ノンフィクションはこれを読め!

新潮文庫の記事

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112記事

『<映画の見方>がわかる本 ブレードランナーの未来世紀 』 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『<映画の見方>がわかる本 ブレードランナーの未来世紀 』

町山智浩は〈今世紀最初の映画評論家〉である。 2002年に最初の映画評論集──本書の前作にあたる『〈映画の見方〉がわかる本─『2001年宇宙の旅』から『未知との遭遇』まで』(洋泉社)を上梓し、このとき初めて町山さんは映画評論家を名乗った。映画について書く映画ライターは大量に輩出されても、映画評論家を新たに名乗る者など皆無だった時期に、である。そこにはどんな意

『よしもと血風録 吉本興業社長・大﨑洋物語』 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『よしもと血風録 吉本興業社長・大﨑洋物語』

2017年現在。僕はまだ吉本興業の社長をやらせてもらっている。 「吉本のやり方は読めない。いったいどうやって戦略を立てているんですか?」 最近は人からこんな風に聞かれることも増えた。 だが、この本を読んでもらえば分かるように、僕自身には戦略のようなものがあったわけではない。目の前に出てきた〝やらなければならないこと〟や、半ば行き当たりばったりのように思いつい

『祖国の選択 あの戦争の果て、日本と中国の狭間で』 書影

日本史 / 「解説」から読む本

『祖国の選択 あの戦争の果て、日本と中国の狭間で』

何という人生の数々だろうか――。 本書を読みながら、思わず天を仰ぎたくなるように、何度もそう感じた。 著者の城戸久枝さんが「あの戦争」と呼ぶ70年前の時代の混乱の中で、祖国を自らの意志によって選ばなければならなかった6人の体験が、丁寧な聞き取りによって描かれていく。 冒頭で滔々と語られる小林栄一氏の半生を読み始めたときから、私はその「語り」の重みに一気に引き

『東大助手物語』 書影

社会 / 「解説」から読む本

『東大助手物語』

いたいたしい読み物である。 ページをくりながら、私はそこかしこで思う。ああ、もういい。もうわかった。中島さん、自分をさいなむのは、ほどほどにしてくれ、と。 だが、そう思いつつ、私は読みすすむ。中島さんの心が、傷つき、すさんでいく。その荒廃を、どこかで私はおもしろがっている。こんどは、どんなふうに精神の解剖が、しめされるのか。その自虐劇にわくわくしている私も、

『命のまもりびと 秋田の自殺を半減させた男 』 書影

人物 / 「解説」から読む本

『命のまもりびと 秋田の自殺を半減させた男 』

不意に「赤穂城の明け渡し」が出てくる。主人公がまだ不動産業でバリバリ仕事をしていたころのこと。倒産して夜逃げした社長の住宅の調査に出かけた。家に入ると衣服が散乱している。タンスは開けっ放し。子供部屋の壁に友だちといっしょの幼い女の子の写真。通信簿が床に落ちていた。そのとき思った。自分は絶対にこんなことはしない。「もし倒産することがあっても、忠臣蔵の赤穂城の明

『親鸞「四つの謎」を解く』 書影

人物 / 「解説」から読む本

『親鸞「四つの謎」を解く』

親鸞には法然や日蓮と違い、宗派の開祖としての自伝的な書物は少ない。また90歳にも及ぶ長き生涯において、足跡に不明瞭なことも多々ある。それゆえに今日でも文人や知識者たちの研究の対象になっている。謎が多いのだ。そのことを改めて解きほごそうとしたのが本書だ。中でも重要な四つの謎、「出家の謎」「法然門下に入門した謎」「結婚した謎」「悪の自覚の謎」をキーワードに、著者

『チャップリン自伝 若き日々』 書影

人物 / 「解説」から読む本

『チャップリン自伝 若き日々』

チャーリー・チャップリン――不世出のコメディアン、映画俳優、映画監督、脚本家、映画プロデューサー、作曲家。それだけの役をすべてひとりで、しかもそれぞれ完璧にこなした天才。その名を抜きに映画史を語ることはできない。それに、なんといっても、彼の映画は文句なしに面白い。 ところが今、チャップリンという名前はなんとなく知っていても、どんな人かよく知らないし、映画も見

