ノンフィクションはこれを読め!

新潮文庫の記事

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112記事

『謎のアジア納豆』 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『謎のアジア納豆』

書店で本書を手にとって、巻頭パラパラと数ページめくってからこの解説文で概要を知ろうとする人も多いと思うので、まず結論から言う。 この本は傑作だ。あなたの納豆観を覆し、しかも納豆を入り口にアジア中の辺境民族文化の旅へと誘い、さらに現代におけるディープな旅とは何か?という問いかけまでが含まれている。「買おうかな?どうしよっかな?」と悩んでいる暇はない。今すぐレジ

『つかこうへい正伝』”記憶”を”記録”へ 書影

人物 / 「解説」から読む本

『つかこうへい正伝』”記憶”を”記録”へ

「世の中にこんなに面白い芝居があるのか」 初めてつかこうへいの芝居『ストリッパー物語・惜別編』を観た、紀伊國屋ホール支配人(当時)、金子和一郎氏の感想です。時は1975年暮れ、場所は青山のVAN99ホール。1960年代に「アイビー・ルック」で一世を風靡した服飾メーカー「ヴァンヂャケット」が、73年3月に、青山通りに面した同社別館一階にオープンしたのが、このホ

『組長の妻、はじめます。 女ギャング亜弓姐さんの超ワル人生懺悔録』裏社会に咲いた愛の物語 書影

事件・事故 / 「解説」から読む本

『組長の妻、はじめます。 女ギャング亜弓姐さんの超ワル人生懺悔録』裏社会に咲いた愛の物語

私は暴力団を20年以上取材している。そのため暴力や犯罪に耐性が付き、暴力団をはじめ、周辺者たちを題材にしたノンフィクションにも食傷気味だ。正直、この分野にはやっつけ仕事の類似本が多く、本書も斜めに見ていた。軽いタイトルの印象もあって、実話誌によくある「面白おかしい、でもよくあるヤクザの姐さん話」と高を括っていた。 面白い物語ではあった。しかし、予想は完全に裏

『ウルトラセブンが「音楽」を教えてくれた』 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『ウルトラセブンが「音楽」を教えてくれた』

1968年のまだ冬か春浅き頃のことだ。父が会社からシールのシートを一束持って帰ってきた。私は幼稚園の年少組から年中組に上がる頃。満4歳である。 シールは「ウルトラセブン」の番組宣伝用だった。父の勤める広告代理店は、TBS系列の日曜夜7時から30分間、大手製薬会社が単独でスポンサーをしていた番組枠を担当することを、大きな食い扶持ちにしていた。その枠で前年秋から

『評伝 石牟礼道子 渚に立つひと』 書影

人物 / 「解説」から読む本

『評伝 石牟礼道子 渚に立つひと』

伝記は文芸の分野の一つである。 一人の人物の生涯と事績を書くものだから、対象はそれに値する人でなくてはならない。 リットン・ストレイチーというイギリスの文人に『ヴィクトリア朝のエミネントな人々』という列伝の名著がある。取り上げられているのはマニング枢機卿、フローレンス・ナイチンゲール、教育家のトーマス・アーノルド、ゴードン将軍。 ここでぼくはエミネント(em

『THIS IS JAPAN 英国保育士が見た日本』 書影

社会 / 「解説」から読む本

『THIS IS JAPAN 英国保育士が見た日本』

ブレイディみかこが『THIS IS JAPAN』を著してから3年。アメリカではトランプが大統領となり、イギリスではメイに代わってボリス・ジョンソンが首相となった。停滞、格差、分断がキーワードとして繰り返し取り上げられる中、旧来の「右vs.左」とは異なる「上vs.下」の構図が、瞬間的には描かれる。しかしすぐさま、人々の高まった不満は、ポピュリズムの構図へと着地

『あなたは、なぜ、つながれないのか ラポールと身体知 』 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『あなたは、なぜ、つながれないのか ラポールと身体知 』

