ノンフィクションはこれを読め!

首藤 淳哉

1970年生まれ。大分県出身。ラジオ局で番組制作を担当。「本を読む」ことと「飲み食いする」ことをただひたすら繰り返すという単調な生活を送っている。妻子持ちだが、本の収納などをめぐり年間を通して家庭崩壊の危機に瀕している。太っているのに綱渡りの日々。好きなジャンルはノンフィクション、人文、サイエンス系。

(2024年当時)

首藤 淳哉の記事

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『剱岳—線の記』古代日本のファーストクライマーを探せ! 書影

生物・自然 / 日本史

『剱岳—線の記』古代日本のファーストクライマーを探せ!

新田次郎の 『劒岳〈点の記〉』 は、日露戦争直後の1907(明治40)年、前人未到とされ、また決して登ってはいけない山と恐れられていた北アルプスの剱岳(標高2999m)の登頂に挑んだ測量官を描いた山岳小説の傑作である。 物語は、設立間もない日本山岳会との初登頂争いの形をとりながら進んで行く。 実際はこの登攀争いはフィクションらしいのだが、剱岳が当時、未踏峰と

『コロナ禍日記』未知なる状況下の日々が記録されたアンソロジー 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『コロナ禍日記』未知なる状況下の日々が記録されたアンソロジー

新型コロナウイルスは私たちに人類史上初めての体験をもたらした。世界中の人々が同じ危機に遭遇するという体験である。 感染したかどうかにかかわらず、今回のパンデミックが引き起こした事態からは誰も逃れられなかった。確実にいえるのは、誰にとってもこれが初めての体験だったということだ。何が正しいのかわからないまま、私たちは右往左往しなければならなかった。だからこそ、他

『人新世の「資本論」』未来を構想する新しい思想の誕生! 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『人新世の「資本論」』未来を構想する新しい思想の誕生!

この興奮が醒めないうちに書いておきたい。凄い本を読んだ。 マルクスを現代にアップデートさせた研究で世界的な注目を集める俊英・斎藤幸平の『人新世の「資本論」』である。 新書の世界には何年かに一度、画期的な本が現れる。 物事の見方に新しい方向から光を当てたり、これまでにないアイデアを提示したりして、読者の世界の見え方を一変させてしまうような本だ。ここでは細かく挙

『伝説の「サロン」はいかにして生まれたのか コミュニティという「文化装置」』リモートワークの時代に創造的な場をどう作るか 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『伝説の「サロン」はいかにして生まれたのか コミュニティという「文化装置」』リモートワークの時代に創造的な場をどう作るか

特定の時代や場所に、すごい才能の持ち主がなぜか集まることがある。新しい芸術や思想を生み出した19世紀末のウィーン、あるいは1920年代のパリ。歴史をひもとけばいくらでも例を挙げることができる。 本書はクリエイターたちが特定の場所に集まるメカニズムと要因を解き明かそうとする試みだ。そこで扱われるのは、戦後日本のカルチャー史を彩る数々の伝説的サロンやコミュニティ

『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』世界はくだらない仕事にあふれてる 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』世界はくだらない仕事にあふれてる

待ちに待った邦訳がようやく出た。 デヴィッド・グレーバーの『ブルシット・ジョブ』である。 「ブルシット・ジョブ」とは、「クソどうでもいい仕事」のことだ。 もう少し丁寧に説明すると、「なんのためにあるのかわからない、なくなっても誰も困らない仕事」のことである。 近年、私たちの身の回りでブルシット・ジョブが増えている。 そして、確実にこの手の仕事は、働く人々の心

『京都に女王と呼ばれた作家がいた』男たちはなぜ彼女に魅了されたのか 書影

人物 / 小説

『京都に女王と呼ばれた作家がいた』男たちはなぜ彼女に魅了されたのか

この本の帯は傑作だ。そこにはこう書かれている。 「京都で人が殺されていないところはない」 1200年の歴史を繙けば、戦乱で都が荒廃した時代もあるし、いかにもそこら中で人が死んでいそうだが、これは小説の話だ。 京都に住み、京都を舞台にしたミステリーを書き続けた作家といえば、山村美紗である。22年間の作家生活の中で200冊以上の本を出し、売り上げは3200万部を

