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『1本5000円のレンコンがバカ売れする理由』バカ売れのヒントは経営学ではなく民俗学? 書影

民俗・風俗 / ビジネス

『1本5000円のレンコンがバカ売れする理由』バカ売れのヒントは経営学ではなく民俗学?

霞ヶ浦のレンコン農家に生まれ、社会学で博士号を取得し、民俗学の研究者となり、二刀流ではじめた超高級レンコンの商品開発に成功したアラフォーの物語だ。いまではニューヨークやパリのレストランでも使われているという。 しかし、けっして頭脳明晰な新世代農業経営者の成功物語ではない。研究者として民族学会に出席していた著者は、先輩研究者から「中国行ってレンコン1本1万円で

多様なイラストレーションによって彩られた、奇想小説執筆ガイド──『ワンダーブック 図解 奇想小説創作全書』 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

多様なイラストレーションによって彩られた、奇想小説執筆ガイド──『ワンダーブック 図解 奇想小説創作全書』

本書『ワンダーブック 図解 奇想小説創作全書』は、『全滅領域』(これを原作とした映画もnetflixで公開されている)から始まる《サザーンリーチ》三部作で知られる作家・ジェフ・ヴァンダミアによる執筆ガイド本である。本書には他の執筆ガイドと異なる特徴が主に2つある。ひとつは、あらゆるページに挿入されている多彩なイラストレーションが、ガイドの内容を補完し、時にま

『捨てられる銀行3』「変わらない」道を選んだ、未来と向き合わない銀行 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『捨てられる銀行3』「変わらない」道を選んだ、未来と向き合わない銀行

本書は、ベストセラーになった共同通信社の橋本卓典記者による、『捨てられる銀行』シリーズの続編である。また日本版「金融排除」の問題点を鋭く指摘した著者の『金融排除 地銀・信金信組が口を閉ざす不都合な真実』と同じ問題意識に立脚している。 バブルの崩壊と「金融処分庁」による圧政の時代を経て、企業の実態を見る力を失ったことが、銀行というビジネスモデルを根幹から揺るが

リッツ・カールトン本にハズレなし『伝説の創業者が明かす リッツ・カールトン 最高の組織をゼロからつくる方法』 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

リッツ・カールトン本にハズレなし『伝説の創業者が明かす リッツ・カールトン 最高の組織をゼロからつくる方法』

書店員時代から「リッツ・カールトン本にハズレなし」という経験則が私の中である。ビジネス書には名作を生み出す鉄板ジャンルというものがいくつかあるのだが、リッツ・カールトン本もその一つだ。サービス・ホスピタリティ関連ではスターバックス本にもハズレがない。その中でも、経営者が自らの経験を書いた本には良書が多い。 例えば、スターバックスの創業者、ハワード・シュルツの

読めば気分が…、医学譚全61話 『爆発する歯、鼻から尿―奇妙でぞっとする医療の実話集』 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

読めば気分が…、医学譚全61話 『爆発する歯、鼻から尿―奇妙でぞっとする医療の実話集』

珍書というべきか奇書というべきか、何しろ驚愕の一冊である。『鼻から尿』??「♫チャラリー鼻から牛乳」の嘉門タツオもびっくりだ。それに『爆発する歯』??そんなことあるはずないやろ!という気がするのだが、いずれもがれっきとした医学雑誌に載っている症例報告なのである。17世紀から19世紀の医学雑誌に紹介されたさまざまな信じがたい論文を集めたのがこの本だ。さて、読め

『宇宙と宇宙をつなぐ数学』未来からやってきた数学理論 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『宇宙と宇宙をつなぐ数学』未来からやってきた数学理論

数学に関する本を読んで感動したのは初めてかも知れない。以前、NHKスペシャルで、ロシアの天才数学者グリゴリ・ペレリマンが数学の超難問「ポアンカレ予想」を証明した過程を追ったドキュメンタリー番組『 100年の難問はなぜ解けたのか ~天才数学者失踪の謎~ 』を見て、数学の世界のすさまじさに感心したものだが、それをはるかに上回る衝撃である。 2012年8月30日、

