
2011年の記事
ARCHIVE707記事


『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』
刺激的なタイトルのようだが、本当にアメリカ人の半分もニューヨークの場所を知っているのであろうか。もっと少ないような気がする。上澄みの何パーセントは別にして、平均してしまうと本当におバカな国民であることは間違いない。アメリカでは「ヘキサゴン」のような番組は受け入れられないはずだ。なにしろ惰性的テレビ視聴者の知性は「羞恥心」以下なのだ。 10年ほど前になるであろ


『日本の国宝、最初はこんな色だった』
これほど「はじめに」と「おわりに」の内容が異なる本もめずらしい。「はじめに」では筆者はデジタル復元の方法論について述べている。デジタルによる色彩再現法だけでなく、「美術的背景を専門的に把握し十分に考慮すること」を強調する。読者はデジタル復元の入門書だと暗示される。 ところが「おわりに」では「日本人は日本美術を美術とは思っていなかった」とし、ロラン・バルトを引

『世界が愛した日本』
昨日、人の紹介で「今の若者はダメだ」とぼやく60才前半の「老人」と話さなくてはならない状態に陥った。「今の若者はダメだ」が2000年ほど前のポンペイの落書きにもあったことをご存知ないらしい。無知にして老いているのだ。人として最悪である。もう70才を超えちゃったわが社の長老こと芦田邦弘会長は決してこんなことは言わない。「今の若者こそ儲けるチャンスがある」という




『文藝春秋』 今月買った本
まだ3年もたっていないのに、ドバイの話などは古い感じがする。 -------------------------------- 祇園町で遊ぶたびに不思議に思っていたことがある。あちこちに張ってある「蘇民将来之子孫也」という紙のことだ。札幌生まれの筆者には意味がわからない。蘇といえば古代のチーズだったはずだ。じっさい祇園町にあるKという料理屋でも食べさせてくれ

『大暴落 1929』
1955 年初版の本である。ガルブレイズ自身が1997年版のまえがきで「この本が長寿を保っているのは、増刷され本屋の店頭に並ぶたびに、バブルや株安など何事か起きるのだ。すると、この本への関心が高まる」と書いている。本書は日経BPクラシックスの最新刊で9月29日初版なのなのだが、本当にタイミングが良い。 日経クラシックスはフリードマンの『資本主義と自由』、ドラ
![『米欧回覧実記』慶應義塾大学出版会 [3] 書影](/assets/recovered-covers/37f30cf9034371c0adb9566b6af3ab0c6164b196d6cc87eaea0fb770d03f6c74.jpg)
『米欧回覧実記』慶應義塾大学出版会 [3]
欧米回覧実記を読んでいてつくづくこの130年間、日本人は何をやってきたのか、という思いになることがある。久米は貿易を行おうとするには万国共通で必要な設備があるという。すなわち港湾設備、マーケット、銀行、両替商、および商工会議所である。 そして、日本を振り返って「わが国の商業のありさまを見てみると、問屋市場は買い手には有利だが売り手は常に弱い立場にあり、為替・

『歌舞伎検定公式テキスト』
この本は高すぎる。いくらフルカラーとはいえ175ページで3000円もする。役者に肖像権使用料でも支払っているからであろうか。だとしても、全ての舞台写真は全景なので役者の顔は判別できない。なぜこれほど高いのか不思議だ。 毎月の公演で販売される筋書の定価は大判100ページあまりで1200円だ。歌舞伎月刊誌の『演劇界』も1200円だ。9月号などは新創刊1周年記念だ

『西暦535年の大噴火』
2000年以降出版が続いた「天変地異による人類史への影響」本のはしりである。著者は西暦535年ないし536年に人類史上最大級の噴火が起こったと推定する。場所はジャワ島とスマトラ島に挟まれた海峡にあるクラカトア火山だ。 この大噴火の結果、一年半ものあいだ世界中で暗闇がつづき、結果的に続く100年間の間にそれぞれの文明圏では不可逆的な変化が起こったという。 本書

『江戸の料理と食生活』
以前、ある書評欄で定価をページ数で割った、つまり1ページあたりの単価を比較したことがある。ボリュームだけで見たお得感の比較である。そのときに編集者と飲みながら、本当にお得な本はどれかをいう話になった。本書がその答えである。 167ページ大判フルカラーの本だ。当時の料理を再現した写真、食にまつわる古文書や浮世絵などがどのページにも惜しげもなく、ところ狭しと掲載


『AirCraft:The Jet as Art』 (洋書)
滑走路の端でカメラを真上に向けて固定し、着陸陸間際のさまざまな旅客機を撮った大判の写真集である。背景は全て白で塗りつぶしてあり、旅客機以外の視覚情報は一切ない。そのため精密なプラモデルを下から撮ったのようにも見えるが、実機が持つ油の匂いは消しようがない。 747やエアバス、セスナやボンバルディアなど現用の旅客機が網羅されているし、航空会社も日本貨物航空や英国

