ノンフィクションはこれを読め!

峰尾 健一

1993年、横浜生まれ。横浜市立大学卒業。5歳から高校卒業までを秋田県で過ごし、大学入学と同時に横浜へカムバック。基本的に乱読派のため、好きなジャンルを絞りきれず困っている。

(2024年当時)

峰尾 健一の記事

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80記事

『あなたがあの曲を好きなわけ 「音楽の好み」がわかる七つの要素』「好みの違い」はこわくない 書影

おすすめ本レビュー / アート・スポーツ

『あなたがあの曲を好きなわけ 「音楽の好み」がわかる七つの要素』「好みの違い」はこわくない

音楽は好きでも、音楽の話をするのはわりと苦手だったりする。 自分が微妙だと思うアーティストを好きと言われたら返答に困るし、一見好みが近いように見えても実は「良い」と感じているポイントが全然違って噛み合わないこともある。 同じ曲を聴いても、人によってなぜこれほど感じ方が異なるのか。自分が大好きな曲があの人の琴線には触れず、あの人が最高だと言う曲はなんだかピンと

その「絶好調」は、ただの勘違い?『科学は「ツキ」を証明できるか――「ホットハンド」をめぐる大論争』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

その「絶好調」は、ただの勘違い?『科学は「ツキ」を証明できるか――「ホットハンド」をめぐる大論争』

シュートが連続で何本も決まる。賭け事で勝ちが続く。名案が次々と浮かんでくる。そんな「ツイている」「波に乗っている」状況は、誰しも身に覚えがあるだろう。 ひとつの成功がさらなる成功を呼び込む。そんな神がかった状態は「ホットハンド」と呼ばれる。この絶好調な感覚が本物であることを、統計的に証明しようとする試みがあった。 ホットハンドは実在するのか。この謎にまつわる

『もっと! 愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学』身近なわりに知らない、その奥深さ 書影

サイエンス / 医学・心理学

『もっと! 愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学』身近なわりに知らない、その奥深さ

本は買った時がいちばん楽しい。半分本気でそう思っている。「本末転倒」「著者に失礼」とお叱りを受けそうだが、そもそも買う楽しさと読む楽しさは別物だったりする。 装丁に目をひかれ、パラパラと目を通して「これは買いだ」と確信。それを何度か繰り返し、店を出て「こんどの休日に読もう」とニヤニヤするところまでがピークだ。慌ただしい日々の中で、「週末のたのしみ」は気づけば

『アメリカン・プリズン──潜入記者の見た知られざる刑務所ビジネス』「更生より収益性」の原理が支配する民営刑務所の実態 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『アメリカン・プリズン──潜入記者の見た知られざる刑務所ビジネス』「更生より収益性」の原理が支配する民営刑務所の実態

カリフォルニア州矯正局は先日、8月末までに約8,000人の服役囚を釈放すると 発表した 。理由は言うまでもない。世界の囚人数のうち約4分の1を収容するアメリカでは、刑務所内での感染拡大が深刻な問題になっている。考えてみれば「密」を避けるうえでこれほどハードルが高い場所もないかもしれない。同州では2月以降すでに約10,000人が解放されている。 いくら手に負え

『絶望を希望に変える経済学 社会の重大問題をどう解決するか』経済学が自分ごとに変わる本 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『絶望を希望に変える経済学 社会の重大問題をどう解決するか』経済学が自分ごとに変わる本

2019年ノーベル経済学賞受賞者が、移民、経済成長、気候変動、経済格差などの大きくて複雑な社会問題について切り込んでいく一冊だ。 経済学って小難しくてとっつきづらい。人の心理を単純化しすぎで、実感が湧かない。そもそも経済学って、どれほど世の中の役に立つのか? そんな疑問を持つ人も、一度手に取ってみてほしい。さわりを読むだけでも、よくある経済学の入門書とは様子

戦後初の「甲子園がない年」……だからこそいま考えたい『野球と暴力』 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

