ノンフィクションはこれを読め!

首藤 淳哉

1970年生まれ。大分県出身。ラジオ局で番組制作を担当。「本を読む」ことと「飲み食いする」ことをただひたすら繰り返すという単調な生活を送っている。妻子持ちだが、本の収納などをめぐり年間を通して家庭崩壊の危機に瀕している。太っているのに綱渡りの日々。好きなジャンルはノンフィクション、人文、サイエンス系。

(2024年当時)

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選挙はこんなにも面白い!『コロナ時代の選挙漫遊記』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

選挙はこんなにも面白い!『コロナ時代の選挙漫遊記』

このところ選挙でバタバタしている。11月だろうとタカをくくっていたら日程が前倒しになったためだ。政見放送や特別番組を編成するために枠を確保したり、スポンサーに連絡を入れたり、選挙報道の留意点を若手にレクチャーしたりと慌ただしい。だがその一方で、選挙にはちょっとしたお祭り気分もある。 さて、そんな選挙に異変が起きているのはご存知だろうか。 選挙といえば、かつて

『ノーベル文学賞が消えた日』世界でいちばん有名な文学賞をめぐる醜聞 書影

社会 / 事件・事故

『ノーベル文学賞が消えた日』世界でいちばん有名な文学賞をめぐる醜聞

ある出来事が、後に振り返った時にあらためて歴史の大きな変わり目だったと気づくことがある。2017年10月5日という日付も、そのような歴史の分水嶺として後世に記憶されるかもしれない。 ニューヨークタイムズがこの日、ハリウッドのプロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの性暴力を告発するスクープを放った。この記事をきっかけに#MeTooムーヴメントが爆発的に広が

『戦争とバスタオル』湯けむりの向こうに見える「あの戦争」と私たちの姿 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『戦争とバスタオル』湯けむりの向こうに見える「あの戦争」と私たちの姿

異質なものを掛け合わせると新しい何かが生まれることがある。「いちご大福」はその好例だ。では「戦争」と「バスタオル」はどうか。この異質な言葉を掛け合わせた先に現れるものは何だろう。 著者の安田浩一は長年、差別の現場を取材し、「ヘイトスピーチ」という言葉を世に広めるきっかけをつくった硬派のジャーナリスト。金井真紀は、抜群の観察力とユニークな視点で世界の多様性を伝

『家族不適応殺』無差別殺人犯の「頭の中」をのぞく 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『家族不適応殺』無差別殺人犯の「頭の中」をのぞく

無差別殺人のニュースを目にするたびに、怒りという言葉だけでは言い表せない感情に襲われる。穏やかな日常生活を送っていた市民が突然凶行に巻き込まれるのだ。強い怒りや憤りをおぼえるのは当然だが、それだけではおさまらない感情がある。 いまから20年前、ラジオの生放送中に、大阪教育大付属池田小学校に男が侵入し児童を切りつけたという一報が入ってきた。その後、細切れに続報

『嫌われた監督』「揺るぎない個」はなぜ嫌われたか 書影

アート・スポーツ / 人物

『嫌われた監督』「揺るぎない個」はなぜ嫌われたか

週刊誌の発売日を指折り数えて待つことなんて久しくなかった。 発売日には文書砲そっちのけで、まずこの連載のページを開き貪り読んだ。 スポーツノンフィクションの傑作といえば、誰もが山際淳司の『江夏の21球』をあげるだろう。もちろん異論はない。ただあの作品は「永遠のマスターピース」というべき傑作だし、ぼちぼち新しく語り継がれる作品が現れてもいいのではと思っていた。

『ランニング王国を生きる 文化人類学者がエチオピアで走りながら考えたこと』一緒に走りながら考えたマラソン王国繁栄の秘密 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『ランニング王国を生きる 文化人類学者がエチオピアで走りながら考えたこと』一緒に走りながら考えたマラソン王国繁栄の秘密

もう20年以上前になるが、ある芸人が自身の持ちネタのオチに「アフリカの運動会ではいつも世界新記録が出る」というようなセリフを使っていた。そんなことを、本書を読んで思い出した。 今の基準で批判しようというのではない。ただ、そのネタには私たちが現在も抱きがちなステレオタイプが表れていたと思う。ネガティブなニュアンスではなかったが、アフリカの子なら身体能力が優れて