『わかりやすさの罪』「すぐにわかる!」はそんなにいいことか 書影

教養・雑学 / 社会

『わかりやすさの罪』「すぐにわかる!」はそんなにいいことか

渋谷の書店で著者を見かけたことがある。 出版社の人と一緒に新刊の宣伝にでも訪れていたのだろう。棚の前でお店の人になにやら熱心に説明しているのは担当編集者のようだった。 その時の著者の様子が強く印象に残っている。 通路を通るお客さんの邪魔にならないように、プレゼンに熱が入り、動きが大きくなっていた編集者の背中を、さりげなく押さえたりしていた。本のPRそっちのけ

『おべんとうの時間がきらいだった』弁当に映し出された人生、ほろ苦い大人のエッセイ 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『おべんとうの時間がきらいだった』弁当に映し出された人生、ほろ苦い大人のエッセイ

弁当といえば、高校時代を思い出す。ある日、一心不乱に弁当をかっ込みながらふと顔をあげると、弁当箱のふたで手元を隠して食べる女の子が目にとまった。なぜあんな食べ方を? 気になって背後からそっとのぞくと、煮物の汁が茶色く染みたごはんが見えた。ミニトマトやブロッコリーのような彩りのない地味な弁当だった。 途端に動揺してしまった。自分の弁当も似たようなものだったから

『ポスト・スポーツの時代』いま、私たちが 見ているのは、これまでとは違う「スポーツ」だ 書影

サイエンス / アート・スポーツ

『ポスト・スポーツの時代』いま、私たちが 見ているのは、これまでとは違う「スポーツ」だ

プロスポーツの試合が再開され、スタジアムに観客も戻ってきた。 だが野球もサッカーもすっかり様変わりしてしまった。withコロナ云々を言いたいのではない。もちろんそれもあるが、実は今回のコロナ禍以前に、野球もサッカーも大きく変質していたのだ。いま私たちが目にしているのは、これまでとは違う別の競技であるとすら言えるかもしれない。本書はこれを「ポスト・スポーツ」と

『ルポ百田尚樹現象』私たちが知りたかった「社会の見取り図」がここにある! 書影

人物 / 社会

『ルポ百田尚樹現象』私たちが知りたかった「社会の見取り図」がここにある!

職場のそばにわりと大きめの書店がある。いつの頃からか売れ筋の棚に「反日」や「愛国」を打ち出した本ばかり並ぶようになった。百田尚樹はその棚の常連である。一昨年出版された『日本国紀』もいまだに棚の一角を占めている。『日本国紀』は関連本をあわせ累計100万部を突破したというし、『永遠の0』や『海賊とよばれた男』のようなメガヒット作品もある。百田はいまもっとも売れる

『建築の東京』東京はどこへ向かうのか、建築から見えてくる未来 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『建築の東京』東京はどこへ向かうのか、建築から見えてくる未来

鴨長明の『方丈記』には、有名な「ゆく川の流れは」の後に、次のようなことが書かれている。美しい都で競い合うように並んでいた建物も昔からあるものはまれだ。火事で新しくなったもの、没落して小さな家になったものなど、同じものはない、と。 鴨長明が見た中世の都よりも極端なのが現代の東京かもしれない。世界的に見ても驚くべき速度でスクラップ&ビルドが繰り返され、わずか数年

彼女はいったい何者なのかー。『女帝 小池百合子』 書影

人物 / 社会

彼女はいったい何者なのかー。『女帝 小池百合子』

この2ヶ月間、彼女を見かけない日があっただろうか。テレビや新聞、ネットで私たちは毎日のように彼女の姿を目にし、彼女が語る言葉に耳を傾けてきた。誰もが彼女の顔と名前を知っている。そこには見慣れたリーダーの姿があった。 だが本書を読んだ後は、奇妙な感覚にとらわれるに違いない。彼女のことを確かに知っていたはずなのに、急に見知らぬ人間のように思えるからだ。そして次の

『性転師』知られざる性転換ビジネスの裏方 「アテンド業」の実態に迫る 書影

社会 / 民俗・風俗

『性転師』知られざる性転換ビジネスの裏方 「アテンド業」の実態に迫る

「性転師」とは、性別適合手術を受けるために海外に渡航する人を手助けする「アテンド業」に携わる人々を指す。もちろん正式な職業名ではない。本書の造語である。 「師」という字は、詐欺師や地面師といったなにやら怪しげな仕事を連想させるが、著者はこの言葉に、医療従事者でもないのにリスクを伴う手術に一民間人が関わらざるを得ない状況を込めたという。グレーな領域に関わる仕事