戦後初の「甲子園がない年」……だからこそいま考えたい『野球と暴力』

夏の甲子園中止が決まり、今年は戦後初めて「甲子園のない年」になることが決定した。誰がどんな言葉をかけようと、選手たちの無念、悔しさが晴れるはずがないのは言うまでもない。野球に限らず、さまざまなスポーツで集大成の場が失われてしまった。 県単位で夏の大会の開催を模索する動きは出てきている。緊急事態宣言解除を受け、当面は無観客試合ながらプロ野球の開幕日も発表された

『旅のつばくろ』道中だけが旅じゃない 書影

教養・雑学 / 人物

『旅のつばくろ』道中だけが旅じゃない

二週間前はまだ連休だったことが信じられない。どこにも出かけないGWはあまりにも一瞬すぎて、何をしていたのか早くも記憶がなくなっている。巣ごもり生活にもすっかり慣れ、むしろ快適に感じるくらいだ。これから自粛が解かれていったとしても、しばらくは遠出なしで平気だとけっこう本気で思っている。 本書を読んで、そんな気持ちが変わってきた。日頃の外出は減るとしても、やっぱ

『野球消滅』「メジャー」が「マイナー」へと変わる時、何が起きているのか 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『野球消滅』「メジャー」が「マイナー」へと変わる時、何が起きているのか

日曜日に決勝が行われた野球の世界大会「プレミア12」は、ライバル韓国を下した日本の優勝で幕を閉じた。いよいよ本格的にオフシーズンが始まる。夏の甲子園期間に刊行された本書にもうひとつ読みどきがあるとしたら、まさにこの総括の時期がふさわしいといえるだろう。 「プレミア12」での侍ジャパンの戦いぶりは、言うまでもなくすばらしかった。辞退者やケガによる離脱で必ずしも

『習慣の力〔新版〕』変えるためのコツは、意外とシンプル 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『習慣の力〔新版〕』変えるためのコツは、意外とシンプル

自分でコントロールしていくものか。やむをえず染みついてしまうものか。 習慣ときいてまずイメージするのは後者だ。飲酒に喫煙、浪費癖。ちょっとした空き時間とか退屈を感じた時にまずスマホ、みたいなのもそのひとつだろう。後からいかんと思いつつも、ときにはほぼ無意識のうちにやってしまう習慣の数々。自分自身、いちいち思い返したくないくらい心当たりがある。 かといってただ

『食の実験場アメリカ-ファーストフード帝国のゆくえ』躍動感あふれる創造の歴史 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『食の実験場アメリカ-ファーストフード帝国のゆくえ』躍動感あふれる創造の歴史

白人によって作り上げられた「ファストフード帝国」。画一化されていて正直面白みに欠ける反面、汎用性の高さゆえに世界中至るところへ浸透している。恥ずかしながら、本書を読む前に「アメリカの食文化」としてまず思い浮かぶのはこの印象だった。 しかしその原点にまで遡っていくと、まったく異なる景色が見えてくる。元をたどればそこには画一化とはほど遠い多様さがあり、また必ずし

『数学者が検証! アルゴリズムはどれほど人を支配しているのか?  ~あなたを分析し、操作するブラックボックスの真実』正しく付き合うために、知っておくべきこと 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『数学者が検証! アルゴリズムはどれほど人を支配しているのか? ~あなたを分析し、操作するブラックボックスの真実』正しく付き合うために、知っておくべきこと

「Facebookがあなたについて知っていること」。そう検索してみると、似たような趣旨のタイトルがいくつもヒットする。「あなたのすべてを知っている」、「隠しているはずのことまで知っている」、「気づかないうちに追跡されている」。確かに気味の悪い話だが、では実際のところ、私たちは「どれほど」アルゴリズムに支配されているのか? 数学者である著者は、さまざまな研究に

