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出口 治明の記事

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177記事

『教養としての「中国史」の読み方』 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『教養としての「中国史」の読み方』

日本は、 地理的に遠く離れた世界一の覇権国家であるアメリカと軍事同盟を 結んでいる。 そして世界第二の大国である近隣の中国が最大の貿易の相手国だ。 現在、アメリカと中国の対立が激しさを増している。 日本の立場はまことに辛いものがある。 アメリカの機嫌を損ねない範囲で中国とも仲良くしなければ、 日本の繁栄は覚束ないからだ。加えて、 中国は理解がなかなかに難しい

『民主主義とは何か』 書影

社会 / HONZ客員レビュー

『民主主義とは何か』

民主主義が危機に瀕しているといわれて久しい。しかし、そもそも民主主義とは何であり、今何が問題になっているのか、そしてこれからどこに向かおうとしているのか、そういったモヤモヤした疑念を一掃してくれる読みやすい本はこれまでなかったように思われる。その意味で、本書は民主主義を巡る諸問題とその解決の方向性を1冊に凝縮した待望の本だ。丁寧に論理づけて語られているので、

『移民が導く日本の未来 ポストコロナと人口激減時代の処方箋』 書影

社会 / HONZ客員レビュー

『移民が導く日本の未来 ポストコロナと人口激減時代の処方箋』

日本は移民がつくった国である。約3.8万年前の対馬ルートを皮切りに、3.7万年前の沖縄ルート、2.5万年前の北海道ルートなどいろんな人々が渡ってきて日本列島に住み着いた。それが我々の祖先である。移民がつくった国なのに、なぜ、現在の日本の人々は移民という言葉に過剰反応するのだろう。本書は、少子高齢化に伴う人口減少を日本の最大の危機と捉え、既に外国人なしでは日本

『KGBの男 冷戦史上最大の二重スパイ』 書影

人物 / HONZ客員レビュー

『KGBの男 冷戦史上最大の二重スパイ』

僕はスパイ小説には目がなくて、若いころはイアン・フレミングやジョン・ル・カレに耽溺したものだった。このジャンルは、なぜか、連合王国(uk、イギリス)のお家芸だが、本書も例外ではない。しかもフィクションではなく、これは実話なのだ。まさに「事実は小説より奇なり」を地で行く物語で、心臓をドキドキさせながら2日で一気に読み込んだ。あまりにも面白くて途中で止めることが

『「世界史」をいかに語るか』 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『「世界史」をいかに語るか』

本書は、雑誌「思想」 の特集号に2つの論稿を新たに付け加えて単行本化したものである 。グローバルな時代が訪れ、歴史学もその埒外ではなくなった。 これまでの歴史学では、 研究史の蓄積と資料水準の上昇によって研究対象や時代を狭く限定 していく専門化が進展していた。 このことが歴史学を周辺化させ公の問題への提言能力を喪失させて いったのである。これに対して、グロー

『たん・たんか・たん 美村里江歌集』 書影

教養・雑学 / HONZ客員レビュー

『たん・たんか・たん 美村里江歌集』

挨拶をするときに、必ず自分で詠んだ和歌を1首入れ込む友人がいた。そういえば、必ず和歌が出てくる「いいね!光源氏くん」というドラマもある。本書は、女優、美村里江の第一歌集であるが、普通の歌集と異なるのは、書き下しエッセイ10篇がサンドイッチのように歌と歌との間に挟まれており、とても読みやすい仕掛けがなされていることだ。加えて、視線の休憩所としてのイラストも全て

『博士の愛したジミな昆虫』 書影

生物・自然 / HONZ客員レビュー

『博士の愛したジミな昆虫』

本書を一瞥しただけで読みたくなってしまったのは、わが国の伝統である本歌取のなせるわざだろうか。それとも、原色日本昆虫図鑑(保育社)をボロボロになるまで引いていた元昆虫少年の先祖返りだろうか。あるいは、可愛すぎる表紙のイラストが僕を引き寄せたのか。そんなことは、どうでもいい。めちゃ面白い本だった、という読後感が全てを物語る。 本書には、子どもたちが大好きなカブ

