
『スクエア・アンド・タワー』ネットワークと階層制組織 2軸で読み解く世界の歴史
本書は『タイム』誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれ、今、世界で最も優れた知性の一人といわれる歴史学者ニーアル・ファーガソンが、過去500年にわたる世界の歴史を、国家や企業など「垂直に伸びる階層制組織(タワー)」と、革命運動やSNS(交流サイト)など「ヨコに広がる草の根のネットワーク(スクエア)」という斬新な切り口で読み解いた画期的な本である。 フ
(2024年当時)
139記事

本書は『タイム』誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれ、今、世界で最も優れた知性の一人といわれる歴史学者ニーアル・ファーガソンが、過去500年にわたる世界の歴史を、国家や企業など「垂直に伸びる階層制組織(タワー)」と、革命運動やSNS(交流サイト)など「ヨコに広がる草の根のネットワーク(スクエア)」という斬新な切り口で読み解いた画期的な本である。 フ

本書の著者であるコロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授は、非対称情報下での市場経済理論への貢献により、2001年にジョージ・アカロフ、マイケル・スペンスと共にノーベル経済学賞を受賞した経済学の泰斗である。 研究面において優れた論文を多数発表し、米国の経済政策に大きな影響を与えたのみならず、クリントン政権で大統領経済諮問委員会委員長、世界銀行で上級副総裁

本書は、マイクロソフト首席研究員兼イェール大学客員研究員のグレン・ワイルと、シカゴ大学ロースクール教授のエリック・ポズナーによる共著である。 34歳の社会工学者・経済学者ワイルは、本書を監訳している大阪大学の安田洋祐准教授のプリンストン大学留学時代のオフィスメートで、同大学を首席で卒業して直ぐに大学院に進学し、経済学博士号をわずか1年で取得した大秀才だと言う

著者の落合陽一は、学者、メディアアーティスト、実業家など多くの顔を持ち、「現代の魔法使い」と呼ばれる若手マルチタレントである。30歳で筑波大学学長補佐に就任したことでも話題になった。 その著者が、2015年の国連サミットで採択された、持続可能な世界を実現するための共通目標であるSDGs(Sustainable Development Goals)について解説

厚生労働省は12月24日、2019年の人口動態統計の年間推計を発表し、それが大きなニュースになっている。2019年の日本人の国内出生数は、最少だった2018年の91万8400人を下回り、前年比5.92%減の86万4千人となり、1899年の統計開始以来初めて90万人を下回った。出生数が死亡数を下回る人口の自然減も51万2千人と初めて50万人を超えて、2017年

本書は、2016年に「津久井やまゆり園」で障害者19人が殺害された相模原障害者施設殺傷事件*をきっかけに行われた、作家の雨宮処凛と以下の6人の識者との対談を一冊にまとめたものである。 ①神戸金史(RKB毎日放送記者) ②熊谷晋一郎(東京大学先端科学技術センター准教授、小児科医) ③岩永直子(BuzzFeed Japan記者) ④杉田俊介(批評家、元障害者ヘル

本書の「中小企業改革で再び輝くか、中国の属国になるか」というサブタイトルは非常に刺激的で、早くも各所で物議を醸している。 著者のデービッド・アトキンソン氏は、英オックスフォード大学で日本学を専攻し、米ゴールドマン・サックスの経済アナリストとして、1997年からの金融危機とその後の銀行大再編を予測して名をはせた、「伝説のアナリスト」である。 今は、縁あって文化

本書は、NHKドキュメンタリー『人間ってナンだ?超AI入門』の特別編として、『世界の知性が語るパラダイム転換』というタイトルで放送された、マックス・テグマーク(宇宙物理学)、ウェンデル・ウォラック(倫理学)、ダニエル・デネット(哲学)、ケヴィン・ケリー(編集学)という4人の世界的知性のインタビューを一冊にまとめたものである。 我々は今、AI(人工知能)の登場

「『イノベーションか、死か』『テクノロジーか、死か』そういう時代を今、我々は否応なしに生きている」 こうした書き出しで始まる本書は、シンガポールを拠点として、長年にわたり世界各国のテクノロジーやイノベーションに投資してきたベンチャーキャピタリストの著者が、今、テクノロジーの最前線で何が起きているのかを、一般のビジネスマン向けにわかりやすく解説したものである。

