
右でも左でもない。リアリストが問う国防論『国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動』
2001年に海上自衛隊に 特別警備隊 という部隊が創設されるまで、自衛隊に特殊部隊は存在しなかった。特別警備隊はある事件を端緒にして誕生することになる。その事件とは1999年に起きた、 能登半島沖不審船事件 である。 この事件は覚えている人も多いだろう。イージス艦「 みょうこう 」が北朝鮮のものと思われる工作船を追跡し自衛隊史上初の 海上警備行動 が発令され
(2024年当時)
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2001年に海上自衛隊に 特別警備隊 という部隊が創設されるまで、自衛隊に特殊部隊は存在しなかった。特別警備隊はある事件を端緒にして誕生することになる。その事件とは1999年に起きた、 能登半島沖不審船事件 である。 この事件は覚えている人も多いだろう。イージス艦「 みょうこう 」が北朝鮮のものと思われる工作船を追跡し自衛隊史上初の 海上警備行動 が発令され

イラクとシリアに跨るISの支配地域の内情がどの様なものであるのかは多くの謎に包まれている。メディアなどで語られる情報は反IS側の陣営によるプロパガンダ的な要素を含んだ物が多く、その内容のどこまでが真実であるのか釈然としない点も多い。IS側もこれまでジャーナリストを支配地域に入れる事を拒んできた。多くのジャーナリストがIS の戦闘員に拘束され殺されている。本書

本書はCIAの元副長官、長官代理を歴任したマイケル・モレルの回想録だ。ページ数はざっと300ページほどで軽いタッチで書かれた作品に思える。政府高官の回想録では日本の元外交官、 東郷和彦 が書いた『北方領土交渉秘録』や ライス元国務長官 の『ライス回想禄』などの方が重厚感がある。書かれていることが今一つ核心からそれているような、ぼやけた印象を受けるのだ。 しか

『怒りについて』や『生の短さについて』などを著した古代ローマの哲学者 セネカ は二つの顔を持っていたという。 ストア派 に属し簡素な生き方と節度、理性を求める哲学者の顔。もうひとつは皇帝 ネロ に仕えた政治家としての顔。著作の中で簡素な生き方を推奨しながら、一方で現実のセネカはローマでも一、二を争う資産家であり、植民地に高利で金を貸し、暴利を貪る金貸しでもあ

毎年数冊はチャーチル関連の本が発売されている。私自身、以前にもHONZでチャーチルを題材にした本を レビュー している。チャーチルという政治家には、やはりそれほど魅力があるのだろう。個人的なことを言えば、劣等生であった少年が大学教育も受けずに、政治家として大成し、第二次世界大戦で世界の趨勢を決定するほどの大きな仕事を成しとげたという点に、とてつもない魅力を感

2015年1月、アメリカ国防省のとある職員が93歳で退任した。その男は40年に渡り、ネットアセスメント室(ONA)の長として歴代の国防長官に仕え、アメリカの安全保障政策に大きな影響を与え続けたという。一部ではペンタゴンのヨーダと呼ばれた アンドリュー・マーシャル こそ、本書の主人公である。この男がいなければ、今のような形でアメリカが冷戦に勝利することはなかっ

「戦争にまつわる物理学の本を書いている」著者がこう話すと、周りからは「物理学が戦争と何の関わりがあるんだい?」という言葉が返ってきたという。続けて「ああそうか、原子爆弾のことだね」と言われたという。『戦争の物理学』という本書のタイトルを読んで同じように思った方も多いだろう。もちろん、本書では原爆の事も論じられている。しかし、それだけではない。人を殺傷する際の

2007年、カンザスのフォート・ライリーを拠点にしていた第16連隊第2大隊は、念願のイラク派兵に臨むことになった。指揮官のカウズラリッチ中佐は40歳の勇猛な男で、特殊部隊の兵士としてアフガニスタンでの従軍経験もある。しかしイラク進攻作戦では、彼の大隊は留守番組であった。 士官学校を卒業した多くの士官がペンタゴンで働くことを夢みる。だがカウズラリッチはそれを望

人間と他の動物とを分けるものとは何か?この問いに対する最大の答えは「文字」ではないだろうか。文字を生み出したことにより、人は人という種がどの様な過去を築いて現代にいたっているかを知ることができる。本書は文字が発明された5000年前から現代までに焦点を絞り、その歴史を「人類5000年史」と定義して一気に読み進めようという冒険的な作品である。 なんといっても50