超常現象も秘密結社も超古代文明もすべてあります! 創刊40年の歩みを詰め込んだ『ムー ビジュアル&アート集』 書影

アート・スポーツ / 民俗・風俗

超常現象も秘密結社も超古代文明もすべてあります! 創刊40年の歩みを詰め込んだ『ムー ビジュアル&アート集』

本書を見つけた時、テンションが上がりすぎて鼻血を出しそうになってしまった。営業再開を待ち望んでいた紀伊国屋書店新宿本店の店頭だったことも、興奮に拍車をかけたかもしれない。 本書はあの!月刊『ムー』のビジュアル&アート集である。説明するまでもないが、『ムー』は昨年創刊40周年を迎えた日本屈指のミステリーマガジン。本書では1979年の創刊から2019年12月号ま

『宿無し弘文』ジョブズが師と仰いだ日本人僧侶の生涯 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『宿無し弘文』ジョブズが師と仰いだ日本人僧侶の生涯

禅には昔からおっかないイメージがあった。 それはきっと若い頃に読んだエピソードが強烈だったせいだろう。 禅の始祖である達磨に弟子入りを乞い、覚悟のほどを示すために自らの左肘を斬り落としてみせた慧可のエピソードである。雪舟の国宝『慧可断臂図(えかだんぴず)』にも描かれた有名な場面だ。 この話を初めて知った時、あまりに訳がわからなすぎて混乱した。弟子入りを断られ

『現代経済学の直観的方法』アフターコロナすら見通せる、現代経済学の最良のテキスト 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『現代経済学の直観的方法』アフターコロナすら見通せる、現代経済学の最良のテキスト

1987年、当時26歳の青年が自費出版した本が大きな評判を呼んだ。著者は大学院を中退したばかりの物理学徒で、「100部も売れれば奇跡」と出した本が、一部の大手書店では一般文芸書を抜いてベストセラーになるほど売れた。この『物理数学の直観的方法』はその後、講談社ブルーバックスに収められ、現在も版を重ねている。 著者の手法は、難解な概念の核心部分を、大胆なイメージ

『銀河の片隅で科学夜話』「勉強しない子どもたちにイライラし通しの妻が、この本を読んでとても優しくなったんですよね」(※個人の感想です) 書影

サイエンス / 生物・自然

『銀河の片隅で科学夜話』「勉強しない子どもたちにイライラし通しの妻が、この本を読んでとても優しくなったんですよね」(※個人の感想です)

大変だ。これは緊急事態だ。 そんなの、わかってるって? いや、世間じゃなくて、我が家の話なのです。 子どもたちは長引く休校期間を、あろうことか存分に満喫している。 息子は、 『魔術はささやく』 を読んですっかり宮部みゆきにハマり、「全冊読破する!」と宣言したきり引きこもってしまうし(そういえば3日ほど見かけない気が……)、娘はといえば、ネトフリとアマゾンプラ

『「間合い」とは何か』日本流ソーシャル・ディスタンスの研究 書影

サイエンス / 社会

『「間合い」とは何か』日本流ソーシャル・ディスタンスの研究

いまや「ソーシャル・ディスタンス」という言葉を聞かない日はない。 「社会的距離」などと直訳されるけれど、ちょっと芸がないなぁと思う。 だって日本語にはもともと「間合い」という言葉があるからだ。 「間合い」とは、単純に考えれば「相手との距離」である。でもよく考えると、この言葉はけっこう深い。実際この言葉には豊かな意味合いが含まれている。 真っ先に思い浮かぶのは

『宮沢賢治の真実』 書影

人物 / 「解説」から読む本

『宮沢賢治の真実』

きっかけはいつも不意に訪れる。人生とはどうやらそういうものらしい。 丈夫な体だけが取り柄だったのに、仕事中に倒れ、人生初の入院生活を経験した。精魂傾けていた仕事を放り出し、おとなしくベッドで横になっているなんて想像すらしなかったし、その後、医師に命じられたジム通いで、まさか筋肉をいじめるマゾヒスティックな喜びに目覚めようとは思わなかった。 人生はいつだって偶

『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』鎮痛薬が人々の命を奪う、恐るべき薬物汚染の実態 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』鎮痛薬が人々の命を奪う、恐るべき薬物汚染の実態

2019年4月、プロゴルファーのタイガー・ウッズがマスターズ・トーナメントで5度目の優勝を飾った。この優勝は、オピオイド(鎮痛薬)依存を克服しての勝利だったため「奇跡の復活」と称賛された。長く腰痛に悩まされ、鎮痛薬が手放せなくなっていたウッズは、17年に「薬物影響下での自動車運転」の容疑で逮捕されている。逮捕時の虚(うつ)ろな目をした写真を覚えている人も多い

『野球と暴力』「暴力なし」でも強くなれる! 書影

アート・スポーツ / 社会

『野球と暴力』「暴力なし」でも強くなれる!

