
『グーグル秘録』 週刊現代7月3日号 「日本一の書評」欄掲載
寄稿させていただいているから言うのではないが「週刊現代」の書評欄が充実している。今週号のブックレビューは3本。『グーグル秘録』ケン・オーレッタ、『お父さんとオジさん』伊集院静、『鈴蘭』東直己。著者インタビューは『母』の姜尚中。「わが人生最高の10冊」は三浦雄一郎。リレー読書日記は野村進だ。野村進は『グーグル秘録』『アップル、グーグル、マイクロソフト』『クラウ
HONZ代表
(2024年当時)
583記事

寄稿させていただいているから言うのではないが「週刊現代」の書評欄が充実している。今週号のブックレビューは3本。『グーグル秘録』ケン・オーレッタ、『お父さんとオジさん』伊集院静、『鈴蘭』東直己。著者インタビューは『母』の姜尚中。「わが人生最高の10冊」は三浦雄一郎。リレー読書日記は野村進だ。野村進は『グーグル秘録』『アップル、グーグル、マイクロソフト』『クラウ



今年4月、中国はミサイル駆逐艦や潜水艦など10隻で編成される東海艦隊を沖ノ鳥島周辺に派遣した。鳩山首相の安全保障に関する無知・無策ぶりと、小沢幹事長の中国への朝貢外交的な傾斜ぶりを嘲笑ってのことであろう。 この島は中国軍が洋上演習中に誤爆でもしてしまおうものなら、島である法的地位を失うかもしれないほど小さく、はかないのだ。 ところで、日本の国土面積は37万平

クリストとジャンヌ=クロードの作品のなかで、1985年の「包まれたポン・ヌフ」と1995年の「包まれたライヒスターク」だけは観てみたかった。 2005年、ニューヨークのセントラルパークで、彼らが7500本あまりのオレンジ色のゲートを建てた映像は観ているのだが、この2つの作品のように歴史的建造物をすっぽり包むというような強いインパクトは感じなかった。 新しい橋

著者は大正14年生まれの85歳だ。25年前から仏教史を研究し始めたという。この時すでに60歳だ。しかもテーマはお寺だ。さぞかし辛気臭い本かと思ってしまう。ところが、本書『お坊さんが隠すお寺の話』は、失礼ながらご老人が書いたとはにわかに信じられないほど新鮮なのだ。 地方の末寺は崩壊の危機にあるというのだが、これは仏教界の自業自得だと言い切る。たしかに、近くの斎

WOWOWのドラマW「マークスの山」がはじまった。原作は1993年に書き下ろしハードカバー版を読んだ。2003年に文庫版として大きく書き直されているのだが、これは読んでいない。高村薫作品は壮大にして、おどろおどろしく、緻密にして、リアリティを追及するという印象だ。映像化にあたっては難しい作家ではないかと思う。 ところで、今回のドラマWはキャスティングが素晴ら

日頃もっぱら手に取るのは科学読み物などのノンフィクションである。純文学も推理小説も子供の頃に読んだだけで、大人になってからは書店でも専門コーナーから足が遠のいた。純文学を読むには感性が鈍磨してしまったし、推理小説を読むにはトリックの伏線すら気づかなくなってしまった。 いっぽうで歴史小説は蓄積した知識や経験の量に比例した楽しみ方ができるし、新たな薀蓄も得ること

月に一度は京都へいくようになって5年になる。到着は午後6時すぎで、京都駅から花街へ直行する気楽な夜遊びが目当てだ。寺社仏閣には目もくれない。とはいえ、ここ数年の京都ブームを体感することもある。お茶屋さんに上がるときにたまたま舞妓さんなどと一緒になろうものなら、周囲の観光客からどよめきがあがり、フラッシュが焚かれるのだ。無粋な輩だと憤りながらも、おもわずVサイ

ひさしぶりの天文学の解説書である。問題なく今年の私的TOP10候補だ。著者は宇宙物理学と天文学の研究者だったが、いまは陰謀論やエセ科学を叩きながら、科学読み物を書いている科学ライターだ。 原題は『Death From The Skies!』。ノストラダムスの『King of Terror Descending From The Skies』(恐怖の大王が空か

カバー裏には「江戸前の魚が食べたくなる東京湾ガイド」とあるが、じっさいは丁寧に書かれた江戸前の海と東京湾内湾についての「文化誌」である。「文化誌」とした理由は、本書が対象としているのは美味しく食べることができる魚介についてであり、けっしてグルメ本や生物図鑑のようなものではないからだ。ありふれたタイトルを付けられて損をしている本である。 近年、人の生活と生き物

