
「どんな本を読むべきか」と問う人の深刻な問題『人生を変える読書』
「どんな本を読めばよいですか?」 講演会やセミナーなどで、ビジネスパーソンや学生など、さまざまな方とお会いするたびに、必ずこのような質問をいただきます。 そのように聞かれる私はじつはかなり当惑している、というのが正直なところです。もちろん、お尋ねの意図が明確な場合には、できるだけその質問の意図に沿った形でお答えするようにしてはいますが……。 たとえば「ファイ
(2024年当時)
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「どんな本を読めばよいですか?」 講演会やセミナーなどで、ビジネスパーソンや学生など、さまざまな方とお会いするたびに、必ずこのような質問をいただきます。 そのように聞かれる私はじつはかなり当惑している、というのが正直なところです。もちろん、お尋ねの意図が明確な場合には、できるだけその質問の意図に沿った形でお答えするようにしてはいますが……。 たとえば「ファイ

著者の山上信吾氏は、コロナ禍の2020年12月から2023年4月までの2年4か月、駐オーストラリア日本国大使として、日豪両国の関係発展に尽力した外交官である。 山上氏が在任期間中に、在オーストラリア日本国大使館公式ホームページに和英両文で102回発表した「南半球便り」の中から、50回余りを厳選してまとめて一冊にしたものが本書である。 2020年にオーストラリ

「走る哲学者」為末大氏自身の手による初の書き下ろし、しかも編集担当が元DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集長の岩佐文夫氏ということで、期待値は出版前から否応なしに高まっていたが、実際に本書を読んでみると、それを遥かに上回る内容だった。 私のような昭和生まれ昭和育ちにとってのスポーツは、『巨人の星』や『あしたのジョー』に代表されるような、ただひたす

近年、経済や情報のグローバル化が進み、地球規模で環境や格差などについて考える必要性が高まる中、従来の国民国家を前提としたナショナルヒストリーという狭い枠組みだけではなく、地球レベルで世界の歴史や秩序を捉え直すグローバルヒストリーという学問分野に注目が集まっている。 それ以前の欧米の学問的伝統では、歴史学というのはヨーロッパ諸国とそれに付随するアメリカの歴史に

「中国は日本の隣にある現実の並行世界、つまりリアルなパラレルワールドだ」・・・これが本書に通底する重要なメッセージです。 中国の法体系は、日本を含む西側諸国のそれとは成り立ちからして全く異なります。憲法を始めとする法律はもちろんのこと、そこには独特な行政法規や商慣行が存在し、しかもその運用を含めて、日々目まぐるしく変化しています。 既にGDPで日本の3倍以上

新型コロナの流行で多くの日本人がファイザーかモデルナのワクチンを接種したと思う。老舗のファイザーに比べて、モデルナは2010年にマサチューセッツ州ケンブリッジで創業されたばかりの新興企業である。これをファイナンス面のみならず開発面からもバックアップしたのが、同じケンブリッジのフラッグシップ・パイオニアリングというベンチャーキャピタルだということは、意外に知ら

アダム・スミスと言えば、「見えざる手」の『国富論』(1776年)で有名な、「近代経済学の父」である。『国富論』は、貿易による貴金属と貨幣の蓄積が国富だと考えられていた当時の重商主義に反対して、国民にとっての富の源泉は労働だと説いた、今日まで読み継がれている古典的名著である。 それにも関わらず、スミスは歴史上最も誤解された経済学者だと言われている。その理由は、

本書は、ジェフ・ベゾス自らの言葉による初めての本として発売された。 ベゾスといえば、米アマゾンの創業者であり、世界一の資産家としても有名だ(『フォーブス』「世界長者番付」2021年版)。最近は、自身が保有する宇宙開発企業ブルーオリジンの初の有人飛行に参加したことでも話題となった。 本書は、パート1に、1997年のアマゾンのNASDAQ(米店頭株式市場)上場以

20世紀末の日本の金融界の大混乱は、メガバンクの誕生を経て収まったかに見え、そうした視点での金融関連本は一旦下火になった感があった。しかし近年は、2016年刊行の『住友銀行秘史』がベストセラーとなり、同書の著者・國重惇史氏のバンカーとしての告白『堕ちたバンカー』、金融庁の佐々木清隆氏の半生を描いた本書など、金融界で活躍した個人に焦点を当てた本が売れている。

