
『定年後に読む不滅の名著200選』読書三昧の定年後はステキだぞ!
本読みは人がどんな本を読んでいるかを気にする。同様に本好きは、自分が読んでいない名著が気になって仕方がない。おそらくHONZの読者もそうだろうが、私はブックガイドと見れば直ちに購入してしまう。そして本書は「定年後に読む」と名打っているのだ。 「人生100年時代」と言われ始めて、寿命が100歳前後まで伸びる話が現実味を帯びてきた。人生を教育・仕事・老後の3ステ
(2024年当時)
58記事

本読みは人がどんな本を読んでいるかを気にする。同様に本好きは、自分が読んでいない名著が気になって仕方がない。おそらくHONZの読者もそうだろうが、私はブックガイドと見れば直ちに購入してしまう。そして本書は「定年後に読む」と名打っているのだ。 「人生100年時代」と言われ始めて、寿命が100歳前後まで伸びる話が現実味を帯びてきた。人生を教育・仕事・老後の3ステ

昨年の夏は猛暑だったが、実は2023年は世界的にも気象観測史上で最も暑かったことがデータから裏付けられている。こうした現象を研究する学問は「気象学」と呼ばれており地球科学の一分野である。その対象は風や雲、雨や雪、台風や寒波など「大気の大循環」と呼ばれる地球規模の巨大な循環システムが司っている。 本書はその仕組みを高校生にもわかるように解説した啓発書で、著者は

2024年の元日に能登半島地震が発生し、多くの犠牲者が出た。現在も復興作業が続けられている最中だが、その後も千葉県・房総半島沖で地震が頻発するなど、日本列島周辺の地盤変動が止まらない。 巨大地震と津波が東北・関東地方を襲った東日本大震災から13年が経ち、多くの人が「日本は地震国」であることに改めて気づかされた。それ以後も熊本地震や北海道胆振(いぶり)東部地震

「Tunami」は英語の辞書にも載っている数少ない日本語起源の国際語である。本書は津波に関する歴史的な逸話を、最先端の研究成果をもとに紹介した自然災害の啓発書である。 オックスフォード大学が一般市民向けに科学をわかりやすく説くシリーズの1冊で、津波はどのように起きるか、人間はどう対処してきたかについて分かりやすい図版を加えて丁寧に解説する。 著者はオーストラ
![『[完訳版]第二次世界大戦 1』英国式「カントリー・ジェントルマン」人生! 書影](/assets/recovered-covers/dcd0ed7e88382cd508c74bad4473e9d665ec9d572ddbbcb3cd23eee78e08477b.jpg)
国家がひとりの勇敢な人間によって救われることがある。ウィンストン・チャーチル(1874-1965)は第二次世界大戦中に英国首相となり、連合国側を勝利に導いた。後に彼は長大な大戦回顧録を執筆しノーベル文学賞を受賞した。 チャーチルが戦時内閣の首相になってから、英国内はドイツ空軍の猛烈な爆撃にさらされた。ロンドン市内は連日のように空爆を受けたが、彼はラジオを通じ

いま日本で「地学」がブームになっている。日本列島の地質は世界的に見てもユニークなものが多い。プレート境界で火山が集中し地震も活発な島々には、多様な要因による珍しい地形が集まっている。 本書は全国各地に点在している美しい地質景観/ジオサイトを、47都道府県別に紹介した地学解説書である。加えて関心の高い地震・火山についても理解できる要素を数多く盛り込んだ。 地質

未来をあれこれ空想する際、話は断然デカい方が良い。評者の周囲にも投資家はたくさんいるが、彼らはいったいいくら投資するのだろう? 1億円、10億円、100億円? しかし100兆円投資できる資産家は、世界に幾人もいないのではないか。 そこで大金が入る前にちょっと考えておこう。いま手元に100兆円あったら、何に使ったらよいだろう?(How to Spend a T

今年も日本各地で地震が頻発する1年だった。地球科学を専門とする私には、ある意味で予測されていることでもある。 というのは12年前の東日本大震災以来、「大地変動の時代」に突入した日本列島としてはノーマルの姿なのである。すなわち、これから首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山噴火の3点セットが控えているからだ。 今年は関東大震災100周年の年だ。今からちょうど

トマス・クーンという名前を聞いたことがある人は少なくないだろう。『科学革命の構造』 という科学古典の著者だが、ちゃんと読んだ人は意外と多くない。 科学の歴史を見ると、天動説から地動説、またニュートン力学から量子力学へというように、革命的に大きく見方が変わるイベントが何回もある。 今から60年ほど前、マサチューセッツ工科大学の科学史教授の著者は、こうした革命の

