売り場に立ち続けた名物書店員の回想録である。とにか

ご依頼をうけて、キャリアパスとか、人生いかに楽しく生きるべきかとかいう講演をすることがある。我ながら僭越なことではある。ひょっとしたら、面白おかしく過ごしながら、そこそこ業績をあげたおっちゃんと思われているかもしれん。そこはそれレトリックみたいなものであって、本当は血の滲むような努力をし、苦しいことがあっても笑顔で耐えてきたのである。 というのは、やっぱりウ

2000年の夏、ある子どもが家族で北京の公園に遊びに行った。広いその公園には、お化け屋敷のようなものがあった。こわごわ暗闇の中に入っていくと、ゴワゴワした髪の毛の首つり女の人形や、地獄の鬼卒がいた。なぜかそこにティラノサウルスが現れた。 針の山で血みどろになったおじさんや、血の池地獄で煮られているおじさんの間に、草をはむステゴサウルスもいる。最初は怖がってい

ワクチンを開発した科学者パスツールは「Chance favors the prepared mind.(幸運は用意された心のみに宿る)」という言葉を残している。準備する心によって偶然に気づくことができるのだということだろう。心構えはとしては納得できる、と同時に疑問が湧いてくる。チャンスそのものを増やしたり、再現性を高めることはは可能なのだろうか。 本書の射程

1989年、昭和から平成に変わる時代に、女暴走族を取り上げた『ティーンズロード』という雑誌が並んでいたのをご存知だろうか。初代編集長の比嘉健二さんが当時の回想を交えながら書き上げた本書は、第29回小学館ノンフィクション大賞を受賞した。 女暴走族というニッチなジャンルで賞を受賞!? 小学館ノンフィクション大賞は、「未発表作品に限り、海外冒険旅行や、博物誌、観察

「働き方改革」が叫ばれている。厚生労働書のHPによると、「現代日本が抱える少子高齢化や介護育児との両立などの問題にたいして働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し(後略)」とある。だが現実は多様な働き方に対応しているとは言い難い。 確かに伝統的な徒弟制度には問題があっただろう。長時間労働を強いられたうえ、賃金は安く、技術習得は「

読むたびに思う。ピーター・シンガーの論理はシンプルで、それゆえに強力だ。シンガーの論理に異を唱えようとすると、その反論のほうが小手先の屁理屈のように聞こえてしまう場合も少なくない。そして、シンガーの論理は強力であると同時に、そこから帰結する内容が厳しくもある。シンガーの論理を反駁できないならば、またそれを頭で理解したならば、わたしたちは自らの生き方を変えなけ

思い出話だが、評者は小学生のとき、空想の街を考えるのが好きだった。自由帳にRPGの地図ような架空世界を描いたり、家にあるレゴブロックやオモチャを並べて街に見立てたり。シムシティやシティーズスカイラインといった街づくりゲームにハマり、寝食も忘れてプレイした記憶もある。 そうした、実在しない街や地域を大人になっても地図に描き、追究し続ける人々がいる。それも、描き

「ディスレクシア(発達性読み書き障害)」という障害があることを知ったのは、ほんの数年前のことだ。トム・クルーズがこの学習障害で、台本を読むことが出来ず、マネージャーに読んでもらって暗記する、と聞いたときには、そんなことがあるのかと驚いた。 文字をすばやく、正しく、疲れずに読むことに困難のある人を言い、そのメカニズムは完全に解明されていないという。 この障害は

言語がどのように生まれたかに興味を持つ人は多いのではないか。なによりも人間を人間たらしめている大きな理由のひとつは言語なのだから、当然のことだろう。すこし前に 書評 を書いた『言語はこうして生まれる:「即興する脳」とジェスチャーゲーム』は、そのあたりを論じた本である。 周囲の人に何かを伝えるために言語が生まれた。最初から単語、ましてや文法があった訳ではない。

本書は魅力的な「問い」からはじまる。 若きピッツァ職人を取材していた時のこと。著者は職人の言葉にちょっとしたショックを受けた。 「僕、高校に行っていないんですよ。十六の時にナポリピッツァを食べて感動して、十七から東京のピッツェリアで働いて、十八でナポリに行ったので」 学校に毎日通うのが当たり前だった者からすれば疑問に思う。高校に行けない事情があったわけではな

サーカス、これほど多彩なイメージを喚起する言葉はないのではないか。明るく陽気で楽しいという印象がまず浮かぶ。しかし、それを追いかけるように、もの悲しい、あるいは、陰りのある面が気になってしまう。空中ブランコなどのアクロバットや猛獣使いのショーが前者、ちんどん屋さんのジンタでもおなじみのうら悲しい旋律を持つ「 美しき天然 」が後者の代表といったところだろうか。

私は本が持つ「熱量」に惹かれる。著者がどうしても書き残したかったものや、誰かに伝えたかったこと、自分にしか出来ないことなどを、汗かきながら書き上げる姿を想像できる本が好きだ。本書『千葉から~』の熱量は計り知れず。私にとって今年No.1の一冊になるだろう。 著者は、1992年千葉県生まれ。大学受験や失恋、就活などを経験する中で、卒業してから引きこもり生活に突入

一説によると人類は1万年以上前から酒を飲んでいたらしい。最も古いアルコール飲料はハチミツを主原料としたミードと呼ばれるものであったとも言われている。紀元前4000年ころには古代メソポタミアでビールが飲まれていたし、ワインは紀元前3000年頃から飲まれていた。人はかくも昔から酒を飲み酔っていたのだ。人が酒を飲む理由は様々だろうが、古代や中世の人々が酒を飲むのに