今年の夏にGAFAの時価総額が日本企業全体を上回り、大きな話題になった。そのGAFAの経営者の中でも、アマゾンの創業者で世界一の資産家(2021年フォーブス誌ランキング)であるジェフ・ベゾスの独創性と経営力は群を抜いている。 何はともあれ、そんなジェフ・ベゾスの本だから読んでおかなければと思い、本書をめくり始めたのだが、あまりの面白さに止まらなくなってしまっ

野球ファンであれば知らない人はいない「孤高の天才」、落合博満。選手としては、日本プロ野球史上で唯一、三冠王を3度達成した。監督としては、中日ドラゴンズを率いた8年の間に、球団は毎年ペナントレースでAクラス入りし、日本シリーズに5度進出、2007年には日本一に輝いた。 本書は監督時代の落合に中日の番記者として密着した著者によるスポーツドキュメンタリーである。だ

本書は東京から長野に移住した経営エッセイストで、「地方移住×起業×事業承継」を支援する巴創業塾の藻谷ゆかり氏による、「六方よし経営」の勧めである。 「六方よし」とは、「売り手よし、買い手よし、世間よし」という近江商人の「三方よし」に、「作り手よし、地球よし、未来よし」を加えた新たな経営理念である。これは、元国連職員の田瀬和夫氏により、SDGs時代の理念として

とてもユニークな本だ。出版社の宣伝文句には、「心を打つ『名言』があるように、心をくじく『駄言(だげん)』もあります。これは、そんな滅びるべき駄言を集めた辞典です」とある。 日本経済新聞社と日経BPは、「日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト」に共同で取り組んでいる。これは日本社会の多様性を阻むステレオタイプの撲滅を目指すプロジェクトで、本書はその一環として

『偉い人ほどすぐ逃げる』という、身も蓋もないタイトルだ。その「はじめに」には、日本の現状が次のように書かれている。 「いつも同じことが起きている。偉い人が、疑われているか、釈明しているか、逆にあなたたちはどうなんですかと反撃しているか、隠していたものが遂にバレたか、それはもう終わったことですからと開き直っているか、だ。/国家を揺るがす問題であっても、また別の

「運も実力のうち」という慣用句はよく聞くが、「実力も運のうち」というのはどうだろう。「実力」という言葉はフェアに聞こえるが、それが単に「生まれ」という「運」による幻想にすぎないとしたら。 そうした不都合な真実に切り込んだのが、米ハーバード大学のマイケル・サンデル教授による本書である。原題は“The Tyranny of Merit”、直訳すれば「能力の専制」

『安いニッポン』というタイトルは、少し前ならキャッチーなものだったかもしれないが、今となってはうら寂しく感じられる。多くの国民が、世界の先進国と比べると自分たちは「下流」だ、ということに薄々気づいてしまっているからだ。 本書は、一昨年、日本経済新聞に掲載された「安いニッポン」シリーズをベースに、新たな取材から得た話などを盛り込み書籍化したものだ。連載時とくに

久しぶりに江戸前寿司について、アップデートされた情報満載の本が出版された。 江戸前寿司に関しては、その昔は北大路魯山人の『握り寿司の名人』(1952年)、最近では川路明の『江戸前にぎりこだわり日記―鮨職人の系譜(御馴走読本)』(1993年)が極めつけだった。その後は、寿司ブームに乗って似たり寄ったりの本がたくさん出版されたが、どれも物足りなかった。有名な店を

今回は4月1日に発売される私自身の著書『読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊』を紹介させて頂きます。 いまだ収まらない新型コロナ禍の中で、今はほとんど軽井沢にこもってオンラインで仕事をこなしています。実は一昨年から新著の執筆を依頼されていたのですが、東京と軽井沢を往復しながら多くの仕事に従事していたため、とても執筆の時間

本書はさまざまな読み方ができる多面的なビジネス書である。江副浩正という希代の経営者の波乱に富んだ人生をつづった伝記として、戦後のわが国の企業がたどってきた経営史として、そしてリクルートという会社の特異なビジネスモデルの研究書として読むことができる。 江副は非常に人見知りをする性格で、創業社長にありがちないわゆる「親分肌」ではなかった。それが逆に功を奏し、自分

