ノンフィクションはこれを読め!

内藤 順

HONZ編集長

茨城県水戸市出身。早稲田大学理工学部数理科学科卒業。広告会社・営業職勤務。好きなジャンルは、サイエンスもの、歴史もの、変なもの。好きな本屋は、丸善(丸の内)、東京堂書店(神田)。はまるツボは対立する二つの概念のせめぎ合い、常識の問い直し、描かれる対象と視点に掛け算のあるもの。
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(2024年当時)

内藤 順の記事

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325記事

『実験思考 世の中、すべては実験 』本の値段を読者に委ねてみたら… 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『実験思考 世の中、すべては実験 』本の値段を読者に委ねてみたら…

実に面白い。本の中身の前に、まず本を売る仕組みについてだ。 本書は、価格が読者に委ねられた一冊である。紙の本を購入する場合は印刷原価に相当する390円、電子版については0円を支払う。その後、価格設定をいくらにするかを読者自身が決め、特設サイトから支払うという仕組みなのだ。 ちなみに発売から3日経った段階での支払総額は43,569,400円。支払った人の数が6

『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』その何気ない行動が、ゾウの生死を分ける 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』その何気ない行動が、ゾウの生死を分ける

アフリカでゾウの密猟が急増していると聞かされても、多くの人にとって自分事として捉えることが難しいだろう。しかしゾウが殺されているのは、決して食糧としての肉を目的としたものなどではない。付属物にすぎないはずの象牙が1kgあたり2000ドルで闇取引され、遠く中国や日本にやってくるのだ。 サバンナのダイヤモンドとも言われる象牙。本書は、元アフリカ特派員の著者がアフ

『持たざる経営の虚実』経営文学に支配された、平成30年間の企業経営 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『持たざる経営の虚実』経営文学に支配された、平成30年間の企業経営

「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である」。このダーウィンの名言を、若いビジネスパーソンへのメッセージとして援用する経営者は多い。 感じ方は人それぞれだと思うが、個人的にはサイエンスの理論を曲解し、都合よくビジネスに利用しようとする姿勢に違和感を覚えてしまう。 人間が自らの意志だけに

『天才を殺す凡人』会社を舞台装置にした物語論としての面白さ 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『天才を殺す凡人』会社を舞台装置にした物語論としての面白さ

天才について書かれた本を読むことにはもどかしさが伴う。天才とは何かがわかるという理解と引き換えに、自分が天才ではないという事実も受け入れなければならないからだ。 しかし本書はセンセーショナルなタイトルとはうらはらに、このセンシティブな部分のさばき方が非常にうまい。 この世界は天才と秀才と凡人で出来ているという語り口から始まるのだが、その3つの「人格」を、「創

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NEWS

HONZ×新潮文庫のフェアが始まります。

2月1日頃から全国約900の書店において、新潮文庫の中でも特にHONZがプッシュする最強のノンフィクション作品たちが店頭を飾ります。 対象書目は以下の通り。HONZにレビューが掲載されたもの、解説記事が掲載されたもの、それ以外のものと、幅広くセレクションしました。 HONZ厳選のBEST OF BESTノンフィクションたち。特製帯付の一冊を、ぜひ全国の書店で

『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』ファクトで満たせば、世界に希望が溢れ出す 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』ファクトで満たせば、世界に希望が溢れ出す

世界はどんどんよくなっている。ウソだと思うかもしれないが本当だ。実際に世界の人口のうち、極度の貧困状態にある人の割合は、過去20年で半分になった。そして、自然災害で毎年亡くなる人の数は、過去100年で半分以下にもなった。 この数字自体かなり驚くべきものであるが、さらに驚くべきなのは、この事実を3択問題として出題した時の正答率が、いずれも10%を下回ったことで

週刊東洋経済の新コーナー「今週のオススメ!」がスタートしました! 書影

NEWS

週刊東洋経済の新コーナー「今週のオススメ!」がスタートしました!

