
『実験国家 アメリカの履歴書』 統合と多元化に揺れ動く大国
過激な発言や過去のスキャンダルのために共和党候補にすらなれないと思われていたドナルド・トランプが、世界最強国家アメリカの次期大統領となることが決まった。リーマン・ショックに端を発する不況が、世界を不安で包み込もうとしていた中、若く聡明なマイノリティのバラク・オバマに希望を託した人々が、8年後の今は、対極とも思える人物をリーダーに選んだのである(その選挙制度の
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過激な発言や過去のスキャンダルのために共和党候補にすらなれないと思われていたドナルド・トランプが、世界最強国家アメリカの次期大統領となることが決まった。リーマン・ショックに端を発する不況が、世界を不安で包み込もうとしていた中、若く聡明なマイノリティのバラク・オバマに希望を託した人々が、8年後の今は、対極とも思える人物をリーダーに選んだのである(その選挙制度の

ハーバード大学やプリンストン大学をはじめ、全米200以上の大学で採用さている教科書『 Evolution: Making Sense of Life 』の邦訳3分冊の第1巻である。「教科書」といっても、本書は議論の余地のない事実が淡々と積み上げられた退屈なものではない。原著者は『 ウイルス・プラネット 』等で知られる大人気サイエンスライターのカール・ジンマー

小雨降る冬の日、空腹を満たすために凍える外気にその身をさらす必要はない。ネットでピザをオーダーすれば、数十分で熱々のチーズがあなたの口元にやってくる。ピザが届くまでの数十分も、お気に入りのコーヒー豆で淹れた一杯があれば苦痛ではない。世界中のあらゆる動画や脳を刺激するゲームを与えてくれるスマートフォンが手元にあるのだから、暇を持て余すことなどない。ネットで買え

なぜ人と政府との関わりは希薄になったのか 元サンフランシスコ市長であり現カリフォルニア州副知事である著者 ギャビン・ニューサム は、ずっと疑問に感じていた。SNSで頻繁にメッセージを発信し、ポケモンGoで何百キロも歩いてモンスターを追いかけるアクティブな人々が、なぜこれほどまでに政治に関心を示さないのか。2011年にロサンゼルスで行われた重要な教育・環境に関

「将来の野外生態学を担う若者に刺激を与えるような楽しい本を提供する」ことを目的とする『フィールドの生物学』シリーズの最新作である。本書のタイトルにある竜宮城とは、ウミガメの回遊先の餌場のことだ。ウミガメの餌場が二つあるということが、なぜ驚くべきことなのか、そこからウミガメの生態の何が分かるというのか。本書では、著者が大変な苦労の末にかき集めた豊富なデータとと

わたしたちは孤独だ。人口が70億を超え、世界中に生息域を広げたとしても、現在の地球上にはホモ属に分類される種はサピエンス、つまり現生人類であるわたしたちだけ。ライオンにはジャガーやトラのように同じヒョウ属に分類される仲間がいるのに、サピエンスは系統樹上で一人ぼっちなのだ。 かつて、人類は孤独ではなかった。そもそも「人類」とはホモ属に分類されるすべての動物を指

体重わずか数グラムのハチドリは、ほとんどの鳥が真似することも困難なホバリングをすることができる。空中の定位置に留まるためには、羽を打ち上げるときも打ち下げるときも揚力を発生さるような、回転可能な羽を進化させる必要がある。ハチドリがこの独特なデザインの羽を持つようになったのは、花蜜を吸うためであると考えられる。ホバリングは、花蜜を取り出すために威力を発揮し、ハ

科学の進歩は、地球に生命が誕生して以来の数十億年どこにも見られなかった奇妙な生き物を生み出している。バイオテクノロジーによる遺伝子操作だけでなく、電子工学とコンピューター技術の進歩も生命に新たなカタチを与え始めているのだ。キラキラと光る魚、薬の入ったミルクを出すヤギ、遠隔操作が可能なロボット昆虫。SFの世界でしか見られいと思ってい生き物は、既にこの世に存在し

ハコフグ帽子と白衣のいでたちに、甲高い声と大きなジェスチャーで魚の素晴らしさを伝え続けるさかなクンの自叙伝だ。絶滅したと思われていたクニマス発見の偉業は天皇陛下にも言及され、東京海洋大学の客員准教授を務めるまでになったさかなクンの人生が、さかなクンの手によるかわいい魚のイラストとともに語られる。本文の漢字にはルビがついており、小さな子供でも楽しみながら読み通

