
『マーケット進化論』不完全さと向き合った人々の物語
律令制の時代から昭和初期にかけて、市場経済が形成され、洗練されていくプロセスが書かれた1冊だ。要所を辿りながら、1200年以上の時間を一気に駆け抜ける。まんべんなく触れるのは難しいので、時代を絞って紹介していきたい。 著者によれば、戦国時代は日本経済史のなかでも特殊な局面であるという。全国レベルで資源配分を管理する存在もいなければ、全国一律の基準で市場経済を
(2024年当時)
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律令制の時代から昭和初期にかけて、市場経済が形成され、洗練されていくプロセスが書かれた1冊だ。要所を辿りながら、1200年以上の時間を一気に駆け抜ける。まんべんなく触れるのは難しいので、時代を絞って紹介していきたい。 著者によれば、戦国時代は日本経済史のなかでも特殊な局面であるという。全国レベルで資源配分を管理する存在もいなければ、全国一律の基準で市場経済を

2004年に北海道警察の裏金問題で告発を行った中心人物である、原田宏二氏が警察捜査の実態を解説した1冊だ。捜査の根拠となる法律はどのようなものなのか、それらは実際どれほど機能しているのか、なぜ権力の濫用が起きてしまうのか。ノンキャリアとしては最高のポストまで登りつめて退官した経験をもとに、著者は取り締まる側の視点から語っていく。冤罪事件から身近な取り締まりに

「文明を動かす究極のエネルギーとは何か?」 この問いへの答え方は、その人の考え方よりも置かれた状況に左右されるのかもしれない。 「文化」や「技術」という答えが場所を占めるようになったのは、何千年というスパンで見ればここ最近のことだろう。それらを謳歌できるのも、食うに困らなくなってからの話である。これまでも、そしてこれからも、文明を動かすエンジンは食べ物だ。

慌ただしい事から傷ましい事まで、年明け早々大きなニュースが次々舞い込んでくるが、中でも異質な恐ろしさを感じたのが、 香港・銅鑼湾書店の関係者が失踪した という報道だ。後に中国当局が 拘束の事実を認めた が、共産党や国家指導者にとって都合の悪い本を売る人々を香港の中から連れ去るというのは、圧力のかけ方が尋常ではない。「一国二制度」が掲げられてきた香港の「自由」

2015年は色々な意味で「節目」だったと思う。後々振り返られるであろう出来事がたくさん起き、多くの歴史的瞬間から「何十周年」という区切りの年でもあった。 防災に関して大きな分岐点となった阪神・淡路大震災から20年。それからの神戸、そしてそこで暮らす人々の気持ちはどう変わってきたのか。本書は神戸で震災を経験した3人のライター(青山ゆみこ氏、西岡研介氏、松本創氏

新聞社が社員を派遣しない危険地帯に潜り込むフリーランスの戦場カメラマン、横田徹氏の著書である。今年1月のISISによる邦人人質事件の際には、2週間で36本のテレビ番組に出演し、さらに新聞や雑誌の取材を10本受けていたというので、名前を知る人も少なくないだろう。 アフガニスタン、パキスタン、シリア、パレスチナ、リビア、ソマリア、カンボジア、コソボ……。著者が撮

読んだ本の内容をよく忘れてしまうのが悩みである。驚いたり、ジーンときたり、時を忘れたり、吹き出したりといった体験そのものが読書の醍醐味ではあるけれど、思い出したい時に要点をスッと引き出せるようになりたい。そうすれば、読んだ後も楽しめる。 そのことを特に感じるのが、誰かと話している時だ。話の流れに「この前読んだ本に書いてあったこと」がはまりそうだと思う瞬間はよ

『絶対音感』、『セラピスト』、『星新一』など多彩なテーマの著作で知られる最相葉月さんが、東工大にて非常勤講師として前期の4ヶ月間行った講義の記録である。この講義は池上彰さんの誘いによって実現したそうだ。東工大生、色々とうらやましすぎる。 「生涯を賭けるテーマをいかに選ぶか」というタイトルから、最相さんが毎回どのように著作のテーマを選ぶかを話すのかと予想する人

