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おすすめ本レビュー

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『しゃにむに写真家』小学校教員から写真家に、「いばらの道」で何を撮るか 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『しゃにむに写真家』小学校教員から写真家に、「いばらの道」で何を撮るか

「今の仕事をこのまま続けるつもり?」。妻のその一言で人生が思わぬ方向へと動いた男のエッセイだ。 なるほど、妻にここまで言わせるとは、この男、芽の出ないアーティストか何かだろうか。そう思う人も多いかもしれない。しかしそうではない。著者の吉田亮人は小学校の教諭だった。安定した人生が約束された公務員だ。 著者と同じく教師をしている妻は畳み掛けるように言う。「つまん

必要なのは「社会の変え方」のイノベーション 『未来を実装する』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

必要なのは「社会の変え方」のイノベーション 『未来を実装する』

テクノロジーが社会に普及するには、何が必要なのだろうか。コロナ禍で話題になった電子署名やUber、Airbnb…世に広がるものと、そうでないものは何が違うのか。電気が社会に普及した歴史など数々の事例から見出した、成功する社会実装の手法とは?スタートアップ支援の経験と豊富な事例研究実績がある著者が書いた、新たな視野を提示する一冊だ。 本書の基点は、本書の母体と

間違いは学習の原動力である 『脳はこうして学ぶ──学習の神経科学と教育の未来』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

間違いは学習の原動力である 『脳はこうして学ぶ──学習の神経科学と教育の未来』

わたしたちは多くのことを頭で学ぶ。すなわち、わたしたちの学習はおもに脳が担っている。しからば、脳がいかにして学ぶかを知れば、わたしたちの学習と教育についても重要な示唆が得られるのではないか。本書は、そんな着想を具体的な形にまとめた一書である。 著者のスタニスラス・ドゥアンヌは、フランスの著名な認知神経科学者である。これまでに 『意識と脳』 や 『数覚とは何か

『福島モノローグ』他者の言葉に耳を澄ます 花びらのように声を拾う 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『福島モノローグ』他者の言葉に耳を澄ます 花びらのように声を拾う

故・石牟礼道子氏の『苦海浄土』3部作は文学史上屈指の傑作である。わけても、第1部第3章「ゆき女きき書」は、読むたびに戦慄(せんりつ)と畏怖をおぼえる。水俣病患者が全身を痙攣(けいれん)させながら絞り出した言葉。語られたのは恨み言ではなく、不知火(しらぬい)海の豊饒さであり、生まれ変わったらまた愛する夫と漁に出たいという願いだ。絶望の底から発せられたはずの言葉

『永訣 あの日のわたしへ手紙をつづる』 3月11日の自分に書く手紙 そこには希望が綴られている 書影

社会 / 民俗・風俗

『永訣 あの日のわたしへ手紙をつづる』 3月11日の自分に書く手紙 そこには希望が綴られている

東日本大震災から10年。10歳から20歳になるのと50歳から60歳になるのとでは体感時間の長さや意味が違うかもしれないが、それでも誰もが等しく10歳歳を取った。 「あの日のわたしへ手紙をつづる」と副題が付された本書は、SFやファンタジー小説のようなタイムワープができたら、という設定がなされている。あの大地震と原発事故の被災者であり、年齢も性別も違う31人が、

『「低度」外国人材』日本社会が依存する外国人はどんな人たちなのか 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『「低度」外国人材』日本社会が依存する外国人はどんな人たちなのか

「人材」という言葉がちょっと苦手だ。社会に広く根付いた言葉だし、自分だって使うこともあるが、どうもこの言葉には人をスペックだけでとらえているようなニュアンスを感じてしまう。使えるか使えないか、そんな限られた側面だけでしか人間をとらえていないような。 だから「高度外国人材」という言葉を目にした時はドン引きしてしまった。高度外国人材とは、簡単に言えば、「学歴や年

奇跡の付き人、げそ太郎 『我が師・志村けん』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

奇跡の付き人、げそ太郎 『我が師・志村けん』

昨年、新型コロナで急逝した「笑いの王様」志村けん。本書は、1994年から7年に渡ってその付き人を務め、朝から晩、海外ロケまで同行した著者が師匠の姿を振り返ったものである。運良くドライバーとして採用された若き日。「笑いは正解のない世界だから、俺から教えることは何もないぞ」という師匠に出会い、二人はどう交わっていったのか。 本書を読んだのは発売直後。今から1か月

『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』リクルートを生んだ希代の経営者の光と影 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』リクルートを生んだ希代の経営者の光と影

本書はさまざまな読み方ができる多面的なビジネス書である。江副浩正という希代の経営者の波乱に富んだ人生をつづった伝記として、戦後のわが国の企業がたどってきた経営史として、そしてリクルートという会社の特異なビジネスモデルの研究書として読むことができる。 江副は非常に人見知りをする性格で、創業社長にありがちないわゆる「親分肌」ではなかった。それが逆に功を奏し、自分