万葉集が編まれた頃、富士山の頂上から噴気がなびいていた。つまり、当時の人々は富士山が「生きている」ことを知っていたのである。その後は何回も噴火を繰り返したが、最近の富士山はいたって静かである。 そして前回の噴火は江戸時代中期の1707年だから、日本人は300年ほど富士山の活動を目撃していない(小山真人著『富士山』岩波新書)。 日本最大の活火山である富士山は、

国連が世界の総人口が80億人を突破する推計を発表した。こうした中で人類が近い将来に直面する「滅びのシナリオ」を25項目取り上げ、「科学的根拠」と「回避する方法」を提示したのが本書である。 コンピューターサイエンスで修士号を取得した著者は、ノースカロライナ州立大学の工学起業プログラムを主催する。全米のラジオやテレビ番組で難しい内容を平易に伝える科学ジャーナリス

資源は私たちの生活に欠かせないものである。エネルギーや有用な元素を供給してくれる鉱産資源は、46億年に及ぶ地球の歴史のなかで培われてきた。すなわち、太陽系の第3惑星として成立する上での地球固有の特殊な環境の中で、貴重な資源の数々が誕生したのである。 国土が狭く険しい山地の多い日本列島は、世界でも有数の地殻変動地帯にある。そのためヨーロッパやアメリカをはじめと

わが国屈指の太陽物理学者が、太陽の活動が地球環境にどのような影響を及ぼすかを論じた入門書である。「宇宙気候学」を専門とする著者は、宇宙に目を向けながら過去から未来までの環境について、写真や図表をふんだんに使いながら丁寧に読み解いてゆく。 サブタイトルに「太陽活動から読み解く地球の過去・現在・未来」とあるように、太陽系の中心にある太陽は地球環境のすべてをコント

「一寸先は闇」 と言う言葉があるが、未来は誰にとっても予測不能の世界である。そして「未来とは何か」は、極めて身近でありながらも納得する解答を得ることが非常に難しい問いだ。 その問いに対してオーストラリア在住の優秀な歴史学者が、宇宙物理学・地球科学・生物学・情報科学・心理学・哲学の知見を総動員して、果敢に答えようと試みたのが本書である。 著者のデイビッド・クリ

地球の成り立ちを研究する学問は「地球科学」と呼ばれ、高校の教科では「地学」として教えられる。地球は宇宙空間に浮かぶ星の1つだが、太陽を周回する惑星でもある。太陽系の第3惑星で、46億年という途方もなく長い歴史をもつ。 本書は最先端の地球科学を解説した入門書である。選んだ項目は「地球・生命」「環境・気象」「資源・エネルギー」「地震・津波・噴火」の4項目で、高校

今から3年前、2020年度から全国の高校で選択科目「理数探究」が新設された。生徒が問題意識を持ちオリジナルな解決策を探るという新しいタイプの授業だが、教諭が教科書を使って板書しながら教える通常の授業とはかなり異なる。 生徒一人ひとりが問いを立て、クラスで協力しながら情報を集め、議論しながら解決を探るという斬新な試みだ。本書はその新科目「理数探究」では何を学び

地球は今から46億年前に誕生したが、生命はそのうち後半80%もの長い時間に存在している。また40億年前には海が誕生したので、それ以降で見れば何と後半95%の時間が生物の世界だ。すなわち、地球の歴史は生物の歴史として捉えることはあながち的外れではない。 こうした長い歴史を「超圧縮」したきわめて面白い読み物が出た。本書はこうした地球環境とSDGs(持続可能な開発

日本の大学では恒例行事として、定年を迎えた教員が「最終講義」を一般公開する習わしがある。本書は2021年3月10日に、私が京都大学で行った最終講義をまとめた本である。 24年間の教授ラストの授業は、私と学生・院生たち、そしてネット上のClubhouse聴衆という三者の白熱した時間となった。当時はコロナ禍の真っ最中で、最終講義が成立するかどうか危ぶんでいた。そ

新幹線で京都と東京を往復すると、晴れた日には三島駅の北側に富士山がよく見える。その中腹には大きな穴がポッカリと空いているが、江戸時代に大噴火した火口であることを知る人はそう多くない。 もし「こだま」で三島駅に下車する機会があれば、北側の改札を出たところにある溶岩の露頭(地層が見える崖)を見てほしい。三島溶岩と呼ばれる約11,000年前の噴出物で、この現象を現