国会中、大臣や議員の背後で控えている人々。どこか厳めしく無機質で、原稿を読むときもぼかしたような言い回しをする。「官僚主義」といったネガティブワードに代表されるように、彼ら官僚に好印象を持っている人は少ないと推測する。近年はツイッター等で霞が関の人たちによる暴露が耳目を集め、そのブラックな労働環境に同情されると同時に忌避感も強まっているのは否めない。 そんな

「秘伝のタレ」というやつが嫌いである。テレビで飲食店が紹介される際によく耳にするが、あまりにいい加減だと感じる。鰻のタレも焼鳥のタレも、基本は酒と味醂と醤油だろう。そんなものを「秘伝」などともったいぶる料理人は相手を舐めているし、そんなナレーション原稿でお茶を濁すテレビ局も手抜きもいいところだ。いずれにしても真摯に仕事と向き合っているとは思えない。 優れた料

一見、ライトノベルを思わせるタイトルだが、本書は紛れもない実話である。ただし著者の半生は、まるでラノベの主人公のようにユニークだ。 著者は1992年千葉県生まれ。昔からどこまでも内向的で、考えすぎる人間だったという。そんな性格もあってか、大学受験や恋愛、就活の失敗などで心を壊し、大学を卒業した2015年からは、千葉の実家で引きこもり生活に突入。週一でバイトは

「桶」である。はて、桶と聞いて何を思い浮かべられるだろう?ちょっと気になって広辞苑で調べてみた。こういうときはなんといっても電子辞書だ。さて、いくつヒットしたでしょう? 答えは、「閼伽桶」(あかおけ:仏に供える水を汲み入れる桶)から「四桶」(よつおけ:長野県筑摩地方で馬に負わせて運ぶ下肥桶。1駄に4個つけたからいう)まで、なんと97個もある。さすがに驚いた。

たまたま知り合いのSNSを通じて、木製の桶に関する本が出ることを知りましたのです。わたしは木材加工の技術史や、微生物による発酵の科学にもちょっと興味があったもので、さっそく読んでみました。結果、最後のほうは思いもよらず感動してうるうるしてしまいました。 とはいえ、最初からそれほど期待していたわけではありません。タイトルだけ見たときには、ぼんやりと二つぐらいの

売れ続ける芸人、25人について、芸能記者・中西正男48歳が縦横無尽に書き尽くした。大阪を中心に活動する中西なので、ほとんどが大阪の、あるいは、大阪出身の芸人さんたちだ。そのリストを見れば、売れ続けて当然と思える人もいれば、なんでこんなのがと言いたくなる人もいる(<個人の感想です)。しかし、読んでみれば、売れ続けた理由がよくわかる。 ほんまもん 最終的にはこの

高野秀行さんの著作を最初に読んだのは30年以上前のことだ。『幻の怪獣・ムベンベを追え』という怪しげな本を書店で見つけ、この「早稲田大学探検部」という命知らずの若者たちに熱狂し周囲の人に勧めまくった記憶がある。 しかしその本が出てから著者の行方は杳として知れず、記憶も薄れたころ(正確には9年後だ)これまた書店で高野さんの著作『ビルマ・アヘン王国潜入記』を見つけ

華道は日本古来の芸術である。生け花は表面的な形や色の美しさに留まらず、植物の命そのものに美を感じ、人と自然を結びつける優れた機能を持つ。 本書は私が受け手となり斯界第一人者の人生・思想に鋭く切り込む対談本で、女性として初めて京都の華道家元池坊を継ぐ池坊専好先生を迎えた。 池坊家は小野妹子を道祖として仰ぎ、室町時代にその理念を確立させた華道家で、池坊先生は次期

「利他」という言葉を本屋さんで見る機会が多くなってきた。大辞林で「利他」を引くと、「自分を犠牲にしても他人の利益を図ること」と書かれてるが、「犠牲」や「利益」という言葉がなんだかピンとこないなぁ。本書の著者・伊藤亜紗さんは、前書きで「利他」について研究を始めたきっかけをこのように話している。 現代においては、「誰かのため」ということがあまりに単純化して考えら

素晴らしい本だ。帯文を頼まれたら、「役に立つ、みんな絶対に読むべきだ」という短い激賞文しかない。 タイトルは『新・日本語練習帳』だが、内容は単なる練習帳に留まらない。きわめて簡潔に示されたルールから、機械翻訳に適した日本語やグローバルコミュニケーションの「コツ」がのみこめる。さらには、英語、および英語を通じたコミュニケーションの解説から、逆ベクトルで、日本語

世の中では厳しい言葉が飛び交っている。特にSNSを中心に政治問題や社会制度のあり方を巡り攻撃的な言葉の応酬が日常的に繰り返されている。だが、多くの人が承知しているように、これらの言葉の応酬で何か建設的な議論が生まれることも価値のあるコンセンサスが生まれることもない。ほとんどの場合、相手への敵がい心をむき出しにして、石つぶてのような硬い言葉をぶつけ合い、お互い

本を読んでいて、誤植をみつけてしまうことがある。 粗を探しながら読んでいるわけではないのに、自然と目にとまってしまう。みつけるのは衍字(えんじ、文章の間に入った余計な文字)が多い。「思いった」とか「会社にには」みたいな誤りだ。DTPが当たり前になって、この手の間違いが増えた気がする。みつけるたびに、がっかりする。 がっかりするのは、子ども時代の刷り込みのせい