世紀の奇書?『土葬の村』は貴重な民俗的資料である 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

世紀の奇書?『土葬の村』は貴重な民俗的資料である

埋葬には宗教による違いがある。イスラム経は土葬のみだし、キリスト教でも死者の復活という教えがあるので土葬が望まれる。国、地域別の火葬率は、米国52%、イギリス77%、ドイツ62%、フランス40%、イタリア24%、カナダ71%、ロシア10%、台湾97%、香港93%、韓国84%、タイ80%( 2016年、2017年の資料 )である。日本では、いまやほとんどが火葬

あらゆるコミュニケーションに応用できる方法論『患者の話は医師にどう聞こえるのか』 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

あらゆるコミュニケーションに応用できる方法論『患者の話は医師にどう聞こえるのか』

なるほど、医業というのは難しいものだ。この本を読んで、いちばんの感想はそれだ。「病気を治す」ことと、「患者を治す」ことの間には大きな隔たりがある。その間に横たわる最大のものは、医師と患者のコミュニケーションなのかもしれない。 「医学が技術的に進歩すればするほど、私たちはストーリーのはたす役割の重要性を再認識させられる」医師・患者のコミュニケーション、より正し

『戦前尖端語辞典』新語・流行語に見る「言葉」 今も昔も変わらないあり方 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『戦前尖端語辞典』新語・流行語に見る「言葉」 今も昔も変わらないあり方

寝る前に読む本、通勤時に読む本と状況に合わせて本を読み分けている人は少なくないだろう。私もそのひとりだが、意外に難しいのがトイレで読む本の選択だ。 トイレと聞いて馬鹿にしてはいけない。選書の難しさでは最高峰にある。トイレタイムには長短がある。拾い読みが可能で、間をあけても腐らないものでありながら、時には続けて読むに値する、そんな質の高さが求められる。真剣に選

『内心被曝 福島・原町の10年』「心の復興」を遂げた4つの家族の物語 書影

おすすめ本レビュー

『内心被曝 福島・原町の10年』「心の復興」を遂げた4つの家族の物語

内心被曝 ー 南相馬市に住む主婦が口にした言葉である。外部被曝でもなく内部被曝でもない。住民の一人ひとりが東日本大震災深く傷を負い、心の奥に何万シーベルトという放射能を貯めてきた。この言葉を聞くと、おどろおどろしく感じるかもしれないが、ふと自分の生活を省みると、コロナ禍において得体の知らないものに傷つけられてきた心と重なるのではないだろうか。 本書は決して暗

『存在しない女たち 男性優位の世界にひそむ見せかけのファクトを暴く』“女性は虐げられている”は勘違いじゃない! 書影

サイエンス / 社会

『存在しない女たち 男性優位の世界にひそむ見せかけのファクトを暴く』“女性は虐げられている”は勘違いじゃない!

東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言、その後の辞任会見を見て、私は少し驚くほど怒りを感じていた。それと同時に、このような世の中を放置してきてしまった自分自身にも腹を立てていた。多分、同じように思った女性は多かっただろう。森元会長が実例として挙げられた日本ラグビー協会で、女性で初めて理事を務めた稲沢裕子・昭和女子大特命教授が 朝日新聞の

『ヒトはなぜ自殺するのか 死に向かう心の科学』死について考えることと、生について考えること 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『ヒトはなぜ自殺するのか 死に向かう心の科学』死について考えることと、生について考えること

テーマがテーマだけに、気分が落ち込んでいるときに読むべき本ではないだろう。しかし、気持ちが落ち着いているときに、自殺というテーマに関する知識を得ておくことは、いつの日かあなた自身やあなたの周りの大切な人を救うことになるかもしれない。そんなワクチンのような役割を果たす一冊である。 著者のジェシー・べリングは、前作『性倒錯者』と同様に、自分自身の実体験をカミング

『起業の天才!』リクルート創業社長、江副が社会を不安がらせた理由 書影

人物 / ビジネス

『起業の天才!』リクルート創業社長、江副が社会を不安がらせた理由

世代的に、リクルート事件のことを知らない。むしろ、就職氷河期世代の私にとってのリクルートといえば、「エリート学生を超青田買いしている会社」といった印象だ。「すごい成果主義なんでしょ?」「定年退職までいられなくて、入社したら必ず独立しなきゃいけないんでしょ?」と、私も、周りも大学生たちは思っていた。 しかし、読み始めてまず最初に思ったことはひとつだ。「この時代

身体と脳の寿命のギャップを埋める処方箋 『脳寿命を延ばす』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