本日発売の『週刊東洋経済 2019年1/19号』より、書籍紹介ページにおいて「今週のオススメ!」がスタートします。 このコーナーでは、HONZメンバーの内藤順、栗下直也、堀内 勉、首藤淳哉、鰐部翔平の5名が毎週ノンフィクションの厳選したレビューを提供して参ります。 より幅広い読者の方にノンフィクション書籍の面白さを伝えていければと考えておりますので、HONZ

『宇宙の覇者 ベゾスvsマスク』地球レベルの悲観と、事業レベルの楽観と 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『宇宙の覇者 ベゾスvsマスク』地球レベルの悲観と、事業レベルの楽観と

イノベーションが加速する条件とは何か? 先端テクノロジーの開花か、組織の多様性か、それともポテンシャルのある市場環境か。様々な要素が考えられるが、最も重要なのは人間離れした男たちの、人間らしい競争意識ではないかーーそんなことを痛感させられる。 本書は宇宙ビジネスの最前線を描いた一冊である。数多ある類書と一線を画すのは、イーロン・マスクとジェフ・ベゾスーーこの

『ベートーヴェンを聴けば世界史がわかる 』音楽家の役割は、顧客を創造すること 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『ベートーヴェンを聴けば世界史がわかる 』音楽家の役割は、顧客を創造すること

今年読んだ新書の中で、文句なしにNo.1の一冊。平易な文章で書かれ、分量もコンパクトだが、奥が深い。 昨年、『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか』がヒットして以来、教養とビジネスの関係に注目が集まっているが、本書もまた同様の趣きをもっていると言えるだろう。 著者の片山杜秀氏は、クラシック音楽の歴史を追いながら、顧客が誰であったかという点にフォーカスを当て

『澤野工房物語』下駄とジャズの二刀流で、細く、長く、好きを貫く 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『澤野工房物語』下駄とジャズの二刀流で、細く、長く、好きを貫く

人生100年時代と言われる昨今だが、一つ気になっていることがある。それは人生が長くなっているにもかかわらず、会社の寿命は案外短いということだ。 一般的に企業の寿命は30年とされているから、パラレルキャリアという言葉に注目が集まるのも無理はないだろう。しかし最も重要なのは、キャリアを2つ作ることではなく、どのように持続可能な状態を築けるかという点にある。 大阪

『サカナとヤクザ』ニッポンの食卓を支える、魑魅魍魎の世界 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『サカナとヤクザ』ニッポンの食卓を支える、魑魅魍魎の世界

裏社会のノンフィクションはこれまで何冊も読んできたが、最も面白みを感じるのは無秩序のように思える裏社会が、表社会とシンメトリーな構造を描いていることに気付かされた時だ。 しかしここ数年は暴対法による排除が進み、ヤクザの困窮ぶりを伝える内容のものばかり。相似形どころか、このまま絶滅へ向かっていくのかとばかりに思っていた。だから彼らがこんなにも身近なところで、表

『ホモ・デウス  テクノロジーとサピエンスの未来』人類の営みをデータ処理システムと捉えてみれば 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ホモ・デウス  テクノロジーとサピエンスの未来』人類の営みをデータ処理システムと捉えてみれば

続編は前作を超えない、そんな通説を吹き飛ばすような会心の一冊だ。人類の来し方を描き、全世界で800万部を超えるベストセラーとなった『サピエンス全史』。これを受けた本書『ホモ・デウス』では、人類の行く末を戦慄の姿として描き出す。 過去何千年にもわたり人類を悩ましてきた問題、それは飢饉、疫病、そして戦争の3つであった。しかし驚くべきことに、我々は飢饉と疫病と戦争

『スモール・スタート あえて小さく始めよう』会社員のうちに始めよう 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『スモール・スタート あえて小さく始めよう』会社員のうちに始めよう