ドローンという兵器はアメリカ軍が行う対テロ戦争において、なくてはならない存在になりつつある。様々なメディアなどでこの無人兵器が取り上げられているが、その運用実態や、どのような人間が何を考え、この兵器を遠隔操作しているかということは、あまり知られていない。なぜなら、本書でも述べられているが、ピンポイントでテロ組織の幹部を抹殺する、この兵器を運用するには、高度な

バージニア州にダレス国際空港 という名の大空港がある。この空港が ジョン・フォスター・ダレス元国務長官 の名前に由来していることを、知らない人もいるかもしれない。著者は本書冒頭でこの空港を訪れる。この空港のシンボルである、ダレス国務長官の胸像を見るために。しかし、どこを探しても見つからない。幾度も改築を重ねるうちに胸像はどこかへ運びさられたようだ。空港関係者

本書はイラクで暗躍する民間軍事会社を扱ったルポタージュである。2009年に出版された同タイトルの文庫版であるため、扱われている事件やイラクの政治状況は少し古いものとなる。しかし今のイラク情勢に繋がるヒントの一端は読み解くことが出来る。 著者はワシントンポストの特派員としてイラク戦争を取材する。その活動により2006年にはピュリッツァー賞を受賞している。著者自

シリアルキラーと聞いて、皆さんは何を思い浮かべるだろうか。ヒッチコック監督の映画『 サイコ 』だろうか。それとも『 羊たちの沈黙 』に出てくるハンニバル・レクターを思い浮かべるだろうか。若い人ならアメリカのテレビドラマ『 クリミナル・マインド 』を連想する人もいるだろう。本書は実在のシリアルキラーたちをFBIが使用しているプロファイリングを基に分析、分類した

天ぷらの語源がポルトガル語の「調理」を意味する「tempero」だとされることは、今日では多くの人の知るところであろう。しかし、この天ぷらという料理の起源をたどると、古代ペルシアの「シクバージ」と呼ばれる肉の甘酢煮料理にたどりつくことを、どれほどの日本人が知っているだろうか。本書はスタンフォード大学で言語学とコンピューターサイエンスを教える教授が言語学の観点

第三帝国の終焉が近づきつつある、1944年11月26日。フランスのストラスブールでは連合軍とドイツ軍が激しい砲火をまみえていた。そんな戦況の中、都市の中心にある豪華なアパルトマンの一室では、数人の科学者が一心不乱に書類を読み漁っていた。アメリカ人の粒子物理学者ゴーズミットが率いるこの特殊チームはアメリカよりも先進的な研究成果を持っていると考えられていたナチの

アメリカ国内で有名な未解決事件のひとつに ゾディアック事件 といわれる事件がある。1966年から1974年にかけて複数の男女が白人の男に襲われ、猟奇的な方法で6人が殺害された事件だ。この事件を世間に印象付けた理由はゾディアック自身が犯行後に警察を挑発し嘲笑するような電話や自分の本名が書かれていると主張する暗号文をマスコミに送り付けるなどし、世間に大きく扱われ

1945年8月28日、米潜水艦セグンドは、日本の降伏文書調印式典に、米海軍の潜水艦の代表として列席するため、日本本州から約1000マイル離れた洋上を航海中であった。そのときレーダーが何かを捉えた。レーダーのスクリーンに現れたブリップの大きさに乗員は目をみはる。これほどの大きさの物体ならば距離1万5000ヤード先からでもレーダーが確実にとらえるはずだ。しかし「

第二次世界大戦中に米国戦略諜報局(OSS)が作成したサボタージュマニュアルの翻訳本である。このマニュアルは枢軸国の占領下にある市民にできるかぎり仕事を怠けさせ組織の非効率化を図ることにより、枢軸国側の占領政策を混乱に陥れ、士気の低下や軍需物資の生産力を滞らせることを目的としている。 内容としては産業機械をそれとなく故障させるという技術的面が強いものから、「常

1939年に発生したノモンハン事件は多くの人間と国の運命を変える事になる。当事国である日本もソ連も、そして第二次世界大戦の引き金を引くことになる独裁者ヒトラーもこの国境紛争がそれほど重大な意味を持つようになるとは当時は気づいていなかっただろう。だが、まずこの紛争で一人の男の運命が大きく変わる。 その男とはソ連労農赤軍の将官 ゲオルギー・ジューコフ だ。スター

書店で見かけた本書の帯にはこう書かれている「イスラエル政府公認の初の資料!」と。 建国以来、常に近隣の国々と緊張関係にあり続けたイスラエルは、特異な歴史性から、その国家規模に比して驚異的な能力を持つ諜報機関を持つにいたった。 IDI (イスラエル国防軍諜報機関アマン)、 IDA (イスラエル治安機関シャバック)、そして対外諜報担う モサド 。これらの組織は映

