
『森博嗣の半熟セミナ 博士、質問があります!』 (講談社文庫) 解説
2008年12月に出版された単行本の文庫化にあたって、著者から出版社経由で解説を仰せつかった。大好きな作家なので二つ返事で請け負った。二つ返事だから「はいはい」と、じつに軽やかである。 ----------------------------------------- 森博嗣は理系の頭脳と柔らかな言葉のセンスをあわせ持つ稀有な作家である。もちろん、理系といっ
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(2024年当時)
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2008年12月に出版された単行本の文庫化にあたって、著者から出版社経由で解説を仰せつかった。大好きな作家なので二つ返事で請け負った。二つ返事だから「はいはい」と、じつに軽やかである。 ----------------------------------------- 森博嗣は理系の頭脳と柔らかな言葉のセンスをあわせ持つ稀有な作家である。もちろん、理系といっ

昨年10月に「いま読んでいる本」をこのブログで紹介した。その中に『アルバニア・インターナショナル』という無茶苦茶にマニアックな国を紹介した本があった。後日、その本の編集者であるハマザキカク氏とツイッターで知り合った。いまだにお会いしたことも会話したこともないのだが、同族であることは確実だ。とりあえずご本人のブログから自己紹介をコピペしてみよう。 「社会評論社

水中考古学の入門書である。著者は神奈川県生まれの35歳。テキサスA&M大学博士課程に在学中だという。これからを期待できそうな書き手だ。語り口によどみがなく、易しく書いているにもかかわらず、内容は濃くて1行の無駄もない。 水中考古学が研究対象とするのは「遺物」であり、おもに沈没船であるようだ。アレキサンドリアなど海に沈んだ古代遺跡もあるのだが数は少ない。本書に

1953年、自由党総裁で首相の吉田茂が社会党議員に「バカヤロー」と言ったために、内閣不信任案が可決され、解散総選挙に追い込まれた。てっきり吉田茂が国会の演説台からバカヤローと叫んだものだと思っていたのだが、じつは呟きのようなものだったらしい。しかし、速記者には聞こえたために議事録に記録され、ついには日本の政局は自由民主党結党までの道のりをたどることになった。

科学読み物だけでは物足りないという方のために人文系で買った本を紹介してみよう。 『ナチ略奪美術品を救え』 この分野では同じく白水社から『ヨーロッパの略奪』が出版されている。これを持って白眉とするべきだと思うのだが、なにしろ5000円を超える高額本である。とはいえ本書も3360円だ。モニュメンツマンとははじめて知った言葉だ。 『日本の刺青と英国王室』 これまた


この書評を書くために確認したいことがあって、著者の代表作である『全国アホバカ分布考』をまた読み始めてしまった。1993年に出版された本である。単行本と文庫本で合わせて3冊も持っている。もっともお気に入りの本の一冊なのだ。この本は難解な柳田國男の「方言周圏論」を、「探偵!ナイトスクープ」というバラエティー番組の中で、視聴者の笑いを誘いながら実査したノンフィクシ

おそろしく読み応えのある「解説」が付属している本である。なんと村上春樹がたっぷり6ページの解説を書いているのだ。村上は本書だけでなく、先行したテレビ番組も見てから、この解説を書くという念の入れようである。それもそのはず、村上は1987年に本書『ヘンテコピープルUSA』の著者ルイ・セローの父親であるポール・セローの著作を翻訳しているのだ。しかし、大作家の村上が

765ページ、寄稿者は118人、定価2980円である。寄稿者1人当たりのページ数は6.5、価格は25円だ。あきらかに「お、ねだん以上」だが、10冊ほど買わないと椅子としては使えない。 論点1の堺屋太一「移民の受け入れこそ、需要を創り知日派を創る」という論文だ。個人的には反対。縮小均衡しても日本文化を残すべきだと思う。とはいえ、この論文をトップに持ってくるセン


本書のタイトルに使われている「文化誌」という言葉を勝手に解釈してみると、ある事柄についてのトリビアを、愛を持って書物のレベルにまでしたというほどのことであろうか。本書の著者はフランス人の化学者なのだが、その並々ならぬ柑橘類への愛をこの一冊に結実させている。もちろん柑橘類とはオレンジやレモンのことだ。本書によれば、世界の柑橘生産量は年間1億トン。数千種が確認さ

「NODE」は アート雑誌である。この雑誌の「ビジネスに効く、非ビジネス本」という書評欄を担当している。 著者のオリヴァー・サックスは現役の脳神経科医であり、アカデミー賞ノミネート映画「レナードの朝」の原作者だ。レナードの朝では治療不能な難病「嗜眠性脳炎」の患者とその主治医が主人公だった。嗜眠性脳炎とは30年以上も眠り続けるという不思議な病気だ。映画になるま

「秋の夜長に買いためている本」など書籍リストのエントリは、実際に買った本の20%程度を紹介したものである。ここでは期待できそうな一般向けの読み物だけを選んでいる。マニアや研究者向け、MOOKや、読んでみなければわからない新人や、自費出版系は普通は紹介しない。ボクがどんな本を買っているかに興味がある方もいるようだから、今回はその中から何点か紹介してみよう。 『