『発掘狂騒史 「岩宿」から「神の手」まで』 書影

事件・事故 / 「解説」から読む本

『発掘狂騒史 「岩宿」から「神の手」まで』

あと2月足らずで21世紀にならんとするまさに世紀末、2000年(平成12)に、日本中を驚かせた毎日新聞の大スクープがあった。旧石器捏造事件である。本書はこの事件にまで至る日本の考古学史を追ったノンフィクションだ。 題材を聞いたとき、私は嫌な気がした。あの事件に関わって人生を棒にふった人たちの傷口に塩を塗るような内容を予想したからである。歴史的事件で大失態をお

『三省堂国語辞典のひみつ 辞書を編む現場から』三省堂国語辞典の行間 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『三省堂国語辞典のひみつ 辞書を編む現場から』三省堂国語辞典の行間

本を読んで気になることのひとつに、その著者がどんなパーソナリティの人なのか、ということがあると思います。 飯間浩明先生は、テレビやラジオに出演されることも多いので、すでにご存じの方も多いかもしれませんが、ここでは私から見た飯間先生について述べたいと思います。 私は趣味で国語辞典を収集していることから、飯間浩明先生とは、国語辞典を扱ったテレビ番組やイベントを通

『浅草博徒一代 アウトローが見た日本の闇 』この一冊がボブ・ディランの魂を揺さぶった(のかもしれない) 書影

民俗・風俗 / 「解説」から読む本

『浅草博徒一代 アウトローが見た日本の闇 』この一冊がボブ・ディランの魂を揺さぶった(のかもしれない)

ボブ・ディランのノーベル文学賞受賞とともに、ある一冊の文庫が突如脚光を浴びた。浅草一帯に勢力を張った伝説の博徒、伊地知 栄治の生涯を描いた『浅草博徒一代』である。授賞式を間近にひかえた11月、本書はついに緊急復刊。まるで予言めいた一文も記されている、2006年8月1日刊行時の文庫解説を特別に掲載いたします。(HONZ編集部) 本書は1906年に宇都宮に生まれ

『身体巡礼』解剖的なひとのまなざし 書影

民俗・風俗 / 「解説」から読む本

『身体巡礼』解剖的なひとのまなざし

メメント・モリとは、ラテン語で「死を忘るるなかれ」という意味の言葉だが、時代によってとらえ方が異なるという。ローマ時代などは、「どうせ死ぬなら陽気に生きよう」といった意味合いで使われていたそうだ。それがやがてキリスト教の普及により――死後の世界である天国や地獄のイメージが詳細になるにつれ――「現世で手に入るものなど空しいものばかりである。それよりも神の御意志

『日本の聖域 ザ・タブー 』 書影

社会 / 「解説」から読む本

『日本の聖域 ザ・タブー 』

わが家でも、「選択」を定期購読しているが、シリーズ「日本のサンクチュアリ」を毎回読んでいるわけではない。そこでこの機会に、改めて聖域に足を踏み込んでみると、自らの経験と照らして、思い当たる節のある聖域がいくつか目についた。いずれもしばらく前に書かれた記事だが、最近になって、それらの聖域には新しい動きが出ている。それは、何年かたったくらいでは、賞味期限の切れな

『廓のおんな 金沢 名妓一代記』 書影

民俗・風俗 / 「解説」から読む本

『廓のおんな 金沢 名妓一代記』

著者の井上雪さんは、地元・金沢を精緻に描くことで知られた作家だった。本書は金沢の「廓」という装置の中で精一杯がんばって生きた、1892(明治25)年生まれの山口きぬさんの生涯を描いたノンフィクションだ。 廓の脇を流れる浅野川の緩やかな流れ、瓦屋根の低い家並み、夏は打ち水され、冬は粉雪を掃いた箒目が見える置屋や料理屋の玄関先、三味線の音色、艶やかな着物の芸者た