『さあ、バリアフリー温泉旅行に出かけよう!』経験豊富な温泉ライターが教える安心で安全な“楽しみ方” 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『さあ、バリアフリー温泉旅行に出かけよう!』経験豊富な温泉ライターが教える安心で安全な“楽しみ方”

ここ10年あまり、一人暮らしの老母を誘い、年に一度は温泉旅行に出かけている。毎年楽しみにしているが80歳を超えたころから足腰が弱くなり、バリアフリーの旅館を選んでも不満が残ることが多くなった。 そんなときに見つけたのが本書である。世界32か国もの温泉を巡って取材し、温泉専門のライターとして活躍する山崎まゆみが、高齢者や障がい者の旅行に同行して実地を検分、自ら

『執念深い貧乏性』無意識の隷属状態からいかに抜け出すか 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『執念深い貧乏性』無意識の隷属状態からいかに抜け出すか

読者を選ぶ本だろう。タイトルからは内容を想像できず、目次を眺めたら困惑してしまうはずだ。第1章「どすこい貧乏、どすこいセックス─女力士はエイリアン」から始まり、この調子で第12章「ババア一擲─なにがわたしをこうさせたか」まで続く。あえて書評らしく紹介すれば、「アナキズム(無政府主義)を専門とする著者が現代の課題を先人の生き様と結びつけ、型にはまらない文体でそ

大人が買わざるを得ない図鑑 『キン肉マン「超人」初回限定ケース版 (学研の図鑑)』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

大人が買わざるを得ない図鑑 『キン肉マン「超人」初回限定ケース版 (学研の図鑑)』

「もしもキン肉マン超人が実在したら・・・?」700体以上の超人を仲間ごとに分類し、美しいイラストで紹介した図鑑が発売になった。しかも、来年50周年を迎える「学研の図鑑」のラインナップとして。なつかしさバクハツ、激アツである。発売前から大反響で、多数の予約注文が入ったそうだ。ただし、購入者層には偏りがあったという。 それは、もしかしたらHONZ閲覧者層と年代・

『性と欲望の中国』爆買いから爆セックスへ 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『性と欲望の中国』爆買いから爆セックスへ

「爆買いから爆セックスへ」。手に取るのを敬遠してしまいそうな帯だが、先日、『八九六四』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した書き手の作品と聞けば買いの一手だ。とはいえ、「爆セックス」が受賞後第一作とは幸なのか不幸なのか。 「はじめに」で著者が指摘するように、カネや食のように人間の欲望を反映する営みで社会を読み解くのは非常に有効である。エロも然りである。いや、

『数学者が検証! アルゴリズムはどれほど人を支配しているのか?  ~あなたを分析し、操作するブラックボックスの真実』正しく付き合うために、知っておくべきこと 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『数学者が検証! アルゴリズムはどれほど人を支配しているのか? ~あなたを分析し、操作するブラックボックスの真実』正しく付き合うために、知っておくべきこと

「Facebookがあなたについて知っていること」。そう検索してみると、似たような趣旨のタイトルがいくつもヒットする。「あなたのすべてを知っている」、「隠しているはずのことまで知っている」、「気づかないうちに追跡されている」。確かに気味の悪い話だが、では実際のところ、私たちは「どれほど」アルゴリズムに支配されているのか? 数学者である著者は、さまざまな研究に

『人喰い ロックフェラー失踪事件』精神世界と現代社会、両者間の深刻な断絶 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『人喰い ロックフェラー失踪事件』精神世界と現代社会、両者間の深刻な断絶

「虚実皮膜」とは、芸術は虚構と事実との、皮と膜とのようなほんのわずかな間にあるという意味で、近松門左衛門が語ったとされる言葉だ。しかし、実際にそうかは時と場合によるだろう。本書で扱われる「ロックフェラー失踪事件」について知れば、「虚実の皮膜」にあるのは悲劇でしかないということを痛感する。 事件は1961年のオランダ領ニューギニアで起きた。ロックフェラー家の一

祝 復刊!!『戦後最大の偽書事件「東日流外三郡誌』 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

祝 復刊!!『戦後最大の偽書事件「東日流外三郡誌』

本書の単行本が出版されたのは2006年の年末のことだ。出版社は、今は無き新人物往来社。当時、本屋をめぐって新刊を探していた時に、棚から私を誘ってきた本だった。 タイトルを見た瞬間に気持ちが鷲づかみにされた。「ツガルソトサングンシ」と読むこの文書の話を私が初めて聞いたのはずいぶん前のことだ。「青森の旧家から見つかった、大和朝廷に対抗した豪族の記録」で、当時から