『草原の制覇 大モンゴルまで』 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『草原の制覇 大モンゴルまで』

本書は、「シリーズ中国の歴史」の第3巻である。中国という巨大な隣人。国は個人と違って引っ越せないので、相手を知り理解したうえで上手に付き合っていくしかない。人を知るにはまず履歴書をみるように、国を知るにはその歴史を繙くのが一法だ。 このシリーズは、巨大な中国を「草原、中原(華北)、江南、海域」の4つの地域に分ける。中国は、「東南アジア(海域世界)の北部と内陸

『革命 仏大統領マクロンの思想と政策』 書影

人物 / 社会

『革命 仏大統領マクロンの思想と政策』

トランプ大統領の登場により、多くのメディアは、グローバリゼーションや地球温暖化対策は曲がり角に差し掛かったと報じた。ブレクジットについてもEUの将来を悲観的に見る報道が多かった。 しかしフランスでは、グローバリゼーションを真正面から受け止めEUの強化を愚直なまでに訴えたマクロン大統領が誕生した。「革命」はマクロンが書き下した本である。大統領選に出馬するために

『聖書の成り立ちを語る都市:フェニキアからローマまで』 書影

教養・雑学 / 世界史

『聖書の成り立ちを語る都市:フェニキアからローマまで』

世界で一番読まれている本は、おそらく聖書だろう。本書は古代オリエント世界で栄えた都市を旅しながら、歴史が聖書にどのような影響を与えたかを記した一般向けの啓蒙書である。少しでも聖書に興味がある人には是非とも読んで欲しい1冊だ。 著者の旅は、フェニキア人の都市、ビュブロスから始まる。バイブルの語源となった町だ。次は、エルサレムの神殿建設を担った南方のティルス。ビ

『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』ああ、僕に時間がもう少しあれば、このような1対1のゼミを受講してみたい 書影

教養・雑学 / 世界史

『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』ああ、僕に時間がもう少しあれば、このような1対1のゼミを受講してみたい

何というおどろおどろしいタイトルだろうか。普段お世話になっている旧知の著者からゲラが送られてきたので、少しは読まなければ申し訳ないと思って読み始めたら、これが面白くて読むのを止められない。 本書は2人の尖った個性がお互いに本を選んで3か月に1回、その本について縦横に語り合った対談集である。選ばれた本も秀逸で(知らない本が半分ほどあったが)、2人の対談も奔放の

『ビジュアル 進化の記録: ダーウィンたちの見た世界』 書影

サイエンス / 生物・自然

『ビジュアル 進化の記録: ダーウィンたちの見た世界』

ベンチャー企業の経営を10年やってみて、分かったことの1つは、ダーウィンの進化論の根源的な正しさだった。強いものや賢いものが生き残るのではない、世界はどう変化するか誰にも分からないのだから、運と適応以外に生き残る術はない。全くもって、その通りだと思う。 2006年にライフネットプロジェクトをスタートさせた時、世の中にスマホはゼロだった。これほどまでにスマホが

『カラヴァッジョの秘密』 書影

アート・スポーツ / 人物

『カラヴァッジョの秘密』

既に十分すぎるほどのオマージュを集めてきたカラヴァッジョ、17世紀以降の西洋絵画に絶大な影響を与えた稀有な天才について、今更、何かを書き加えることがあるのだろうか。そう思う人は、ぜひ、本書を紐解いて欲しい。 優れた作家が、周知の事実や数多の論及、古くからの評伝や長大な解説書など膨大な文献の洪水の中から、まるで魔法のように明確な輪郭を持ったシンプルで読みやすい

『パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学』 書影

医学・心理学 / HONZ客員レビュー

『パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学』

店頭で「この本を読んで見よう」と思わせるのは、まず、装丁だ。表紙が素敵だったりあれっと不思議だったりすると、自然に手が伸びる。僕は、迷わず本文の最初の10ページを読む。作者は「読んで欲しい」と思って本文から書き始めるはずだから、そこが面白くなければご縁がない本なのだ。 本書は、最初の小見出し「オキシトシンで愛情が湧く」でノックアウトされてしまった。母親が赤ち

『階段を下りる女』 書影

小説 / HONZ客員レビュー

『階段を下りる女』

これは、名作「朗読者」の作家による新たな至高の恋愛小説であり、人間の再生の物語だ。ドイツから出張に来たシドニーのギャラリーで、主人公の弁護士は1枚の絵に出会う。裸の女性が階段を下りてくる絵だ。 40年前、ある実業家が若い妻をモデルにその絵を描かせた。絵を描いた画家はその女性イレーネと駆け落ちした。実業家と画家の争いは主人公の弁護士のもとに持ちこまれた。そして

『答えのない世界を生きる』 書影

教養・雑学 / HONZ客員レビュー

『答えのない世界を生きる』

いかなるビジネスであれ、ビジネスは人間と社会を相手に行うものである。そうであれば、僕は、人間と人間が創り出した社会の本質を理解することがビジネスにとっては何よりも大切だ、と思っている。その意味で、小坂井敏晶著『社会心理学講義』(筑摩書房)は、ここ数年の間に出版された本の中では、最高のビジネス書と呼んで差支えがあるまい。 『答えのない世界を生きる』は、その著者

『モンゴル帝国誕生 チンギス・カンの都を掘る』 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『モンゴル帝国誕生 チンギス・カンの都を掘る』

人類のグローバリゼーションは海の道と草原の道を結んだクビライ治下のモンゴル世界帝国で最初のピークを迎えた、と一般には考えられているが、モンゴル帝国の創始者・チンギス・カンについては意外とその治績が知られていない。本書は、長年モンゴルで発掘を続けてきた考古学者が描く等身大のチンギス像である。 遊牧民は放浪するのではなく、ある程度決まった場所を1年かけて季節移動

『音楽と沈黙 1』 書影

小説 / HONZ客員レビュー

『音楽と沈黙 1』

無謀にも30年戦争に介入して一敗地にまみれたデンマーク王、クレスチャン4世。戦で親友をも亡くしローセンボー城で塞ぎこむ王のもとに、イングランドから美貌のリュート奏者ピーターが訪れる。王はピーターを天使かと見紛い、亡き親友の面影を夢見てピーターを囲い込む。 音楽が好きな王は宮廷楽団を抱えているが、楽団は沈黙の地下のワイン貯蔵室で演奏し特殊なパイプを通じて王の謁

『教養としての社会保障』 書影

社会 / HONZ客員レビュー

『教養としての社会保障』

少子高齢化が進む中で、社会保障の持続可能性について不安を持つ人々が増えているようだ。「年金は破綻する」といった論調などその最たるものであろう。僕は半世紀近く生命保険業界に身を置いてきたので補完関係にある社会保障については昔から興味があったが、この分野では信じられないようなトンデモ本が多くバランスの取れた概説書に出会った記憶があまりなかった。 社会保障は、マク

『黒海の歴史 ユーラシア地政学の要諦における文明世界』 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『黒海の歴史 ユーラシア地政学の要諦における文明世界』

「地中海世界」や「環太平洋諸国」と聞けば誰しもそれなりのイメージが浮かぶだろう。ところが世界政治のフォーカルポイントであるにも関わらず「黒海」はそうではない。12カ国から成る黒海経済協力機構(BSEC)を知っている人がどれだけいるだろう。本書は知られざる黒海の歴史を概説した力作である。 黒海という呼び名が定着したのはオスマン朝の初期。黒海には欧州で2番目から