『組長の娘 ヤクザの家に生まれて』リアルな昭和ヤクザの「証言者」 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『組長の娘 ヤクザの家に生まれて』リアルな昭和ヤクザの「証言者」

あの人は、ヤクザの組長の娘だ――そう言われた場合、読者の皆さんは、どのようなイメージを持たれるだろうか。 ヤクザといっても、地域性も組の規模もシノギもさまざまであり、子分が何千人でも、あるいは数人でも、「組長」は「組長」である。 だから、その「娘」の人生も、千差万別である。父親の属する組織とそこでのポジション、あるいは家族への態度などに左右されるからだ。 本

『本当はひどかった昔の日本 古典文学で知るしたたかな日本人 』 書影

民俗・風俗 / 「解説」から読む本

『本当はひどかった昔の日本 古典文学で知るしたたかな日本人 』

私は、大塚ひかりさんには恩を受けている。大塚さんの仕事の中に、ひとりで全訳をした『源氏物語』(ちくま文庫)があるのだが、その本のおかげで私は初めて『源氏物語』の全巻を読み通すことができたのだ。 それより前には、いろんな作家の現代語訳で挑戦したのに、ついにすべてを読み通すことができなかった。谷崎潤一郎訳では、全10巻のうち第1巻(「若紫」まで)しか読めなかった

『ケインズかハイエクか 資本主義を動かした世紀の対決 』 書影

社会 / 「解説」から読む本

『ケインズかハイエクか 資本主義を動かした世紀の対決 』

「大きな政府」か「小さな政府」かは、経済の問題というよりも、票集めのための政治家のモットーと化している観がある。スリム化をめざしても公共事業にも橋や道路のメンテナンスのように避けられないものがあり、政府支出にも民主党(当時)の事業仕分けで判明したように、削減できそうに見えてそうでないものがある。ならば「適正な(規模の)政府」とは何かが問題になるが、そう問いづ

『美の世界旅行』 書影

アート・スポーツ / 「解説」から読む本

『美の世界旅行』

岡本太郎の文章は、読んでいるとまるで彼自身の絵画作品を見ているような気分にさせられる。岡本太郎は、絵の具をたっぷり含ませた絵筆を、カンバスの表面に勢い良く滑り踊らせるように文字を書く人だ。目で見たもの、耳で聞いた音、手で触れたり感じたりしたものが色を帯びて、文字の並ぶ紙の上でへこんだり膨らんだり歪んだり様々な形をなしている。そして、そんな文章に導かれる読者の

『それでも、日本人は「戦争」を選んだ 』 書影

日本史 / 「解説」から読む本

『それでも、日本人は「戦争」を選んだ 』

加藤陽子さんの『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』は、2010年度の第九回小林秀雄賞の受賞作です。その時に選考委員だった私は、半ば強引にこの作品を推しました。それをしたのは、もちろん、多くの人にこの本を読んでもらいたいと思ったからですが、もう一つ、「中学高校生を相手にして講義をする」という形のこの本が、叙述の形としては画期的に新しいと思ったからです。 5章

『ジュエリーの世界史』宝石商という商売 書影

世界史 / 「解説」から読む本

『ジュエリーの世界史』宝石商という商売

宝石が嫌いな女性はいないが、宝石が好きな男性もほとんどいない。これが宝石商にとっては頭痛の種だ。私事になるが、私も宝石商を50年以上やっている。仕事上の、あるいは私的な友人でも、話が彼等の夫人や令嬢に及びはじめると、どうも私のひがみかもしれないが、彼等が思わず身構えるのが、ピンとくる。女房子供に宝石屋を近づけると、ろくなことがない。どうもあいつらは、わけの分

『ブータン、これでいいのだ』 書影

社会 / 「解説」から読む本

『ブータン、これでいいのだ』

新潮社編集部から届いた山吹色のA4封筒を開けると、分厚い紙の束が出てきました。1枚目の紙には、「ブータン、これでいいのだ」の文字と、見慣れたぶどうのマーク。それを見て、じわじわとうれしさが込み上げてきました。 小さなころからよく読んでいたためか、新潮文庫はあこがれでした。2012年に単行本『ブータン、これでいいのだ』が新潮社から出版されて以来、書店で新潮文庫