狙うは女と口『ユダヤの商法』 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

狙うは女と口『ユダヤの商法』

ビジネス書の名著と言われていながら、長らく絶版となっていた藤田田(ふじたでん)の『ユダヤの商法』が、他の著作とともに6冊同時に復刊した。私が書店で働いていたとき、この本を除く5冊はまだ販売されていたのだが、この中で一番評価の高かった『ユダヤの商法』だけは、なぜか絶版になっていて、読むことができなかった。当時、この本を読むには高値で取引されていた古本を買うしか

『トッカイ』バブルの後始末はまだ終わっていない 書影

社会 / 事件・事故

『トッカイ』バブルの後始末はまだ終わっていない

平成が終わった。元号なんて日本でしか通用しない、世界は西暦だ、などと言われてしまえばその通りなのだが、大学入学で上京したのが平成元年だったこともあって、個人的にはやはり平成の終焉は感慨深いものがある。 平成とはどういう時代だったのだろうか。 平成元年、1989年12月29日に日経平均は史上最高値の3万8915円87銭をつけた。ところが翌年1月から株価の下落が

『実験思考 世の中、すべては実験 』本の値段を読者に委ねてみたら… 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『実験思考 世の中、すべては実験 』本の値段を読者に委ねてみたら…

実に面白い。本の中身の前に、まず本を売る仕組みについてだ。 本書は、価格が読者に委ねられた一冊である。紙の本を購入する場合は印刷原価に相当する390円、電子版については0円を支払う。その後、価格設定をいくらにするかを読者自身が決め、特設サイトから支払うという仕組みなのだ。 ちなみに発売から3日経った段階での支払総額は43,569,400円。支払った人の数が6

『ネオナチの少女』ドイツに根づくナチズムという悪夢 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ネオナチの少女』ドイツに根づくナチズムという悪夢

本書の題名は『ネオナチの少女』となっているが、著者のハイディ・ベネケンシュタインは自らを「ネオナチ」とは定義していない。「ネオナチの人々とは、思想も生い立ちもまったく違う」と言い切る。彼女はかつての自分を「ナチそのもの」だと定義する。 現代の若い女性が「ナチ」を名乗るのは少し奇異に感じるが、本書を読み進めるとすぐに合点がいく。 彼女の祖母はヒトラーユーゲント

「社長のおくりびと」が書いた 『0円で会社を買って、死ぬまで年収1000万円』 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

「社長のおくりびと」が書いた 『0円で会社を買って、死ぬまで年収1000万円』

本書は、新しい時代のキャリアプランについて書かれた本だ。しかし著者の略歴には、次のように書かれている。「後継者不在などで存続の危機にある中小企業を700社以上支援してきており、「社長のおくりびと」の異名をもつ・・・」この経歴に、興味を持つ方は多いに違いない。ただ一瞬、タイトルとの間に違和感を覚えるかもしれない。しかし、よく考えてみれば事業買収の一方の主役は売

『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』その何気ない行動が、ゾウの生死を分ける 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』その何気ない行動が、ゾウの生死を分ける

アフリカでゾウの密猟が急増していると聞かされても、多くの人にとって自分事として捉えることが難しいだろう。しかしゾウが殺されているのは、決して食糧としての肉を目的としたものなどではない。付属物にすぎないはずの象牙が1kgあたり2000ドルで闇取引され、遠く中国や日本にやってくるのだ。 サバンナのダイヤモンドとも言われる象牙。本書は、元アフリカ特派員の著者がアフ

『ゆるカワ日本美術史』日本独自のアート 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『ゆるカワ日本美術史』日本独自のアート

笑う埴輪の兵士。 相撲をとる蛙とウサギ。 シャボン玉を吹く金魚。 本書に登場する作品は、とにかく可愛く、とにかくユルい。 アートの文脈をひもとくと、西洋では19世紀半ばのルネサンス以降、より実物に肉薄するリアリズムの追求が芸術の目標だった。ミケランジェロの彫刻は肉体をリアルに再現し、遠近法をふまえた絵画は実際の風景があるかのように見せた。そこからセザンヌやゴ

