
『ブーメラン』-破綻の翼は日本に向かっているのか
2008年10月、北大西洋の孤島国家、アイスランドは事実上国家破綻した。2003年から金融バブルが発生し、国民は4年間ほどのパラダイスを楽しんだあと、リーマンショックの余波を受けて国ごと破綻した。一夜にして国民一人あたり33万ドルもの負債を抱えることになったのだ。 このとき、アイスランドという国そのものがヘッジファンドであり、じつは漁師がファンドマネージャー
HONZ代表
(2024年当時)
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2008年10月、北大西洋の孤島国家、アイスランドは事実上国家破綻した。2003年から金融バブルが発生し、国民は4年間ほどのパラダイスを楽しんだあと、リーマンショックの余波を受けて国ごと破綻した。一夜にして国民一人あたり33万ドルもの負債を抱えることになったのだ。 このとき、アイスランドという国そのものがヘッジファンドであり、じつは漁師がファンドマネージャー

2010年、ニューヨークのクーパー・ヒューイット国立デザイン博物館は「なぜ今デザインなのか」展を開催した。本書はそこで展示された製品やプロジェクトをまとめたものである。この展覧会はデザインがいかにして環境保護や社会の平等などを後押しできるかを提示した。 たとえば、米国でデザインされた籐や竹で作られたリアカーがある。変形させて椅子になることも、鶏や水を運ぶため

塀の中の著者からの献本だ。副題は「ホリエモンの獄中日記195日」。出版社はなんと文藝春秋である。3月の文藝春秋からの新刊は『毛沢東 大躍進秘録』『藤原正彦、美子のぶらり歴史散歩』『グーグル、アップル、マイクロソフトに就職する方法』などダイナミックレンジ広すぎである。そのなかでも本書『刑務所なう』は実録マンガ付きだ。これは文藝春秋始まって以来の快挙なのかもしれ

戦国武将は戦死や自刃などでの早死を除くと、意外にも長生きだったらしい。北条早雲88歳、島津義弘85歳、大久保彦左衛門80歳、徳川家康75歳、伊達正宗70歳など、『戦国の食術』には70歳以上で亡くなった60人あまりの武将がリストされている。 人工呼吸や輸液などの延命技術などなかった時代だから、長患いすることもなく、亡くなる直前まで元気であったことだろう。家康な

昭和40年代、札幌の小学生たちの社会科見学といえば、雪印乳業やサッポロビールの工場などが人気スポットだったが、小樽近辺にある鰊御殿もかならず訪れる場所だった。鰊御殿とは鰊漁の網元たちが建てた豪奢な自宅である。1890年代から建築がはじまり、いまでも10棟以上が文化財として保護されている。鰊漁の最盛期は1932年。それ以降漁獲高は減り続け、遠い過去の記憶となっ

資生堂の初代社長福原信三についての学術研究に肉付けした本だ。著者は本書の原型となる論文で2010年に博士号を取得している。そのため読み物としては情報量が多すぎるきらいがあるのだが、それがまた本書の魅力にもなっている。そもそも資生堂は信三の父親である福原有信が明治5年(1872)に創業した薬局だった。有信は幕府医学所から大学東校(現在の東大医学部)に進んだ俊英

買ってはいけないものを買ってしまった。読んではいけないものを読んでしまった。これまでは新刊ノンフィクションのみを追い続け、古本屋店頭の100円均一台など見向きもしなかったのだが、明日から鵜の目タカの目で「痕跡本」なるものを探す自分が目に映る。まさに目から鱗。著者は愛知県犬山市で「古書 五つ葉文庫」を経営しているという。1979年生まれだからセドリ親父ではない

歌舞伎と江戸と食を愛する人であれば、絶対に外せない本である。味付けはあっさりと「山の幸」と「海の幸」の2章のみだ。底本としているのは3代目中村仲蔵の『手前味噌』という自伝である。文化6年(1809)生まれ、明治19年(1886)没の仲蔵は「食乱」を自認した大芝居(幕府公認の劇場)の名優だった。本書はその江戸の大スターにレポーターとなってもらい、様々な江戸グル

以前、ツイッターで「クラシック音楽は三味線音楽と比べて粋ではない」と呟いたら、えらい勢いで反論されたことがある。クラシック音楽だって粋な楽曲があるというのだ。ボクにとって粋というのは真面目でも重厚でも芸術的でもない、むしろその逆の諧謔性・外連味のある・戯画化した何者かである。クラシック音楽は粋ではないと言ったのは、むしろ褒め言葉でもあったのだ。九鬼周造の名著