新しいことを始めたい、だけどなかなか始められない。そう思っている人のやらない理由を、一つずつ消していってくれる一冊だ。 著者の水代優さんは、日本橋浜町に Hama House というブックカフェを作ったり、最近では丸の内に Marunouchi Happ.stand&gallery というPOP UP GALLERYを作った人物だ。とはいっても、何をやってい

『ノモレ』未知の先住民イゾラドとの100年越しの再会 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『ノモレ』未知の先住民イゾラドとの100年越しの再会

知らないことを知りたい。見たことのないものを見たい。そういう好奇心がなくなったら、人生お終いだと思っている。しかし好奇心が生み出す無邪気さは、時に歓喜と絶望の両方を生み出す。そんなことを痛感させられる一冊だ。 かつてNHKスペシャルで放映された「最後のイゾラド 森の果て 未知の人々」を記憶されている方も多いことだろう。イゾラドとは、文明社会と未接触の先住民を

『お金持ちはこっそり始めている 本当は教えたくない!「軍用地投資」入門』いろんな意味で掟破りな一冊 書影

事件・事故 / ノンフィクション事件簿

『お金持ちはこっそり始めている 本当は教えたくない!「軍用地投資」入門』いろんな意味で掟破りな一冊

ノンフィクションは一期一会、出会った時が買い時だ。いつか買おうなどと思っていても、きっと「いつか」は来ない。仮に来たとしても、既に書店には置いていなかったり、下手すると絶版になっていることもある。本書はワケありなケースであるものの、今となっては入手することの困難な一冊である。 オビの「掟破りの不動産投資法」という文言が眩しいが、色々な意味で掟破りだ。沖縄本

『ユリイカ 2018年6月号』左脳で楽しむバーフバリ 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『ユリイカ 2018年6月号』左脳で楽しむバーフバリ

今、映画を大ヒットさせられるかどうかは、公開前の段階で8割方勝負がついてしまう。数ヶ月前から情報を小出しにすることで期待値を高めていき、公開直後から期待に違わぬことを示すポジティブな口コミが広がっていけば、ヒットがヒットを生み出す自走状態に入っていける。 一方で、 インド映画『バーフバリ 王の凱旋 』。日本での上映前に今の状況を予想することが出来た人は少なか

『バベる! 自力でビルを建てる男 』自分の自分による自分のための建築物 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『バベる! 自力でビルを建てる男 』自分の自分による自分のための建築物

旧約聖書の中に「バベルの塔」という物語がある。人間たちは、天にも届かないような高い塔を作りはじめた。神は、それを人間たちの神への挑戦と受け取り、人間の驕りを戒めるべく言葉をバラバラにしてしまう。言葉が通じなくなった人間たちは、意思疎通がとれずに塔を建設することができなくなり、塔は完成を見ることなく崩れ去ったーーそういう内容である。 この物語から得られる教訓は

『合成生物学の衝撃』テクノロジーが欲望を生み出し、欲望が科学を生み出す 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『合成生物学の衝撃』テクノロジーが欲望を生み出し、欲望が科学を生み出す

「話し上手は聞き上手」などとよく言われるが、物事の本質の多くは、その行為の内部ではなく外側に潜んでいる。生物学の分野に今、急速に訪れている変革も、それと近いものがあるだろう。 生物の研究者ならずとも、「人間とは何か」ということを深く理解したいと願うのが人間の常だ。だがここで重要になってくるのは、理解するとは何かということの定義である。 かつてリチャード・ファ

『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』面白い本を読んだら、誰かと話したい! 書影

教養・雑学 / 世界史

『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』面白い本を読んだら、誰かと話したい!