新型コロナウイルス禍でスポーツイベントが次々と中止になっている。 春の選抜高校野球も残念ながら中止の憂き目にあった。甲子園でプレーするのを楽しみにしていた子どもたちは気の毒だが、その一方で、当たり前のようにあったものがなくなったことで、これまで放ったらかしにされてきた様々な問題を、あらためてゆっくりと考える時間ができたのではないだろうか。 たとえばそのひとつ

『イージス・アショアを追う』国の防衛政策を徹底検証、地方新聞の戦いの記録 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『イージス・アショアを追う』国の防衛政策を徹底検証、地方新聞の戦いの記録

発端は、読売新聞の記事だった。2017年11月11日の朝刊で「イージス・アショア」という新たなミサイル防衛システムを国が導入するにあたり、秋田と山口が配備先に挙がっていると報じた。 地元紙・秋田 魁(さきがけ) 新報の記者たちは当初、イージス・アショアがどのようなものか知らなかった。だが、自分たちの街がミサイル防衛の最前線に位置づけられそうになっていることだ

『孤塁』初めて語られた双葉郡消防士たちの「あの日」 書影

社会 / 事件・事故

『孤塁』初めて語られた双葉郡消防士たちの「あの日」

あの日、あなたはどこで何をしていただろうか。 2011年3月11日、福島県双葉郡では、多くの学校で卒業式が執り行われた。子どもたちは通い慣れた校舎に名残惜しさを感じながら、未来への希望に胸を膨らませていたに違いない。だが14時46分、巨大地震がこの地を襲った。 本書は、双葉郡の消防士たちが初めて「あの日」について語ったノンフィクションである。震災について書か

『地形の思想史』岬、峠、島、麓、湾、台、半島、地形が生んだ多様な日本 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『地形の思想史』岬、峠、島、麓、湾、台、半島、地形が生んだ多様な日本

高畠通敏の『地方の王国』といえば、地方政治研究の重要古典である。高畠は政治学者でありながらジャーナリストのように地方に足を運び、戦後の保守政治を支えた日本各地の保守王国の実態に迫るルポルタージュを書き上げた。 なぜ田中角栄は旧新潟3区で圧倒的な強さを誇ったのか。高畠はその要因の1つに「豪雪」を挙げる。日本海から吹く湿気を含んだ季節風は、三国山脈を越える前に3

『奥東京人に会いに行く』えっ? ここが東京? あなたの知らない東京の横顔 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『奥東京人に会いに行く』えっ? ここが東京? あなたの知らない東京の横顔

私たちは東京のことを知っているようで、実は何も知らないのかもしれない。吉祥寺に住む著者がそのことを実感したのは、ある新聞記事を目にしたときだった。井の頭公園の入り口に「いせや」という有名な焼き鳥店がある。2012年、建て替えのため店を取り壊したところ、跡地からなんと約1万5000年前の「焼き場」が見つかった。どうやら旧石器時代の人々も、同じ場所でこんがり焼け

『悩めるローマ法王 フランシスコの改革』バチカンでいま何が起きているのか 書影

人物 / 世界史

『悩めるローマ法王 フランシスコの改革』バチカンでいま何が起きているのか

ローマ法王が38年ぶりに来日する。 滞在中は広島と長崎の訪問や、東日本大震災の被災者との面会などが予定されている。前回ヨハネ・パウロ2世が来日した時は、初めてローマ法王が日本を訪れたとあって、各地で熱狂的に迎えられた。今回はどうなるだろう。個人的に気になっているのは、東京ドームで行われるミサである。何か荘厳な雰囲気を出すための演出はあるのだろうか。いまから気

『ガール・コード プログラミングで世界を変えた女子高生二人のほんとうのお話』ギークな女子高校生2人の痛快サクセスストーリー 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ガール・コード プログラミングで世界を変えた女子高生二人のほんとうのお話』ギークな女子高校生2人の痛快サクセスストーリー