地球科学には「過去は未来を解く鍵」と言うフレーズがある。過去に起きた現象を詳しく分析し、その中で働いているメカニズムを明らかにし「物理モデル」を立て、未来に起きる現象を予測する。 未来を予測・制御するのは自然科学が持つ基本的な機能で、理学も工学も医学も基本的には同じ原理で動いている。ところが地球科学だけは他の理系分野と異なり、過去に起きた現象が138億年にわ

華道は日本古来の芸術である。生け花は表面的な形や色の美しさに留まらず、植物の命そのものに美を感じ、人と自然を結びつける優れた機能を持つ。 本書は私が受け手となり斯界第一人者の人生・思想に鋭く切り込む対談本で、女性として初めて京都の華道家元池坊を継ぐ池坊専好先生を迎えた。 池坊家は小野妹子を道祖として仰ぎ、室町時代にその理念を確立させた華道家で、池坊先生は次期

地球の歴史に人間が痕跡を残したかどうかが、最近話題になっている。「人新世」(じんしんせい)はそれを論じるキーワードだが、もとは地球史に関する専門用語である。確かに地球46億年の歴史上、人類の活動は大きな痕跡を残しつつある。 コンクリートや金属など人工物の総重量は、全生物の総重量を上回ったという試算がある。20世紀初頭、人工物の総重量は生物総重量の3%に過ぎな

宇宙の誕生から人類の繁栄まで、138億年にわたる壮大な歴史を興味深く綴った本が出た。著者のウォルター・アルバレス(Walter Alvarez)はカリフォルニア大学バークレー校で地球惑星科学の教授を務める、米国を代表する地質学者である。 実は、私は著者の名前を30年以上も前から知っていた。というのは、恐竜が6500万年前に突如として大量絶滅した原因を見事に解

宇宙空間に浮かぶ地球を研究対象とする自然科学の一分野に「地球科学」がある。日本では高校の科目名や大学の学科名として、「地学」という呼び名が一般的に用いられてきた。ちなみに、高校の地学は、物理・化学・生物という理科3教科と比べるとマイナーな扱いだ。 理系科目としては地味だが、大学入学共通テストでは結構人気がある。すなわち、理科が苦手な生徒が選択する科目としては

ちくま新書で『人類5000年史』というシリーズが刊行中だが、文明の誕生から現代まで人類史を簡潔に一望できる。今回紹介する第4巻では、1501年から1700年までの通史がシリーズ通し番号の第9章・第10章として充てられている。 かいつまんで紹介すると、銃を手に銀を求めて海を渡ったコンキスタドール(征服者)が、交易の時代を押し開いた。宗教改革という狼煙が上がった

物理学は現代社会を動かす基本原理となっている。そもそも「物理」とは物の理(ことわり)という意味であり、「物理学」は自然界の現象を支配する法則について理解・整理することを目的とした学問だ。 江戸時代後期から明治初期には、「理を窮める学問」という意味で「窮理学」(きゅうりがく)と呼ばれていた。すなわち物の本質そのもの、すなわち「物の理(ことわり)」を知る学問なの

広大な宇宙で生命は地球だけに存在するか否かは、古来より人の大きな関心事だった。一九世紀英国の作家ウェルズはSF小説『宇宙戦争』にタコのような火星人を登場させ、地球外生命の一般的なイメージとなった。そして20世紀に入って宇宙飛行が実現すると、地球外へ積極的に生命を探索する研究が始まった。 地球外生命の探求は、生命はどのように誕生したかという生命起源をめぐる根本

科学者がときとして見事な文章を書くことがある。本書は寺田寅彦(1878-1935)や湯川秀樹(1907-1981)など世界的科学者が残した名エッセイから厳選し、文庫オリジナルとして編まれたものである。 しばしば教科書に掲載されてきた科学の随筆だが、実は私自身、国語の時間に中谷宇吉郎(1900-1962)の文章と出会って物理学という非常におもしろい世界があるこ

私と同じ1955年生まれの高校や大学の同級生たちが定年を迎えた。その彼らにあまり元気がなく、家で燻っていることが多い。国立大学の65歳定年制度で名誉教授になった友人たちも同様、みな手持ち無沙汰の様子なのだ。 加齢を恐れている友人も少なくないのであるが、私はそんなことないと思う。というのは、年を取るほど若い人たちにはない「教養」が増え、色々なことに新しい見方が