2015年10月、池袋・某書店の人文書フロアで、私は立ち尽くしていた。棚に面出しで置かれた『あなたは、なぜ、つながれないのか』を前に、動けなくなっていたのだ。正直レジに持っていくには、少し勇気の要る本だった。実際、その日カゴに入れていた本は詩集ばかりで、本書は当時の自分が手に取る系統の本ではなかった。 それでも、刊行当初から否応なく気にかかる一冊だった。タイ

『マゾヒストたち 究極の変態18人の肖像』 書影

民俗・風俗 / 「解説」から読む本

『マゾヒストたち 究極の変態18人の肖像』

「S&Mスナイパー」から派生したM男向け季刊誌「スナイパーEVE」が本年2019年5月発行の72号で終了した。発刊号(2001年7月発行)から私は女王様インタビュー「ミストレスの肖像」とM男性インタビュー「当世マゾヒスト列伝」を担当していた。「ミストレスの肖像」は最終号まで続き、「当世マゾヒスト列伝」は誌面刷新により、24号(2007年4月発行)で終了。 連

『愛という名の支配』わたしたちを幸せにするフェミニズム 書影

社会 / 「解説」から読む本

『愛という名の支配』わたしたちを幸せにするフェミニズム

田嶋陽子さんは、討論バラエティ『ビートたけしのTVタックル』への出演で高い知名度を得た、日本を代表するフェミニストだ。時は1990年代、平成がはじまったばかりのころ。フェミニストがどういう人なのか、フェミニズムがなんなのかまったく知らなかった当時のわたしも、この番組でのやりとりを面白おかしく見ているうちに、「フェミニスト=田嶋陽子」と同義語のようにすり込まれ

『兵士に聞け 最終章』「戦後」を旅した24年 書影

日本史 / 「解説」から読む本

『兵士に聞け 最終章』「戦後」を旅した24年

杉山隆男が自衛隊と職業人としての自衛官の取材を始めたのは1992年11月、40歳になる直前であった。それは、自衛隊初の海外活動であるペルシャ湾掃海の翌年、あいまいきわまりない「正当防衛」基準に悩みながら陸自施設部隊がカンボジアPKOに赴いたその年であった。自衛隊取材の当初、「さわり」だけと本人は謙遜するものの、過酷きわまりないレンジャー訓練にも参加したのだか

『今日われ生きてあり 知覧特別攻撃隊員たちの軌跡』 書影

日本史 / 「解説」から読む本

『今日われ生きてあり 知覧特別攻撃隊員たちの軌跡』

思い切って告白するのだが、私はこの本を泣きながら読んだ。はじめてこの本を読んだとき、書斎で嗚咽した。号泣しそうだったが家族をおどろかせるのをはばかって声を殺して泣いた。なみだが幾度も流れた。 8年後、この文庫の解説をひきうけて、再読した。たまたま九州の都井岬へ行く用があったので、バッグのなかに『今日われ生きてあり』を入れて出かけた。東京から小倉、宮崎を経て串

『少年ゲリラ兵の告白 ​陸軍中野学校が作った沖縄秘密部隊』 書影

日本史 / 「解説」から読む本

『少年ゲリラ兵の告白 ​陸軍中野学校が作った沖縄秘密部隊』

母は沖縄戦の体験者だった。このことが、ある意味ライフワークのように僕が沖縄にこだわる理由になったのだが、実のところ、母がその沖縄戦でどのような体験をしたのか、よくわからないままでいる。 沖縄戦について問うと、母は口を固く閉ざしてしまうからである。住人の4人に1人が亡くなった史上類例のない地上戦が展開された島には、その戦について語らない人たちが多い。「語らない

『骸骨巡礼 イタリア・ポルトガル・フランス編』身も蓋もありません 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『骸骨巡礼 イタリア・ポルトガル・フランス編』身も蓋もありません

趣味は昆虫採集。長年、遺体に取り組んできた解剖学の権威、と思っているせいだろうか、養老孟司先生というとついハエを連想してしまう。 目がとても大きく複眼のようで、どこをどう見ているのかよくわからない。静かに佇んでおられるが、下手に近づくと一瞬で姿をくらましてしまいそう。部屋中を探しても見当たらず、「いない」と思っていたら、私の目元に止まっていたということもあり