『ダ・ヴィンチ絵画の謎』 書影

教養・雑学 / アート・スポーツ

『ダ・ヴィンチ絵画の謎』

面白い。まるで推理小説を読むようだ。しかも、嬉しいことにカラー版、美術好きには堪らない1冊だ。本書は、史上最高の画家、レオナルド・ダ・ヴィンチの最も有名な作品「モナリザ」にまつわるいくつかの謎について、当意即妙の文章で縦横に論じたものである。 著者は、膨大に残されたレオナルドの手稿研究の第一人者であり、レオナルド自身の頭と目になったつもりで謎解きにチャレンジ

『われらの子ども 米国における機会格差の拡大』 書影

社会 / HONZ客員レビュー

『われらの子ども 米国における機会格差の拡大』

わが国ではシングルマザーの家庭を中心として、子どもの実に6人に1人が貧困に喘いでいる、といわれている。このまま放置すると、社会的損失は40兆円に達するとの試算もある(「子供の貧困が日本を滅ぼす」文春新書)。本書は、アメリカにおける子どもの貧困と格差の固定という社会的危機の現実を赤裸々に描き出した力作である。 まず、著者のふるさとの街が登場する。オハイオ州ポー

『イブン・バットゥータと境域への旅』 書影

人物 / 世界史

『イブン・バットゥータと境域への旅』

イブン・バットゥータの「三大陸周遊記」(抄訳)を初めて読んだのは、もう、半世紀以上昔のことになるだろうか、「あぁ、こんな旅がしてみたい」と心から思ったものである。本書は、この「大旅行記」の完訳を成し遂げた1939年生まれの碩学によるまたとない案内書だ。 14世紀の初めにモロッコで生を受けたイスラームの法官、イブン・バットゥータは、なぜ30年に及ぶ大旅行を達成

『失われた宗教を生きる人々 中東の秘教を求めて』 書影

教養・雑学 / HONZ客員レビュー

『失われた宗教を生きる人々 中東の秘教を求めて』

ある考古学者がイラク南部で、四千年以上昔の木のパネルを発見した。美しい彫刻が施されていたが、蝶の羽のようにもろくなっていた。見つめていると雨が降りはじめ、写真を撮る間もなくパネルは溶けて泥と化した。中東の多様な宗教と民族のモザイク模様は長く輝かしい歴史の記念碑とも言うべきものだが、現在崩壊に向かっている。中東に恋をした元外交官の著者は、その姿を書き留めておこ

『産まなくても、育てられます 不妊治療を超えて、特別養子縁組へ』 書影

社会 / HONZ客員レビュー

『産まなくても、育てられます 不妊治療を超えて、特別養子縁組へ』

子どもがほしいと願う「あなたは子どもを産みたいのでしょうか、それとも、子どもを育て、ともに過ごしたいのでしょうか」と著者は問いかける。後者なら、不妊治療の他にも特別養子縁組という「もうひとつの方法」があるのだ。本書は、親になりたいと願うすべての人に向けられた現代の福音書である。 本書は2部構成を採っている。第1部は、現実に養子を迎えた8組のカップルに取材を重

『ハンザ』 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『ハンザ』

僕たちはともすれば現在の国民国家をベースに人類の歴史を遡りがちであるが、実は国民国家の歴史はまだ200年前後しかなく、それ以前はハンザ(商人団体が原義)や倭寇のような海洋共同体が重要な役割を担っていた。何故なら古来より交易は水路が中心だったからである。 現在のドイツは16の州からなる連邦共和国であるが、内2つは自由ハンザ都市である(ハンブルクとブレーメン)。

『平安京はいらなかった 古代の夢を喰らう中世』 書影

日本史 / HONZ客員レビュー

『平安京はいらなかった 古代の夢を喰らう中世』

冒頭、著者は「日本という国に、あのような平安京などいらなかった」と喝破する。「平安京は最初から無用の長物であり、その欠点は時とともに目立つばかりであった」と。「では、なぜ不要な平安京が造られ、なぜ1000年以上も存続したのか」と著者は畳み掛ける。そう挑発されたら、後はもう読むしかないではないか。とても刺激的な1冊だった。 日本は、大唐世界帝国の脅威に直面して