『生命科学クライシス─新薬開発の危ない現場』着実に進むために、急がば回れ 書影

医学・心理学 / 社会

『生命科学クライシス─新薬開発の危ない現場』着実に進むために、急がば回れ

「科学が正道を踏み外すさまざまなパターン」について迫る1冊だ。生命科学の歩みは決して止まってはいないが、無駄な努力のせいで進展は遅れている。単に時間や税金を無駄にしているだけでなく、人を欺く基礎研究の研究結果が、病気の治療法の探索を実際に遅らせているのだ。「人を欺く」と聞いてまず思い浮かぶのは研究不正の問題だが、ないものを「ある」ように見せるため故意に手を加

『生き残る判断 生き残れない行動』知識も準備も経験も、危機を察知できてこそ活きる 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『生き残る判断 生き残れない行動』知識も準備も経験も、危機を察知できてこそ活きる

「本書は災害復興についての本ではない。災害の最中にーー警察や消防士たちが到着する前に、レインコートを着た記者たちがやってくる前に、惨事に対する何らかの見方が押しつけられる前にーー何が起こるのかについて述べた本である」 災害・テロ・事件・事故。もしもの時の、とっさの判断が本書のテーマである。有事に何をすべきかを並べたマニュアル的な内容ではない。なぜ、人は非常時

『万引き依存症』ダメだとわかっていても、やめられない 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『万引き依存症』ダメだとわかっていても、やめられない

物を買うお金がない、10代の子どもの非行の入り口、転売目的のプロによる犯行、認知症の影響……。そんなありふれたイメージとは違った角度から万引きについて書かれた一冊だ。 なぜやったのか、常に分かりやすい動機があるとは限らない。周囲から真面目な人だと言われている。経済的に困っているわけでもない。にもかかわらず、繰り返し万引きに手を染める人々が一部に存在する。その

『どもる体』読む人の「しゃべる」を引き出す、触媒のような本 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『どもる体』読む人の「しゃべる」を引き出す、触媒のような本

ここで不思議なことが起こります。スタジオには、同じく吃音当事者の落語家、桂文福さんがゲストとして来ていました。その文福さんが、吃音症状の出ている八木さんに向かって、「タン・タン・タン」と規則的に舌を打ち始めたのです。商売道具の扇子を横に振りながら、口拍子をとっていく文福さん。すると、まるで金縛りが解けたような変化が起きたのです。数秒前の吃音症状はどこへやら、

『コンビニ外国人』身近だけどよく知らない、ではすまされない 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『コンビニ外国人』身近だけどよく知らない、ではすまされない

もはや毎日のように顔を合わせている人たちについての話だ。地域によって差はあるものの、都市部のコンビニでは外国人スタッフの存在はすっかり当たり前になった。自宅の最寄りのコンビニともなると7割くらいが外国人店員という印象なのだが、その割に知っていることはあまりにも少ない。タイトルを見た瞬間、自然と手が伸びた。 中身はコンビニの話にとどまらない。コンビニ店員のほと

『県都物語』新刊超速レビュー 書影

教養・雑学 / 新刊超速レビュー

『県都物語』新刊超速レビュー

駅前、繁華街などのエリア単位、あるいは個別の建物やお店といった単位の個性ならば目につきやすい。一方でもっと大きなレベル、都市のデザインの個性となると、なんとなく歩くだけでは見えてこないもの。仕事で月に1、2回国内出張に出かけるが、オフィスの密集する中核都市のようなところほどかえって特徴が掴みづらく、一見すると新鮮さに欠ける感じがする。 本書は都市計画の第一人

タイトルの割に中身は真摯『誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

タイトルの割に中身は真摯『誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性』

2015年、米カリフォルニア州サンバーナーディーノで銃乱射事件が発生した。パキスタン系アメリカ人でありイスラム教徒だった犯人の名前が報じられるやいなや、ネット上はイスラム教徒を殺害せよという書き込みで溢れかえる。 事件の4日後、オバマ大統領(当時)は国民向け演説で「差別を拒むことは、宗派を問わずすべての米国人の責務」と語り、「自由は恐怖に勝ることを忘れないよ

『消費資本主義』「見せびらかし」の心理をひも解く 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『消費資本主義』「見せびらかし」の心理をひも解く