『死者の告白』憑霊体験をめぐるノンフィクション 書影

事件・事故 / 民俗・風俗

『死者の告白』憑霊体験をめぐるノンフィクション

人は死んだらどこへ行くのだろう。 これは、人類が誕生以来、問い続けてきた究極の謎である。 先日亡くなった立花隆さんは、死後の世界が存在するかどうかは、「個々人の情念の世界の問題」と述べている( 『死はこわくない』 )。論理的に考えたからといって正しい答えが導き出せるような類いの問題ではないということだ。立花さんは自身の死すらも取材者の目で観察しようとしていた

『暁の宇品』日本はなぜ「海の戦争」で敗れたのか 書影

人物 / 世界史

『暁の宇品』日本はなぜ「海の戦争」で敗れたのか

新刊が出たと聞けば、迷わず購入する著者がいる。内容を事前に確かめることはない。なぜならその人が書くものに期待を裏切られたことはこれまで一度もないからだ。 堀川惠子氏は、当代最高のノンフィクションの書き手のひとりである。著作はいずれも高い評価を受け、受賞歴も数知れない。本書も凄い本だった。すでに膨大な文献が世に出ている太平洋戦争について、これまでにない新しい視

あの「魔法」にもういちど触れたい!『シェフたちのコロナ禍』 書影

教養・雑学 / 民俗・風俗

あの「魔法」にもういちど触れたい!『シェフたちのコロナ禍』

昔から家で酒は飲まない。宅飲みを愛する人も多いが、自分の場合は家で飲んでも楽しめないのである。楽しく酔えればどこで飲もうと関係ないのだろうが、幸か不幸かアルコールには強い体質だ。だから家だと延々飲み続けることになる。だったら家で飲むのは別にお茶でいいじゃないかと思ってしまうのだ。 外で酒を飲む理由はただひとつ。会いたい人に会うためである。 といっても人目をし

『海がやってくる 気候変動によってアメリカ沿岸部では何が起きているのか』沈みゆく米国沿岸部 気候変動最前線の光景 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『海がやってくる 気候変動によってアメリカ沿岸部では何が起きているのか』沈みゆく米国沿岸部 気候変動最前線の光景

長靴の形をしているのはイタリアだけではない。米国のルイジアナ州もそうである。だが、現在のルイジアナ州の「靴底」はボロボロに破れ擦り切れている。靴底にあたる地域にはかつて広大な湿地帯があったが、海に変わってしまったのだ。 同州では1932年から2000年までの間に約4920平方キロメートルが失われたという(これは福岡県の面積約4987平方キロメートルに匹敵する

『ハダカの東京都庁』元幹部が明かす都庁の裏と表 書影

教養・雑学 / 社会

『ハダカの東京都庁』元幹部が明かす都庁の裏と表

我が家で「G」といえば例のアレである。妻がこの世でもっとも苦手とし、名前すら口にしたくないということで、我が家では「G」と呼ばれている。「G」が出ると私の出番だ。悲鳴をあげる妻をよそに素手でぱっと捕まえる。妻によれば、「この人と一緒になって良かった」と思う唯一の瞬間らしい。ちなみに「G」が現れるのは年に一度あるかないかくらいなのだが。 ところで、東京都庁にも

『ツボちゃんの話』愛おしい25年間の記憶 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『ツボちゃんの話』愛おしい25年間の記憶

つくづく子どもは親の思い通りに育たないものだと思う。 息子が生まれた時、英才教育を施そうと思った。といっても、勉強やスポーツではない。あらゆるサブカルチャーに通暁した人間に育てようと思ったのだ。 本やマンガ、音楽、映画などに幼い頃から親しませ、各ジャンルの押さえておくべき名作や傑作などを順に与えていけば、ひとかどのサブカルエリートに育つのではないかと思ったの

『勝てる民泊 ウィズコロナの一軒家宿』箱根の小さな民泊施設がコロナ禍でも好調の理由 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『勝てる民泊 ウィズコロナの一軒家宿』箱根の小さな民泊施設がコロナ禍でも好調の理由