ある日を境に急に有名人になってしまうなんて経験、そうそうないだろう。だがソフィーとアンディの人生にはそのめったにないことが起きた。本書は、しなやかな発想で世界を驚かせた女子高校生2人の成長物語である。 ソフィー・ハウザーは、授業中に手を挙げて発表することにもおびえるほどの極度のあがり症だ。気楽に自分を表現できる場は日記か親友の前だけ。そんな彼女は、スタートア

『実像 広島の「ばっちゃん」中本忠子の真実』 ”広島のマザー・テレサ”の知られざる半生 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『実像 広島の「ばっちゃん」中本忠子の真実』 ”広島のマザー・テレサ”の知られざる半生

「ばっちゃん」をご存知だろうか。 中本忠子さん。84歳。広島市の基町アパートを拠点に、40年近くにわたって非行少年たちに無償で手料理を提供してきた人物だ。この活動と並行して、76歳の定年まで30年にわたり保護司も務めた。把握されているだけでも、これまで数百人を立ち直らせてきたという。こうした活動が評価され、国や各種団体からの表彰多数、その半生はNHKのドキュ

『亜細亜熱帯怪談』前代未聞の新ジャンル!現代アジア怪談ルポルタージュの誕生 書影

事件・事故 / 民俗・風俗

『亜細亜熱帯怪談』前代未聞の新ジャンル!現代アジア怪談ルポルタージュの誕生

見慣れた世界地図を、ちょっと視点を変えて色分けしてみると、思いも寄らない姿が浮かび上がってくることがある。たとえば「民主化」の度合いや「女性の社会進出」の進み具合で色分けすれば、欧米を中心にした国々を濃く塗りつぶすことになるだろうし、「政治的自由」の制限などを切り口にすれば、また違った国がクローズアップされるだろう。 では「霊」はどうだろうか? いや、唐突か

『国境を越えたスクラム』なぜ彼らは日本代表として戦うのか 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『国境を越えたスクラム』なぜ彼らは日本代表として戦うのか

このところ泣いてばかりいる。 開幕戦のキックオフで泣き、釜石のスタンドに並んだ子どもたちの笑顔に泣き、アイルランド戦の勝利で泣いてしまった。まったくいい歳をした大人がどうしちゃったのかと自分でも思う。 でも、涙はラグビーによく似合う。 だいいち当の選手がよく泣く。彼らは勝っては仲間と抱き合って泣き、負けては相手と健闘を讃えあって泣く。いや、そもそも戦う前に国

『真面目にマリファナの話をしよう』空前のブームの最前線で、いま何が起きているのか 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『真面目にマリファナの話をしよう』空前のブームの最前線で、いま何が起きているのか

「ネットが生まれた時代に居合わせていたら、今ごろIT長者になっていたかもよ」。ある日酒場でそんな会話を耳にした。酔客の戯言ではあるが、草創期が可能性に満ちあふれているのは確かだ。そこには誰にでも成功できるチャンスがある。 あいにくインターネット革命はとうの昔に終わっているが、もしあのときの客に、いま米国を震源とした革命の波が世界に広がりつつあると教えてあげた

『月下の犯罪』名門一族の秘められた罪をめぐる極私的ノンフィクション 書影

事件・事故 / 世界史

『月下の犯罪』名門一族の秘められた罪をめぐる極私的ノンフィクション

「180人のユダヤ人を虐殺したのは、私の大叔母だったのだろうか…」 そんな帯の文句に惹かれて本書を手に取った。 1945年3月24日の晩、オーストリア国境近くの村レヒニッツにあるバッチャーニ家の居城で、ナチとその軍属のためのパーティーが開かれていた。月が明るい晩だった。この時、駅には200人近いユダヤ人たちが立たされていた。彼らは対赤軍用の防護壁を築くために

『アスペルガー医師とナチス 発達障害の一つの起源』現代の精神医学とナチス 光と闇の意外なつながり 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『アスペルガー医師とナチス 発達障害の一つの起源』現代の精神医学とナチス 光と闇の意外なつながり

医師にとって自らの名が診断名に冠されるのは名誉なことに違いない。だが「アスペルガー症候群」に名を冠した医師ハンス・アスペルガーにとって、それは胸を張って誇れた名誉だろうか。 アスペルガーは、ナチス統治下のオーストリア・ウィーンで小児科医として活躍した。敬虔なカトリック教徒でナチスにも入党しなかった彼は戦後、ナチスに抵抗した人物として評価された。また戦中に障害