2020年に世界を襲った新型コロナウイルスは、人間という「コロニー(集団)」に何をもたらしたのだろうか?本書は進化生物学者がアリを対象として、マクロ生物学の観点から生物社会の本質をわかりやすく解説した秀逸な啓発書である。 アリ社会が持つ精妙な組織が、きわめて誠実で地道な観察によって明らかにされる。さらに自然界の正確な観察から炙り出されてくる、人間の持つ思い込

良い仕事をするには、頭をフルに使わなければならない。そのためには合間に効果的な休みを入れる工夫も必要だ。ポカンとして頭の活動を完全に休止するような時間である。仕事をしているのが「オン」とすれば、スイッチを切った「オフ」の状態だ。 人間は動物の中でも特に大きな脳を所有している生き物である。動物だから、頭だけでなく体の動きにも大いに制約される。頭ではオーケーを出

地面には土と岩があり、少し掘ってみると硬い岩石がある。こうした土や岩を研究するのが地質学で、既に300年近い歴史をもつ。地質学者にとって岩石は、地球のなりたちや未来まで予測できる魅力溢れる物質なのだ。 本書は地質学の第一人者が、岩石の不思議を古今東西にわたる人類の文明に引き付けて雄弁に語る。実は、人間は地球上のあらゆる岩石から文明を創ってきた、と言っても過言

勉強法というジャンルは、常にビジネス書の定番である。勉強はいつから始めても遅いことはない。そして好きなことだけが武器になる(成毛眞『勉強上手』幻冬舎)。まさにその通りである。だから第一線で働いている人ほど、社会人大学や各種学校で学び直し、資格試験にチャレンジしている。決して悪いことではない。 しかし、そういった人たちの多くが勉強に追い立てられているように見え

10月7日に首都圏で震度5強の強い地震があり、75000台のエレベータが停止し28件の閉じ込め事故があった。東京23区でこうした強い揺れを観測するのは、2011年に東日本大震災を引き起こして以来である。また、10月20日には熊本県にある活火山の阿蘇山が噴火し、中岳火口から火砕流が1600メートル流下した。 今年は東日本大震災(日付をとり「3・11」と呼ぶ)の

地球は「生命の惑星」と呼ばれ多種類の生物が生息している。これは厳しい環境の宇宙空間では極めて稀なことで、生命の維持に必要な安定した環境があったからだ。 宇宙の中で生命が生きられる場所を、「生命居住可能領域」(ハビタブルゾーン)と呼ぶ。実は、生命にとって最も重要な物質は、熱しにくく冷めにくい水の存在である。地球は表面の7割を海が占めるが、ここに貯えられた大量の

今年は東日本大震災の発生から10年目という節目の年である。若い世代には当時の記憶をもたない人が増えてきた。東北沖で約1000年に1度というマグニチュード9の巨大地震が発生し、日本列島の地盤を東西へ5メートルほど引き伸ばしてしまった。このストレスを解消しようとして内陸では地震が頻繁に発生し、私が専門とする地球科学では、今後20年は止むことがないだろうと予測して

今から10年前の2011年は私のような地球科学者にとって青天の霹靂とも言える東日本大震災が発生した年だ。この年の7月15日、まだ震災の混乱が収まらぬ中でインターネット書評サイト「HONZ」が誕生した。 10周年を迎えた今夏、紹介した総計3000冊の中から100冊を厳選した『決定版-HONZが選んだノンフィクション』が中央公論新社から刊行された。科学・歴史・経

勉強法や学習術はベストセラーの定番である。世界が劇的に変化する中、仕事に未知の要素が激増することに危機感を抱くビジネスパーソンは少なくない。ここで余裕を持って取り組むには、新たな分野の効率的な学習は避けられない。本書の「LIMITLESS=リミットレス」とは、自分の能力と可能性に限界を設けず「ラクに」学習できる状態を言う。 そもそも制約や限界を感じるのは単な

コロナ禍が終息する気配を全く見せない現在、来年の状況を予測するのは極めて難しい。その一方、20年先であれば「歴史を的確に見る目」を持つ人ならば予測が可能となる。 本書は2040年の未来を予測・解析したもので、森羅万象に渡って博識の著者がその炯眼を余すところなく披露する。既に多くの書評によって紹介されているが、2040年というマジックナンバーは遠い未来ではなく

科学者は何を考え、どのように仕事をしているのか?それを一般向けに解説したのが本書である。 私は地球科学を専門にして40年ほど経つが、これまで研究と教育で色々な工夫をしてきた。特に地球を研究する際、フィールドワークから新しい知見を効率よく生み出すことは、研究者としての至上命題である。 世界の学問水準に照らして本質を追究し、その成果を学術雑誌に発表する。実は、そ