『殺人犯はそこにいる』「真犯人」の存在を明らかにした "調査報道のバイブル" 書影

事件・事故 / 「解説」から読む本

『殺人犯はそこにいる』「真犯人」の存在を明らかにした "調査報道のバイブル"

調査報道のバイブル──。本書を読み終え、こんな表現がぴったりではないかと思った。 正直に言うと、民放テレビ業界については「そこは報道ではなくエンターテインメントの世界」と見下していた。そのため、メディア業界を取材するなかでも、ジャーナリズムという視点からこの業界を観察したことがなかった。本書の著者が民放テレビ局の記者だと知り、自分の無知と思い込みを恥じた次第

『闇の女たち 消えゆく日本人街娼の記録』 書影

民俗・風俗 / HONZブックマーク

『闇の女たち 消えゆく日本人街娼の記録』

やっと終わった。文庫の作業が終わったという意味だけではない。ふだんは見ないようにしていながらも、部屋の片隅にずっとうずくまっていた童子のような存在と向かい合い、やっとうちから出ていってもらうことができたような感覚に今私は浸っている。自分の仕事を褒めるのは抵抗があるが、いい内容だと思う。その満足感、責任を果たせたことの安心感に浸るとともに、童子がいなくなったこ

『深読みシェイクスピア』 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『深読みシェイクスピア』

シェイクスピアを翻訳する人には二つの大きな障壁があるだろうと私は思う。 一つはシェイクスピアの奥の深さ。およそ古典はシェイクスピアに限らず、ギリシャ悲劇でも「源氏物語」でも近松でも、時代により社会により人によってその解釈は多岐にわたる。その多様性に耐えて今日まで残ったのが真の古典なのであって、真の古典である限りその奥の深さはほとんど無限に近い。そこに正解など

『バイエルの謎 日本文化になった教則本』 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『バイエルの謎 日本文化になった教則本』

小学生の頃、同じマンションに住むピアノの先生の家に週に一回、通っていた。自分の家にピアノがないのに習うというのは、今考えるとかなり無謀な挑戦だった。練習に使用したのは、赤い表紙のバイエル教則本。正直、つまらなかった。赤を終えると黄色になったが、依然としてつまらなかった。同じことの繰り返しで飽き飽きした。 少し楽しくなってきたのは、父親が電気オルガンを買ってく

『原子力政策研究会100時間の極秘音源 メルトダウンへの道』 書影

社会 / 「解説」から読む本

『原子力政策研究会100時間の極秘音源 メルトダウンへの道』

日本に暮らす人々は、日本における「原発の歴史」をほとんど知らなかった。 原発とは何で、いかに導入されて、いかなる社会的な位置づけをなされてきて、いかなる課題と可能性を抱えながらいまに至っているのか。 それは「不勉強のせい」だけではない。そもそも、福島第一原発事故以前、「原発の歴史」を一般向けかつ体系的、あるいは通史的に整理した人文社会科学系の研究・書物がほと

『つながる セックスが愛に変わるために』文庫解説 by 高石宏輔 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『つながる セックスが愛に変わるために』文庫解説 by 高石宏輔

監督の作品を初めて観たとき、僕は31歳だった。 自分の女性との付き合い方に疑問を抱きながらも、どうすれば良いか分からず、覚束なかった20歳前後からあまり変われずに、関係性の深まらない異性との付き合いをし続けていた。 そんなとき、偶然観ることになった『チャネリングパフォーマンス 胎内宇宙』(『アテナ映像30周年記念特別版 代々木忠の「快感マトリックス」』中に収

『杉原千畝 情報に賭けた外交官』 書影

世界史 / 「解説」から読む本

『杉原千畝 情報に賭けた外交官』

インテリジェンス・オフィサーは語らず――。 情報の世界でながく語り継がれてきた箴言である。 機密情報に携わる者たちは沈黙を守り抜き、自らを厳しく律してきた。決して情報源を明かさない。これこそが彼らの至高の掟なのである。どのように情報を入手したかが露わになれば、相手側に災厄が及んでしまう。時には人命まで喪われる。それゆえ、情報を生業とする者は一切を墓場まで抱え