北海道むかわ町穂別で日本古生物学史上最大級の発見があったのは2003年4月。それから10年以上が経過した2013年7月17日、日本初の恐竜全身骨格発見が北海道大学のプレスリリースで世間に伝えられた。誰がどのようにしてこの化石を発見したのか、公表までの10年間研究者たちは何をしていたのか、このハドロサウルス科の新種と思われる恐竜は7000万年以上前どのように日

イギリスが国民投票でEU離脱を決め、アメリカでは銃の乱射事件が頻発し、南シナ海の緊張は高まり続け、イスラム過激派は世界のあらゆる都市でテロにより多くの命を奪っている。当たり前だと思っていた秩序は、失われてしまうのだろうか。 不確実性がいやましている未来へより確実な一歩を踏み出すために、本書『国際秩序』は歴史という名の道標を与えてくれる。昨日までの世界はどのよ

2003年のイラク、アメリカ軍は新たな敵との闘いに困惑していた。エリート中のエリートたる統合特殊作戦任務部隊(特任部隊)をもってしても、イラクの混乱状態を鎮静化できる道筋は見えなかった。地元の人間の寄せ集めで、旧式の武器しか持たないイラクのアルカイダ(AQI)は、徹底的に訓練され、ハイテク装備を身に着けた特任部隊を出し抜き、テロ活動を成功させ続けていたのだ。

ロボットはすでにわたしたちの生活に欠かせないものとなっている。工場で人間の代わりに不眠不休で働くばかりでなく、 エンターテインメント や ホテル受付 のようなサービス領域にもその活躍の場を広げつつある。マクドナルドの前CEOは「フライドポテトを袋に詰めるだけで時給15ドルも払わなくてはならない労働者を雇うより、3万5,000ドルのロボットアームを買う方が安い

HONZ第3期学生メンバーに多くのご応募をいただき、ありがとうございました。書類選考及び面接の結果、下記3名の方に学生メンバーとして参加していただくこととなりました。 ● 讃井知さん ● 篠原かをりさん ● 岩下紘己さん 以下、3名がそれぞれ応募書類で「もっともオススメできる一冊」としていた本を紹介します。 讃井知さん:『 死刑のための殺人 』 篠原かをりさ

われわれはたった今医学の歴史を作った ルネ・ファバローロが世界で初めて心臓のバイパス手術を成功させたとき、ファバローロの仲間は高らかにそう宣言した。この宣言は決して大げさなものではない。なにしろ、ファバローロらによる バイパス手術 の手法が確立するまで、冠動脈の塞栓が原因となるありふれた疾患を含む多くの心臓病に直接的な治療の手段は存在しなかったのだ。 ファバ

常に裏舞台で働くことを好み、自己宣伝や世間からの注目を極端に嫌ったアンドリュー・マーシャルの名を知る者は少ない。しかし、「ペンタゴンのヨーダ」と呼ばれ40年以上にわたって政府高官としてアメリカの安全保障に貢献してきたこの男の明晰な頭脳から生み出せされた戦略からは、誰もが無縁ではいられない。マーシャルは、冷戦中のソ連がCIAの推計よりもずっと多くの軍事負担に苦

ヒトにもっとも近縁な類人猿はチンパンジーだ、ヒトとネアンデルタール人は交配していた、ヒトが出アフリカを果たしたのは5万年前ではなく10万年前にもさかのぼる。最先端の分子生物学は、ヒトの起源について驚くほど多くのことを教えてくれる。「ゲノム時代」と呼ばれる現代では、新事実が発見されるスピードは加速度的に増している。つい先日も、「 ネアンデルタール人絶滅は人類の
HONZは、第3期学生メンバーを募集します。2年ぶり3度目です。学生メンバー採用関連業務は今回も私、村上浩が担当いたします。 毎月1本の書評(対象は新刊ノンフィクションのみ)を書いていただきます。 書評のHONZへの掲載可否については、内藤編集長が判断します。 HONZ朝会・夜会や不定期開催の合宿などのイベントに出席することができます。 ◆募集定員:最大3名

都市は人を惹きつける。整備されたインフラがもたらす快適な生活、次々にもたらされる新たな出会い、世界に解き放たれる前の情報など、都市にはヒト・モノ・カネ・情報の全てが潤沢に存在しているのだから、都市への集中は当然の成り行きとも思える。事実、1950年に30%だった都市化人口率は現在50%にまで増加しおり、 国連の予測 では2050年には70%近くにまで及ぶとい