『真実の終わり』米国きっての書評家が警告する民主主義の危機 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『真実の終わり』米国きっての書評家が警告する民主主義の危機

ミチコ・カクタニをご存じだろうか。本を愛する者にとって彼女はまさに「雲の上の人」だ。1955年生まれの日系米国人2世で、ニューヨーク・タイムズ紙で34年間にわたり書評を担当した。辛口の書評で知られ、98年にはピューリッツァー賞(批評部門)も受賞している。英語圏で最も影響力のある書評家だ。 本書は、彼女が2017年に会社を退職して初めて世に問うた著作である。意

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』無類に面白い!少年の成長物語 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』無類に面白い!少年の成長物語

今年もっとも感情を揺さぶられた一冊だ。 なにしろこの本を読んでいる間、いい歳して中学生かよ!というくらい落ち着きがなかった。世の中の不条理に憤って汚い言葉を口にしたかと思えば、声をあげてギャハハと笑い、気がつけば目を真っ赤にして洟をかんでいた。 ノンフィクション好きで著者の名前を知らない人はいないだろう。ブレイディみかこさんは地元福岡の進学校を卒業後、音楽好

『みんなの「わがまま」入門』小さな声を社会につなぐ方法論 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『みんなの「わがまま」入門』小さな声を社会につなぐ方法論

「自分のやっていることは正しい」と信じて疑わない人が苦手です。 大学生の頃の話です。授業が始まるのを待っていると、見慣れない男女のグループが教室に入ってきてビラを配り始めました。何が書いてあったか細かい内容は忘れてしまいましたが、手元のビラに目を落としていると、パァンという高い音とともに「失礼だろこの野郎!」という怒鳴り声が響き渡ったのです。 声の主は明らか

『準備せよ。 スポーツ中継のフィロソフィー』スポーツの名場面を生み出す制作者の哲学 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『準備せよ。 スポーツ中継のフィロソフィー』スポーツの名場面を生み出す制作者の哲学

スポーツの世界がいま大きく変わろうとしている。最新のテクノロジーを取り入れた「スポーツテック」の分野に熱い視線が注がれており、5Gのサービスによって新たな観戦のスタイルが生まれる可能性が生じている。政府も成長戦略の1つに「スポーツ市場の拡大」を掲げている。 だがスポーツを取り巻く環境がどんなに変わっても、その本質はけっして変わらない。それは「スポーツはドラマ

『トッカイ』バブルの後始末はまだ終わっていない 書影

社会 / 事件・事故

『トッカイ』バブルの後始末はまだ終わっていない

平成が終わった。元号なんて日本でしか通用しない、世界は西暦だ、などと言われてしまえばその通りなのだが、大学入学で上京したのが平成元年だったこともあって、個人的にはやはり平成の終焉は感慨深いものがある。 平成とはどういう時代だったのだろうか。 平成元年、1989年12月29日に日経平均は史上最高値の3万8915円87銭をつけた。ところが翌年1月から株価の下落が

『「盛り」の誕生』世界に広がる女の子発のカルチャー 書影

サイエンス / 社会

『「盛り」の誕生』世界に広がる女の子発のカルチャー

まず本の表紙をよーく見ていただきたい。 きれいな女性だが、どこか人工的な印象を抱かないだろうか? 肌の質感はなんだかプラスチックを思わせるし、髪も地毛だけじゃなさそうだ。なによりも「目」が明らかにナチュラルではない。こんなに目の大きい人物がいるだろうか。しかも黒目にも細工が施されているみたいだ…… あなたが抱いた印象は間違いではない。この女性の顔は加工されて

『掃除で心は磨けるのか いま、学校で起きている奇妙なこと』ある特定の方向へ誘導する教育の問題 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『掃除で心は磨けるのか いま、学校で起きている奇妙なこと』ある特定の方向へ誘導する教育の問題

小学校に通う子どもの通知表を見ていたときのことだ。教科ごとに4つの評価項目が設けられているが、「社会」のところに「おや?」と目が留まった。項目がすべて同じ文章になっている。「もしかして誤記?」と思ったのだ。 よくよく見ると同じ文章ではなかった。だが、勘違いするのも無理はない。「我が国の歴史や伝統、世界の国々に〜」「我が国の歴史や伝統の意味について考え〜」など