著者は元気象大学校教授で宗教評論家のひろ・さちや氏である。御年74歳にして本書『「ずぼら」人生論』を書いた。現代の奇書であり、悩めるビジネスマンを半々の確率で完全に元気にさせるか、さらに悪化させるかという、博打的ともいえる人生指南書だ。 拙書『大人げない大人になれ!』の比ではない。呆れるほどの大人げなさ、年寄りげのなさだ。見出しから抜き出してみよう。 「つき

2002年から2005年までの「新日曜美術館」のキャスターは山根基世と「はな」だった。このコンビが番組の歴史上ベストである。『カジノは奴らを逃がさない!』と『天才数学者はこう賭ける』は、いまでもおすすめだ。『春の食卓』はいまが旬だ。 ------------------------------------ 大容量のハードディスク・レコーダーを買ってからお気に

本ブログでは小説の書評をするつもりはないのだが、あえて自己ルールを曲げて本書を紹介しておこう。昨年読んだ小説の中では圧倒的にNO.1だった。内容は1975年から2004年までのDEAと麻薬カルテルのサーガである。紹介する理由は、事実が小説を追い越しつつあるからだ。メキシコの麻薬カルテルの動きが激しくなってきたのだ。 まずはまとめだ。 「米国への麻薬密輸増加、

「あとがき」によれば、著者は幸田露伴研究をしているうちに、二宮金次郎に興味が移ってしまい、本書をものにしたらしい。幸田露伴が『二宮尊徳翁』の口絵で、朱買臣の図像と苦学する金次郎の姿を結びつけたことを発見したのが発端だった。 その朱買臣と二宮金次郎とは何だったのかを丁寧に調べ上げたのが本書である。朱買臣とは前漢時代に実在した人物である。また二宮金次郎とは江戸後


トイレ送りになる予定だった本書はお風呂に配置転換された。そのため読み終えるのに1ヶ月もかかってしまった。ヌルめのお湯にゆっくり浸かって1話づつ読み切るのが心地よかったのだ。標準的な新書に医学にまつわる驚きの物語が25話も詰まっている。図版も豊富で、お得以外のなにものでもない。これで740円は安すぎだ。 第1話は体温計についてだ。人類がはじめて体温測定を医学に


「竿だけやはなぜ見た目が九割か?」などという本はない。当時流行っていた書名を皮肉って作った仮想的な本である。 ---------------------------- 今月は表紙を見るかぎり、いかにも怪しげな本を何点か買った。昨年は「竿だけやはなぜ見た目が九割か?」などというような疑問文形式のタイトルが流行っていたが、今月の本は別の意味ですごい。 『今世紀で

著者は数学者にして、天体の軌道計算の専門家だ。いわば予測のプロが、科学は数学という道具をつかい、大災害を予測しうるかについて解説しているのが本書だ。 テーマは「台風や地震」、「気候変動」、「小惑星の衝突」、「金融危機」、「パンデミック」の5つである。いささか乱暴にまとめると、どの分野でも完全な予測や予知は難しいというのが結論だ。 天気や地震などの自然災害は、
最後の『フォーサイト』が届いた。ボクは『フォーサイト』の刊行以来、おそらく最低のコラムを寄稿していたことがある。いまだに恥ずかしい。しかし、それでもなお、日本を代表する素晴らしい雑誌だった。 その最終号から、まずは塩野七生の「男たちへ、女たちへ、若者たちへ」という記事。長く引用するけれどきっと『フォーサイト』も塩野さんも許してくれるだろう。「これからの20年

この月に紹介した本は、時期ものの『篤姫』をのぞいて、おすすめ本ばかりだ。後日、別に書評を書いたものも数冊ある。 ======================== 毎回の視聴率が二十%を超える今年の大河ドラマ『篤姫』。買ったのは宮尾登美子の原作ではなく、NHKのガイドブックの方である。これがなかなかに面白い。大奥や幕末のエピソードをイラスト付きで紹介し、ゆかり

トヨタのリコール問題が拡大するさなか、まるでそれを予見でもするかのように出版された本だ。著者は本書『創るセンス 工作の思考』で、アナログからデジタルへの転換によって生じたギャップにスポットライトを当てたかったという。 まさにプリウスのブレーキ問題はアナログとデジタルの狭間で起こったトラブルだった。本書によれば、いまの現場で活躍している工学の第2世代は、技術分

グローバル・ヒストリーを知るための最高の入門書であろう。各国でグローバル・ヒストリー研究が進むにつれ、歴史学はサイエンスとして再認識され、中学高校の教科書も大きく変わるであろう。 個人的にはグローバル・ヒストリーが定着するにつれ、政治学や経済学も進化するであろうと思う。新しい資本主義や民主主義などは、薄っぺらな「社会はこうあるべき論」のような観念論などから生