『レオナルド・ダ・ヴィンチ』ダ・ヴィンチ伝の最終決定版 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『レオナルド・ダ・ヴィンチ』ダ・ヴィンチ伝の最終決定版

レオナルド・ダ・ヴィンチについては、これまで数多くの本が出版されてきたが、本書は正に、「ダ・ヴィンチ伝の最終決定版」である。 ダ・ヴィンチの作品に焦点を当てたこれまでの評伝とは一線を画し、世界的な伝記作家であるウォルター・アイザックソンが、現存する7,200頁ものダ・ヴィンチの自筆ノートを全て読破した上で、それをベースに執筆している。 日本でも、2005年に

『ネコ・かわいい殺し屋 生態系への影響を科学する』野良ネコへの愛情はリスクを孕む 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

『ネコ・かわいい殺し屋 生態系への影響を科学する』野良ネコへの愛情はリスクを孕む

本書を読む少し前、環境省による奄美大島のノネコ(野生化したネコ)への対策が議論を呼んでいるとのニュース記事を読んだ。ノネコが国の特別天然記念物であるアマミノクロウサギなどを捕食するため、昨年夏から捕獲が始まり、引き取り手が見つからなければ殺処分される。そのために動物愛護団体との対立が深まっているというものだ。野良とはいえ、あんな気ままでのんびり屋のネコがそこ

『「盛り」の誕生』世界に広がる女の子発のカルチャー 書影

サイエンス / 社会

『「盛り」の誕生』世界に広がる女の子発のカルチャー

まず本の表紙をよーく見ていただきたい。 きれいな女性だが、どこか人工的な印象を抱かないだろうか? 肌の質感はなんだかプラスチックを思わせるし、髪も地毛だけじゃなさそうだ。なによりも「目」が明らかにナチュラルではない。こんなに目の大きい人物がいるだろうか。しかも黒目にも細工が施されているみたいだ…… あなたが抱いた印象は間違いではない。この女性の顔は加工されて

植物プランクトンが地球温暖化を解決する!?『海と陸をつなぐ進化論』 書影

サイエンス / 生物・自然

植物プランクトンが地球温暖化を解決する!?『海と陸をつなぐ進化論』

地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)の増加。従来はその排出を抑えることに注目が集まっていたが、最近では排出削減だけでなくCO2の吸収も注目されつつある。CO2の吸収といえば、森林などの陸上植物を想像しがちだが、実は陸上植物と同じくらいCO2を吸収し、大気中にもどしてくれている場所がある。海だ。 森林など陸上で吸収されるCO2は年間22億トンに対し、海

衝撃! ”生命科学クライシス-新薬開発の危ない現場” 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

衝撃! ”生命科学クライシス-新薬開発の危ない現場”

「なんとかの危機」的な本はけっこう多い。執筆は専門家ではなくてジャーナリストだし、「煽り系」の本がまた出たかと思って読み始めた。しかし、まったく違っていた。生命科学研究におけるさまざまな問題点が、順を追って鋭く冷静に指摘されていく。 資料をまとめただけではない。そういった問題に関係するノーベル賞受賞者も含めた多くの研究者へのインタビューも満載だ。口はばったい

効率より想像を探究する 3冊 書影

アート・スポーツ / ビジネス

効率より想像を探究する 3冊

どんな時代にも想像力は大事な意味を持つが、対局にある「効率」に打ち負かされる。効率はわかりやすく、想像力はわかりにくい。さらに、想像力はつかみどころがなく扱いが難しい。働き方改革で、わかりやすい業務の効率化が主要な施策で、想像力の出番はほぼない。目的がはっきりしない試行錯誤やぼんやり想像する時間は、短期的な効率追求を目指す組織の中では無駄扱いだ。 組織の中で

何でも治ることを売りにした最悪の治療法の歴史──『世にも危険な医療の世界史』 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