『奴隷のしつけ方』と衝撃的なタイトルだ。著者はマルクス・シドニウス・ファルクスというようだ。古典なのだろうか。本書を手に取り、パラパラとページをめくると違和感を覚える。マルクス・シドニウス・ファルクスとは何者なのか。記憶の糸を手繰る。しかし、思い出せない。本書の帯には「何代にもわたって奴隷を使い続けてきたローマ貴族の家に生まれる。」とある。書店でスマートフォ

イギリスの上流階級に生まれた二人の男にはいくつもの共通点があったという。抑圧的で、権威主義的で偏屈、そして変人である父を持ち、確執を抱えていた。幼少期は虐待に近い躾を行う、寄宿舎学校でスパルタ式の教育を受け、権威に反感を抱き、長じてはケンブリッジ大学で学ぶ。イギリス紳士らしく、人を結び付けも、隔てもする礼儀正しさを常に失わない。自信に満ちた立ち振る舞いは、い

18世紀、有色人種とりわけ黒人がその肌の色のみで差別され、奴隷として働かされていた時代に、ヨーロッパで一兵卒から将軍にまで上り詰めた有色人の男がいた。180センチを超える体躯(当時としてはかなり大きい)とハンサムな容貌の持ち主であったという。そして、その美しい肉体の中には常人では及ぶことの出来ない勇敢さと情熱を、また公正で高潔な精神を宿していた。男は自らを

文部科学省が道徳の教科化を決定したことで、喧々諤々の議論が巻き起こった事は記憶に新しい。マスコミなどで繰り返される道徳の教科化を巡る議論を聞いていると、賛成、反対派を問わず、どこか紋切り型な話が多い。 日本社会の根幹にどのようなシステムが存在し、それが日本社会の道徳形成にどう影響したかという、もっとも重要な思考的考察がこれらの議論には抜け落ちているのではない

コカインという白い薬物をめぐる本書は凄惨な事件から始まる。それはキキの物語だ。 キキの物語を語るには、まずこの男のことを知らなければならない。ミゲル・アンヘル・フェリックス・ガジャルド、通称〈エル・バドリーノ〉はメキシコで「コカインの帝王」と崇められた男だ。今も〈エル・バドリーノ〉の時代もコカインの一大生産地はコロンビアだ。しかし、コカインの大量消費国アメリ

切り裂きジャック という シリアルキラー が存在した。127年前のイギリスに。この殺人犯の呼び名は映画や文学作品といった大衆娯楽の中にたびたび登場する。世界的に最も有名な殺人犯と言っても過言ではないだろう。しかし、自らの記憶を手繰り寄せてみると、この殺人犯が127年前にどのような殺人事件を起こしたか、明確に説明できるような知識が何一つ無いことに気づく。私に限

後世の人間が歴史を見るとき忘れがちなことがある。それは自分たちが神の視点を持っているということだ。私たちが過去を眺めるとき、複数の点でしかない出来事が、やがて一本の線となり繋がっていくさまを、俯瞰的に眺める事ができる。私たちは往々にしてそのことに気づかないものだ。だが、考えてみれば、今を生きる私たちが、いま起きている政治的決断や紛争がどのような帰結を迎えるの

本書を読むまで私はイスラム国が数多くあるジハード集団のひとつだと勘違いしていた。今、中東でおきている出来事を理解する上で、間違いなく本書は読んでおくべき一冊だ。 まず驚かされることは、イスラム国は自爆テロ一件ごとの費用にいたるまで詳細に記録し、高度な会計技術を駆使した、収支報告書を作成しているという点だ。無論、過去にも「テロ」という行動を巧みに使い、経済的に

もし、あなたがタイムマシーンに乗って時間を旅する旅行者ならば、第二次世界終結目前の1945年5月5日、オーストリアのチロル地方にあるイッター城で奇妙な戦闘を目にすることが出来るだろう。この日、この時、こじんまりした城に籠る小さな混成部隊は、まるでフィクションの中の出来事にしか思えないメンバーで構成されていた。この城を陥落させるため、激しい攻撃を仕掛ける 武装

DEVGRU(デブグル) という組織が存在する。一般的にはSEALチーム6と呼ばれることが多い。この組織の正式名称は、United Naval Special Warfare Development Groupだ。アメリカ海軍の特殊部隊「 Navey SEALs 」という精鋭部隊の中から、さらにトップクラスの男たちを選抜し、SEALsよりさらに高度な戦闘技術