中国が劉暁波のノーベル平和賞受賞に対して、ノルウェー政府に圧力をかけている。当然予想されたことであり、ノルウェーにとっては覚悟の授賞決定だったはずだ。この件では中国の横紙破りぶりだけが報道されるのだが、ノルウェーの意図や覚悟についての報道はほとんどない。じつに不思議である。そもそもノルウェーの実態について良く知らない。そこで本書を買ってみた。 ところで、本書

秋の夜長用第2部である。しかしよく考えてみると、秋の夜こそは飲みに出かけることが多い。本を片手に吉祥寺のハモニカ横丁とか井之頭公園脇あたりでダラダラしていることが多い。大好きな季節になってきてうれしい。札幌出身なのだが、冬はキライなのだ。 ところで、今日は『無菌室ふたりぼっち』の発売日だ。書評が早すぎたのであらためてリンクを張っておくことにする。 http:

いよいよ読書の秋である。秋の夜長をじっくり楽しむためには、事前に本を仕入れておかなければならない。目の前に山と積んで、こいつらはさぞかし面白かろうとニヤニヤしながら酒を飲むのも楽しみのひとつであるからだ。 『ナポレオンの妹』 美しい装丁の本だ。韓紅(からくれない)を背景に、主人公であるポーリーヌの大理石像が配置されている。ボルゲーゼ美術館に「勝利のヴィーナス

本書はまだ店頭では販売されていない。著者本人から刷り上がったばかり本を直接いただいたのだ。著者は「週刊朝日」の現役編集者だ。ホリエモンとボクの連載も担当している。昨日3人での打ち合わせの最後に本書を取り出したのである。そして「じつはボク2年前に白血病で骨髄移植を受けたんですよ。この本はその記録です」と言ったのだ。2人は驚愕して思わず顔を見合わせた。 本書によ

新潮社の月刊誌「波」に掲載された原稿だ。「波」は128ページに本の話題が満載されている雑誌で定価は100円。3年間で2500円。驚いたことに送料込である。A5判なので持ち歩きにも便利。つい申し込んでも損はないと思う。 http://www.shinchosha.co.jp/nami/ --------------------------------- ヨーロ

白水社からいきなりヴェネチア関連書籍の2連発である。来年のカーニバルに行ってみようとホテルを予約したばかりだ。まさに「渡りに船」ならぬ、「ヴェネチア旅行にゴンドラ」だ。ちなみに来年のカーニバルは2月25日から3月8日。最高潮の最終週土曜日は3月5日である。 『ヴェネチア・ミステリーガイド』は旅行ガイドブック仕立てだから、4泊5日の5章構成である。1日目はドゥ

本年これまで読んだ本のなかでもっとも面白い本だ。スピードあふれる科学読み物にして、稀代の植物学者の伝記である。読み終わってみると、たった14ページのプロローグだけでも、付箋を6枚も張っていた。2ページごとに、引用したくなる文章が書かれている本などめったにない。 1998年ウガンダで「黒さび病」という小麦の伝染病が発見された。壊死率は80%。病原菌はやがて紅海

ほぼ半月ぶりの書評だ。しかも新刊ではない。本書は2009年6月の発行なのだ。先日、ツイッター上で古本屋での掘り出しモノ探しの話題があり、気になって探し出した本だ。これが大当たりだった。 著者は高崎市に住む、還暦を超えた予備校講師。月々40万円のローン返済がある。そのうえで少子化の影響で勤めている予備校から減給を申し渡された。もはや、自己破産をする前にせいぜい

本書についてはある週刊誌の書評で取り上げる約束をしてしまった。原稿の〆切は明日である。掲載誌の発売は3週間後になる。それまでとても待てないので、一言だけいっておきたい。「いますぐ買って読むべし」。本年、最高の科学読み物にして伝記になると思う。それでも疑うのであれば、本屋で14ページ足らずのプロローグを立ち読みするべきだ。書評用に付箋を張るくせがあるのだが、プ

ここ20年間、モロッコ、ネパール、ケニヤなど開発途上国の観光地を中心に家族旅行してきた。逆にイタリア以外のヨーロッパを観光したことはない。ヨーロッパ旅行は老後にとっておこうと思ったのだ。とりわけヴェルサイユ宮殿などは最期の際で良いと思っていた。 ヴェルサイユ宮殿がつまらないとか、楽な旅行だからというわけではない。先進国の観光地は200年後に行っても、いまとさ

『日本人へ』を読む必要があって駅前の書店にいったら、面白そうな新書がちらちら出ていた。 『日本人へ』 塩野七生が文藝春秋に連載しているエッセイである。『リーダー篇』128頁の「気が重い!」で考え込んでしまった。「(『ローマ人の物語』が完結するという)先が見えたとたんに襲ってきた恐怖」があったという。さらに、イチローも同じことを語っていたと塩野はいう。自分で何