幅広い選書と奥深い視点で、早くも話題になっている『 辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦 』。先日、東京堂書店 神田神保町店で行われた刊行記念イベント「面白い本を読んだら誰かと話したい!」において、著者のお二人と一緒に登壇させていただきました。書き手としてよく知られるお二人は、読み手としてどのような一面を持つのか? そして本を語り合うことの面白さは

『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』スタンダードの求心力と辺境の遠心力 書影

教養・雑学 / 世界史

『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』スタンダードの求心力と辺境の遠心力

読書会のやり方は人によって様々だと思うが、面白く実施するためにはいくつかの条件がある。たしかに同じような読書量のメンバーが集まり、本をネタに好き勝手言い合うだけでも、それなりの楽しさはあるだろう。 しかしそれを継続的に習慣化していくためには、少なからず妄想のような会話にリアリティが伴ってくる必要がある。HONZの例で言えば、サイエンス本の話に触れながら、ふと

『オリバー・ストーン オン プーチン』正義の反対は悪ではなく、また別の誰かの正義であることについて 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『オリバー・ストーン オン プーチン』正義の反対は悪ではなく、また別の誰かの正義であることについて

「正義の反対は悪ではなく、また別の誰かの正義である」という言葉があるが、それをまざまざと感じさせるインタビューだ。 日頃のニュース報道をどれだけ注意深く見ていたとしても、プーチンの実像など、なかなか見えてこない。元KGBの工作員であり、独裁者であり、言論の弾圧や人権の侵害でも、よく批判される。だが時に起こす大胆な行動に、世界は度々驚かされてきた。このミステリ

『悲劇的なデザイン』そのデザインが、命運を分けた 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『悲劇的なデザイン』そのデザインが、命運を分けた

デザインのやり方一つで、人が死ぬこともある。まさかと思うかもしれないが、世の中を見渡せばそのような事実は多々見つかる。そして何より問題なのは近年「デザイン」というものの意味が拡張しており、もはや「世界はデザインで出来ている」といっても過言ではない状況にあるということだ。 本書『悲劇的なデザイン』は、このようなデザインにまつわる悲惨な出来事を事例としてまとめ、

『消された一家』北九州・連続監禁殺人事件の発覚から15年、やるせなさと救いが同時にやってきた 書影

事件・事故 / TV・動画

『消された一家』北九州・連続監禁殺人事件の発覚から15年、やるせなさと救いが同時にやってきた

今年もたくさんの新しい本と出会い、様々な刺激をもらってきた。だが今年読んだ本の中で、最も印象に残ったものを挙げよと言われれば、それは「再会」した一冊になる。それが本書『消された一家 北九州・連続監禁殺人事件』だ。 事件の詳細に関する記述はあまりにも凄惨で、この本が置いてある本棚の一角は邪気が漂っているように感じるほどである。数年前に奥の方へと封印したはずのこ

『人間をお休みしてヤギになってみた結果 』ヒトは悩むことから解放されるのか? 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『人間をお休みしてヤギになってみた結果 』ヒトは悩むことから解放されるのか?

ゴルフのラウンドをする度に痛感するのが、脱力することの難しさである。ただ脱力すれば良いということであれば話は簡単だ。しかし少しでも遠くへ飛ばしたいという欲望を充足させながら、力を抜いていくという行為は案外難しい。 その点、 ゼロからトースターを作ったこと でも知られる本書の著書トーマス・トウェイツは、明確な目標へ向かいながら全力で脱力するということに関して、

『SHOE DOG 靴にすべてを。』ナイキの創業者フィル・ナイト、彼のゴールは走り続けること 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『SHOE DOG 靴にすべてを。』ナイキの創業者フィル・ナイト、彼のゴールは走り続けること

「天才とは、蝶を追っていつのまにか山頂に登っている少年である」と語ったのは、アメリカの小説家ジョン・スタインベックである。ナイキの創業者フィル・ナイトの人生も、ある側面から眺めると、このように見えるのかもしれない。 フィル・ナイトとビル・バウワーマンによってブルーリボン社が設立されたのは1964年のこと。日本のオニツカ(現・アシックス)から輸入したシューズの

『CRISPR(クリスパー)究極の遺伝子編集技術の発見』ジェニファー・ダウドナが作り出す、新しい科学者像 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『CRISPR(クリスパー)究極の遺伝子編集技術の発見』ジェニファー・ダウドナが作り出す、新しい科学者像