これからも日は沈み続けるのだろうか。それとも、いったん没しかけた太陽は自らを大きく変革し再び昇るのだろうか。あるいは成熟国家として、ある程度の富を保ちながら退屈ではあるが緩やかで穏やかな社会を、長期間にわたり維持し続けるのだろうか。その答えは誰にもわからない。なぜなら歴史とは常に一つの方向にのみ流れ続ける川ではないからだ。それに、私たちがどのような社会を建設

台湾南端の 鵝鑾鼻 (がらんび)岬からフィリピン領バタン(バシー)諸島との間にある海峡を バシー海峡 という。黒潮が流れるこの海峡は、かつて輸送船の墓場と呼ばれていた。太平洋戦争後半には、この海峡にアメリカ軍の潜水艦が多数配備されており、南方の戦線に送られる日本軍の輸送船団に忍び寄り、その牙をむいた。この海峡で10万人以上の日本人が犠牲になったという。このこ

18世紀、船の大型化と航海技術の進歩により、頻繁に寄港することなく航海が可能なになった。こうしたことにより猖獗を極めた病がある。「 壊血病 」だ。壊血病とはビタミンC(アスコルビン酸)の欠乏により起こる病だ。壊血病になると身体の結合組織の細胞が変性を起こし、歯茎の腫れと出血、歯がぐらつく、口臭、無気力、倦怠感、古い傷口が開く、接骨した骨が外れる、などの症状が

世界は混迷を深めている。中東で起こっている血なまぐさい事件の数々は言うに及ばず、東ヨーロッパではウクライナ危機が加速し、アジアでは台頭する中国が帝国主義的な政策の基で、世界秩序に挑戦している。日本もまた、中国の覇権主義の挑戦を受ける形で、自国の安全保障の見直しを迫られている。そんな中、各国の国民の間で再び強烈な民族主義と排外的な感情がその鎌首をもたげ始めてい

娼婦。その存在はいつの時代も様々な点で男たちを惹きつけてきた。実直な青年と高級娼婦の愛を描いた デュマ・フィス 著『 椿姫 』や映画『 プリティーウーマン 』などの作品に私も惹きつけられた。これらの作品に出てくる娼婦は、自堕落な生活を送りながらも本当は純真な心を奥底に秘めた哀れな社会の犠牲者として描かれていることが多い。 多かれ少なかれ、男というものは女性に

映画『 シンドラーのリスト 』を見た人は覚えているだろう。 プワショフ の強制収容所でユダヤ人を無慈悲に殺す所長の姿を。彼はシンドラーの友人であり、またユダヤ人を庇おうとしていたシンドラーのライバルとしても描かれている。その男の名は、 アーモン・ゲート 。身長192センチ、体重120キロの巨漢の男はナチス親衛隊の中でも突出した残虐な男だ。 アーモン・ゲートは

あなたは楽観的な性格だろうか?それとも悲観的な性格だろうか?自覚してはいるのだが、私はかなり悲観的性格である。本書に掲載されている「改訂版楽観性尺度-LOT-R」でも、その数値は悲観的性格を表す9点という結果であった。平均的な人たちは15点前後で、緩やかな楽観主義に分類されるらしい。最大点は24点で最小は0点だ。点数が高いほど楽観的で低いほど悲観的な性格であ

18歳以上のアメリカ国民の33パーセントが、BMI 30以上の肥満体だという。本書によれば、陸軍幹部が公式発表で首都ワシントンの18歳以上の男女が太り過ぎで採用できないと表明。また、カリフォルニア州ロサンゼルスでは、太り過ぎのため帝王切開が困難になり死亡する産婦が増えているという。また痛風患者は全米で800万人にも達するという。 なぜアメリカはかくも肥満大国

アマゾンが 電子書籍読み放題サービスに参入するというニュース がある 。これは月額9.99ドルの契約を交わすと、約60万タイトルの電子書籍が読み放題になるというサービスだ。日本ではいまひとつ普及していない印象が拭えない電子書籍だが、アメリカでは事情が異なるようだ。本書の記載によると、アメリカの出版業界の市場調査を専門とした機関の報告で、2012年までに成人の

洋書の写真集が好きな私は、大型書店を訪れた際には必ず洋書コーナーで様々な写真集を眺める。必ず手に取るのは、ファッション写真と報道写真だ。ファッション写真は人間の美しさを私に教えてくれる。そして報道写真は広い世界に渦巻く人間の業と悲しみを教えてくれる。同じ時代を生きつつ、決して出会う事の無い人々の悲しみや欲望や生のエネルギーを私に突きつける。 そのような写真を