『幻の料亭 「百川」ものがたり』「百川」に「咄々」する 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『幻の料亭 「百川」ものがたり』「百川」に「咄々」する

桜の開花のほんの数日前、「銀座吉兆」個室にて。 それぞれの席の前には卓上ミニ七輪。七輪の上には、出汁が張られた紙の鍋が置かれ、出汁はフツフツと煮えていい匂いを漂わせている。傍らの皿に盛られているのは、淡路の新玉ねぎと若布、そして、桜鯛のお造り。 「旬の出会いです」 と、店のご主人が説明した。 「さっとシャブシャブして、お召し上がりください」 小泉武夫センセイ

『バブル 日本迷走の原点』時代を見事に描き切った総括、形をかえた自伝 書影

社会 / 「解説」から読む本

『バブル 日本迷走の原点』時代を見事に描き切った総括、形をかえた自伝

永野さんに初めてお会いしたのは1982年頃だった。彼は既に名を馳せたバリバリの兜町担当の日本経済新聞記者で、私は人事異動で初めて証券局勤務となった新米の課長補佐。当時の日本は第一次石油ショックの教訓を生かし、先進国の中では比較的うまく第二次石油ショックを乗り切ったころで、世界における日本のプレゼンスが高まりつつある時代であった。行政上の課題として二つの「コク

『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正 』こんなスケールの大きい日本人が本当にいた 書影

ビジネス / 「解説」から読む本

『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正 』こんなスケールの大きい日本人が本当にいた

ドクター佐々木は、私とソフトバンクにとって大恩人中の大恩人です。ドクター佐々木と出会っていなかったら、ソフトバンクという会社はスタートできていなかったかもしれない。 最初に出会ったのは私が19歳のとき。私はカリフォルニア大学バークレー校の学生でした。電子翻訳機の試作機を作って、いろんなところに持って行ったのですが、どこにも相手にされなかった。その中でただ一人

『新天皇 若き日の肖像』 書影

人物 / 「解説」から読む本

『新天皇 若き日の肖像』

縁あって私は今、札幌でテレビの仕事に就いている。札幌に赴任したのは、「明仁天皇が生前退位の意向を示した」というニュースが全国を駆け巡る少し前のことだった。 札幌は日本有数の美しい街だ。この地に居を構え、生まれ育った東京と、そこから遥か800キロ離れた札幌との「二都物語」が私の中で始まった。その物語のエピソードのひとつとして私は札幌の中に「皇室」を見つけた。北

『原節子の真実』 書影

人物 / 「解説」から読む本

『原節子の真実』

原節子が出演する映画を初めて見たのは、17歳でイタリアに移り住んだ時のことだった。映画好きの大学生の友人に、ある日「君は日本人なのに小津安二郎も知らないで、画家という表現者になるつもりなのか。どうかしている」と呆れられ、フィレンツェの下町にある学生向けの汚い映画館で見せられたのが、『東京物語』だった。今でもなお、小津安二郎は欧州の映画好きが年齢問わず強く支持

『ホンダジェット 開発リーダーが語る30年の全軌跡 』 書影

ビジネス / 「解説」から読む本

『ホンダジェット 開発リーダーが語る30年の全軌跡 』

「ホンダジェット」は、バイクや自動車のメーカーとして有名なあのホンダが、初めて市場に送り出した飛行機である。斬新なデザイン、美しい仕上げと塗装、ライバル機の群を抜く性能。デビュー初日にいきなり100機以上売れ、「航空界のノーベル賞」ともいうべき権威ある設計賞を総なめにした。一言でいえば、誰もが認める傑作機だ。 その「ホンダジェット」についての本格的なノンフィ

『麻原彰晃の誕生 』 書影

事件・事故 / 「解説」から読む本

『麻原彰晃の誕生 』

こうして紙の本として再生されるのは、とてもありがたいことだ。いくらかうしろめたさを感じるのは、麻原彰晃ほか12名の死刑執行を見送ったあとでの刊行になってしまったからである。本書は彼らの死をもって、あらためて「誕生」したのだ。 なぜ日本人は麻原やオウムから目を背けてきたのだろうか。春の野原を散歩していて、見たこともない奇怪な生物が路傍にうずくまっているのに気づ

