
『アメリカンビレッジの夜 基地の町・沖縄に生きる女たち』相反と親和、葛藤の物語
日本にある米軍基地の約70%が沖縄本島に集中している。1945年から存在の賛否は続いているがアメリカ人と地元民との間では独特の生活と文化が育まれてきた。 母方に日系、父方にイギリス移民の血を引く著者は、京都に在学中沖縄に旅行に出かけ、終戦間際の悲劇の歴史と<アメリカンビレッジ>で兵士と楽しむ沖縄女性の姿のギャップに興味を抱く。 辛うじて生きのびた女学生たちが
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日本にある米軍基地の約70%が沖縄本島に集中している。1945年から存在の賛否は続いているがアメリカ人と地元民との間では独特の生活と文化が育まれてきた。 母方に日系、父方にイギリス移民の血を引く著者は、京都に在学中沖縄に旅行に出かけ、終戦間際の悲劇の歴史と<アメリカンビレッジ>で兵士と楽しむ沖縄女性の姿のギャップに興味を抱く。 辛うじて生きのびた女学生たちが

野球ファンであれば知らない人はいない「孤高の天才」、落合博満。選手としては、日本プロ野球史上で唯一、三冠王を3度達成した。監督としては、中日ドラゴンズを率いた8年の間に、球団は毎年ペナントレースでAクラス入りし、日本シリーズに5度進出、2007年には日本一に輝いた。 本書は監督時代の落合に中日の番記者として密着した著者によるスポーツドキュメンタリーである。だ

著者のプロフィールをみたら「100文字で済むことを2000文字で伝える作家」と書いてあった。本書を店頭で手に取ったとき、私はもの凄く心が疲れていて、2000文字ぐらいの軽妙なエッセイを紙で読みたい気分だった。その前提で今回は「100文字で済むレビューをおよそ2000文字で」書いてみたい。 店頭でタイトルを見て「傘のさし方がわからない」…「はて?」となり、はじ

本書の主人公は、「霞が関のジローラモ」と呼ばれた異色の官僚である。 ジムで鍛えた厚い胸板の上に派手なストライプ柄やカラフルな色のシャツをまとい、ピンクやパープルなどのネクタイを締める。肌は赤銅色に焼け、髪型は側頭部を短く刈り、頭頂部にふくらみをもたせたソフトモヒカンのようなスタイル。官僚のイメージからおよそかけ離れた外見のこの人物を、いつしか人々はイタリア人

2020年の正月があけてしばらくしてから、藤田宜永さん逝去の報が届いた。私が「初めまして」の挨拶してからほぼ30年が経っているが、いつもスタイリッシュで若々しい姿しか記憶になかったので享年69という年齢に少し驚いた。ガンを患っていたが、少し前に薬が劇的に効いて寛解したと久しぶりのパーティ会場で本人から聞いていたのに、やはりダメだったのかと残念でたまらなかった

リサーチを重ね、丁寧に作成した企画書が通らない。書店に駆け込みノウハウ本をめくってみたものの、思いをうまく形にできない。企画をいかに立てればよいのか。実物の企画書満載の本書は頭を悩ますビジネスパーソンにとって「異色の教科書」になる可能性を秘めている。 著者はタレントとして広く知られているが、放送作家としても「天才・たけしの元気が出るテレビ‼」「風雲!たけし城

本は速く読めるにこしたことはないと思っている。だが久しぶりに、1日1章のペースでじっくりと味わいたい1冊が現れた。人体のあらゆるパーツをさまざまな角度から語り尽くし、徹底的に不思議を思議する。一見、当たり前のことほど驚きは深く、身近なものほど奥が深い。こういう感覚を何日にもわたって感じることができるのは、まさに至福だ。 著者はビル・ブライソン。これまで数々の

清酒発祥の地、奈良県に「風の森」という日本酒を醸す酒蔵がある。その名を油長酒造という。今年で創業300周年を迎えた酒蔵だ。300周年を記念して蔵元の山本長兵衛が日本酒と油長酒造の歴史、そして「風の森」の魅力を記した本を発売した。 コロナ禍になる前、私はイベントによく日本酒を持っていっていた。その時によく持っていっていた日本酒の一つが「風の森」だった。日本酒を

差別はつねに、差別によって不利益をこうむる側の話である。差別のおかげで知らぬうちにメリットを得る側の人が、自ら立ち上がって差別を語ることはしない。ただ、よーく考えれば、差別される側になる可能性があるのであれば、差別する側になることだってあるはずということに気がつける。 「もうすっかり日本人ですね」 「希望を持ってください」 この2つの声がけは一見褒めていたり