金融界の人が書く経済の本は余りにも人間や社会の視点が欠けていて、しかも限定された場での理論的整合性を失わないために、専門分野以外のことは自分の守備範囲ではないとして、それ以上の対話を拒むような自己完結したものが多く、それだと現実の世界に照らし合わせて読むことはとてもできないが、本書は秀逸だった。 「近代経済学の父」と呼ばれるアダム・スミスは、市場の調整機能を

本書の原題は”The Demon in the Machine”である。邦題は『生物の中の悪魔』なので、だいぶ受け取る側の印象は違うと思うが、本書に出てくる「悪魔」というのは、宗教やオカルト的な意味での悪魔ではなく、「マクスウェルの悪魔」に由来する架空の存在である。 これは、1867年にスコットランドの物理学者マクスウェルが提唱した思考実験に出てくる悪魔(d

いったんでき上がった社会の仕組みは、社会のコンセンサスがなければ決して変わらない。 そして、その前提となるのは透明性と公開性であり、これがない改革は必ずつまずく。 こうした仮説のもと、雇用、教育、社会保障、地域社会、政治、さらには日本人の「生き方」までを規定している「慣習の束」がどのようにでき上がってきたのかを、歴史的事実と豊富な参考文献に基づいて丹念に解き

ライフネット生命保険のファウンダーで、現在は立命館アジア太平洋大学(APU)の学長を務めている出口治明氏の著作には、いつも感心させられる。本書を読んで改めて、こうした幅広い視野で世界の哲学と宗教を語れるビジネスパーソンというのは、日本では極めて稀だと思った。 出口氏によれば、遥か昔から人間が抱いてきた根源的な問い掛けは、次の2つに集約されるという。 ①「世界

本書は、NHKの『欲望の資本主義』シリーズを書籍化した第3弾である。 本シリーズはこれまで、資本主義とは何なのかという大きな問題に取り組んできた。今回は、国家の枠組みを超えて巨大化する「GAFA」と呼ばれるプラットフォーマーによる人類支配の懸念や、ブロックチェーン、仮想通貨への期待と不安が高まる中、今一度、資本主義の原点に立ち返り、われわれがこの巨大システム

タベアルキストとして食の世界で絶大な人気を誇り、日本ガストロノミー協会の副会長でもあるマッキー牧元さんが企画・構成した、精肉業界のカリスマ・新保吉伸(にいほよしのぶ)さんの新刊書『どんな肉でも旨くする サカエヤ新保吉伸の全仕事』を早速読んでみました。 新保さんは、1980年に19歳で精肉業界に入り、27歳で独立して滋賀県に「近江牛専門店さかえや」を開店し、そ

コンサルティング会社キャップジェミニの「World Wealth Report」によると、投資資産を100万ドル以上保有する世界の個人富裕層の資産総額は、7年連続で増加して2017年に70兆ドルを上回った。 国際NGOオックスファムは、2016年の報告書「1%のための経済」で、2015年に世界の上位1%の富裕層が保有する資産が残りの99%の人々の資産を上回り

HONZで自画自賛本のコーナーが立ち上がったということで、この場を利用して『資本主義はどこに向かうのか―資本主義と人間の未来』を宣伝させて頂きたい。 今回は、資本主義研究会が公益財団法人生存科学研究所の自主研究事業として、過去約30回にわたって開催してきた「資本主義の教養学 公開講演会」シリーズの中から、人間という存在を自然科学的・社会科学的な見地から総合的

「ストア派」は、紀元前5世紀のソクラテスの思想から派生したヘレニズム哲学の一派で、紀元前3世紀初頭にキプロス島出身のゼノンが創始した。「ストア哲学」ともいう。 ストアという名は哲学者のゼノンが、古代ギリシャの都市アテナイの列柱廊(ストア・ポイキレ)で自らの思想を説いたことに因(ちな)んだもので、英語の「ストイック」はこれを語源としている。 ストア派はヘレニズ

本書は、企業再生の専門家である経営共創基盤CEOの冨山和彦氏が、2003年の産業再生機構設立以来、長年に亘って取り組んできた日本企業の経営改革の集大成とも言うべき一冊である。 そして、本書の最大のポイントは、日本的経営の本丸である経団連トップの中西宏明会長(日立製作所会長)を対談相手として担ぎ出したことではないかと思う。なぜなら、経団連こそが日本企業が変わら