本書の骨子は、ネット時代には新しい経営学や組織論が有効であり、そのためには生物学の知識が役に立つというものだ。しかも、この場合の生物学とは、個体の研究ではなく、群れとしての生態を観察することだというのだ。 例をあげてみよう。5つの選択肢をもつ超カルト・クイズを考えてみる。回答者は5つのうち、どれか1つだけは不正解であることを知っていることにする。個人が正解す

『偉人リンカーンは奴隷好き』 高山正之の「変見自在」シリーズ第5弾である。面と向かって知り合いに「厭味」をいう人に、本物の悪人はいないと思う。「罵る」と「厭味」は異なるのである。著者は産経新聞出身の名物コラムニストであり、毎度「厭味」を言われるのは朝日新聞と船橋洋一だ。「厭味」なのだから、真に受けて著者に対しても、登場人物に対しても、怒ったりしてはいけない。

http://www.wowow.co.jp/drama/bob/ http://www.wowow.co.jp/drama/pacific/ テレビドラマ「バンド・オブ・ブラザース」と「ザ・パシフィック」がWOWOWで放送中だ。両ドラマともにスティーブン・スピルバーグとトム・ハンクスが発案・製作総指揮をとっている。 前者は第二次世界大戦・ヨーロッパでドイツ

1789年7月14日のバスチーユ監獄襲撃からフランス革命が始まった。この2年前からフランスの気候は不順で、穀物の収穫量は平年の3分の2になり、小麦価格は2倍に高騰していたのである。 5年後の1794年も天候は最悪であり、フランスでは大規模な食糧暴動が発生した。この年7月にジャコバン党のロベスピエールは刑場の露と消え、革命は転換点を迎えたのだ。 フランス革命は

ひとことで括ると「人種と遺伝子」の本である。人種差別を助長するとして、アメリカの出版社であれば発売を躊躇するであろう。『黒人はなぜ足が速いのか-「走る遺伝子」の謎』というタイトルは刺激的だ。対称的能力である「知能の遺伝子」の議論に直結しかねないからだ。 ともあれ、本書でも取り上げられているスポーツ遺伝子のひとつ「ACTN3」については、日本でも2万円弱で検査

岩波書店から2008年に出版された前作『ハダカデバネズミ』も、めっぽう面白かった。全身無毛で出っ歯なネズミの生態と、その研究者を描いた本だった。なんと、ハダカデバネズミには女王様と兵隊とふとん係がいるのだ。そして鳴き声で自分の階級を伝えているのだという。 もちろん著者はハダカデバネズミを愛玩用に飼っているわけではない。理化学研究所で言語の起源を探るために飼育

夏休み用の本の紹介、第2陣である。まだ2-3週間ほども暑いそうだから Clic&Read で良い夏休みをどうぞ。 『群れのルール』 本書はすでに読了した。非常に面白かった。本年の経営学読み物ナンバーワンの第1候補である。生物学のパートも経営のケーススタディのパートも内容豊富で、じっくりと書きこまれている。土方奈美の翻訳も素晴らしい。ある月刊誌の書評でとりあげ

1958年の東大工学部出身者の悲喜交々を赤裸々に書いている本である。登場人物は実在していたどころか、ほとんどすべてが実名で登場する。この物語には一遍のファンタジーもなければ、夢想もない。しかし、筆の運びは滑らかであり、上手な小説仕立てである。つまりこれは「私小説」なのだ。その意味において村上春樹の対称たる小説といえるのかもしれない。 「プロローグ」と「エピロ


最近は書評を書くのが面倒になり、すっかりブログもご無沙汰である。ボクは1年に1-2カ月はとんでもない怠け者になるようだ。某社社長をやっているときにも、スキューバダイビング三昧のあげく、一か月以上出社しなかったことがあるほどだ。 とはいえ、夏休み用の本を仕入れたので、とりあえずその一部を紹介しておこう。そのうちにヤル気になったらブログで取り上げることもあるかも


不用意につけられた日本語タイトルのおかげで内容を誤解したひとが多いのではないか。原書のタイトルを直訳すると『覆面科学者』であり、ティム・ハーフォードの『覆面経済学者』のパロディだと思われる。ちなみに『覆面経済学者』の日本語タイトルは『まっとうな経済学』である。副題は『あなたの「ついていない」を科学する』とあるのだが、これがさらなる誤解を招く。 本書は純粋な科

森博嗣のシリーズ・エッセイである。前々作は『自由をつくる 自在に生きる』、前作は『創るセンス 工作の思考』だ。 この3連作はそれぞれ「自由論」「工作論」「小説論」と著者が呼んでいたものを、出版社が売れそうなタイトルに変更して出版したものだという。 これから小説家になりたい人にとっては真の必読書かもしれない。「激変する出版環境のもとで」「創作というビジネスを」

毎月最低1冊はサイエンス・アイ新書を買ってしまう。今月はこの本だ。ボーイング777という最新機種を取り上げたことを別にすると、過去になんども登場した企画である。しかし、つい買ってしまったのは「成田/パリ線を完全ドキュメント」という副題がついていたからだ。もし、これが成田/ニューヨークだったら買わなかったかもしれない。JALのジャンボジェットのイメージだ。 内