身体と脳の寿命のギャップを埋める処方箋 『脳寿命を延ばす』

「社会保険料の負担が重くなるから気をつけろ!」起業家の先輩に話をきくと、みな口を揃えてそう私に警告した。これまで会社が出してくれていた分を自分が払うのだから当然だ。もとより私もそれは織り込み済みなので、軽く「了解、了解」と聞き流していた。しかし、先日のニュースをみて愕然とした。 財務省によると、令和2年度の「国民負担率」(所得に占める税金や社会保険料などの負

『潜匠 遺体引き上げダイバーの見た光景』宮城の海に潜り続けた男の濃密な半生を描く評伝 書影

人物 / 事件・事故

『潜匠 遺体引き上げダイバーの見た光景』宮城の海に潜り続けた男の濃密な半生を描く評伝

その人にしか語り得ない境地というものがある。人生は十人十色だが、特殊な技能が必要で、なおかつ特異な環境に我が身を起き続けた人の軌跡はとりわけ面白い。 本書は、若くして潜水の才能を発揮し、宮城の海から無数の遺体を引き上げてきた男・吉田浩文の激動の半生を綴る克明の記録である。 初めての遺体引き上げは1996年。死者は交番勤務の男性警察官で、車ごと海中に突っ込む入

『絶望死のアメリカ 資本主義がめざすべきもの』米国が直面する悪夢 レントシーキングの罪 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『絶望死のアメリカ 資本主義がめざすべきもの』米国が直面する悪夢 レントシーキングの罪

われわれ人類の平均寿命は延び続け、死亡率は低下し続けている。それは、先進国と発展途上国の別なく起きている。当然、喜ぶべき事象だ。 しかし、近年、米国の大卒未満の白人の間には、この世界的な潮流とは逆の傾向が見られる。労働階層の白人たちの平均余命は短くなり、死亡率が上がっているのだ。1990年代末頃から、とくに45〜55歳の低学歴中年白人の死亡率は年々高くなって

居場所をどう見つけていくか『悲しみとともにどう生きるか』 書影

教養・雑学 / 社会

居場所をどう見つけていくか『悲しみとともにどう生きるか』

「被害にあった人は、他の人が同じような目にあわないために活動をしている人が多い」ということをよく聞く。 大変な使命を背負わされて、勇気をもってそれを果たしている人がいる。本書の編著者、入江杏さんもそのひとりだ。世田谷事件の被害者遺族だ。 この本は、入江杏さんが主宰する「ミシュカの森」に登壇した、柳田邦夫、若松英輔、星野智幸、東畑開人、平野啓一郎、島薗進の錚々

忘れられかけていた女性たちの活躍を蘇らせる一冊──『アニメーションの女王たち ディズニーの世界を変えた女性たちの知られざる物語』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

忘れられかけていた女性たちの活躍を蘇らせる一冊──『アニメーションの女王たち ディズニーの世界を変えた女性たちの知られざる物語』

この『アニメーションの女王たち』は、ディズニー・アニメーションの中で、アートに脚本にと活躍してきたにも関わらず、エンドクレジットにも表記されず、伝記などにも存在がほとんど残されていない、女性アーティストを焦点に当てた一冊である。 その立ち上げの時期、最初の女性の参画からはじまって、『アナと雪の女王』までを通して、ディズニーと女性アーティストの関係性は一直線に

『日本の包茎』作られた「恥ずかしさ」をめぐって 書影

社会 / 民俗・風俗

『日本の包茎』作られた「恥ずかしさ」をめぐって

本にブックカバーはつけない。これを長年の流儀としてきた。 通勤電車で本を開くと、目の前に座る人の視線がきまって表紙に注がれる。本との出会いは何がきっかけになるかわからない。中には電車でたまたま見かけて興味を持ち、本を買う人だっているかもしれない。出版文化への貢献のためなら、喜んで歩く広告塔になろう。そう考えて、どんな本であろうと(たとえ 『性豪』 や 『鍵開

『読書と人生』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『読書と人生』

物理学者の寺田寅彦(1878~1935)は科学者というよりエッセイストとして有名かもしれない。本書は彼が残した膨大な随筆から読書論と人生論に関連するものを集めたアンソロジーで、1950年に角川書店から刊行された底本には創業者である角川源義の解説が付けられていた(本書にも掲載)。 取り上げられた主題は、身の回りの些事からアインシュタインの教育観まで幅広い。そし

科学の真髄ここにあり!?『ヘンな科学”イグノーベル賞” 研究40講』がおもろすぎるぞ。 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

科学の真髄ここにあり!?『ヘンな科学”イグノーベル賞” 研究40講』がおもろすぎるぞ。

あと1年少しで定年を迎える。その後は、『こぐこぐ自転車』以来、勝手に師匠と仰いでいる英文学者・伊藤礼先生の『ダダダダ菜園記 明るい都市農業』を片手にちっさい畑での農業にいそしもうと思っている。あこがれの、晴耕雨読、ときどき物書き生活。 もうひとつ、秘かにイグ・ノーベル賞を狙った研究をおこなうつもりだ。もうネタは決まっている。どう測定するかがちょっと難しいのだ