私たちはまだ本当の宇沢弘文のことを何も知らない・・・これが本書を読了しての思いである。そして、宇沢とは何者で、どこから来て、どこへ行こうとしていたのか、その全てを詳らかにしてくれるのが本書である。これをきっかけに宇沢の功績の再評価が行われるに違いないと確信させる、経済学の歴史に残る名著である。 「ノーベル経済学賞に最も近かった日本人」であり、「社会的共通資本

本書は、ベストセラーになった共同通信社の橋本卓典記者による、『捨てられる銀行』シリーズの続編である。また日本版「金融排除」の問題点を鋭く指摘した著者の『金融排除 地銀・信金信組が口を閉ざす不都合な真実』と同じ問題意識に立脚している。 バブルの崩壊と「金融処分庁」による圧政の時代を経て、企業の実態を見る力を失ったことが、銀行というビジネスモデルを根幹から揺るが

数学に関する本を読んで感動したのは初めてかも知れない。以前、NHKスペシャルで、ロシアの天才数学者グリゴリ・ペレリマンが数学の超難問「ポアンカレ予想」を証明した過程を追ったドキュメンタリー番組『 100年の難問はなぜ解けたのか ~天才数学者失踪の謎~ 』を見て、数学の世界のすさまじさに感心したものだが、それをはるかに上回る衝撃である。 2012年8月30日、

レオナルド・ダ・ヴィンチについては、これまで数多くの本が出版されてきたが、本書は正に、「ダ・ヴィンチ伝の最終決定版」である。 ダ・ヴィンチの作品に焦点を当てたこれまでの評伝とは一線を画し、世界的な伝記作家であるウォルター・アイザックソンが、現存する7,200頁ものダ・ヴィンチの自筆ノートを全て読破した上で、それをベースに執筆している。 日本でも、2005年に

世界ナンバーワンの超大国の米国で、なぜトランプ大統領が誕生したのか。 本書は、新世界を信じた夢想家たちとその末裔が創り上げた米国という「ファンタジーランド(おとぎの国)」の今日に至る500年の長い道のりを、他に類を見ない説得力をもって論じた、全米話題のベストセラーである。 本書で示されている米国の実態は衝撃的である。 例えば、米国人の3分の2が「天使や悪魔が

本書は、オックスフォード大学で日本学を専攻し、ゴールドマンサックス時代に日本の不良債権問題をいち早く指摘して「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏が、長年の日本研究の結果たどり着いた、日本経済再生のための提言書である。 文化財の修理・施工を行う小西美術工藝社の現役社長でありながら、ベストセラーとなった『新・観光立国論』『新・生産性立国

著者の山口揚平氏は、軽井沢と東京に居を構えながら一日3時間だけ働くというおだやかな暮らしを実践しているコンサルタントであり、またこれからのあるべき社会の未来を提示する思想家でもある。 HONZの紹介としては若干遅ればせながらという感じだが、各方面で余りに評判が良いのでとにかく読んでみたところ、期待をはるかに上回る内容だった。 本書の結論は、冒頭に出てくるアル

本書で言う「両利き(ambidexterity)」とは、あたかも右手と左手の両方が利き手であるかのように使えることであり、特に、会社経営における両利きとは、「探索(exploration)」と「深化(exploitation)」という活動が、高い次元でバランスが取れている状態を指す。 両利きという概念は、認知心理学の研究に由来するものである。人間の認知には一

本書は、今でもなお残されている、古き良き「アメリカの良心」を代弁する、社会変革のための提言書である。 なぜ5億ドルもの資産を持つ大富豪である本書の著者が、上位1%の超富裕層への課税強化を提唱するのか。本書の後書きに出てくる彼の言葉に、その思いが集約されている。 資本主義の潮流は否応なしに不平等へと向かうため、市場を富裕層だけでなく万人のために機能させるには、

本書は、西洋社会の行く末を悲観的に予測してベストセラーとなった『The Strange Death of Europe』の邦訳である。 ここには、いま西洋社会が直面する「奇妙な死」について書かれている。 ここでいう「死」には、2つの意味が込められている。 1つは、欧州が大量の移民を受け入れたことにより、各地で西洋固有の文化的・歴史的な風景が失われ、いくつかの

2008年の世界的な金融危機、いわゆるリーマンショックから10年が過ぎ、その記憶も風化し始めている中、今から20年前の1997年から1998年にかけて我が国で起きた未曾有の金融危機を覚えている人はどれだけいるだろうか。 今や、大蔵省銀行局・証券局、長期信用銀行(興銀、長銀、日債銀)、北海道拓殖銀行(拓銀)という組織があったことさえ知らない若者も多い。 199