文字通り「山はどうしてできるのか」を説明した本だ。副題の「ダイナミックな地球科学入門」もまさにそのとおり。事象はダイナミックであり、本書はあくまでも入門書である。プレートテクトニクス、プルーム、溶岩ドーム、大地溝帯などの用語を自力で説明できる人にとっては物足りない内容であろう。しかし、そうでない人にとっては格好の入門書だ。とりわけ、中高生にとってはワクワクす

今日のHONZ本編は栗下直也のマニアックな3冊だ。そのうちの一冊は『反社会的勢力』。たしかに最近、新刊新書コーナーで暴力団関係の本を目にする。とりわけ溝口敦は池上彰風の「です・ます調」で書かれた『暴力団』を2011年9月に出版して版を重ねている。さらに紳助事件を書き加えて新書化した『山口組動乱!!2008-2011』を2011年12月に、そして今月『抗争』を

本書は2009年7月に単行本として出版された傑作ノンフィクションである。それから2年半がたち、文庫化するにあたって、巻末の解説をあらたに書き起こすことを引き受けた。以下のレビューは2009年9月に週刊朝日で掲載されたものだ。自分でいうのも変だが、本書を読み終えたときの熱気が伝わってくるようだ。ノンフィクションファン、アフリカ・資源関係ビジネスパーソン、冒険好

新潮社には「波」、岩波書店には「図書」、吉川弘文館には「本郷」など、老舗の出版社は月刊PR誌を発行している。たとえば「波」の場合、自社の新刊書評だけでなく、海堂尊や高橋秀実などによる連載を10本掲載している。A5版128ページ。電車の中で読むのには最適の重さと体裁だ。3年間で2500円。1冊70円。これで送料込みなのだ。もちろん、本屋の店頭で無料で手に入れる

エジソン、ヘミングウェイ、ゴーギャン、ロックフェラー、チャーチルなど11人の偉人たちの業績や人柄の「おさらい」と、その不肖の息子たちについての歴史エッセイだ。小見出しを少し抜き出してみよう。雰囲気がお判りになるだろう。「酒と女に溺れるケネディ家最後の息子」「エジソンの名を使って詐欺」「たった3ドル50セントの万引きで逮捕(アル・カポネの息子)」「鬱病、麻薬常

著者は元自衛隊、武器補給処技術課研究班勤務。Wikipediaによると、陸上自衛隊は1998年までだが、武器補給処は霞ケ浦、需品補給処は松戸、施設補給処は古河・通信補給処は大宮・衛生補給処は用賀という具合に5つの駐屯地に機能分散をしていたのだという。そこでは調達や補給だけでなく、調査研究も行っているのだという。だから補給所じゃなくて補給処なんだと妙に納得。

いやはや正月早々大変な目にあってしまった。お屠蘇気分でほいほいやっつけてみようと本書を読み始めたのだが、意外にも内容がこってりと濃く、たっぷり時間をかけて楽しむことになった。つまり、しばらくかかりっきりになったのである。それどころかあまりの面白さに、本書が取り上げている書籍を14冊も買ってしまったのだ。大散財である。そのほとんどが絶版なので、とりあえず買うこ

平野太呂の写真集である。平野太呂を知っているひとは雑誌「フイナム」を読んでいるような鋭角なひとであろう。鋭角と聞いて、もしかすると父上は平野甲賀ではないかと思ったひとは重度の本マニアである。ともあれ、この写真集に登場するのは細野晴臣、横尾忠則、フードディレクター野村友里、DJクボタタケシ、マスタークラフツマン西條賢など14人のクリエータたちだ。クリエーターは
さすがにこの雑誌を買ったのは今月号が始めてだ。目次を転記するので、その理由がお判りになるであろう。これで1890円。ちなみにデジタル版も1890円。 巻頭言 世界一のタワーに使われた基礎 桑原 文夫 総 説 業平橋押上地区開発事業「ライジングイーストプロジェクト」の概要 各 論 世界一の観光・電波塔としての設計ポテンシャル 〃 「東京スカイツリータウン」にお

ていねいにていねいに、心をこめて、大切に作られたノンフィクションだ。なにごとかを強く主張するために作られたわけではない。さりとて、第三者である取材者の目で作ったわけではない。この本は思いを共にする人々と土地の記憶をたぐる旅の記録である。 あえて「本を作る」と書いた。本書は二〇〇八年に公開された記録映画『オオカミの護符』をもとに書かれているからだ。そもそもこの