本書の著者ファリード・ザカリアは、米CNNの報道番組「Fareed Zakaria GPS」のホスト役を務めている。同時に、ワシントン・ポスト紙のコラムニストを務めるなど、ベストセラー作家であり世界的コラムニストである。 米マイクロソフトの共同創業者であるビル・ゲイツが今回の新型コロナウイルスのようなパンデミックを、2015年のTEDトークで警告していたのは

本書は、今年度で京都大学を定年退官するHONZレビュアーの鎌田浩毅教授の最新刊であり、退官記念論文とも言える力作である。これは全ての日本在住者に等しく関わるものなので、是非、手に取って熟読して頂きたい。 本書のポイントは、1000年に一度という2011年の東日本大震災をターニングポイントとして、日本列島全体が地震の活動期、地球科学的に見た「動く大地の時代」に

組織の中で、自分の発言が曲解されてしまうのではないかとか、それで足を引っ張られるのではないかと心配しだしたら、表立った発言は控えるようになり、裏で根回しするようになるのではないだろうか。 今回の東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の女性理事登用についての発言も、むしろそうしたありがちな状況を積極的に利用して会議を早く終わらせてしまおうという、いかにも日本的

新型コロナ禍でのマスク不足対策で大成功を収め、世界的な脚光を浴びたのが、ジェネレーションYと呼ばれる若い世代を代表する、台湾の「天才デジタル担当大臣」である。そんな39歳のオードリー・タンが、本当の自由とは何か、どうしたら手に入れることができるのかを、「本書を手にした日本のみなさんへ」と語りかけたのが本書だ。 オードリーが表象するものは、あらゆる既成概念から

本書を読んで、まずこれはとても正直な本だと思った。未来予測本にありがちな過度な楽観論を振りまく訳でもなく、かと言って日本人特有の過度な悲観論でもない。煽らず卑下せず、必要十分なことが淡々と書かれている。 そして、本書は、とにもかくにも還暦を迎えた私などより若い人に是非読んでもらいたいと思う。と言うより、若い人は絶対に読まなければいけない必読書である。 著者の

本書は、世界的ベストセラーとなった3部作『サピエンス全史』『ホモ・デウス』『21Lessons』の著者であるユヴァル・ノア・ハラリが、本年3〜4月、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが最初のピークを迎えていた中で発表した見解をまとめたものだ。 前半は米国の『タイム』誌、英国のフィナンシャル・タイムズ紙、ザ・ガーディアン紙への寄稿で構成され、後半はNHKの

「一体あとどれくらい経済成長すれば人々は豊かになれるのだろうか?」 これが本書の投げかける根源的な問いである。 この問いに対して正面から答えてきた人はどれだけいるだろうか? そして、これこそが、今、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリに代表される世界のジェネレーションZ(1990年代中盤以降に生まれた世代)やジェネレーションY(1980年代序盤から1

本書は、経営学者の野中郁次郎と竹内弘高による世界的ベストセラー『知識創造企業』の四半世紀ぶりの続編である。ナレッジマネジメント分野では最も重要な文献の1つとされるこの前著では、新しい組織的知識がSECI(セキ)(共同化 Socialization、表出化 Externalization、連結化 Combination、内面化 Internalization)

本書は、米ハーバード大学医学大学院教授で長寿と加齢研究の世界的権威であるデビッド・A・シンクレアらによる、われわれの生命観と人生観を覆す、まったく新しい生命科学書である。 本書の要旨は、「老化は自然の摂理ではなく病気で、治療によって治すべきだし、実際に治すことができる」というものだ。もちろん、2000年前に秦の始皇帝が不老不死の薬を求めたような怪しげな話では

本書は、マルクス・ガブリエル(ボン大学教授)と中島隆博(東京大学東洋文化研究所教授)という、ドイツと日本を代表する哲学の泰斗が、これまでとは全く異なる視点で哲学のあり方を論じた新しい啓蒙書である。 これは、世にありがちな哲学の解説書でもなければ、哲学者が自分のべき論を世に訴える思想書でもない。本書の何が秀逸なのかと言うと、哲学は何のために存在するのか、哲学が

1997年に発覚した、民間金融機関などによる大蔵官僚への過剰接待事件以降、官僚の劣化が止まらない。中央官庁というのはブラック企業の典型であることが詳(つまび)らかになり、ルサンチマンを抱えた国民のバッシングを浴び、天下りも禁止される中、新卒採用での人気低下、止まらない若手の大量退職など、側から見ていても同情を禁じ得ないほど地盤沈下している。 こんな状態では官