『その科学が成功を決める』、『その科学があなたを変える』などの著作で知られるリチャード・ワイズマン博士の新作である。幸運、自己啓発、錯覚、説得など心理学に関する研究を続けてきた博士が今回選んだテーマは「睡眠」。なぜ急に睡眠? と思われたかもしれないが、理由は後ほど。 ワイズマン博士の著作は、豊富な実証的研究が盛り込まれているのが特徴だ。本書でも、睡眠メカニズ

かつてスポーツ中継の花形だった実況アナウンサーたち。映像技術が進化し、観る人の情報源が「耳」から「目」へと移っていくにつれて彼らの存在感は薄まっていったように思える。 だが実態はむしろ逆で、視聴者を惹きつけるうえでの重要性は増してきているという。解説者とのかけ合い、ディレクターとの意思疎通、試合前の取材といった、実況以外の領域における役割が時代とともに広がっ

チベットが自由を取り戻すため、世界平和のために、私たちは焼身する。自由を奪われたチベット人たちの苦しみは、私たちの焼身の苦しみよりも余程大きい。 中国政府の圧政に対するチベット人の焼身抗議は2009年3月に始まり、2011年3月以降連続しながら今なお続いている。2015年8月1日の時点で亡命チベット人を含め147人が焼身を行い、内123人が死亡している。冒頭

「癒しを求めて」 「極上のセカンドライフを楽しむ」 「ゆったりと海外生活」 パンフレットには謳い文句が踊る。東京ビッグサイトの会場で行われた「ロングステイフェア2012」には、海外移住を考える大勢の高齢者が詰めかけていた。著者が到着した午前10時の時点で、入口にはすでに行列ができあがっていたという。 東南アジアの人気は根強い。年金の範囲である程度充実した生活

良くも悪くも、「ありえない」ことがたびたび起こるのが世の中だ。大多数の人はかすりもしない宝くじで、一等を複数回出した人は何人もいるという。統計モデルでは限りなく低確率とされていた金融市場の大暴落は、近年だけで何度も起きてしまった。 2009年9月6日、ブルガリアの国営ロトは当選番号としてランダムに「4、15、23、24、35、42」を選んだ。その4日後の20

「南洋」という言葉を耳にして、日本の元占領地であることがパッと思い浮かぶ人はどれくらいいるのだろう。「南の島」といえば真っ先に浮かぶのは、透き通った海が広がる常夏のリゾートだろうか(まさに自分がそうだった)。しかし、かつて日本が日本語教育を行い、神社を作って参拝させるなど支配を敷いていたのは東アジアだけではないのだ。 グアムを除く赤道以北の地域で、正式に日本

イスラーム関連の話題はいたるところで出てくるが、「日本における」と切り口を限ればその数はぐっと絞られるように思う。国際情勢的に仕方がないということもあるが、メディアでも伝えられるのはほとんどが「異国の存在」としての話で、隣人としての姿に目が向けられることは稀だと感じる。 それがさらに「日本人の」イスラーム事情となれば、ますます目にする機会は少なくなる。推定1

「そ・つ・ぎょうぉ~、オメデトウ!」 表紙の写真は、その飛び込みの瞬間を収めたものだ。顔は見えないが、皆透き通るような笑顔だったに違いない。実は彼らの約半数は、数年前まで不登校生活を送っていた。 舞台は沖縄本島南部、南城市の沖合約5キロに浮かぶ離島、久高島。卒業生を含め10数人の子供たちが、この島の集落のはずれにある「久高島留学センター」(通称:センター)で

世論調査を目にする機会が増えたように思う。「賛成○割、反対○割」など、大文字で押し出された結果の部分を見ては、とりあえず「ふーん」とか言っている回数が多くなったような気がする。もちろんこれは感覚的な話に過ぎないが、議論の分かれる話がたくさん持ち上がっては報じられている今、あながち間違っているとも言えないのではないだろうか。 だが触れる場面が多い割に、調査の結