10月7日に首都圏で震度5強の強い地震があり、75000台のエレベータが停止し28件の閉じ込め事故があった。東京23区でこうした強い揺れを観測するのは、2011年に東日本大震災を引き起こして以来である。また、10月20日には熊本県にある活火山の阿蘇山が噴火し、中岳火口から火砕流が1600メートル流下した。 今年は東日本大震災(日付をとり「3・11」と呼ぶ)の

研究にはいろいろな分け方がある。ひとつは、役に立つか立たないかという分類だ。よく議論になるが、これは落とし所はほぼ決まっていて、現時点では役に立たないかもしれないけれども、将来的に役に立つかもしれないからやるべき、ということになっている。極めて反対しにくい結論であるが、いささかの嘘が入っていると言わざるをえまい。実際にやってきた本人が言うのだから間違いない。

このところ選挙でバタバタしている。11月だろうとタカをくくっていたら日程が前倒しになったためだ。政見放送や特別番組を編成するために枠を確保したり、スポンサーに連絡を入れたり、選挙報道の留意点を若手にレクチャーしたりと慌ただしい。だがその一方で、選挙にはちょっとしたお祭り気分もある。 さて、そんな選挙に異変が起きているのはご存知だろうか。 選挙といえば、かつて

北海道旭川市の中学校に通っていた廣瀬爽彩(さあや)さんは、2021年2月13日夕方に失踪し、38日後に市内の公園で雪の中に埋もれ亡くなっているのを発見された。享年14、早すぎる死だ。 彼女は中学校に進学した19年からイジメを受けており、PTSDに悩まされていたという。彼女の身に何が起きたのか。文春オンライン特集班が一連の事件を取材、公開した記事に加筆修正のう

この人を見よ!。本書の紹介としては、それ以上、なにもいらない。 著者略歴から、映画がいくつでもできる。最終学歴は小学校卒業、13歳でストリートチルドレンに、奇病、二度の癌、4度の結婚離婚、と、経歴だけで圧倒される。1971年生まれの著者の半生は、2016年に出版した『 不死身の花 夜の街を生き抜いた元ストリート・チルドレンの私 』(新潮社)に語られている。

ある出来事が、後に振り返った時にあらためて歴史の大きな変わり目だったと気づくことがある。2017年10月5日という日付も、そのような歴史の分水嶺として後世に記憶されるかもしれない。 ニューヨークタイムズがこの日、ハリウッドのプロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの性暴力を告発するスクープを放った。この記事をきっかけに#MeTooムーヴメントが爆発的に広が

2020年感染症のパンデミックのなかで、最初に声を上げたのは、中国・武漢の一人の医師だった。また、私たちの暮らしを守るのは、医療従事者や保健所の職員らの献身的な働きだったり、市民の自粛生活だったりする。はて、国は何をしてくれたんだっけ? 私が国に求めていることと、国がしてくれることには大きな乖離があると気づいた。 私の暮らしには、政治の影響はあまりないように

異質なものを掛け合わせると新しい何かが生まれることがある。「いちご大福」はその好例だ。では「戦争」と「バスタオル」はどうか。この異質な言葉を掛け合わせた先に現れるものは何だろう。 著者の安田浩一は長年、差別の現場を取材し、「ヘイトスピーチ」という言葉を世に広めるきっかけをつくった硬派のジャーナリスト。金井真紀は、抜群の観察力とユニークな視点で世界の多様性を伝

150人の聞き手が「東京にいる人、いた人、いたことのある人」150人の語り手から話を聞き、それぞれ一万字にまとめて本を作る。上下二段組、1216ページ、重さ1425グラム。前代未聞の試みだ。 聞き手が誰かはクレジットされているが語り手の多くは不明。読み進めていくと性別、年齢、聞き手との関係性が少しずつ判明していく。家族、親族、友人、仕事場の同僚など間柄が分か

良い本を読んだ。得した気分だ。本書は、食糧問題、教育格差、医療介護、気候変動など、現代の諸問題に対して、正しい形でファイティングポーズがとれるようになる本だ。未曽有のコロナ禍による疲労。その蓄積により、私たちは闘う気持ちが削がれつつある。でもここで「脱成長」に逃げ込むのは「他国から取り残される未来」を選ぶのと同義である。 本書が目指すのは、テクノロジーを加速