強力なテクノロジーにはイノベーションの機会が二度訪れる。まずは登場したとき、そして次に普及したとき。WEBなど、その最たるものだろう。 インターネットという技術の登場はたしかに大きな変化をもたらしたが、今振り返れば、スマホの普及によって「いつでも、どこでも、誰にでも」使えるようになったことも、同じように大きなインパクトを持つ出来事であった。 本書のテーマとな

悪事から足を洗いました。そして『組長の妻、はじめます。』 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

悪事から足を洗いました。そして『組長の妻、はじめます。』

タイトルを見てどんな本だろうと思った方に、あらかじめ申し伝えておきたい。最後には「更生」するので、安心して読み進めて欲しい、と。 だが本書は、更生してヤクザの世界から足を洗いましたといった類の単純な話ではない。更生して辿りついた先が、組長の妻であったのだ。ならばヤクザの世界よりも極悪な世界とは一体いかなるものなのか。それが本書の主人公・亜弓さんの半生を通して

『コックリさんの父 中岡俊哉のオカルト人生』清く、正しく、疑わしく 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『コックリさんの父 中岡俊哉のオカルト人生』清く、正しく、疑わしく

何かの分野を一筋に研究した人物の評伝には名作が多い。中でもとりわけ面白いのが、厳格でアカデミックな世界をいかに破天荒に生きたかというタイプのものだ。生きている世界と生き方とのコントラストが、読者を惹きつけ魅了するわけである。そういった意味で、本書もコントラストの妙が効いているタイプの一冊ではあるのだが、世界と生き方の関係がそれらのものとは反転している。 超常

埼玉でスッポン、都内でエイを『捕まえて、食べる』アドベンチャーは自転車で! 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

埼玉でスッポン、都内でエイを『捕まえて、食べる』アドベンチャーは自転車で!

夏休みシーズンが到来し、海へ山へと出かける計画を立てている最中の方も多いかもしれない。しかし夏休みには、いつか終わってしまうという最大の欠点がある。これを回避する方法が、一つだけ存在するのだ。それは、毎日を夏休みのように生きるということである。 本書の著者は、まさにそんな生き方を体現している人物だ。スッポンを自分で捕まえて鍋にする、エイを捕まえてフォンオフェ

『かくて行動経済学は生まれり』人間は間違える。劇的に、そして規則的に 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『かくて行動経済学は生まれり』人間は間違える。劇的に、そして規則的に

マイケル・ルイスといえば『世紀の空売り』や『マネー・ボール』をはじめ、一攫千金の舞台裏をゲームのようなスリリングさで描く作家として記憶されている方も多いかもしれない。ところが本作は行動経済学がテーマ、しかもルーツとなった2人の心理学者の評伝形式になっている。 ここで一抹の不安を覚えた方には、予め声を大にして言っておきたい。「心配無用である」と。まるで、これま

『PC遠隔操作事件』警察、メディア、犯人、その誰もが踊らされた 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『PC遠隔操作事件』警察、メディア、犯人、その誰もが踊らされた

事件ノンフィクションと呼ばれるジャンルの醍醐味が、存分に味わえる一冊だ。この事件の何に対して自分が釈然としない思いを抱いていたのか、その正体が嫌というほど見えてくる。その実像は、事件当時に見知っていた情報とは大きく異なる印象があった。 PC遠隔操作事件とは、2012年6月から9月にかけて14件もの殺害・爆破予告がなされた事件である。JAL便の爆破予告から、小

『「東京DEEP案内」が選ぶ 首都圏住みたくない街』だけど、行ってみたくなる街 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『「東京DEEP案内」が選ぶ 首都圏住みたくない街』だけど、行ってみたくなる街

「絶対に○○してはいけない」というニュアンスの言い方には、言外に反対の意味が含まれることも多い。「絶対に笑ってはいけない」「絶対に電車の中で読んではいけない」といった枕詞の後には、大抵笑いが待ち受けているものだ。いわゆるフリという奴である。 しかし本書の「住みたくない」は、どうも本気と書いてマジと読ませるタイプのようである。吉祥寺、自由が丘、下北沢は「甘すぎ