本書の冒頭で、思想家チャールズ・アイゼンシュタインの、「バンカーとは、おカネを美しく使う人を探してくる人のことをいう」(『聖なる経済学』)という言葉が紹介されている。本書のタイトルである「誇りある金融」とは、こういう金融のことをいうのであろう。では逆に、「誇りのない金融」とはどういうものか。 銀行は、しばしば「晴れの日に傘を貸して雨の日に取り上げる」と言われ

本書の著者・渋澤健は、日本の「資本主義の父」渋沢栄一の玄孫(やしゃご)だ。彼は、外資系金融会社や投資ファンドを経て、現在は長期の積立型投資信託を主軸とするコモンズ投信のファウンダー兼会長を務めている。 栄一が、その代表的著作『論語と算盤(そろばん)』で説き、実践した経営哲学は、倫理と利潤の両立を目指す「道徳経済合一説」である。著者は、こうした栄一の経営思想を

本書は「事業再生のプロ」冨山和彦のビジネスマン人生の集大成ともいうべきものである。 産業再生機構COO(最高執行責任者)として八面六臂の活躍をした著者だが、彼が去り、跡を継いだ産業革新機構や政府の経済運営は、すべてを金融政策に押しつけて現実から目を背けてしまった。 そうして水面下に潜ってしまった日本経済の病理を鮮やかにあぶり出したのが、今回のコロナショックが

「これまでのやり方が通用しなくなり始めている」 これは多くの伝統的な日本企業が抱いている実感だろう。市場環境の急激な変化、AI(人口知能)を始めとするデジタル技術や新興企業の参入によるディスラプション(創造的破壊)、従業員の価値観の多様化や働き方改革など、企業は従来のやり方では対処できない数多くの現実に直面している。 本書は、2016年に出版された『両利きの

現代社会において、ポストモダニズムからポストトゥルース(ポスト真実)が広がり、それがトランプ米大統領誕生やブレグジットに見られるポピュリズムの台頭につながっている。哲学界の若き天才マルクス・ガブリエルの「新実在論」は、こうした閉塞感を打ち破る、新しい哲学である。 新実在論の新しさは、現実は物理的な対象だけではなく、それに関する見方、心情、信念、思想、空想とい

日本では4月24日発売予定の、イタリアの小説家パオロ・ジョルダーノ*によるエッセイ『コロナの時代の僕ら』の全文が期間限定で公開されていたので、早速、読んでみた。 このエッセイは、イタリアでコロナウイルスの感染が広がり、死者が急激に増えた2月下旬から3月下旬に綴られたものだという。著者は、この本の印税収入の一部を、医療研究と感染者の治療に従事する人々に寄付する

本書にも書かれているように、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授は、これからの時代は「何をやっているかわからない人が強い」と言っている。 京都大学、東京大学修士、三菱UFJニューヨーク、米ハーバード大学理学修士、グーグルを経て、現在は日米にまたがるベンチャー投資のかたわら、ハーバード大学客員研究員やテレビコメンテーターなどを務める38歳。この世界では超有

「貨幣とは何か?」「その価値の根拠はどこにあるのか?」 これは誰でも一度は考えてみたことがあり、古代ギリシアの哲人アリストテレス以来、多くの哲学者や経済学者によって考察がなされてきた、シンプルでありながら実は極めて難解な問いである。マルクスの言葉を借りれば、貨幣とは「形而上学的な不思議さに満ち満ちた存在」なのである。 本書は、日本を代表する経済学者で、稀代の

経営学者で未来学者のピーター・ドラッカーは、1985年の著書『イノベーションと起業家精神』の中で、未来予測における人口動態(demography)の有用性について、「人口、年齢、雇用、教育、所得など人口構造にかかわる変化ほど明白なものはない。見誤りようがない。予測が容易である。リードタイムまで明らかである」と語っている。 昨年6月に発表された国連報告書『世界

本書は10年前に発売された安宅和人氏の名著『イシューからはじめよ』の続編とも言える、ファクトベースの現状分析に基づいた、新たな時代に向けての日本社会への提言書である。 本書の主題は、冒頭にある以下の文章に集約されている。 「ほとんどの人は、あまりにも多くのことが変数として一気に動く目まぐるしさの中で、変化が落ち着く日を待っているようだ。でも、残念ながらそんな