タイトルの『1493』とは、コロンブスが新大陸から黄金の装身具やカラフルな鳥、先住民捕虜を携えてスペインへ帰国した年である。この年を境に、超大陸パンゲアが分裂してから2億年以上もの長きにわたって独自の生態系を育んだきた各大陸が、人類の手を介して再び出会うことになったのだ。コロンブス以前には、どのような生物にも大陸間を結びつけることは不可能であり、それぞれの大

本書で取り上げられる発達障害は、教育現場でその問題が指摘される自閉症スペクトラム障害や ディスレクシア などから、遺伝子疾患による ウィリアムズ症候群 まで幅広い。発達障害そのものではなく、「乳幼児の心と脳の発達」を研究の重心としてきた心理学者である著者は、従来は社会性の障害であるといわれていた発達障害に、視覚情報処理とその発達という科学的知見から新しい光を

ダーウィン進化論は、信じられないほど少ない仮定で、驚くほど多くのことを説明してしまう。なにしろ、100万種以上といわれるほど多様で、かつその1つ1つが複雑な機能を備えている生命が、どのように実現されているかを誰もが理解できるように示してみせたのだから、驚異という他ない。またダーウィン進化論は、DNAがどのように遺伝情報を継承しているかというミクロな視点から、

この200年間における人類の平均寿命の伸長度合いには目を見張る。1840年を起点にとれば、我々の平均寿命は1時間あたり15分も伸び続けており、この200年で倍になった計算となる。しかしながら、最先端テクノロジーをもってしても不老不死の実現はおろか、150歳まで生きるこすら全く不可能に思える。なぜ、ヒトは老いから、死から逃れることができないのか。 人類が思考を

南シナ海を舞台とした事件を伝えるニュースは後を絶たないが、その全体像はなかなか見えてこない。なぜ東南アジア諸国はこの地で争い続けているのか、各国が求めているものは何なのか、それぞれの主張はどうしてこれほど食い違っているのか。複雑に絡み合った各々の思惑と過去の記憶が、解決への道はもちろん、状況を把握することすら困難なものにしている。 マスコミが繰り返し報じてい

真に創造的な成果は、天才のひらめきによってもたらせられる。過去の偉大なアイデア誕生にまつわる多くのエピソードが、天才の思考法に基づく創造力が凡人のそれとはいかに異なるかを雄弁に語っている。 1815年にある雑誌に掲載されたモーツァルトの手紙は、彼の交響曲や協奏曲は完成された状態で、あるとき突然に彼の脳内に降りてきたことを伝えている。アルキメデスは湯船に浸かっ

世界最強国家アメリカで、最も影響力を持つのはどの一族だろう。20数年間で2人の大統領を輩出し、さらに3人目の大統領候補を送り出そうとしているブッシュ家だろうか。世界最大の石油企業スタンダード・オイルに始まり、金融や軍事関連企業を次々と傘下におさめ、政界にも強いコネクションを持つ ロックフェラー家 だろうか。 夫婦で大統領となる可能性の出てきたクリントン家や世

本書は「なぜネアンデルタール人が絶滅し、初期現世人類は絶滅しなかったのかという人類学の大問題」に、最新の研究結果と巧みな想像力で迫っていく、知的興奮に満ちた一冊である。原書である『 The Invaders 』は2015年3月に出版されたばかりで、著者が引用している論文はここ数年で発表されたものも多く、古人類学の知識を大幅にアップデートできる。本書で描かれる

宇宙はどのようにしてできたのか、その起源への探求は人類をひきつけてやまない。そのため「宇宙のはじまり」を扱った書籍は少なくなく、2011年新書大賞を受賞した『 宇宙は何でできているのか 』のヒット以降、関連テーマの出版点数は増しているように思える。インフレーション、重力、ダークマター、宇宙のはじまりに迫る様々な理論が、理論物理学者の手で語られてきたが、その理

19世紀初頭の海は、現代のそれとは比べものにならないほど危険だった。当時のヨーロッパ諸国では海難事故の追跡調査が行われておらず、どれほどの人が犠牲になったかを正確に知ることはできないが、事故が日常茶飯事であったことは間違いない。イギリスの保険会社の帳簿によると、1816年だけで362隻が“海難”か“消息不明”と記されているほどなのである。 海難事故の原因の多