『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』受け身であること、それは最高のエンターテイメントである 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』受け身であること、それは最高のエンターテイメントである

「HONZで紹介する本って、どんな基準で選んでいるんですか?」そう聞かれることは結構多いのだが、いつも歯切れの悪い回答になってしまう。 むろん小説はのぞくとか、いかにもなビジネス書は紹介しないとか、ジャンルとしての縛りは色々あるのだが、それだけが重要なわけではない。要は、難解なサイエンス本や分厚い歴史本ばかりをスラスラ読みこなす小難しい集団、そんな風に思われ

『中動態の世界 意志と責任の考古学』善でもなく、悪でもない。あいまいさを語る幻の文法 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『中動態の世界 意志と責任の考古学』善でもなく、悪でもない。あいまいさを語る幻の文法

深く関わりたくないと思う問題の多くは、善悪二元論に陥りがちなものばかりである。豊洲は安全なのか、そうでないのか。忖度はあったのか、なかったのか。唐揚げにレモンはアリなのか、ナシなのか…。議論を単純化すればするほど、問題は本質から遠ざかる。それなのになぜ人は、かくも簡単に二元論に陥ってしまうのか? 答えを解く鍵は、文法にあった。 通常、我々が親しんできた文法の

『ヒルビリー・エレジー』取り残された街のため息が、トランプを大統領に押し上げた 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ヒルビリー・エレジー』取り残された街のため息が、トランプを大統領に押し上げた

格差の問題が叫ばれて出して久しいが、格差が深刻化する中でさらなる問題が沸き上がりつつある。「格差を是正せよ」「ダイバーシティって素晴らしい」という掛け声とともにフォーカスが当たるのは、いつだって最底辺に位置するマイノリティの人ばかりなのである。 「鶏口となるも牛後となるなかれ」とはよく言ったものだが、アメリカで実施されたある調査でも、それを裏付けるような結果

『魂でもいいから、そばにいて 3.11後の霊体験を聞く』忘却へのジレンマが、それぞれの物語を生み出す 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『魂でもいいから、そばにいて 3.11後の霊体験を聞く』忘却へのジレンマが、それぞれの物語を生み出す

あの日から、もうすぐ6年の月日が経とうとしているが、今だに震災について語るべき言葉を持っていない。身の回りで大きな被害があったわけでもない。知人や親戚が被災地にいたわけでもない。ボランティア活動に参加したこともない。 だから自分が何を語ろうとしても、言葉が軽くなってしまう。そんなためらいを感じている方は、案外多いのかもしれない。しかし本書『魂でもいいから、そ

「ビジネス書グランプリ2017」結果発表ーービジネスマンの来し方、行く末を考える 書影

ビジネス / NEWS

「ビジネス書グランプリ2017」結果発表ーービジネスマンの来し方、行く末を考える

今年で2回目を迎えた、ビジネス書グランプリ2017。このアワードのコンセプトは「ビジネス書を評価するべきは、ビジネスパーソンではないのか?」というものであり、あくまでも読者目線で本を評価していく点が最大の特長だ。 HONZとしては、そこへさらに「それがビジネス書かどうかを決めるのも、ビジネスパーソンでではないのか?」という疑問を投げかけたわけである。その結果

『夫のちんぽが入らない』不通の私と、みんなの普通 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『夫のちんぽが入らない』不通の私と、みんなの普通

このタイトルだけに色物系かと思われるかもしれないが、奥深いメッセージが込められた、笑いあり涙ありの痛快エッセイである。 冒頭、このような一節から始まる。 いきなりだが、夫のちんぽが入らない。本気で言っている。交際期間も含めて20余年、この「ちんぽが入らない」問題は、私たちをじわじわと苦しめてきた。周囲の人間に話したことはない。こんなこと軽々しく言えやしない。