『ゼロからトースターを作ってみた結果』 書影

アート・スポーツ / 「解説」から読む本

『ゼロからトースターを作ってみた結果』

『ゼロからトースターを作ってみた結果』は変わった本である。軽快な文章と興味深い数々の写真から、多くの知識を与えてくれる本だとも言える。ある種の感動も与えてくれる。だがそれよりも、読後、世界の見え方を変えてしまうところにこの本の特徴がある。一読した読者は、世界が微妙に変わっていることに気がつくだろう。身の回りの鉄製品やプラスチック製品、各種の工業製品への感性が

『さいごの色街 飛田』文庫解説 by 桜木紫乃 書影

民俗・風俗 / 「解説」から読む本

『さいごの色街 飛田』文庫解説 by 桜木紫乃

井上理津子さんは、「目と耳と魂のひと」だ。 その目で見てその耳で聞き、その魂で書く。井上さんは女一生の仕事として、最後に残るのは書き手の「人柄」という恐ろしいジャンルを選んだ。 井上さんの文章は構えがない。「よし、行くぞ」の前に走り出しているので、構えている暇がないのだ。敵が構えている間に斬っている。相手は斬られていることにも気づかないかもしれない。いや、斬

『紳士協定 私のイギリス物語』文庫解説 by 鴻巣友季子 書影

人物 / 「解説」から読む本

『紳士協定 私のイギリス物語』文庫解説 by 鴻巣友季子

『紳士協定 私のイギリス物語』は、佐藤優の一年あまりにわたるイギリス留学生活を主に綴ったノンフィクションである。その前後のソ連における外交官としての仕事についてもいくらか書かれているが、メインはイギリスでの語学研修生活で、さらにその3分の2は、ライン・エンドという小さな集落にある英語学校に通ったひと月半の記録に費やされている。 対ロシア外交での活躍で知られる

『どうすれば「人」を創れるか アンドロイドになった私』文庫解説 by 平田オリザ 書影

サイエンス / 「解説」から読む本

『どうすれば「人」を創れるか アンドロイドになった私』文庫解説 by 平田オリザ

本文中にあるように、私と石黒浩氏は、この6年間、ロボット演劇プロジェクトを通じて密接に付き合い、すでに5本の作品を創り、国内外をともに旅してきた。とりあえず、その経緯を簡単に記しておく。 2007年、私が阪大に移って2年目の夏、とあるシンポジウムの控え室で、鷲田清一総長(当時)と雑談をしている最中に、「そろそろ大学にも慣れてきたでしょう。何か他にやってみたい

『無常という力』文庫解説 by 福岡伸一 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『無常という力』文庫解説 by 福岡伸一

近代科学は、生命を時計仕掛けの機械と見なし、それを分解して部品に分け、そのいちいちに名をつけ、機械とのアナロジーで、生命現象を理解してきた。タンパク質や遺伝子は生命の部品であり、あるものはモーターとして、バネとして、滑車として、また別のものは、糊やはさみ、あるいはホッチキスのように働く、と。 昆虫少年出身の私もまた、いつのまにか、機械論的な分子生物学の切れ味

『呪いの時代』文庫解説 by 森田真生 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『呪いの時代』文庫解説 by 森田真生

内田樹さんの著書の解説を執筆するという大仕事を前にして、僕はいま、些かの ためらい を感じている。書こうと思うことは確かにあるが、いざ書きだそうとすると、同じことが〝内田樹の文体〟で、もっとはるかに明晰に、理路整然とした言葉で語られるのが、どこからともなく聴こえてきてしまうのだ。それでなかなか、書き出せない。 内田さんの言葉は、いつでも身体を目がけて語られる