『「本をつくる」という仕事』 書影

教養・雑学 / HONZ客員レビュー

『「本をつくる」という仕事』

自分で本を書くようになってから、1冊の本が世に出るまでには本当にたくさんの人のお世話になっていることがよく分かった。本書は、「書店は広大な読者の海と川とがつながる汽水域であり」、本づくりとは「源流の岩からしみ出た水が小さな流れとなって集まり、次第に1本の川に成長して海に流れ込む」ようなものだと考える著者が、8つの目的地を求めて川上へと遡っていく物語である。

『異端カタリ派の歴史 十一世紀から十四世紀にいたる信仰、十字軍、審問』 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『異端カタリ派の歴史 十一世紀から十四世紀にいたる信仰、十字軍、審問』

読者の皆さんは、「異端」という言葉からどのようなイメージを連想されるだろうか。おそらく、おどろおどろしいイメージの類ではないか。しかし東欧で興り(ブルガリアのボゴミル派)、11世紀に西欧に伝播したキリスト教の一派、カタリ派は、聖職者(完徳者、完徳女)自らが額に汗して働き、力を否定し純粋な神への愛を共有する原始キリスト教共同体のような良き人たちの集団であった。

『パリの住人の日記Ⅱ1419‐1429』 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『パリの住人の日記Ⅱ1419‐1429』

英仏100年戦争の後半期、1405年からパリの住人(名前不詳)が日記を書き始め、それが写本の形で残った。15世紀初頭のパリの実相を伝える貴重な資料としてホイジンガの「中世の秋」にも度々引用されている。本書はその名訳で(Ⅰ巻は2013年刊行)年代的には1419年~29年をカバーする。この時期は100年戦争のまさに白眉の時代であった。 1419年、パリを制したフ

『ロレンスがいたアラビア』 書影

人物 / 世界史

『ロレンスがいたアラビア』

ピーター・オトゥールが扮した「アラビアのロレンス」は、紛れもなく僕を映画好きにした1作だった。本書は、ロレンスに惹かれて「知恵の7柱」(東洋文庫)を始めとする関連書籍を読み漁っていた学生時代を思い出させてくれたが、それだけではなく他の類書にはない面白さがぎっしりと詰まっていて驚いた。 ロレンスがいたアラビアには、他にもロレンスと同じような境遇の尖った若者がい

『周―理想化された古代王朝』 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『周―理想化された古代王朝』

中国では、常に古代の聖天子の時代が憧憬される。伝説の堯や舜はともかく実在が確実視される周の文王や武王、周公旦の時代である。周は約800年続いたが、これまで意外なことに読みやすい通史がなかった。本書は待望の1冊である。 従来の中国の古代史は概ね司馬遷の叙述(史記)など伝世文献に依拠してきたが、当時の金文(青銅器に彫られたもの)や竹簡などの同時代資料が陸続と発掘

『子供の貧困が日本を滅ぼす』 書影

社会 / HONZ客員レビュー

『子供の貧困が日本を滅ぼす』

子どもの貧困がよく話題に上るが、その実態を知っている人は意外に少ない。本書は、日本財団子どもの貧困対策チームがまとめたものであるが、この問題の「鳥瞰図」がとてもよく分かる好著だ。ぜひ、一人でも多くの皆さんに読んでほしい。 まず、6人に1人と言われている子どもの貧困の実態と、貧困が世代を超えて連鎖することが数字・ファクトで明瞭に示される。次いで子どもの貧困を放