何でも治ることを売りにした最悪の治療法の歴史──『世にも危険な医療の世界史』

現代でもインチキ医療、危険な医療はいくらでも見つけることができるが、過去の医療の多くは現代の比ではなくに危険で、同時に無理解の上に成り立っていた! 本書 『世にも危険な医療の世界史』 はそんな危険な医療史を、元素(水銀、ヒ素、金など)、植物と土(アヘン、タバコ、コカインなど)、器具(瀉血、ロボトミー、浣腸など)、動物(ヒル、食人、セックスなど)、神秘的な力(

日本医学の大恩人になりかけた男『ウイリアム・ウイリス伝』 書影

医学・心理学 / 日本史

日本医学の大恩人になりかけた男『ウイリアム・ウイリス伝』

朝刊を見る楽しみのひとつはサンヤツ広告である。一面のいちばん下にずらっと並んでいる本の広告のことで、3段分のスペースを8つに分けてあるからサンヤツだ。ある日、そこに『ウイリアム・ウイリス伝』があるのを発見して即刻購入した。ウイリス、どれくらいの知名度なのだろう。 吉村昭が高木兼寛を描いた『白い航跡』を読んだ人なら覚えておられるだろうか。高木は、西洋風の食事が

『へんちくりん江戸挿絵本』日本絵画がもつ へんちくりんな「ゆるさ」 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『へんちくりん江戸挿絵本』日本絵画がもつ へんちくりんな「ゆるさ」

府中市美術館の企画展「へそまがり日本美術」(5月12日まで)が予想外の人気だという。禅画からヘタウマまで、傑作とは言い難いが、個性的な絵画を集めた展覧会だ。 なかでも必見は三代将軍徳川家光の「兎図」。切り株の上にちょこんと乗った一匹のウサギがこちらを見つめている。ふわふわでなんとも愛らしいのだ。上様はじつは心優しい人だったのかもしれないと感心しつつ、脱力して

『掃除で心は磨けるのか いま、学校で起きている奇妙なこと』ある特定の方向へ誘導する教育の問題 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『掃除で心は磨けるのか いま、学校で起きている奇妙なこと』ある特定の方向へ誘導する教育の問題

小学校に通う子どもの通知表を見ていたときのことだ。教科ごとに4つの評価項目が設けられているが、「社会」のところに「おや?」と目が留まった。項目がすべて同じ文章になっている。「もしかして誤記?」と思ったのだ。 よくよく見ると同じ文章ではなかった。だが、勘違いするのも無理はない。「我が国の歴史や伝統、世界の国々に〜」「我が国の歴史や伝統の意味について考え〜」など

『わたしが「軽さ」を取り戻すまで シャルリ・エブドを生き残って』死を免れた女性漫画家の“その後” 書影

医学・心理学 / 事件・事故

『わたしが「軽さ」を取り戻すまで シャルリ・エブドを生き残って』死を免れた女性漫画家の“その後”

2015年1月7日11時30分、フランスのパリ11区にある風刺新聞社「シャルリ・エブド」に武装した覆面男2人が侵入し、編集会議中の社員に発砲した。編集長、風刺漫画家、コラムニスト、警察官ら合わせて12人が死亡、多数の負傷者を出した。 後に犯人はイスラム過激派のテロリストと判明し、 フランス各地で数百万人に及ぶ犠牲者追悼のデモが行われた。 本書の原題は『LaL

最近海外の人が増えたなあ。そんな人は『ふたつの日本』を。 書影

社会 / おすすめ本レビュー

最近海外の人が増えたなあ。そんな人は『ふたつの日本』を。

コンビニのレジの人、どこの国の人だろう? 技能実習生が失踪って、なぜそんなことに? 移民に関する政策ってどうなっている? 日本に「暮らす」在留外国人はすでに263万人、日本の人口の約2%だ。ただ、その内訳は思った以上に複雑だ。周りに外国人は増えていくのに、自分は対応できていないような。この、大きすぎてわからない問題をクリアに「見える」化してくれる、しなやかな

『ファンタジーランド 狂気と幻想のアメリカ500年史』現実と幻想とが混在してきた歴史 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ファンタジーランド 狂気と幻想のアメリカ500年史』現実と幻想とが混在してきた歴史