本書は「見せびらかし消費」についての本である。高級な車や時計、ファッションなどの典型例を出すまでもなく、機能というよりはステータスを手に入れようとする消費行動は世の中のあらゆるところに存在している。 では、わたしたちはそうした消費を通して、具体的に「何を」見せびらかしているのか? あらためて問われると、はっきりとした回答は案外浮かばない。富の多さ、社会的地位

『感染地図』疫学の父が立ち向かった、見えない敵 書影

人物 / 世界史

『感染地図』疫学の父が立ち向かった、見えない敵

『世界をつくった6つの革命の物語』 (朝日新聞出版)、 『世界を変えた6つの「気晴らし」の物語』 (同前)、 『ピア PEER』 などで知られるスティーヴン・ジョンソン。彼の過去作が10年越しに文庫化された1冊である。 舞台は19世紀のロンドン。劣悪な衛生環境の中で、人びとは繰り返されるコレラの流行に苦しめられていた。本書は中でも集中的な被害をもたらした、1

『家族をテロリストにしないために イスラム系セクト感化防止センターの証言』「取り込み」はいかにして行われているのか 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『家族をテロリストにしないために イスラム系セクト感化防止センターの証言』「取り込み」はいかにして行われているのか

実際にテロ組織に加入しようとする若者を引きとめたり、社会への復帰を支援したりといった活動を行う「イスラム系セクト感化防止センター(CPDSI)」の創設者によって書かれた1冊だ。 著者はセンターを創設した2014年4月から2015年末までに、1134人の若者を支援してきた。活動の現場で目の当たりにした事例と、得られた知見がまとめられたのが本書である。 著者らは

『殴られて野球はうまくなる!?』「効き目」があるから、なくならない? 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『殴られて野球はうまくなる!?』「効き目」があるから、なくならない?

タイトルを読んでみてどう感じるだろうか。野球界に鉄拳が飛び交っていた時代など過去の話だと思う人も多いかもしれない。平成になってから30年が経とうとしている。水分補給や休息の重要性はもちろん、食事管理や筋力トレーニングの方法など、根性論とは距離を置いたアプローチも着実に浸透した。 昔に比べたらはるかに暴力が減っているのは事実だ。小・中・高と、6年ほど前まで学校

インドア派にこそ読んでほしい『NATURE FIX 自然が最高の脳をつくる』 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

インドア派にこそ読んでほしい『NATURE FIX 自然が最高の脳をつくる』

帰省シーズン真っただ中。慌ただしい日常からしばし遠ざかり、インドア派としてはサイダーでも飲みつつ家でごろごろ。するつもりが、今年はわりと緑豊かな場所まで出かけることにした。まちがいなく本書を読んだせいである。読んでいて、田舎に帰ってきたのに部屋に引きこもっていることが、急にもったいなく思えてしまったのだ。 森や海など自然豊かな環境に行くと、気分が上向き、体調

『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』わかりやすい原因などない、という現実 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』わかりやすい原因などない、という現実

コロンバイン高校銃乱射事件。1999年4月20日、コロンバイン高校の学生2人が無差別に発砲を行い最終的に自殺、教師1人と生徒12人が死亡し、24人が負傷した傷ましい出来事だ。発生から15年以上が経った今なお学校銃乱射事件の代名詞的存在とされるのは、犯人であるエリックとディランがそれぞれ卒業を間近に控えた、18歳・17歳の少年だったという若さだけが理由ではない

『人の心は読めるか?』「どう読むか」の前に、そもそも「読めるのか?」 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『人の心は読めるか?』「どう読むか」の前に、そもそも「読めるのか?」

一見、読心術の本のような体裁である。だが、タイトルをよく読むと、人の心を「どう読むか」ではなく、そもそも「読めるのか?」という視点だということに気がつく。 「他人を理解する上で大事なのは、相手の気持ちを推し量る能力の”穴”を把握することだ」。まえがきで著者はそう語る。相手の心を推測するための手がかりを取りにいくのではなく、自らを省みて、誤解を引き起こす落とし