日本ではあまり知られていないが李仲燮(イ・ジュンソプ)は韓国の国民的画家で「韓国のゴッホ」とも呼ばれている。39歳で夭折した天才画家の妻は日本人の山本方子(まさこ)。今年100歳になるがお元気だ。 新聞記者である著者はソウル特派員時代に李仲燮の存在を知る。彼の絵に惹かれ、日本で方子とのインタビューを重ねた。 李仲燮は1916年に日本統治下にあった朝鮮半島の平

本書は東京から長野に移住した経営エッセイストで、「地方移住×起業×事業承継」を支援する巴創業塾の藻谷ゆかり氏による、「六方よし経営」の勧めである。 「六方よし」とは、「売り手よし、買い手よし、世間よし」という近江商人の「三方よし」に、「作り手よし、地球よし、未来よし」を加えた新たな経営理念である。これは、元国連職員の田瀬和夫氏により、SDGs時代の理念として

ベストセラー『言ってはいけない 残酷すぎる真実』の著者である橘玲氏が、最新の心理学と脳科学の観点から「わたし」とは何かを説く一冊だ。 人の性格は無意識のうちに決定され、あらゆる行動の基盤となる。それらを「内向的/外交的」や「楽観的/悲観的」など8つの項目に定義していく。 たとえば経済的に成功者が多いのは内向的な人種である。人には最適な覚醒度があり、それぞれの

無差別殺人のニュースを目にするたびに、怒りという言葉だけでは言い表せない感情に襲われる。穏やかな日常生活を送っていた市民が突然凶行に巻き込まれるのだ。強い怒りや憤りをおぼえるのは当然だが、それだけではおさまらない感情がある。 いまから20年前、ラジオの生放送中に、大阪教育大付属池田小学校に男が侵入し児童を切りつけたという一報が入ってきた。その後、細切れに続報

中学校の部活動は多くの人が経験する。それだけに個人の体験から語られがちな領域でもある。地獄のような日々の思い出しかない者もいれば、青春の美しい1ページ、いや青春そのものと捉えている人も少なくない。 評者自身は典型的な前者で「なんで土日も部活三昧なんだ」「別にプロになるわけではないし」と毎日の練習が苦痛でしかなかった。当時は周りを見渡しても、誰もが部活動に有無

週刊誌の発売日を指折り数えて待つことなんて久しくなかった。 発売日には文書砲そっちのけで、まずこの連載のページを開き貪り読んだ。 スポーツノンフィクションの傑作といえば、誰もが山際淳司の『江夏の21球』をあげるだろう。もちろん異論はない。ただあの作品は「永遠のマスターピース」というべき傑作だし、ぼちぼち新しく語り継がれる作品が現れてもいいのではと思っていた。

自民党総裁選のニュースが連日報じられている。前回に比べれば、四人が立候補して政策論戦が交わされているのは望ましいことだ。しかし、報道はいつもどおり、政治内容そのものよりも政局に偏っている。政治は何のためにあるのか。それこそが重要問題であるはずなのに、真っ正面から問われることはあまりない。 ライターの和田靜香が、立憲民主党の衆議院議員である小川淳也にそれを問う

世の中に猫好きが多いのは知っていたけれど、ここまでとは思わなかった。猫の腎臓病の治療薬開発をめざす東大のクラウドファンディングに1カ月で約1億7600万円もの寄付が集まったというのだ。大口の寄付もあるだろうけれど、申し込み件数が約1万3400というのもすごい(朝日新聞より)。 その開発者である東京大学大学院医学系研究科の宮崎徹教授が自ら書かれた本である。鍵と

ネコ好きの人はもちろん、そうでない人にとっても朗報だ。ネコを飼った経験のある方はご存じかもしれないが、ほとんどのネコは老齢になると腎臓病にかかり、その多くは長く苦しんだ末に死んでしまう。しかし今、この腎臓病を治すための研究が進んでいるという。 もしこれが実現すれば、ネコの寿命は現在の2倍、30歳程度まで延びる可能性がある。それだけでなく、ネコを対象としたこの

地球は「生命の惑星」と呼ばれ多種類の生物が生息している。これは厳しい環境の宇宙空間では極めて稀なことで、生命の維持に必要な安定した環境があったからだ。 宇宙の中で生命が生きられる場所を、「生命居住可能領域」(ハビタブルゾーン)と呼ぶ。実は、生命にとって最も重要な物質は、熱しにくく冷めにくい水の存在である。地球は表面の7割を海が占めるが、ここに貯えられた大量の