ジム・ロジャーズは言う。 私は常に、歴史の流れを踏まえながら、数年先を見るようにしている。歴史の流れは、先を読む力、とりわけお金がどう動くかという未来を教えてくれる。 成功したければ、将来を予測しなければならい。 ロジャーズは、「イングランド銀行を潰した男」の異名を持つ、かの有名なジョージ・ソロスのかつてのビジネスパートナーであり、ソロスと共にクォンタム・フ

ホリエモンこと堀江貴文氏が、ツイッターで、寿司職人になるために何年も修業するのはバカだと発言して炎上したのが、今から3年前のことである。 ホリエモンは、2014年12月の「ホリエモンチャンネル」の中で、寿司職人になるには10年くらいかかると言われてきたが、今や半年でプロを育成する専門学校もあり、長い修業が必要なのは「1年間ずっと皿洗いをしていろ」などと言って

本書は、NHKの『ラジオ深夜便』の人気コーナーである、『絶望名言』を書籍化したものである。 著者の頭木弘樹氏は、大学3年の時に難病にかかり、その後13年間の入退院生活を余儀なくされ、宮古島に住むようになった今でも完治はしていない。ベッドに寝ているだけの状態になり、完璧に無能な存在になった時に出会った、「ぼくは人生に必要な能力を、なにひとつ備えておらず、ただ人

ここ数年、IT(情報技術)とSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の急速な発展により、人々があらゆる境界を越えてつながり、世界は激変したと実感している人は多いだろう。 ツイッターを活用して膨大な支持者層を手に入れたトランプ米大統領の誕生は、その象徴的なできごとである。 フェイスブックのような巨大IT企業が誕生し、社会の基盤となる一方で、セクシャルハ

表紙に、Mistletoeファウンダーで本書を監修している孫泰蔵氏の、「ドヤ顔でエストニアに行ったら、浦島太郎だった」という言葉があるが、本書の内容を思いきり短くまとめれば、そういうことだと思う。 日本と同じような課題を抱えながら、ブロックチェーン技術を活用して、ほぼ100%の電子政府を実現し、ユニコーンと呼ばれる評価額10億ドル以上のベンチャー企業を次々と

もうかれこれ30年くらい前になるだろうか、料理評論家の山本益博さんが食のコラムに、「日本一美味い焼肉屋を見つけた!」と、スタミナ苑のことを書いていた。 こう言われて行かない訳には行かないだろうということで、当時まだ大企業に勤めるサラリーマンだった私は、肉好きの後輩を連れ立って行ってみた。 その時の衝撃は今でも忘れられない。カルビ、ロースなどの特上の肉から、レ

本書は、「欲望の資本主義」「英語でしゃべらナイト」「爆問学問」「ニッポンのジレンマ」「人間ってナンだ?超AI入門」「ネコメンタリー」など、異色の番組を次々と世に送り出してきた敏腕プロデューサー丸山俊一の手による、ドイツの若き天才哲学者マルクス・ガブリエルのドキュメンタリー番組「 欲望の時代の哲学~マルクス・ガブリエル 日本を行く~ 」を、一冊の本にまとめたも

”Factfulness: Ten Reasons We're Wrong About the World—and Why Things Are Better Than You Think(ファクトフルネス:我々が世界を見誤る10の理由ーなぜ世界はあなたが思っているよりベターなのか?)”は、ビル・ゲイツが「これまで読んできた中で最も重要な本のひとつ(One

経済学とは何か?―こんなシンプルな質問にさえ、今の経済学は答えるのが難しい状況にある。かつて、個々の経済主体の行動から経済全体の動きを理解するミクロ経済学と、GDPなどの集計量から経済全体の動きを扱うマクロ経済学の二つが主流だった頃には、「経済現象を対象とし、それを解明する学問」で済んだものが、20世紀半ば以降、従来の主たる研究対象だった市場メカニズムだけで

建築は誰でも楽しめる。特に住宅は、衣食住の根幹をなすものだから、住宅建築に全く関心がないという人はまずいない。 加えて、日本人は世界的に見ても、建築がかなり好きな国民だと思う。美術館で建築展をやると、他のジャンルに比べて圧倒的な集客力がある。昨年、国立新美術館で開催された「安藤忠雄展―挑戦―」や、今年、森美術館で開催された「建築の日本展:その遺伝子のもたらす