『人はなぜ物語を求めるのか』物語との、虫のいい付き合い方 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『人はなぜ物語を求めるのか』物語との、虫のいい付き合い方

本書は物語論(ナラトロジー)と呼ばれる研究分野の視点から、人はいかに物語によって世界を理解しようとしているのかを説く一冊だ。 物語論の一部門である「筋(プロット)」研究には、「それなりに人間学的な背景があります」と著者は言う。本書では旧約聖書から桃太郎に至るまで、古今東西の様々な物語とその分析が引用され、さらには認知心理学や神経科学などの知見にも触れながら、

パンデミックの複雑な見取り図『感染源 防御不能のパンデミックを追う』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

パンデミックの複雑な見取り図『感染源 防御不能のパンデミックを追う』

『マラリア全史』など感染症をテーマとしたノンフィクションを多数著している科学ジャーナリストの最新作である。内容は疫学、認知科学、進化生物学、政治史など多岐にわたり、分野横断的だ。「移動」、「過密」、「非難」、「治療」など10の切り口から、パンデミックについて幅広く語られる。 「移動」の章では1825年のエリー運河開通をきっかけにアメリカでコレラが広がった例や

悪役になったのはここ最近『脂肪の歴史』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

悪役になったのはここ最近『脂肪の歴史』

原書房の“「食」の図書館”シリーズからの1冊である。豚肉、サンドイッチ、ビール、砂糖など、今まで食べ物や飲み物、調味料の歴史を取り上げてきたこのシリーズの流れからすると「脂肪」というのは少し浮いているような気もする。とはいえあくまで「食」の図書館ということで、脂肪といってもぜい肉の方ではなく、バターやマーガリンといった食用脂肪の歴史を辿っていく。 脂肪という

読み物としても味わえる教科書『質的社会調査の方法』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

読み物としても味わえる教科書『質的社会調査の方法』

タイトルや副題を見ると、やや小難しそうな雰囲気だ。有斐閣の本ということで堅めな教科書のような内容を想像していた。しかしひとたびページをめくると、こんな一文が目に飛び込んでくる。 質的調査の教科書を書いてください、という依頼を受けたとき、最初に頭に浮かんだのは、マニュアルのような教科書よりも、読み物として読んで面白い本を作りたい、ということでした。 「分析や解

『マラス』凶悪ギャングの心の底は 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『マラス』凶悪ギャングの心の底は

中米から米国へ不法入国する若者が急増している。それも、メキシコよりさらに南の中米諸国から。2014年夏、そんなニュースが著者の目に留まった。 2013年10月から2014年6月中旬までの間、単独で国境を超えようとして米・国境警備隊に拘束された未成年者の数は約52,000人に上る。そのうち75%が、グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラスの中米3ヵ国の出身だっ

『ふわとろ』私たちはどこに「おいしさ」を感じているのか 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『ふわとろ』私たちはどこに「おいしさ」を感じているのか

「シャキシャキ」 「ジューシー」 「もっちり」 「濃厚な」 「歯ごたえのある」 おいしい感覚を表す言葉の数々。「シズルワード」と呼ばれるこうした言葉たちを軸に、「おいしさ」とは何なのかを考えていく1冊だ。世の中に飛び交う食べ物の感想や宣伝の文句も、シズルワードに着目してみると、食べ物の何が「おいしい」とされているのかが見えてくる。 全体を通して底にあるのは、

『地震イツモマニュアル』「モシモ」を「イツモ」にするために 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『地震イツモマニュアル』「モシモ」を「イツモ」にするために

日本という国で暮らすことは、地震と一緒に生きていくこと。 2007年に発行された『地震イツモノート』は、阪神・淡路大震災の被災者167人の声と工夫を集めた本だ。「モシモ」ではなく「イツモ」、地震とつきあっていくことを語りかけた同書が2010年に文庫化されてから今日までの間にも、巨大な地震は繰り返し起きてきた。今も書店の文庫コーナーや防災コーナーでは、そう苦労