保育園くらいの子どもが、1個のマシュマロと2個のマシュマロがそれぞれ置かれたテーブルに着く。脇の卓上ベルを鳴らして研究者を呼び出せば、すぐに1個のマシュマロを食べられる。しかし、席に着いて研究者が戻るまで待つことができれば、2個のマシュマロにありつける。 今すぐに報酬を得る方を選ぶか、少し我慢してより多くの報酬を得る方を選ぶか。欲求の先延ばしに関する有名な実

2005年8月末、巨大ハリケーンのカトリーナがアメリカ南東部を襲い、1800名以上の命が失われた。中でも被害の大きかったルイジアナ州最大の都市ニューオーリンズは、堤防の決壊により市中の8割が水没する壊滅的打撃を受け、死者の大半を出している。 そのニューオーリンズにあるメモリアル病院で、安楽死の疑いがある患者の大量死が発覚し、医師と看護師3人が殺人罪で逮捕され

まともに読んだことがない、未開拓のジャンルに手を出してみる。それはワクワクすると同時に、危険なことでもあると思う。選書を大きく間違えれば、その経験がトラウマになってしまうかもしれないからだ。無理矢理背伸びをして買ってはみたものの、結局面白さが分からず積読行き、という本が重なると、期待を膨らませていたぶん反動がきて、むしろそのジャンルを避けるようになることさえ

第2次世界大戦期、その獅子奮迅の働きぶりから「奇跡の戦闘機」と称賛された、零戦。数々のノンフィクション、小説、さらには映画の題材にもなり、活躍から70年以上がたった今なお広くその名をとどろかせている。 一方、おなじく大戦期に開発され、その驚くべき性能の高さから一時は「奇跡のエンジン」と呼ばれながらも、後に零戦とは真逆の運命を辿ることになる悲劇の発動機があった

ずばりタイトルの通り、本書は視覚障害者が世界をどのように認識しているのかについて迫っていく本だ。目が見えない人とその関係者数名に対して行ったインタビュー、ともに行ったワークショップ、日々の何気ないおしゃべりなどを通して、晴眼者である著者が彼らをとりまく「見えない世界」について考えていく。 盲人の生活について書かれた本はこれまでにも色々出ている。パッと見それほ

自称「独立国家」、飛び地、消滅した国々、廃墟、立ち入り禁止区域……。世界の珍スポットを集めた本には、なんとも言えない面白さがある。マイナーな場所にまつわるマイナーな知識の数々に、知的好奇心がジワジワと刺激されるのだ。適当に開いた箇所からつまみ食いできるのも良いところ。 本書『オフ・ザ・マップ』もそうした本の1つである。「失われた」「地図にない」「誰もいない」


木造二階建てアパートの二階にある4畳半の部屋に仕事場を移したところ、畳がすべて本で埋まってしまった。 この一文から本書は始まる。移した蔵書の数は「少なくとも1000冊以上、2000冊以下」とのこと。ちなみに築年数は50年で、下見の段階で押し入れの床からはメリメリと板が裂ける音が。引っ越し終了後、自宅へ帰るバンの中で「もっと慎重に物件を選べば良かった」と後悔す


「悪の枢軸」 誰もが耳にし、いろんな意味で今も記憶に残る言葉たち。実はこれらのフレーズの生みの親は、バラク・オバマ、ジョージ・W・ブッシュ、安倍晋三ではない。実際に考え出したのは、アダム・フランケル、デービッド・フラム、谷口智彦といったスピーチライターたちなのだ。 本書はこの知られざる職業の歴史や役割、実際の仕事内容、さらにはなりたい人へのアドバイスまでもが

動物に人間の心を映し、親しみを覚える。これは普段誰もが何気なくやっていることだろう。ペットの行動に癒されたり、近所の野良猫に話しかけたり、動物園で気怠そうなライオンに同情したり……。振る舞いを人間的に解釈することで、彼らを身近に感じている。 こうした擬人化は、動物だけでなく物質や自然現象にまで及ぶ。「空が泣いてる」なんて言い方も聞くほどだから、動物の行動を人

本や雑誌づくりにおいて扇の要のような役割を担っている、編集者という職業。その中でも編集長の座に就く人物は、作品の良し悪しを左右するキーマンといっても差し支えないだろう。 しかし、読者の目の前にその姿がクローズアップされることは少ない。ましてや本書のように『昭和の』という条件がつけば、その神秘性はさらに高まってくる。 本書は戦後出版史において一時代を築いた、昭