2018年8月、瀬戸内海に浮かぶ山口県の島で、2歳の男の子が行方不明になった。警察や消防が150人体制で3日間探しても見つからなかったその男の子を、大分県から駆けつけたボランティア男性が捜索開始からわずか20分で無事見つけ出したニュースを覚えておられる方も多いだろう。「スーパーボランティア」と呼ばれたその男性こそが、尾畠春夫さんである。 5万5千円の年金暮ら

本書は米国における今世紀最初の「シリアルキラー」による連続殺人事件を追ったノンフィクションだ。その事件は、1件の殺人を除いてすべてが未解決に終わるという、FBI(米連邦捜査局)にとって不名誉なものでもあった。 発端となったのはサマンサ・コーニグ誘拐殺害事件。2012年2月1日の夜、アラスカ州のアンカレッジという小さな町のコーヒースタンドでアルバイトをしていた

私が小説家の秘書として雇われて出版業界に入ってから35年になる。その間、あっという間に超売れっ子になった人、長い下積みのあとブレークした人、新人賞受賞作だけ注目された一発屋などいろいろな小説家を端から見てきた。 小説家という仕事は書いた物語が商品になると認められて初めて金になる。“食えない” “食うのがやっと” “稼げる”という三種類の小説家がいて、“稼げる

医学系書籍の現状と将来について講演する機会に、いくつかの提案をしたことがある。その時、特に重要性を強調したのは、良き書き手の育成である。売れ筋の医学系書籍をしらべてみると「トンデモ本」が並んでいて愕然とする。その理由のひとつは、まともな医学系書籍は面白くない、あるいは、面白く書ける人が少ないということにある。できれば「このようなオモロイ本を書けるような著者を

気候変動メカニズムやその対応策についての議論は、抽象論から枝葉末節まで玉石混淆に陥りがちだ。「脱炭素」「EVの普及」「エコバック」など、毎日のようにメディアでキーワードが飛びかっているが、結局なにから手をつけるべきなのか分かりづらい。地球温暖化問題に対して、どのような視点からアプローチしていけばいいのか分からないと悩む人は少なくないはずだ。 今回、この問題を

みんな道楽だ、と三中信宏は言う。 タイトル『読む・打つ・書く』は、もちろん「飲む・打つ・買う」からくる。大酒、ばくち、女、いずれも、このご時世、止められこそすれ、すすめられるものではない。 だからこそ、三中は書名にしたにちがいない。 読書も書評も執筆も、みんな道楽であり、本の章立ては「楽章」としてあらわされる。いまこそ、この道楽に溺れようではないか! 溺れる

もう20年以上前になるが、ある芸人が自身の持ちネタのオチに「アフリカの運動会ではいつも世界新記録が出る」というようなセリフを使っていた。そんなことを、本書を読んで思い出した。 今の基準で批判しようというのではない。ただ、そのネタには私たちが現在も抱きがちなステレオタイプが表れていたと思う。ネガティブなニュアンスではなかったが、アフリカの子なら身体能力が優れて

人は死んだらどこへ行くのだろう。 これは、人類が誕生以来、問い続けてきた究極の謎である。 先日亡くなった立花隆さんは、死後の世界が存在するかどうかは、「個々人の情念の世界の問題」と述べている( 『死はこわくない』 )。論理的に考えたからといって正しい答えが導き出せるような類いの問題ではないということだ。立花さんは自身の死すらも取材者の目で観察しようとしていた

本書には、生物学や遺伝子学的に「人が悩んでもしょうがないこと」が51個紹介されている。著者は生物学や脳科学・心理学の領域に長年携わるかたわら、「たけしのTVタックル」などの人気テレビ番組への出演経験も多数ある進化心理学者だ。とても親しみやすい、読んで楽しい本に仕上がっている。 相田みつをの「にんげんだもの」という書をみて、心が軽くなる人は多いだろう。本書を読

2021年9月5日、新型コロナウイルスの影響により1年の延期を経て開催された東京パラリンピックの閉会式が行われ、13日間にわたる大会が幕を下ろした。 テレビ観戦で感じたことは、あたりまえかもしれないが、車いすバスケでも、ゴールボールも、車いすテニスも、障害ある選手達がプレーとして成り立っていたことだ。見る前は概念として理解していたのだが、実感がなかった。それ

とてもユニークな本だ。出版社の宣伝文句には、「心を打つ『名言』があるように、心をくじく『駄言(だげん)』もあります。これは、そんな滅びるべき駄言を集めた辞典です」とある。 日本経済新聞社と日経BPは、「日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト」に共同で取り組んでいる。これは日本社会の多様性を阻むステレオタイプの撲滅を目指すプロジェクトで、本書はその一環として