「民泊」という言葉にどんなイメージがあるだろうか。住宅街に見知らぬ外国人が押し寄せ住民との間でゴミや騒音のトラブルが発生、とネガティブな印象を持つ人もいるかもしれない。実は本書の著者もその一人だった。英語の「バケーションレンタル」に比べると、「民泊」にはどことなく貧乏くさい響きもあって大嫌いだったという。 そんな著者自身が民泊を始めることになったのだから人生

『闇の盾』伝説のトラブルシューターの回想録 書影

人物 / 事件・事故

『闇の盾』伝説のトラブルシューターの回想録

型破りな人物のノンフィクションに時々お目にかかるが、本書は極めつきではないだろうか。 著者は「日本リスクコントロール」という危機管理会社の社長である。ところが「どんな会社?」とググってもホームページは存在しない。電話番号も公開されていない。それもそのはず。同社にアクセスする方法は、紹介者による仲介しかない。 しかも会費がとてつもなく高い。トラブルの最終処理ま

『保身 積水ハウス、クーデターの深層』変われないこの国を描く骨太の経済ルポ 書影

事件・事故 / ビジネス

『保身 積水ハウス、クーデターの深層』変われないこの国を描く骨太の経済ルポ

読み終えた途端、深いため息が出た。かつて「全員悪人」というキャッチコピーの映画があったが、さしずめ本書は「登場人物、全員小物」といったところだ。だが、小物ばかり出てくるのにページをめくる手が止まらない。それはこの小物が私の中にも棲んでいるからかもしれない。この本にはまぎれもなく私たちの姿が描かれている。 そのクーデターが起きたのは、2018年1月24日のこと

『文芸ピープル』言葉の壁を越える日本文学 書影

社会 / 小説

『文芸ピープル』言葉の壁を越える日本文学

翻訳は面白い。例えば、松田青子の短編集 『おばちゃんたちのいるところ』 の英訳タイトル Where The Wild Ladies Are を初めて目にした時、「おばちゃん」が“Wild Lady”と訳されているのに笑ってしまった。ワイルドレディー。ひとたび目にするともう、「ヒョウ柄の服を着たやたら圧の強い年配女性」のイメージしか浮かばない。ちなみにこの作品

『令和元年のテロリズム』令和日本のいびつな自画像 書影

社会 / 事件・事故

『令和元年のテロリズム』令和日本のいびつな自画像

ひとつの犯罪が時代を象徴することがある。 令和元年(2019年)5月28日、朝7時40分頃、小田急線とJR南武線が交差する登戸駅近くで、男がスクールバスを待っていた児童や保護者らを次々と包丁で刺した。男は終始無言で凶行に及び、20メートルほど走って逃げた後、突然自らの首を掻き切り絶命した。この間わずか十数秒だった。 犯人によって小学6年生の女の子と39歳の保

ついに考古学史上最大の謎を解明!?『土偶を読む』 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

ついに考古学史上最大の謎を解明!?『土偶を読む』

面白い本を読んでいると、きまって他の本も読みたくなってしまう。知的刺激を受けて脳が活性化するのかもしれない。「あの本にはたしか別の説が書いてあった」「あの著者も似たようなことを言っていた」といちいち確かめたくなる。 本書もそう。読み始めてすぐ、あまりの面白さに興奮を覚え、気がつけば本棚からありったけの縄文本をひっぱり出し、それらを時折参照しながら読みふけって

『一度きりの大泉の話』初めて明かすあの日の出来事 書影

人物 / マンガ

『一度きりの大泉の話』初めて明かすあの日の出来事

まるで神様が血を流しながら苦しんでいるのを目の当たりにしているようだった。その傷跡からは、半世紀近くたった今も鮮血が滴り続けている……。 1960年代の終わりから70年代にかけて、少女漫画という新しいジャンルが誕生した。女性の漫画家が一斉に登場して、自分たちの読みたい物語を描き始めたのだ。彼女たちの漫画は、それまで男の漫画家が描いていた女の子が主人公の物語と

超人?それとも悪魔?『フォン・ノイマンの哲学』 書影

サイエンス / 人物

超人?それとも悪魔?『フォン・ノイマンの哲学』

天才には世界がどう見えているのだろうか。 これは凡人には一生わからない謎かもしれない。 たとえばアイザック・ニュートンは、なぜあれだけ物理法則を発見することができたのか。同じように夜空を見上げても、凡人はせいぜい月がきれいだと感心するくらいなのに対して、ニュートンは「なぜ月は落下してこないのか」と考えた。天才の目にはどうやら凡人とは違うものが見えるらしい。