『「始まりの国」淡路と「陰の王国」大阪 古代史謎解き紀行 』 書影

日本史 / 「解説」から読む本

『「始まりの国」淡路と「陰の王国」大阪 古代史謎解き紀行 』

大阪を読み解くための最後のキーワードは、「馬」だと思う。生駒山の西側や淀川の岸辺には、渡来人が多く住み、牧を造り、馬を飼っていた。そんな大阪の馬飼いが、一度歴史的な大仕事をしたことがある。越(こし)の男大迹王(おおどのみこ)〔継体天皇〕を畿内に連れてきたのは大伴氏だが、渋る男大迹王を説得したのは、河内馬飼首荒籠(かわちのうまかいのおびとあらこ)だった。河内で

『やぶれかぶれ青春記・大阪万博奮闘記』 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『やぶれかぶれ青春記・大阪万博奮闘記』

わたしが作家・小松左京の名前を知ったのは、1964年のことである。 京都大学人文科学研究所(人文研)の助手として10年がすぎ、前年から1年間、アメリカのアイオワ州グリネル大学で交換教授として教え、帰国したばかりのころであった。アメリカ生活は3度目であったが、まるまる一年も日本を離れたのは初めてで、帰国したときには一種の精神の空白状態。それを埋めるべく、誰かれ

『偽りの薬 降圧剤ディオバン臨床試験疑惑を追う』 書影

医学・心理学 / 「解説」から読む本

『偽りの薬 降圧剤ディオバン臨床試験疑惑を追う』

製薬企業と大学医学部などの医療機関がカネで癒着して、特定の薬の効果を証明する臨床試験のデータを改ざんあるいは捏造して、実際にはない効果を「ある」とする報告(論文)を公表し、企業は論文を利用して大々的に宣伝、医師はどんどん患者に投薬したら何が起こるのか。 それは、あまりにも明白だ。その薬を処方された患者は、効くと信じて医療費を支払い、薬を飲み続けているのに、症

『鉄路2万7千キロ 世界の「超」長距離列車を乗りつぶす 』旅行作家の矜恃 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『鉄路2万7千キロ 世界の「超」長距離列車を乗りつぶす 』旅行作家の矜恃

明日は汽車の中で眠りたくない、と何度も思ったものだ。地図を見て、時刻表をめくりながら、旅を組み立てていく時間は、至福の時間である。この至福の時間があるからこそ旅に出たくなるのだ、とも思える。 実際に旅に出て列車に何十時間も揺られることもある。自分が計画したのだから、予期したとおりのことだ。しかし「至福の時間」には忘れていた倦怠感が身体を蝕み、心地よいはずのジ

『あの戦争から遠く離れて 私につながる歴史をたどる旅』 書影

日本史 / 「解説」から読む本

『あの戦争から遠く離れて 私につながる歴史をたどる旅』

いまから10数年前、私は東京・水道橋駅近くにあるライター・エディター養成学校の夜間コースで、年に何度か、講師の仕事をしていた。 ルポライターの大先輩にあたる鎌田慧さんからの依頼で、ノンフィクションの取材法と書き方をおしえていたのである。 ある年、非常に熱心な女性の受講生がいた。一見大学生かと思ったが、小さな貿易会社で働いており、ぜひ書きたいテーマがあるとの話

『未解決事件 グリコ・森永事件 捜査員300人の証言』 書影

事件・事故 / 「解説」から読む本

『未解決事件 グリコ・森永事件 捜査員300人の証言』

あれから34年――。グリコ・森永事件と聞くだけで、今もって重苦しい嫌な気分になる。様々な出来事、想い出とともに、結局は未解決に終わってしまったからだ。事件の真相も、「かい人21面相」も、闇に消えた。無念である。私は事件当時、読売新聞大阪本社で大阪府警捜査一課担当の記者だった。以来、持ち場や部署が変わろうと、どんな異動があろうと、完全時効が成立するまでの16年