本書を「ちょい読み」で紹介するには気が引けるのだが、まだ丸ごと一冊読み終わっていないので、年末年始用に速報しておきたい。本書は今年最後のおススメ本になるかもしれない。それも飛び切りのおススメ本なのだ。山内・横井・宮本・荒川など魅力的な登場人物、それぞれのゲームタイトルとゲーム機のビジネス・ディテール、セレンディピティと戦略。素晴らしいビジネスケース・スタディ

「緒言」冒頭の一行目は「アメリカの読者にはC・J・Sトンプソン教授(本書の著者)を紹介する必要はあるまい」だ。しかし、ほとんどのアメリカ人はこの人を知らないであろう。「Nature」のデータベースを調べると、つい最近亡くなったという記事があるのだが、そもそもこの「Nature」の記事は1943年8月28日付けである。本書とは関係ないが驚くのは「Nature」

編集部から献本いただいた。著者は村木事件で証拠改ざんをした前田特捜検事とともに逮捕・起訴され、懲戒免職となった大阪特捜部長だ。じつは村木事件にはいささか思い入れがある。「村木厚子さんを支援する会」による声明文の末席に加わったこともある。人は見かけによらないといわれるが、村木さんだけは別だ。あらゆる犯罪からもっとも遠くにいる人だ。取調べでその人柄を見抜けなかっ

じつは「ちょい読み」どころではなく、最後まで興味深く読んだ。正規の書評にしない理由は本書がかなり専門的だからだ。難読本ではないのだが、大量に最新情報が詰め込まれていて、対象となる読者は一般人というよりは、分子生物学を目指す学生のための入門書という感じなのだ。逆にいうと非常に丁寧に、一切の手抜きなくオートファジー研究の最前線について記述している。 オートファジ
HONZ学生メンバー募集に多数の応募をいただきました。あらためてお礼申し上げます。みなさん選本もレビューも素晴らしく、選考に苦しみました。当初2-3名の予定でしたが、甲乙つけがたく下記4名の方を学生メンバーとして参加していただくことになりました。惜しくも選考から外れたかたにも、来年から開始予定のHONZイベントに優先して参加いただけるようにしたいと考えており

21世紀に入ってから静かな江戸ブームが続いている。2002年は江戸開府400年で盛り上がったし、江戸の面影をのこす歌舞伎座は2009年1月から2010年4月まで「さよなら公演」を行い、連日の大入り満員だった。2010年には江戸東京博物館が15周年を迎え、来場者数は1000万人をはるかに超えた。 しかし、その江戸ブームのなかにあっても、日本人全体として「和本」

著者から直接いただいた。タイトルは言いえて妙。そこに居合わせた一同は感心しきりだった。明治初期の平均寿命は40歳代前半、それに比べて現在は80歳を超える。秋山兄弟の見た明治の雲の下には、いまはさらに坂が続くという現実だ。「55歳までにやっておきたい55のこと」というのが副題。さて55の見出しからいくつかを紹介してみよう。 「無謀なことをやろうとすればするほど
著者はフリーランスのサイエンスライター。原書はNature's Patterns3部作の第2作だ。3部作とは『Shapes』『Flow』『Branches』。日本語版はそれぞれ『かたち』『流れ』『枝分かれ』だ。ここ1-2年、『土の文化史』や『砂』、『柑橘類の文化誌』、『フクロウ』など身近で基礎的な物質や物性、生物についての出版が続いている。すべて翻訳もので、
前半はスタジオジブリが非売品で作成していた小冊子『岩波少年文庫の50冊』からの転載だ。そもそも本書はその小冊子があってからこそ企画されたらしい。後半は阿川佐和子との対談などをもとにして再構成している。前半の50冊のなかから1冊分をまるまる引用してみよう。たとえば『三銃士』を紹介した文章は「痛快冒険活劇という名にこれほどぴったりの本はないでしょう。ワクワクする

6550万年前、恐竜は小惑星の衝突によって絶滅してしまった。すでに一般常識化していると思っていたら、じつは科学界では論争が続いているという。世界中の研究者たち41人はさすがにそろそろ決着をつけようとサイエンス誌に連名で論文を提出した。ところが、その論文に対してさらに衝突説反対派が反論を試みてきたというのだ。 本書はその異説のどこが間違いかをとことん解説するだ
A5版303ページの分厚い本だ。原書のタイトルはBig Oyster、副題はHistory of the HalfShellである。ニューヨークはBig Appleと呼ばれるまえはBig Oysterと呼ばれていた。Halfshellとはボティッチェリの「ヴィーナスの誕生」のイメージであろうか。帯には荒俣宏氏推薦であるから、間違いなく牡蠣とニュヨークの博物学