『完落ち 警視庁捜査一課「取調室」秘録』 落としのプロはいかに犯罪者を自供させたか 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『完落ち 警視庁捜査一課「取調室」秘録』 落としのプロはいかに犯罪者を自供させたか

2021年1月24日、伝説の人物が亡くなった。元警視庁捜査一課長の寺尾正大氏である。78歳だった。亡くなられていたのがわかったのは2月に入ってからで、新聞もテレビもこぞって「ミスター一課長」の死を報じた。地下鉄サリン事件という歴史的事件の捜査の陣頭指揮を執ったこともあってこれだけの扱いになったのだろう。追悼記事にあった「癖の強い異能の刑事を使うのがうまかった

『分水嶺』専門家たちの葛藤を描いた傑作ノンフィクション 書影

サイエンス / 社会

『分水嶺』専門家たちの葛藤を描いた傑作ノンフィクション

何か不測の事態を前にすると、本読みの習性でつい本に手が伸びてしまう。 中国・武漢で発生した原因不明の肺炎に世間が注目し始めた頃、読み直さねばと書棚からひっぱり出したのは、 『パンデミックとたたかう』 という本だった。 この本は、SF作家の瀬名秀明氏が東北大学医学系研究科教授(当時)の押谷仁氏と新型インフルエンザについて議論を交わしたものだ。2009年に出た本

一気読み必至の警察ノンフィクション!『警視庁科学捜査官』 書影

社会 / 事件・事故

一気読み必至の警察ノンフィクション!『警視庁科学捜査官』

読み始めた途端、あの日の記憶が鮮明に甦った。 1995年3月20日、月曜日の朝だった。地下鉄で「異臭事件」が発生したとの一報を警視庁記者クラブで聞いた。当時の無線記録によれば、通信指令本部に八丁堀駅での乗客の異変を知らせる無線が入ったのは8時21分である。3分後、築地駅から「ガソリンがまかれた」との情報が入り、他の駅からも相次いで被害報告が入った。建物を飛び

『福島モノローグ』他者の言葉に耳を澄ます 花びらのように声を拾う 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『福島モノローグ』他者の言葉に耳を澄ます 花びらのように声を拾う

故・石牟礼道子氏の『苦海浄土』3部作は文学史上屈指の傑作である。わけても、第1部第3章「ゆき女きき書」は、読むたびに戦慄(せんりつ)と畏怖をおぼえる。水俣病患者が全身を痙攣(けいれん)させながら絞り出した言葉。語られたのは恨み言ではなく、不知火(しらぬい)海の豊饒さであり、生まれ変わったらまた愛する夫と漁に出たいという願いだ。絶望の底から発せられたはずの言葉

『「低度」外国人材』日本社会が依存する外国人はどんな人たちなのか 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『「低度」外国人材』日本社会が依存する外国人はどんな人たちなのか

「人材」という言葉がちょっと苦手だ。社会に広く根付いた言葉だし、自分だって使うこともあるが、どうもこの言葉には人をスペックだけでとらえているようなニュアンスを感じてしまう。使えるか使えないか、そんな限られた側面だけでしか人間をとらえていないような。 だから「高度外国人材」という言葉を目にした時はドン引きしてしまった。高度外国人材とは、簡単に言えば、「学歴や年

『日本の包茎』作られた「恥ずかしさ」をめぐって 書影

社会 / 民俗・風俗

『日本の包茎』作られた「恥ずかしさ」をめぐって

本にブックカバーはつけない。これを長年の流儀としてきた。 通勤電車で本を開くと、目の前に座る人の視線がきまって表紙に注がれる。本との出会いは何がきっかけになるかわからない。中には電車でたまたま見かけて興味を持ち、本を買う人だっているかもしれない。出版文化への貢献のためなら、喜んで歩く広告塔になろう。そう考えて、どんな本であろうと(たとえ 『性豪』 や 『鍵開