『情報参謀』世のムードを可視化する 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『情報参謀』世のムードを可視化する

自民党が大敗して政権を失った2009年夏の総選挙。その直後から2013年夏の参議院選挙で政権を完全に奪還するまで、自民党の情報戦略の「参謀役」を務めた人物が1461日間にわたる活動を振り返った1冊である。 本書に書かれている野党時代の自民党の情報分析活動の内実は「一度として明らかになったことはない」という。「カネ」や「情実」といったイメージがつきまとう政治の

『闘いいまだ終わらず 現代浪華遊侠伝・川口和秀』 書影

社会 / 事件・事故

『闘いいまだ終わらず 現代浪華遊侠伝・川口和秀』

新年早々に上映が開始され、連日満員御礼など大きな反響を巻き起こしたドキュメンタリー映画 『ヤクザと憲法』 (内藤順の レビュー )。昨年3月に東海テレビで放映された番組の映画版である同作は、実在するヤクザ組織に長期密着し、彼らの日常を映し出したことで話題を呼んだ。 取材に応じた指定暴力団「二代目東組二代目清勇会」。そのトップである川口和秀会長は、未決拘留も含

『「こつ」と「スランプ」の研究』「体感」に「ことば」を、「ことば」に「体感」を 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『「こつ」と「スランプ」の研究』「体感」に「ことば」を、「ことば」に「体感」を

何やらそそられるタイトルだ。とらえどころのない「こつ」と「スランプ」の正体に、いかにして迫っていくのか。そもそも、それらは研究できるものなのか。期待と不安が入り混じるまま読み進めた先に待っていたのは、思わぬアプローチと意外な着地点だった。 実は、「こつ」や「スランプ」についての話は本書の一面に過ぎない。研究対象とされているのはより広い領域、「身体知」である。

『子どもは40000回質問する』「知りたい」気持ちの正体 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『子どもは40000回質問する』「知りたい」気持ちの正体

それは突然湧き起こる。見知らぬ路地に出くわしたとき、身近な人の意外な一面を発見したとき、目の前の木からリンゴが落ちたとき……。 「好奇心」がテーマの一冊である。何が好奇心を枯渇させ、何が好奇心を豊かにするのか。好奇心に火がつくメカニズムはどのようなものか。好奇心を絶やさないために重要なことは何か。好奇心の強さとその人の所得との関係。などなど、「知りたい」気持

『世界の英語ができるまで』一方言から世界の標準語へ 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『世界の英語ができるまで』一方言から世界の標準語へ

国際標準語として不動の地位を確立した英語。メインの言語として話す「母語話者」がいない会話でも使われるほど、その影響力は大きい。だが元を辿れば、英語にも北ヨーロッパの片田舎で使われる言語に過ぎなかった時代がある。 オランダやドイツの一部地域で使われる、フリジア語という言語があるそうだ。現在の話者は約50万人で、そのほとんどがオランダ語あるいはドイツ語との二言語

空へと誘う破格のチケット『グッド・フライト、グッド・ナイト』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

空へと誘う破格のチケット『グッド・フライト、グッド・ナイト』

物心ついてから初めて飛行機に乗った時、それは間違いなく「体験」だった。飛ぶ前はもちろん、離陸した後もしばらくは落ち着かなかった記憶がある。 だが、今やフライトは「移動手段」である。乗った回数はそれほど多くないが、昔のワクワクや不安はすぐになくなり、窮屈さや眠りにくさばかりに目がいくようになった。映画や機内誌などで当たりに出会えればまだマシなのだが、基本的には

『一流の狂気』心の病が危機を救う 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『一流の狂気』心の病が危機を救う

「理想のリーダー像」をめぐる議論は、いつの時代も絶えることがない。局面によって「理想」の中身が異なることからしても、答えのない問いだと言えるだろう。そんな中、意外な角度からこの話題に一石を投じる人物が現れた。 精神科医である著者は、政治や軍事、ビジネスといった分野のリーダーに着目し、「危機の局面においては、うつや双極性障害、統合失調症などの精神障害を持つ人の