1990年に東海村で発生した臨界事故の被曝治療を記録した一冊だ。この事故はずさんな作業管理のため、瞬間的に極小の原子炉が出現し、3人の作業者が至近距離で被ばくしたというものだ。亡くなった方の被曝線量は20シーベルトと推定され、これは一般人が1年間に浴びる限度の2万倍にあたるという。 3人が被曝したのは中性子線だ。体内被曝をするアルファ線とちがい、中性子線は外
朝日新聞公式ブログ「ベルばらKidsぷらざ」に連載している「世界史レッスン」をまとめた本だ。これではなんのことだか判らない人が多いだろうが、『怖い絵』の著者だといえばお判りになるだろう。80編ほどの歴史エピソード集なのだが、取り扱っているテーマはフランス革命をはさんで前後100年と狭くて濃い。マリー・アントワネットはもちろん、エカテリーナもピョートル大帝もナ
タイトルそのままの本だ。図鑑だからキレイなカラーイラスト満載。「公家服飾」「武家服飾」「町人男服飾」「江戸後期 町方女小袖」など15章で構成されていて細大もらさない。衣装だけでなく、たとえば江戸後期の男の髪型などというページもある。本多髷、若衆髷、銀杏髷、たばね、立髪など、歌舞伎ファンなどにとっては、ああなるほどなと感心することしきりだ。著者は江戸衣装考証家
本書が最初に出版されたのは昭和49年。本書は改版新刊だ。昭和49年といえば1974年だから、その年生まれの人は現在37歳だ。しかし、御所ことばがその37年間で変化したことなどないであろうから、新刊として読むことができるはず。御所ことばで思い起こすのは「豆腐」のことを「オカベ」、「鯉」のことを「コモジ」など特殊名詞だ。本書の後半はその語彙集なのだが、前半のイン
キチンと読み終えてから紹介するべき本だと思うのだが、怖いもの見たさで第4章の「幻覚妄想」から第5章の「入院」までを読んでしまい、書かずにはおれない気持ちになってしまったのだ。正直なところ統合失調症患者のイメージは理解不能で怖いという感じを持っている人もいるのではないか。しかし、その2章を読むだけで大変な病気であり、本人は本当にしんどそうで、むしろ社会が守って
昨年の夏、伊勢神宮へ参拝したときのことだ。神宮のホームページに書かれているように、五十鈴川の清流にかかる宇治橋を渡ると参道は深い森につつまれ、静かで神々しい空気に包まれるはずだった。日本人はもちろん、欧米人も厳かな面持ちで歩いているそのど真ん中をかきわけて、大勢で腕を組み、わめきながらのし歩く中国人観光客たちがあらわれた。久しぶりに頭に血がのぼった一瞬だった
オリオン座のアルファ星、冬の大三角形のひとつベテルギウスが間もなく超新星爆発する。地球から640光年しか離れていない星がスーパーノバ化すると、それから少なくとも3か月にわたって満月の100倍ほどの明るさで、昼も夜も天空に輝くことになるという。三葉虫の絶滅に関係したのではないかという仮説もある死のガンマ線バーストは、さいわいにも地球には向かないと予想されている
「またまた複雑系か、そろそろ飽きちゃった」と思ったあなたは深刻なポピュラーサイエンス本マニアである。ニール・ジョンソンは元オックスフォード大学の物理学教授。現在はマイアミ大学「複雑性に関する学際的研究グループ」主任だ。「カオスとフラクタル」「金融市場の動向を予測する」「感染症、癌をいかに抑えるか」「自然と量子ゲーム」などの12章。各章には5つの節が設定されて
今日から「新刊ちょい読み」というコーナーを始めます。「今月読む本」よりは詳しく、「おすすめ本レビュー」よりカジュアルに。本購入のご参考までにどうぞ。 本文204ページなのに本体2600円という高額本。それもそのはず紙質も印刷も素晴らしい。図版も写真も素晴らしい。装丁・デザインも素晴らしい。本棚に置いておきたくなる本の筆頭だ。デズモンド・モリスといえば1967
※2011年11月30日に締め切りました。 2011年1月に「本のキュレーター勉強会」としてスタートしたHONZが、2012年学生メンバーを募集しています。 【学生メンバーとは】 毎月1本の書評(対象はノンフィクションのみ)を書いていただきます。 書いた書評のHONZへの掲載可否については正規メンバーが協議して決定します。 原則として1年間に5回以上掲載され