『メンター・チェーン ノーベル賞科学者の師弟の絆』オンライン時代にあえて読みたい「密」な関係の物語 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『メンター・チェーン ノーベル賞科学者の師弟の絆』オンライン時代にあえて読みたい「密」な関係の物語

「メンター」(師、指導者)というのは不思議な存在である。親を選ぶことはできないが、メンターは自分で選べる。にもかかわらず、良いメンターに出会えるかどうかは運命に委ねるしかない。そして、いったん出会ってしまえば、弟子はメンターから全人格的な影響を受ける。 科学の世界では、濃密な「メンターと弟子」の関係が今も生きている。弟子はメンターから研究テーマへのアプローチ

地図の世界がいまアツい!『地図づくりの現在形』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

地図の世界がいまアツい!『地図づくりの現在形』

読書の楽しみは、煎じ詰めれば、「これまで知らなかったことを知る」ことにある。その喜びは何物にも代えがたい。だから本好きにとって最高の本というのは、書かれていることが「知らないことだらけ」の本なのです。 本書はまさにそういう一冊だった。 店頭で思わずスルーしてしまいそうな地味なタイトル。でも手にとってみると、これまでまったく知らなかった奥深い世界が広がっていた

『鬼才』不世出の編集者の知られざる生涯 書影

人物 / 社会

『鬼才』不世出の編集者の知られざる生涯

「◯◯の天皇」という形容がある。 最近あまり目にしなくなったが、かつては週刊誌などでよく見かけた表現だ。ただしこの言葉を冠するには、相手もそれなりの人物でなければならない。たとえば「◯◯」に適当な企業や団体の名前でも入れてみれば、天皇になぞらえるには、あまりに小粒な人物しかいないことがよくわかるだろう。 出版界にはかつてこの呼称がぴたりと当てはまる人物がいた

アメリカ発「私たち」のムーブメントが時代を変える『Weの市民革命』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

アメリカ発「私たち」のムーブメントが時代を変える『Weの市民革命』

目の前の映像が信じられなかった。あの連邦議事堂が占拠されている。 トランプ支持者によってガラスが割られ、警察が閃光弾を放って群衆を押しとどめようとする映像がニュースではなんどもリピートされていたが、よりショックだったのは建物の中の様子だった。 議事堂になだれ込んだ連中は、まるで場違いな観光客のように、物珍しげに周囲のものを触ったり、はしゃいで写真を撮ったりし

『もしわたしが「株式会社流山市」の人事部長だったら』二児の母の小さな挑戦が、まちを大きく変えるまで 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『もしわたしが「株式会社流山市」の人事部長だったら』二児の母の小さな挑戦が、まちを大きく変えるまで

千葉県流山市には、全国の自治体でも珍しい「マーケティング課」がある。「都心から一番近い森のまち」「母になるなら、流山市。」など、子育て世代に刺さるプロモーションを展開し、人口増加率は千葉県内で6年連続1位をキープしている。 本書の著者も結婚を機に流山市に移り住んだ一人だ。移住してしばらくはビジネスパーソンとして忙しい毎日を送っていたが、第一子の出産後育児休業

『2016年の週刊文春』個人的2020年のベスト・ノンフィクションはこれ! 書影

社会 / 事件・事故

『2016年の週刊文春』個人的2020年のベスト・ノンフィクションはこれ!

文藝春秋は、「文藝」と「春秋」がくっついた会社だとよくいわれる。もちろんこれはふたつの会社が合併したということではない。文藝は文字通り文芸作品のこと、春秋は日々の出来事が積み重なった年月を指す。文藝春秋という会社は、文芸と日々の出来事を追うジャーナリズムとがくっついた会社なのだ。 「春秋」の大きな柱が『週刊文春』であることは誰もが認めるところだろう。いまや飛

『ノーベル平和賞の裏側で何が行われているのか?』世界で最も栄誉ある賞 その知られざる舞台裏 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『ノーベル平和賞の裏側で何が行われているのか?』世界で最も栄誉ある賞 その知られざる舞台裏

カール・フォン・オシエツキーの名前を知っている人が今、どれほどいるだろうか。彼は1935年にノーベル平和賞を受賞したドイツのジャーナリストで、当時のヒトラー政権が受賞に猛反発したことで知られる。ノーベル平和賞の選定理由は時に物議を醸す。激しい議論を呼ぶのは、この賞の注目度の高さの裏返しでもあるだろう。 1901年に創設されたノーベル平和賞は「世界で最も栄誉あ

『声が通らない!』居酒屋で店員に声を届かせたい! 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『声が通らない!』居酒屋で店員に声を届かせたい!

