
『私が弁護士になるまで』文庫解説 by 笠井 信輔
「ちょっと待って、俺が書くの?」。文庫本の解説など書いたことがない。ほかに適任者がいるはずである。しかし電話の向こうでは、あっけらかんと「だって、私が書いた2冊の本の両方に出てくるの笠井さんだけなんですよぉ」。電話口なのに、下からいたずらっぽい目でこっちを見上げたような物言いに負けてしまい、返す言葉が見つからない。こうして、局アナから弁護士になった初めての女
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「ちょっと待って、俺が書くの?」。文庫本の解説など書いたことがない。ほかに適任者がいるはずである。しかし電話の向こうでは、あっけらかんと「だって、私が書いた2冊の本の両方に出てくるの笠井さんだけなんですよぉ」。電話口なのに、下からいたずらっぽい目でこっちを見上げたような物言いに負けてしまい、返す言葉が見つからない。こうして、局アナから弁護士になった初めての女

本書は「特攻の生みの親」と言われた海軍中将大西瀧治郎が、いかなる真意のもとに特攻作戦を指導し、死に至るまで徹底抗戦を呼号したか、その解明を試みたものである。 著者神立尚紀は、太平洋戦争について海軍航空隊の戦いを中心にして、高い記録性を持つ数々の優れたノンフィクションを世に送ってきたが、これまで特攻作戦を書くのは「意識して」避けてきたと言う。その神立があえて今

「1985年のクラッシュ・ギャルズ」というタイトルを見た時に懐かしいと感じる方は、きっとこの作品を読み始めたら止まらなくなるでしょう。私もその一人でした。 一方、クラッシュ・ギャルズを知らない世代の方々にとっては、本書は楽しめない物なのでしょうか。いえいえ、きっと読み始めたら止まらなくなるから読んでみてと、私は自信を持ってお薦めします。 女子プロレスと聞いて

二〇一一年三月十一日に勃発した東日本大震災にさいして、地元紙・河北新報が、震災にいかに対応し、何をどう伝えたか……を克明に記すドキュメントである。 河北新報は、宮城・仙台を本拠に、東北各県をエリアとするブロック紙である。震災で本社の建物は持ちこたえたが、沿岸部にある支局や販売店は軒並み被災した。販売店でいえば、店主が死亡した店が三店、全壊が十九店舗。配達員な

本書を私もまた、公田耕一の謎を解いてくれるものだと思い込んで、読み進めていたのは事実である。しかし、本書の読みどころはそこではなかった。著者は読者の期待を裏切ったのだろうか。 一面で「内閣支持急落22%」と麻生内閣の不人気を伝えた二〇〇八年十二月八日、「朝日歌壇」欄に公田耕一は彗星のように現れた。複数の選者に重複して評価された☆マークを三首で六つ獲得したので

今の世の中に、こんなに危険に満ちた旅があるだろうか。 本書に書かれている脱出劇は、二〇〇三年七月に始まった。食糧難などで中国に密かに越境した北朝鮮の人たちは、距離にすると三千キロ以上、ほぼ日本列島を縦断する長い距離を列車でひたすら南に向かっていく。途中で二回ベトナムとカンボジアの国境を越えなければいけないが、最大の難関は、中国国内を無事に通過することだ。 脱

二〇一三年のゴールデンウィークの休み中、資料を整理していたら、古い新聞の切り抜きが出てきた。そのいくつかが福島香織さんの記事だった。北京駐在としては初めての日本人女性新聞記者ということで、彼女の記事はいつも注目していたのだ。 福島さんに初めて直接会ったのは、二〇〇一年十二月の台湾の立法院・地方首長選挙のときだったと思う。当時、産経新聞の台北支局長だった矢島誠

ひとりの進行性重度身体障害の男がいた。 渡辺一史さんがこの本を書いている大半の日々では、まだいきいきと生きていた人だった。 その鹿野靖明さんと、亡くなるまでに関わった多くのボランティアの人たちとの物語である。 と書くと、ああよくあるやつね、と内容の見当がついてしまうような気がする人もいるかもしれない。それは間違いです。これはまったく、よくある本ではない。凄い

本書は、戦前・戦後を通じた昭和日本の「国家戦略と情報」を考える上で、絶好の評伝となっている。また、辰巳栄一という人物について、これまでは「歴史の脇役」として戦前・戦後の昭和史の一局面で時として顔を出し短かく言及されることはあったが、本格的な評伝が書かれるのが、なぜ「これほど遅く」なってしまったのか、とさえ思える重要な人物である。そこに、日本人の戦略思考やイン