『日本の聖域 アンタッチャブル』文庫解説 by 田原総一朗 書影

事件・事故 / 「解説」から読む本

『日本の聖域 アンタッチャブル』文庫解説 by 田原総一朗

私は、毎月「選択」が届くのを待ちかねる思いで、袋の封をあけるとまっさきに読むのが「日本のサンクチュアリ」である。新聞や他の雑誌では触れていない〝日本の聖域〟の実態にメスを入れ、いわば闇の構造を暴きつづけている。 その〝サンクチュアリ〟シリーズが、『日本の聖域 アンタッチャブル』というタイトルで文庫本になった。本書に収められた記事の中から特に興味を引かれたもの

『枯れるように死にたい 「老衰死」ができないわけ』解説 by 小鳥輝男 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『枯れるように死にたい 「老衰死」ができないわけ』解説 by 小鳥輝男

私は滋賀県で開業している一医師である。 平成19年より「三方よし研究会」を主宰している。この研究会は看護師、薬剤師、リハビリ技師、歯科医師、医師などの多職種で構成されている。発足当初は「東近江地域医療連携ネットワーク研究会」と呼ばれ、多職種が連携を図り、脳卒中患者が、あらかじめ指定された急性期、回復期、維持期の病院や施設を、納得してもらった上で移ることにより

『マツ☆キヨ 「ヘンな人」で生きる技術』解説 by 澤口俊之 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『マツ☆キヨ 「ヘンな人」で生きる技術』解説 by 澤口俊之

著者お二人のキャラクターを踏まえれば当然だが、非常に面白い(食事しながら読んでいた時は、思わず食べ物を何度も噴き出したほどだ――誇張ではなく)。 私事で恐縮だが、私は本を最近はほとんど読まない(読むのは、科学論文くらいである)。つまらないからである。分かりきった話や意味不明な話、あるいは冗長な話が多くて、読むのが苦痛、というか、それこそ面倒くさい。主要新聞の

『僕は9歳のときから死と向きあってきた』文庫解説 by 徳永進 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『僕は9歳のときから死と向きあってきた』文庫解説 by 徳永進

ぼくが医学部を卒業したのは、1974年(昭和49年)、もう40年前のことになる。40年の間に医療の現場も大きく変った。画像機器の進歩、内視鏡を使った検査や手術、特殊な放射線治療法、いくつかの有効な薬の登場。科学技術の進歩は医療の現場でも、栄光に満ちた姿として登場している。でも医療現場全体が、40年前に比べて、比べものにならないくらい良きもの、良き場になったか

『サードマン 奇跡の生還へ導く人』解説 by 角幡唯介 書影

サイエンス / 「解説」から読む本

『サードマン 奇跡の生還へ導く人』解説 by 角幡唯介

いい本を読んで感銘を受けた時はつよい読後感でしばらく呆然となったり、新しい世界観を獲得して人間としてひと皮むけたような気になったりするものだが、私はこの本を読んでもそういう前向きな気持ちにはならなかった。 もちろんいい本だとは思った。それに面白さという点でも群を抜いており、一気に読み終えたことも事実だ。この本は冒険を扱ったものではあるが、ほかの冒険本とはちが

『サードマン 奇跡の生還へ導く人』訳者あとがき by 伊豆原 弓 書影

サイエンス / 「解説」から読む本

『サードマン 奇跡の生還へ導く人』訳者あとがき by 伊豆原 弓

昔から、信仰やスポーツ、健康維持のため老若男女を問わず山と親しんできた日本人にとって、遭難事故はめずらしいことではない。これまでも山行記や遭難記録が多数刊行され、そうした何冊かは私も読んでいた。だから本書で、「サードマン現象」(原文はThe third man factor)の記録を読んだときも、驚きはしなかった。人はたまらなく孤独になったとき、とりわけ過酷

『外務省に告ぐ』文庫解説 by 原田マハ 書影

社会 / 「解説」から読む本

『外務省に告ぐ』文庫解説 by 原田マハ

初めに言っておく。超ド級のトップ・インテリジェンスにして「月産原稿量千枚超」を誇る怪物のごとき作家・佐藤優の知性と筆力には、どんなにがんばったところで私は到底かなわない。ゆえに、この解説では少々ふざけたことを書く。けれど、ここまでフルスピードでページをめくってきた読者に読み飛ばされないように、細心の注意は払いたい。 本書の解説にまったくの畑違いである私を指名