こんな経験はないだろうか。 ガヤガヤと混み合う居酒屋で「すいませーん」と店員に声をかける。 だが、まったく気づいてもらえない。 手をピンと伸ばして、もう一度叫んでみても結果は同じ。 「すいませーん!す、すいませーん……。す……すい……」 声をあげるたびに腕が下がっていき、最後は曖昧な語尾とともに萎んでしまう……。 世間には「声が通らない」ことに悩む人たちがい

『黒魔術がひそむ国 ミャンマー政治の舞台裏』 大統領の誕生日は国家機密!? 書影

民俗・風俗 / 世界史

『黒魔術がひそむ国 ミャンマー政治の舞台裏』 大統領の誕生日は国家機密!?

政治家は孤独な職業だと言われる。未来がどうなるかわからない中、たったひとりで決断を下さなければならないのだから、それも当然かもしれない。「政治家と孤独」で思い出すのがノリエガ将軍のエピソードだ。パナマの独裁者として君臨したノリエガは、当初はアメリカにとって利用価値のある(CIAのアセットだった)人物だったが、次第に目の上のタンコブのような存在となり、ブッシュ

『ロッキード疑獄 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』 44年後に初めて解き明かされた事件の真相! 書影

人物 / 社会

『ロッキード疑獄 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』 44年後に初めて解き明かされた事件の真相!

アメリカ大統領選挙は、民主党のバイデン前副大統領が勝利宣言した。 菅首相もさっそく祝意を示し、次期大統領との関係構築に乗り出している。 振り返れば4年前は、大統領選を制したトランプのもとに安部前首相が真っ先にお祝いに駆けつけた。当時の報道を見ると、11月18日にはもうトランプタワーを訪問している。ペルーで開かれるAPECに向かう途中だったとはいえ、各国首脳の

『宇宙考古学の冒険 古代遺跡は人工衛星で探し出せ』最新技術と地道な発掘の組み合わせが起こす革命 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『宇宙考古学の冒険 古代遺跡は人工衛星で探し出せ』最新技術と地道な発掘の組み合わせが起こす革命

「あなたがカッコいいと思う人物は?」と聞かれたら、迷うことなく漫画『MASTERキートン』の主人公、平賀=キートン・太一の名前を挙げる。キートンは、軍の特殊部隊で身につけた技術をもとに、危険を伴う保険調査員の仕事をこなしながら、考古学者になる夢を持ち続けている。物語のクライマックスで、たったひとり発掘作業に臨むキートンは本当にカッコいい。たとえひとりきりだろ

『地方選 無風王国の「変人」を追う』 米大統領選にも負けない!日本の地方選挙の面白さ 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『地方選 無風王国の「変人」を追う』 米大統領選にも負けない!日本の地方選挙の面白さ

「地方は国よりも大きい」などと言うと、そんなわけないだろとツッコミが入りそうだ。でも事実そうなのである。 日本経済全体に占める地方政府(都道府県と市町村全体)の最終支出は、58兆5千億円。GDPの約11%である。一方、中央政府(国)のそれは22兆円あまり(『地方財政白書』平成30年度版)。地方政府の支出は国の2.5倍に及ぶ。 上下水道や道路などのインフラ整備

『諏訪式。』日本有数のクリエイティブな土地の秘密 書影

民俗・風俗 / 日本史

『諏訪式。』日本有数のクリエイティブな土地の秘密

私たちの足下には歴史が埋まっている。 そのことを教えてくれたのが、小倉美惠子氏の傑作ノンフィクション 『オオカミの護符』 だった。 川崎市で古くから農業を営んできた小倉家の土蔵には、鋭い牙を持つ黒い獣が描かれた護符が貼られていた。祖父母が親しみを込めて「オイヌさま」と呼んでいた護符の謎を追ううちに、かつて農民たちの間で広く信仰されていた山岳信仰の世界が見えて