
『7つの人類化石の物語 古人類界のスターが生まれるまで』
確かあれはホワイトデーの頃だっただろうか。インターネットのニュースサイトを見ていて、こんな見出しに目がとまった。「ミカン買いに行き、海岸の石蹴ったら恐竜の歯が出た」 和歌山県の地層から肉食恐竜、スピノサウルスの歯の化石が見つかったニュースを伝える記事で、朝日新聞が2019年3月14日に配信したものだった。ほかの報道もあわせて情報をまとめてみると、西日本でスピ
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確かあれはホワイトデーの頃だっただろうか。インターネットのニュースサイトを見ていて、こんな見出しに目がとまった。「ミカン買いに行き、海岸の石蹴ったら恐竜の歯が出た」 和歌山県の地層から肉食恐竜、スピノサウルスの歯の化石が見つかったニュースを伝える記事で、朝日新聞が2019年3月14日に配信したものだった。ほかの報道もあわせて情報をまとめてみると、西日本でスピ

陸に生きるわたしたちがなかなか目にすることのできない魚の世界。水のなかに棲む魚たちはいったいどんなふうにこの世界を知覚し、どんな工夫を凝らして生きているのでしょうか。 サケが生まれた川に帰ることやマグロが海を回遊していることは有名ですが、サケが母川のほんの微量なにおい物質を嗅ぎつけてたどっていくこと、マグロが対向流熱交換システムで体全体を温め、冷たい水のなか

ハチやアリの毒針は、そのライフスタイルを映し出す鏡らしい。ひとくちにハチ・アリ類と言っても、じつに多彩で、みな独特の生き方をしている。しかし、その毒針の機能は、見事なくらいその生存戦略にぴったり合っているのだ。毒針の痛さとライフスタイルの、切っても切れない関係について語ったのが本書である。 本書の著者は、虫刺されの痛みのスケール(尺度)を作った功績で2015

食べること。生命を維持するのに欠かせないだけでなく、日々の楽しみでもある。そんな「食」の背後にどんな歴史があり、どんな技術が注ぎ込まれているのか、私は格別に考えることもなくこの楽しみをただ味わってきた。本書『戦争がつくった現代の食卓』の翻訳に携わってはじめて、自分が日ごろ慣れ親しんでいるさまざまな食品を生み出した研究や開発の試みの数々を知り、その恩恵に感謝す

高校2年生のことだ。クラスメートのお弁当箱(というかプラスチックの密閉容器)に入っていたのはリンゴだけ。昼ご飯はそれだけだと言う。「リンゴダイエット」だ。おかずとご飯でぎゅうぎゅうのお弁当箱を広げていた私には信じられなかった記憶がある。リンゴダイエットは今も根強い人気があるらしく、インターネットで検索すると何千件もヒットする(もちろん広告サイトも多いはずだ)

著者のマリー・カーペンターは米国でも環境や食の安全に対して住民意識が高い先進地域に在住するジャーナリストで、ダムを取り壊した川にサケが還ってきた事例など、環境問題に関する報道も多く手掛けている。 本書ではまず、もともとは呪術者や王侯貴族専用の「魔法の薬物」だったチョコレートやコーヒー、お茶など、カフェインの入った飲食物が一般大衆にも嗜好品として普及するように

『脳はいかに意識をつくるのか――脳の異常から心の謎に迫る』は、Neuro-Philosophy and the Healthy Mind: Learning from the Unwell Brain(W.W. Norton & Company, 2016)の全訳である。原題からわかるように、本書は、うつ病、統合失調症などの精神疾患を抱える患者の臨床的な症例

お酒をいただくときには五感をフル稼働して繊細な味覚を楽しみ、時には酒造工程に思いを馳せて薀蓄を披露するという人がいる一方で、そんなことにはまるで疎く、とにかく酔えばよいという人もいます。残念ながら訳者は後者に属します。そんな訳者でもいつもの一杯を丁寧に飲もうという気にさせてくれたのが本書です。 本書はAdam Rogers著『Proof: The Scien

科学技術の進歩はめざましい。日ごろの暮らしではあまり気にとめていなくても、何かの出来事やニュースがきっかけで、世の中はここまで進んでいるのかと驚かされた経験をもつ人も多いのではないだろうか。 バイオテクノロジーの進歩も例外ではなく、人間が生命を自由に操れる時代が着実に近づいている。本書では新進気鋭の科学ジャーナリスト、エミリー・アンテスが、さまざまな技術を駆

ラジオ番組の取材で地下の下水道に入ったら、不思議な音響に遭遇した。それがきっかけで、本書の著者トレヴァー・コックスは”音の驚異”のコレクターとなった。マンチェスターのソルフォード大学に勤務するコックス教授は、本来は室内音響学を専門としている。インドア派かと思いきや、世界各地から音に関する情報が寄せられると、自ら体験するために機材を抱えてフットワークも軽やかに

光が氾濫する現代に生きていると、夜が本当の暗闇に包まれていた時代を思い描くのは難しい。安全や便利さと引き換えに、当たり前の存在であったはずの星空を失なったことは、生態系や私たちの生活・健康にまで影響を与えているという。本書は、もっとも明るい都市からもっとも暗い砂漠まで、世界各地を訪ね歩き、失われつつある「夜」の価値を問い直した一冊だ。巻末に寄せられた角幡 唯

人の命は何物にも代えがたい。何としても救うべきものだ。しかし、「人間はだれでもみな死ぬ」ことが厳然たる事実である以上、科学の力で命を繋ぎ止めても、それにはかならず代償がつきまとう。 本書は、蘇生術の歴史を丹念に説き明かすともに、蘇生科学の研究の最前線を追い、さらには、タブー視されがちな倫理の問題にまで踏み込んだ骨太な力作である。 「僕らは命を救っているという

物理学というのは難しいと思う。 いや、物理学なんて簡単だという人だっているかもしれないし、難しいと感じる人のあいだでも、難解に感じる点は人それぞれ違うだろう。私が感じる難しさは、物理学で取り扱われている力やエネルギーといったさまざまな要素が「目に見えない」点だ。 もちろん、物理学的な現象は目に見える。放り投げたボールが放物線を描いて飛んでいく、照明のスイッチ

あまり科学的でない個人的なエピソードから、始めさせてください。 五年前、わたしは父の臨終に間に合いませんでした。明け方、宿直の若い医師からの電話でたたき起こされ、母とタクシーで駆けつけた時は、すでに息を引き取ったあとでした。病室に飛びこんだわたしは、気持ち良さそうな父の寝顔に、もちなおしたのだと、ほっとして、静かに枕元に向かおうとしました。背後で聞こえた「間

信頼の裏切りがニュースにならない日はほとんどない―最近では、フォルクスワーゲンが排ガス規制を逃れるために不正なソフトウェアを搭載していたことが発覚し、ドイツ自動車業界の信頼性が揺らぐ事態となった。そうしたことがニュースになるのは、信頼の裏切りが社会に重大な影響を与えるからだが、逆に言えば、人間社会は信頼の上に成り立っていると言ってもよく、信頼はあらゆる人間関

市場均衡、合理的期待、効率的市場仮説...。これまでの経済思想では、もはや現実の世界を説明することは出来ない。物理学の視点から、経済学の常識へ果敢に切り込んだ『市場は物理法則で動く』。本書の翻訳者解説と、物理経済学の歴史的な経緯を紐解いたソニーCSL研究所・高安秀樹氏による解説記事「経済物理学の誕生と発展」を併せて掲載いたします。(HONZ編集部) 「『今回