『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』 書影

生物・自然 / 「解説」から読む本

『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』

私は、1年のうち少なくとも3ヶ月は、海外で恐竜化石調査を行っている。主な調査地は、モンゴル・アラスカ・カナダ・中国、そして日本である。2017年4月には、北海道むかわ町穂別から発見された日本で最初の大型恐竜の全身骨格について、発表をした。全長8メートルのハドロサウルス科という恐竜で、全身の8割以上が揃っている、世紀の大発見だ。私の研究は、それだけではない。恐

『介護民俗学という希望 「すまいるほーむ」の物語 』 書影

社会 / 「解説」から読む本

『介護民俗学という希望 「すまいるほーむ」の物語 』

著者の六車由実さんと初めて出会ったのは、三年前の二月に大津で開催されたアメニティフォーラム19のトークセッション「記憶の宝庫としての福祉現場」だった。 気鋭の民俗学者という前歴と、前著『驚きの介護民俗学』で提起された斬新な切り口から、お会いする前は、舌鋒鋭い才女という勝手なイメージを抱いていた。しかし、初対面の印象は全く違っていた。「すまいるほーむ」の実践に

『謝るなら、いつでもおいで 佐世保小六女児同級生殺害事件』 書影

事件・事故 / 「解説」から読む本

『謝るなら、いつでもおいで 佐世保小六女児同級生殺害事件』

正に「青天の霹靂」と、いうヤツである。 何故、人よりホンの一寸ばかし読書が好きなだけの、40過ぎの一介のスタイリストの元に、あの開高健ノンフィクション賞と、大宅壮一ノンフィクション賞の最終候補に残る様な、本格派ノンフィクションの文庫版解説という大役が回ってくるのだろうか。 しかも本書は、あるファッション・デザイナーの評伝でもなければ、映画や演劇の衣装について

『パンツが見える。 羞恥心の現代史 』 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『パンツが見える。 羞恥心の現代史 』

女性業界において、下着のラインが「ひびく」ことは、大変に恥ずかしいとされています。その上下に肉がムリっとはみ出ることによってブラジャーの存在感がニットの上からでもありありとわかるのも恥ずかしいのですが、しかし「ひびく」ことが恥ずかしいのは、何といってもブラジャーよりもパンツの方。 尻を覆うたっぷりとした脂肪にパンツのゴムが食い込むことによってできるラインは、

『話術』50年の怠慢を経て名著を読む 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『話術』50年の怠慢を経て名著を読む

私が東京放送のアナウンサーになったのは1967年の春だった。 新人の頃、アナウンサーとして読むべき何冊かの本を教えられた。そのひとつが「徳川夢声さんの話し方の本」だった。 正に今回文庫化されたこの『話術』なのだ。先輩から読めと言われていたのに、50年間手にすることがなかった本が手元にやってきた。襟を正して読み始めることにした。 思い返してみると、ただ遊んでば

『ピラミッド 最新科学で古代遺跡の謎を解く』ピラミッドを作った人々のリアリティ 書影

サイエンス / 「解説」から読む本

『ピラミッド 最新科学で古代遺跡の謎を解く』ピラミッドを作った人々のリアリティ

古代エジプト、あるいはピラミッドという語句に接して、胸をときめかせずにいられる日本人は、そう多くはあるまい。だが時間的にも空間的にも遠く隔たった魅惑的な異世界に、私たちは勝手な幻想——時に超古代文明から宇宙人まで登場する——を投影してもきた。確かに古代エジプト、そしてピラミッドに謎は存在する。この謎に営々と立ち向かってきた、考古学者たちによる研究の歩みを明ら

『全電源喪失の記憶 証言・福島第1原発 日本の命運を賭けた5日間』あのとき何があったのか 書影

事件・事故 / 「解説」から読む本

『全電源喪失の記憶 証言・福島第1原発 日本の命運を賭けた5日間』あのとき何があったのか

あの日、自分はどこで何をしていたのか。みんなが語ることができる。それぞれの国の国民には、そんな共通の大事件や大ニュースがあるものです。 かつてアメリカでは、それはジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件でした。その後、2001年9月11日の同時多発テロになりました。 いま日本で共通の記憶は、2011年3月11日でしょう。東日本大震災の発生のとき、どこにいて、何をし