町内に信号機が1つもない地方で生まれ育ったわたしは、お受験(小学校受験)には縁がなかった。学力・経済面の問題以前に、近隣に私立小学校が存在しなかったのだ。母校の小学校も廃校になるほどの過疎地域だからかと思っていたのだが、著者も大学に入るまで私立小学校出身者に会ったことがなかったという。私立小学校が身近な存在ではない、というのはそれほど珍しい体験ではないようだ

量子力学が描き出す世界はあまりに奇妙だ。量子は波であると同時に粒子であり、壁をすり抜けることができ、いったんペアになった粒子同士はどれだけ遠く離れていても瞬時にコミュニケーションが取れるというのだから、すんなり納得することのほうが難しい。どれだけ信じ難くとも量子力学を支える科学的証拠はゆるぎなく、論理的にも強固である。DVDもMRIもスマホも量子力学がなけれ

肥満の解決方法は、それほど複雑なものではない。食事の量を減らし、適切な運動を行えばよいのだ。しかしながら、世界中で多くの人々が肥満とそれがもたらす2型糖尿病などの病に苦しんでいる。解決方法が明らかなのにその実行が困難なのは、美味しく高カロリーな食事が街に溢れ、身体をほとんど動かすことなく一日を終えることができるほどにテクノロジーが発展したからだ。 なぜ、わた

私たちは一線を引いたのではなかった。私たちは怖れを知らないのではなく、力がなかったのだ。壊滅的な破綻を防ごうとして失敗したのだ。 アメリカ史上最大規模となったリーマン・ブラザーズの破産申請を、当時の米国財務長官である本書の著者ティモシー・ガイトナーは、このように振り返る。しかしながら、当時のマスコミの多く、左派の《ニューヨーク・タイムス》から右派の《ウォール

マクドナルドや和民など、早く・安く・多くの胃袋を満たしてきたチェーンレストランの不調がニュース紙面を飾っている。日本人の食はこれからどのように変化していくのか。日本の高度成長期を支えた郊外団地から人々が流出し、残った住民も高齢化が進んでいるという。人口減少局面を迎えた日本人は、今後どんな家に住むことになるのだろう。 食や住居だけではない。テレビや車など、戦後


近年の医学の進歩は、人類に多くの幸福をもたらした。1850年のアメリカでは4人に1人の赤ん坊が1歳の誕生日を迎えることができなかったが、今日のアメリカでは1歳前に死亡する赤ん坊は1000人のうち6人に過ぎないという。出産で死亡する女性も激減し、寝たきりにならざるを得なかった老人は人工関節でスポーツを楽しむことすらできるようになった。先進国で伸び続けた寿命だけ

限られた土地資源に制約され算術級数的にしか増やせない食料では、幾何級数的に増加する人口を支えることはできない。18世紀のイングランドに生まれヨーロッパ諸国の人口を観察した経済学者 トマス・ロバート・マルサス はそう考えて、多くの人々もそれは動かしがたい事実だと受け止めていた。触媒の力を活用した ハーバー‐ボッシュ法 が、窒素をアンモニアに変えるまでは。 20

「この世は謎に満ちている」という言葉は比喩ではなく、最新の科学的成果に基づく正確な世界描写であるようだ。2009年ヨーロッパ宇宙機関が打ち上げた プランク衛星 によって得られた高精度なデータを基に2013年に発表された研究結果によれば、宇宙の26パーセントをダークマターが、69パーセントをダークエネルギーが占めているという。我々を形作っている原子や空を照らす

姓を手がかりに、歴史に埋もれたビッグデータを掘り起こした著者は、残酷な現実を突きつける。 基盤的な、または相対的な社会的流動性は、社会学者や経済学者が一般的に考えている水準よりはるかに低い。 つまり、従来考えられていたよりも、わたしたちの人生はその生まれによって決定されており、本人の努力や意志で階級の階段を昇るのは従来考えられていたよりも困難だというのだ。時

著者ジェームズ・R・フリンは1980年代に発表した論文で、アメリカをはじめとする工業国で、時代とともにIQ(Intelligence Quotient)が上がり続けていることを確かな証拠で示した。人類が過去100年にわたって賢くなり続けているという研究結果は大きな反響を呼び、このIQ上昇は著者の名前から“ フリン効果 ”と呼ばれるている。 フリン効果は、更な