『すべての見えない光』 書影

小説 / HONZ客員レビュー

『すべての見えない光』

戦争を背景にした作品には名作が多い。戦争という極限の過酷な環境が、人間性を際立たせるからだろうか。第二次世界大戦かつ比較的新しい作品に限ってみても、「朗読者」や「HHhH」などが反射的に脳裏に浮かぶ。 本書は、パリの博物館に務める優しい父のもとで育った目の見えない少女マリー=ロールとドイツの炭鉱町、ツォルフェアアインの孤児院で育てられた少年ヴェルナーの一瞬の

『外来種は本当に悪者か? 新しい野生 THE NEW WILD』 書影

サイエンス / HONZ客員レビュー

『外来種は本当に悪者か? 新しい野生 THE NEW WILD』

外来種と言えば、琵琶湖の在来種を脅かすブルーギルやブラックバスが脳裏に浮かぶ。いかにして駆除するか、心ない放流を食い止めるか。獰猛な外来種から琵琶湖の自然を守れ。確かにそうだと思う反面(因みに、僕は琵琶湖の外来種の駆除にはずっと賛成している)、何か心にひっかかるものをずっと感じていた。本書は、この問題に正面から挑んだ力作である。 冒頭、南大西洋・アセンション

『アイルランドの至宝 ケルズの書―復元模写及び色彩と図像の考察』 書影

民俗・風俗 / HONZ客員レビュー

『アイルランドの至宝 ケルズの書―復元模写及び色彩と図像の考察』

渾身の書である。1938年に生まれた著者は、55歳でアイルランドを訪れて、「世界で最も美しい本」(ケルズの書)に魅せられた。その頃、テンペラ画を習い始めていた著者は、ケルズの書の全装飾ページ22葉の復元模写を思いつき、15年間6088時間をかけて模写を行った。本書はその全ての記録である。 ところで、ケルズの書とは何か。それは、8世紀の末にスコットランドの西方

『冬の王』 書影

人物 / 世界史

『冬の王』

フランスとの100年戦争に敗れたイングランドは、後に薔薇戦争と呼ばれた王族間(ランカスター家vsヨーク家)の血腥い内戦に突入した。そして、最後に勝ち残ったのがランカスター家傍系のヘンリー・テューダー(ヘンリー7世)だった。6人の妻を持ったヘンリー8世やエリザベス女王(1世)で有名なテューダー朝の幕開けである。本書は、闇の君主と呼ばれ、これまで語られることの少

『図説シルクロード文化史』 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『図説シルクロード文化史』

正倉院はシルクロードの終着点であると教わった記憶がある。「月の沙漠」の歌ではないが、シルクロードという言葉には、ラクダの隊商が列をなしてローマやペルシャから遥々と中国まで(さらには奈良の都まで)宝物を運んできたロマンチックなイメージがある。著者は、シルクロードの重要な中継地であったクロライナ王国のニチャと楼蘭、鳩摩羅什(有名な仏教の訳経者)の故郷クチャとキジ

『呉越春秋 呉越興亡の歴史物語』 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『呉越春秋 呉越興亡の歴史物語』

「呉越同舟」という諺が人口に膾炙しているように、春秋戦国時代の呉と越は宿命のライバルであった。両国は30年以上に亘って激しい戦いを繰り広げ、遂に越王勾践が呉王夫差を敗死させる。本書はこの2国の興亡を描いた歴史文学(東漢=後漢の時代に成立)の本邦初の全訳である。 ところで、2500年も前の呉越の戦いが、何故かくも人々の心を揺さぶるのか。それは、夫差の賢臣、伍子

『自画像の思想史』 書影

教養・雑学 / アート・スポーツ

『自画像の思想史』

人類の絵画史は15,000年前のラスコーの壁画から始まると著者は述べる。これに対して自画像の歴史はわずか5~600年。なぜ、かくも長い間人類は自画像に関心を持たなかったのか。ここから探求が始まる。 まず、古代の「自画像以前の時代」。自己と他者(世界)は調和しており、人間は神(世界)に従順であった。人間の顔は普遍的に表現され(イコン、仮面など)、自画像を描く必