『言葉の海へ』 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『言葉の海へ』

本書は、国語辞典『言海』の編者である大槻文彦の生涯を描いた評伝である。国語辞典と言えば、2011年に、国語辞典の編集に携わる人々を描いた三浦しをんの小説「舟を編む」がヒットし、その後映画化・アニメ化もされた。また2018年には広辞苑第七版が刊行され、新語として取り込まれた項目や、語釈の誤りが報道やネットで取り沙汰されるなど、日本人にとって国語辞典は何かと関心

『GHQと戦った女 沢田美喜』 書影

日本史 / 「解説」から読む本

『GHQと戦った女 沢田美喜』

戦後70余年。神奈川県大磯のエリザベス・サンダース・ホームで育った混血の孤児たちも、思えば、すでに老齢にさしかかっているだろう。 ホームの創設者、沢田美喜(1901~80年)は三菱財閥の創始者、岩崎彌太郎の孫である。男ならば当然、事業を発展させたはずだが、美喜は20歳で外交官、澤田廉三と結婚し、南米や中国、欧米各国で華やかな社交を繰り広げた。ところが、4人の

『老後破産 長寿という悪夢』 書影

社会 / 「解説」から読む本

『老後破産 長寿という悪夢』

大学の「社会保障論」の講義の中で、NHKスペシャル「老後破産」を教材に用いると、学生は衝撃を受ける。「なぜ高齢期に、こんな悲惨なことが起こるのか」「社会保障制度はどうなっているのだ」と──。丹念な取材で一人暮らし高齢者の生活を浮き彫りにしたルポは、若者の目を社会に向けさせ、社会のあるべき姿を思索させる力をもつ。 本書が取りあげた一人暮らし高齢者の「老後破産」

『西郷隆盛はどう語られてきたか』 書影

人物 / 「解説」から読む本

『西郷隆盛はどう語られてきたか』

西郷隆盛という人物の全体像は、その全体を構成する部分の一つ一つを知れば知るほど、ますます途方もなく広がり、多面性を見せ、さまざまな解釈の可能性を生み出していきます。私自身は、そうした捉えがたさを増す西郷像の中で、何をもって「西郷」とするか、その問いに答えなくてはとつねに思い続けています。 そしてその模索の中で辿り着いた一つの答えは、西郷のいくつかの漢詩、とく

『チャップリン自伝 栄光と波瀾の日々』 書影

人物 / 「解説」から読む本

『チャップリン自伝 栄光と波瀾の日々』

本書は、世界の喜劇王チャーリー・チャップリンが、75歳の時に出版した自伝 “My Autobiography” の新訳である。日本では、長らく中野好夫氏による、格調高く、かつ翻訳であることを忘れてしまうほど自然な日本語による名訳で親しまれてきたが、なにぶん時代の制約のせいで多少の取り違えもあった。今回、チャップリン没後40年を記念して、また資料が出揃いつつあ

『鹿児島学』 書影

民俗・風俗 / 「解説」から読む本

『鹿児島学』

最初にお断りしておきますが、私は鹿児島県外出身者です。生まれも育ちも福岡県の旧豊前国(福岡県は豊前の北半分と筑前・筑後が合体して生まれた県なので、それぞれ言葉も文化も異なるのです)で、学生時代を旧筑前国で過ごした後、縁あって鹿児島に職を得てそろそろ四半世紀。今や生まれ故郷で過ごした時間よりも長く鹿児島の地で過ごしています。 著者の岩中さんは本書の中でご自分の

『彼女たちの売春』 書影

社会 / 「解説」から読む本

『彼女たちの売春』

10年ほどまえ、京都の某ホテルのロビーで、わりといいスーツを着た人品いやしからぬ感じのおじさまと、真夏でもないのに下着みたいなワンピースを着た20代前半のきれいな女の子を見かけた。 おじさまは女の子をロビーのソファに座らせ、自分はフロントでチェックインの手つづきをしている。私がなぜ、その2人の動向に注目していたかというと、女の子の顔から表情がごっそり抜け落ち