『白鍵と黒鍵の間に』
ピアニストという人種はなぜ文章もうまいのだろう。クラシックの中村紘子、ジャズの山下洋輔などは音楽だけでなく文章も玄人だ。エッセイのうまい歌手とかギタリストなんてあまり聞いたことがない。 本書はジャズピアニスト南博の学生時代から、銀座のクラブでのピアニスト稼業をへて海外留学するまでの自叙伝である。副題に「ピアニスト・エレジー銀座編」とあるとおり、銀座での出来事

『 キーボード配列QWERTYの謎』
キーボード配列決定の歴史についてとことん調べた本である。京都の学者夫婦がとことん調べたのである。引用している図版だけでも124枚。明示されている参考文献だけでも495冊だ。あと4枚図版があれば2の冪できりが良かった。本書は夫婦共著なのだ。まさに power of two だったのだ。 まえがきでは読者に対して「本書は基本的に。時系列に沿って各章が進んでいくの

『 アメリカの毒を食らう人々』
久しぶりに仰天した。レイチェル・カーソンの『沈黙の春』を読んだときも、見えざる毒物の恐ろしさに体が震えたが、この本はさらに悪質な毒物を意図的に放置しているアメリカという国を告発している。 たとえばノースカロライナのキャンプ・ルジューン海兵隊基地では70年台の終わりから動物たちが死にはじめ、やがて海兵隊の家族たちはガン、先天異常などの多発に悩まされる。原因は軍

『広重と歩こう 東海道五十三次』
2000年に出版された本書はすでに5刷である。いまだ売れ続けているらしい。豪華な128ページのフルカラー大判本だ。ページ数が2の累乗になっていることがなぜかうれしい。ちなみに英語で2の冪は power of two という。 歌川広重は日米修好通商条約が締結された安政5年コレラに感染して没した。「東海道五十三次」は亡くなる25年前、広重が36才のときに出版さ



養老孟司のデジタル昆虫図鑑
昆虫はあまり好きではない。とりわけ、ムカデのように足が無数にあるものは身の毛がよだつ。しかし、蛇はまったく問題ない。人が属する哺乳類は4本足だから、それ以上か以下の足の数をもつ生物のどちらかを嫌うという話を聞いたことがある。自分は4本以上の足を持つ生物は大嫌いなのだ。 にもかかわらず、知り合いの編集者がこの本を送ってくれた。いい迷惑である。けれど、意外にも虫

『先賢諸聖のことば』
テレビ東京の「開運!なんでも鑑定団」で書や掛け軸を中心に鑑定している田中大の本だ。帯にはハンカチを口にあてるおなじみの本人の顔写真や、目立つように番組名を赤い書体で印刷していてあざとい。しかしその帯を取ってしまうと美しい装丁の本である。 本書は75点の掛け軸や書などの墨蹟を紹介している。見開き右ページには墨蹟のカラー写真とその読み方および解釈、左ページには言
![『米欧回覧実記』慶應義塾大学出版会 [2] 書影](/assets/recovered-covers/277fe06149d1a6af59ca57b72793d40bca13759efab1541b9f1c25d6d43a4b59.jpg)
『米欧回覧実記』慶應義塾大学出版会 [2]
久米は教育をもっとも重要な視察目的の一つとして考えていたようだ。普通教育から障害児教育まで熱心に書き込んでいるからだ。アメリカ全体の教育予算、学童数、教員数などはもちろん、各地で教育税、学校数、建物の広さ、教員の給与から用務員の数まで調べている。教員の給与については女性教員の初任給から昇給制度まで報告している。視覚障害者の地理の学習法まで調べているのには驚か
![『米欧回覧実記』慶應義塾大学出版会 [1] 書影](/assets/media/4a8b0420199ad5a54ea8c1de141239c52c527865b8de9755f1a60967b6420584.jpg)
『米欧回覧実記』慶應義塾大学出版会 [1]
これほど面白い本にはめったにお目にかかれない。明治4年に1年9ヶ月をかけて世界を歴訪した岩倉使節団の旅行記である。著者は久米邦武。天保10年生まれ、昭和6年没の元佐賀藩士である。後に帝国大学教授になる。 この旅行記を書いたときは久米は32歳だ。全権大使の岩倉具視は47歳、副使の木戸孝允が39歳、同じく副使の42歳、同行した工部大輔の伊藤博文はなんと31歳であ

『恐竜はなぜ鳥に進化したのか』
本書の副題は「絶滅も進化も酸素濃度が決めた」である。こちらを書名にしたほうが売れ行きが良かったと思う。 本書によれば、化石記録に動物が出現しはじめたカンブリア紀大爆発、9割の生物が死滅したペルム紀の大絶滅、ジュラ紀の恐竜跋扈、という地球規模の生物圏大変動はすべて酸素濃度の変化によって引き起こされたものらしい。 恐竜とおなじ呼吸システム、すなわち気嚢をもつ鳥類