世界ナンバーワンの超大国の米国で、なぜトランプ大統領が誕生したのか。 本書は、新世界を信じた夢想家たちとその末裔が創り上げた米国という「ファンタジーランド(おとぎの国)」の今日に至る500年の長い道のりを、他に類を見ない説得力をもって論じた、全米話題のベストセラーである。 本書で示されている米国の実態は衝撃的である。 例えば、米国人の3分の2が「天使や悪魔が

『団地と移民』団地をみればこの国の未来がわかる 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『団地と移民』団地をみればこの国の未来がわかる

戦後日本における画期的な発明といえば? 人によって答えはさまざまだろうが、個人的には「51C」を挙げたい。 「51C」とは、1951年度に計画された公営住宅標準設計C型の通称である。焼け野原からの復興の過程で、不足していた住宅供給をどうするかが国の喫緊の課題だった。そんな中、35平米というコンパクトな空間で、食べる場所と寝る場所を分ける「食寝分離」を実現させ

『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』つらく、悲しく、身近に迫る死 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』つらく、悲しく、身近に迫る死

読み進めるのが苦しい一冊だった。登場する人々が長く抱えてきた生きづらさが、とても他人事に思えなかったからだ。壮絶な「現場」の描写も相まって、一読するだけでも相当な根気がいる本であることは、あらかじめ断っておきたい。 本書は日本の社会問題の一つである孤独死の現状と特殊清掃の現場、そして亡くなった人々と特殊清掃人たちの人生を綿密な取材によって浮き彫りにした迫真の

語りえぬ言葉たち 『あわいゆくころ』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

語りえぬ言葉たち 『あわいゆくころ』

幼い頃、母は私に、しばしば長崎原爆の話をした。恐ろしい光、ヒイラギの葉の痛みに耐えながら姉が覆いかぶさって、爆風から身を守ってくれたこと。ガラスの割れる音。その後で道を歩いていたときに、石だと思い座って休もうとしたら、焼けた牛の死体だったこと。 それは、伝承というほど強い意志を含んだものではなく、もちろん石と牛を間違えたという笑い話でもない。母は、それを誰か

『企業ファースト化する日本 虚妄の「働き方改革」を問う』働き方「改革」は「改悪」になるのか 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『企業ファースト化する日本 虚妄の「働き方改革」を問う』働き方「改革」は「改悪」になるのか

よくわからない事象でも、響きの良い名前が付くと、人は考えるのをやめ、特定のイメージを信じこむことがある。説明が要らないような錯覚に陥ることもある。 労働や経済に関わる政策は理解するのが難しいだけに、なおさらだ。4月に関連法が施行される「働き方改革」はその一例ではないだろうか。 政府は「長時間労働の是正」「同一労働同一賃金」を訴える。「働く人が自由に働ける」も

『人喰い ロックフェラー失踪事件』マイケルはなぜ喰われたのか? 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『人喰い ロックフェラー失踪事件』マイケルはなぜ喰われたのか?

最初に言っておく。この本は 「閲覧注意」 である。タイトルそのまま、本当にそのままなのだ。 1961年11月20日、マイケル・ロックフェラーはニューギニア南部で消息を絶った。 この地を訪れていた23歳の若者の父親は、ニューヨーク知事で後に副大統領となるの ネルソン・ロックフェラー 。地球で一番の金持ちで、スタンダード・オイルの創設者 ジョン・D・ロックフェラ

『日本人の勝算 人口減少×高齢化×資本主義』日本経済再生のための提言書 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『日本人の勝算 人口減少×高齢化×資本主義』日本経済再生のための提言書

本書は、オックスフォード大学で日本学を専攻し、ゴールドマンサックス時代に日本の不良債権問題をいち早く指摘して「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏が、長年の日本研究の結果たどり着いた、日本経済再生のための提言書である。 文化財の修理・施工を行う小西美術工藝社の現役社長でありながら、ベストセラーとなった『新・観光立国論』『新・生産性立国

『持たざる経営の虚実』経営文学に支配された、平成30年間の企業経営 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『持たざる経営の虚実』経営文学に支配された、平成30年間の企業経営

「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である」。このダーウィンの名言を、若いビジネスパーソンへのメッセージとして援用する経営者は多い。 感じ方は人それぞれだと思うが、個人的にはサイエンスの理論を曲解し、都合よくビジネスに利用しようとする姿勢に違和感を覚えてしまう。 人間が自らの意志だけに