今月のクーリエ・ジャポンは第2特集の「トヨタ『本当の評判』」が面白い。 まずはTIMEの記事から。トヨタのイメージは「何をやってるのか自分でもよくわかっていない自動車オタクの集団」へと変わってしまった、というくだりが目をひく。添えられている写真は、豊田社長がいかにも吊るしあげられているというアングルのもので、日本のメディアでは見ることができないものだ。 次は


朝鮮日報オンラインの日本語版でソニア・レオンの『Romeo and Juliet』を知った。ロンドン特派員が昨今イギリスで流行るものとして紹介していたのだ。じつはこの本、イギリス人女性が書いたマンガである。驚くことに舞台は現代の東京。ヤクザのモンタギュ一家とキャピュレット一家が抗争している設定だ。名前はともかく、登場人物はすべて日本人である。 ちなみに、あら


2002年から2008年までの7年間、年3回のペースで『文藝春秋』の「今月買った本」という書評欄に寄稿していた。4人の書き手が回り順に、毎月買った本を10冊リストにし、その中から何冊かを文章で紹介するという企画だ。現在でも後任者たちによる連載が続いている。 手元には元原稿が9本、出来上がりページのPDFが6本残っているだけだ。22本書いたはずだから、7本分紛


このところあまり面白い読み物に出くわさない。しかたがないので新書コーナーをすこし浚ってみたら、本書を発見した。この本は使える。対象は完全な初心者というよりも、ある程度話すことができる人、英語を使う環境にいる人などであろうか。とりわけネイティブでもないのに、外資系企業に勤めている人にとっては必読書かもしれない。 じつは英語にも丁寧な言い回しや乱暴な言い回しがあ


巨大で重い洋書である。アマゾン・マーケットプレースから買えば18000円だ。もちろん中身はマティスの画集である。この画集は光沢紙にグラビア印刷で製本されている「CUT-OUTS」と、リトグラフを模して印刷した40枚弱の単葉で構成された「JAZZ」のセットだ。 「JAZZ」のオリジナルは切り絵である。それをマケット(原型)として、マティスの指揮下でリトグラフ

書店でおもわず手を伸ばしてしまった本だ。けっして自分のボケを心配しているわけではない。親や親戚を心配しているのだ。誤解しないでいただきたい。ふん。目次をざっと見ると、ボケない職業、性格、生き方があるという。 本書の営業妨害にならない程度に紹介しよう。「公務員はボケやすい」「学校の先生も危険度80%」「営業マン、ボケ知らず」よし、職業的には大丈夫だ。 「几帳面

本書が対象とする読者は、あくまでも伝統芸能の音に興味のある、初心者から中級者までの人だ。つまり、この分野にまったく関心のない人を振り向かせるような読み物ではない。じつに網羅的・総覧的・事典的な本なのだ。とはいえ、これ一冊持っていれば、観劇上のあらゆる疑問に答えてくれそうだ。 つまり、万人向けではなく、通して読む本でもないので準読了としたが、間違いなく書庫では

本書も通して読むという形式ではないので準読了とした。歴史上の人物111人の臨終直前のカルテを『歴代天皇のカルテ』などで有名な医師作家が書き起こす。見開き2ページで1人を取り扱う。右ページには文章での人物紹介、左ページにはカルテのフォーマットで既往症、現病歴、臨床診断名などが書かれている。 第1章は20代までに亡くなった人の章だ。21歳でアルコール中毒で亡くな

外形的な本の作りだけを見る限り、自費出版にしか見えない本だ。しかし、帯にもあるように「ヒゲの殿下」こと日本・トルコ協会総裁でもある寛仁親王の推薦もあり、明成社から出版されたようだ。個性的なこの出版社にしては、内容は右寄りでも、皇室礼賛でもない。いわばトルコを絶賛した本である。 著者は元伊藤忠商事の中近東会社会長だ。トルコのプロの回顧録だ。普通のビジネスマンの
このブログの趣旨は「おすすめ本」の紹介である。じつは、その「おすすめ本」を見つけるためには、その数倍の本を手にとっている。いささかもったいないような気もするので、これからは「準読了本」として、自身のツイッタと連動しながら紹介してみようかと思っている。つまり140字書評だ。 ただし、読む時間すらもったいないような「非読了本」は紹介しない。「この本は絶対に買って


『漢字逍遥』準読了。お気軽な白川静。じつは読みごたえもあり、味わいのあるエッセイ集。エッセイなので「成毛眞ブログ」で取り上げにくいだけだ。電車の中で読むには最高なのだが……iPHONEが邪魔してダメだ。著者には申し訳ないが、トイレに常備がお勧めだ。