「世界で最も時間に正確」と言われる東京の鉄道網。「遅刻の基準」を比べると、他国との差は歴然だ。少し古い本ではあるが、 『定刻発車』 (三戸祐子著 交通新聞社)によれば、定時運転率の統計において、日本は1分オーバーから遅刻に数えるのに対し、海外では欧米であっても10分~15分過ぎて初めて遅刻とカウントされるところが多いらしい。日本だったらちょっとした騒ぎになる

日本人の受賞は今年で8年連続と、実は本家よりハイペースな受賞頻度を誇るこの賞。その栄誉(?)に2度も輝いたのが、粘菌の生態に関する研究である。著者は粘菌をはじめとする単細胞生物の研究を続けて25年になる研究者で、2度の受賞の中心人物だ。 粘菌。日常生活ではなかなか口にしない名前だが、実はちょっとした藪や都会の植え込みにも潜んでいる身近な生物だ。湿気を好み、特

「特殊清掃 戦う男たち」というブログをご存じだろうか。特殊清掃(以下:特掃)の世界に20年以上も身を置くある男性が、「特掃隊長」というペンネームで特掃の仕事について綴ったもので、2年ほど前に5年分の記事を一部抜粋してまとめた単行本が刊行された。 一部でとても話題になったこともあり、ご存じの方もいるかもしれないが、1か月ほど前に新書サイズの携書版が発売されたと


夏、真っ盛り。テレビを点ければ、映るのは白球を追いかける球児たちの姿。夏の風物詩の一つに数えられるその存在感はまさに、メジャースポーツと呼ぶに相応しい。 ただ、メジャーがあれば当然、マイナーもある。本書で語られるスポーツ、フリーダイビングは、間違いなく後者に当てはまるだろう。しかし、マイナーであることと、その競技の魅力の大きさというのは、全くの別物なのだ。な

ならば相対的に生活水準が低く、文化も未成熟だった100年前くらいの日本の場合は言わずもがな、と思うところだが、実は明治末期から大正、昭和初期にかけての日本では、ヴァイオリンが現代と比べて遥かに広く大衆に親しまれていた。しかもその多くはなんと国産品だったという。開国後、徐々に流入してきた西洋楽器は庶民の手にはなかなか届かない代物だったが、明治も終わりに近づくと

2億年前は「1000年に1種」の頻度だった生物の絶滅は、人間の歴史とともに飛躍的に増加し、今や「1年に4万種」という絶望的な領域に達してしまった。実は、ここ3000年に関して言えば、その大半は「島」で起きているという。 もちろん、多様な種の大量絶滅の原因は人間だ。しかし、島々で直接手を下しているのは、ねずみやねこなど、人間とともにやって来た動物たちである。船

感動を飛び越してショックだ。こんな面白い講義をリアルタイムで受けている京大生には、同じ大学生として嫉妬全開である。まあ、受験生時代のセンター試験の点数を聞かれたらぐうの音もでない訳だが、学校が違えばこんなに違うものかとつい思ってしまう。 そんな悩ましい程面白い講義とは、京都大学屈指の人気を誇る、「生命の化学」。その中から生徒に好評だった部分を選りすぐり、実際

本書には、カエサル、コロンブス、マリー・アントワネット、アインシュタインといった、歴史にその名を刻む19人の偉人たちが登場する。しかし本書がスポットを当てているのは、その武勇でも、才能でも、豪勢な暮らしでも、壮絶な運命でもない。書かれているのは、偉人たちが具体的にどのように死んだのか、という死に際の物語だ。それが1人物につき1章で、大体10ページくらいでまと

米国ユタ州の砂漠の町モアブに、10年以上まったくお金をつかわずに暮らしている男がいる。スエロと名乗る彼は、50歳をすぎた現在でも、月の半分以上は野草やごみ箱から拾った物を食べ、人里はなれた洞窟に寝るという穴居生活を送っている。本書は、スエロの旧友でもあるノンフィクションライターの著者が、リーマンショックを機に、資本主義の煩わしさとは無縁の世界に生きる彼の元を