『メンター・チェーン ノーベル賞科学者の師弟の絆』オンライン時代にあえて読みたい「密」な関係の物語 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『メンター・チェーン ノーベル賞科学者の師弟の絆』オンライン時代にあえて読みたい「密」な関係の物語

「メンター」(師、指導者)というのは不思議な存在である。親を選ぶことはできないが、メンターは自分で選べる。にもかかわらず、良いメンターに出会えるかどうかは運命に委ねるしかない。そして、いったん出会ってしまえば、弟子はメンターから全人格的な影響を受ける。 科学の世界では、濃密な「メンターと弟子」の関係が今も生きている。弟子はメンターから研究テーマへのアプローチ

地図の世界がいまアツい!『地図づくりの現在形』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

地図の世界がいまアツい!『地図づくりの現在形』

読書の楽しみは、煎じ詰めれば、「これまで知らなかったことを知る」ことにある。その喜びは何物にも代えがたい。だから本好きにとって最高の本というのは、書かれていることが「知らないことだらけ」の本なのです。 本書はまさにそういう一冊だった。 店頭で思わずスルーしてしまいそうな地味なタイトル。でも手にとってみると、これまでまったく知らなかった奥深い世界が広がっていた

『サラ金の歴史 消費者金融と日本社会』行間に立ち上る、人々の暮らしの息遣い 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『サラ金の歴史 消費者金融と日本社会』行間に立ち上る、人々の暮らしの息遣い

大好きな2時間ドラマの再放送を見ていると、必ずと言っていいほど「過払い金の返還請求をおすすめするCM」が流れる。一時は消費者金融の過払い金返還請求を進めるものが多かったが、最近はクレジットカードでも過払い金がある可能性があるらしく、「もしかしたらあなたにも」とひっきりなしに流れてくる。ラジオも同じだ。半日も聞いていれば一度はその類を聞くことになる。よほど需要

『堕ちたバンカー 國重惇史の告白』「住銀を救った男」が銀行を追われた理由に迫る 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『堕ちたバンカー 國重惇史の告白』「住銀を救った男」が銀行を追われた理由に迫る

大阪の中堅商社イトマンから数千億円ともいわれるバブルマネーが裏社会に流れ込んだ「イトマン事件」。2016年のベストセラー『住友銀行秘史』は、四半世紀を経てその内実を明らかにした。 イトマン事件をめぐり、バブル紳士の暗躍を描いた作品は少なくなかったが、同書は当事の経営幹部の姿を実名で詳述し、銀行組織の暗部に光を当てたため金融業界に衝撃が走った。著者で、当時住銀

あの劇場で見た映画が忘れられない…だから『そして映画館はつづく』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

あの劇場で見た映画が忘れられない…だから『そして映画館はつづく』

当たり前にあると思っていたものが、実は”当たり前”ではなく“有り難い”ものだったと、コロナ禍を経て、誰しも何か感じているものがあるのではないだろうか。 2020年4月初旬、コロナの影響で休業が相次ぐ全国のミニシアターを応援するためのクラウドファンディング「 ミニシアター・エイド基金 」が始まると、開始からわずか3日間で当初の目標額の1億円を突破。そこから約1

『「色のふしぎ」と不思議な社会 2020年代の「色覚」原論』最先端科学で探る、「色」の世界 書影

サイエンス / 医学・心理学

『「色のふしぎ」と不思議な社会 2020年代の「色覚」原論』最先端科学で探る、「色」の世界

はるか遠い記憶がある。 春うららかな小学校の教室で健康診断が行われている。順番に並んで身長、体重、座高などを測定し、最後に視力検査。さらにそのあと、変な絵を見せられた。 オレンジと緑で書き分けられた数字を読み取るという簡単なテストだ。それが分からない人がいるんだって、と帰宅してから親に言うと「色が分からない色盲っていう人がいるんだよ」と教えられた。同時に、決

贋金つくる『薩摩という「ならず者」がいた』 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

贋金つくる『薩摩という「ならず者」がいた』

明治維新とはこんなヤンチャだったのか! 本書は従来型の明治維新史観をくつがえしてくれる。明治維新というと、日本が独自に近代化をはたした成功体験として語られるのが一般的だ。志や行動力で時代を切り開いていく若者たち、との司馬遼太郎史観ストーリーで描かれることが多い。著者はこれを「日本人を元気にする歴史観」といい、高度成長期の日本人に響いた歴史観だったと評する。

『パンデミック後の世界 10の教訓』未来を決めるのは新型コロナではない 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『パンデミック後の世界 10の教訓』未来を決めるのは新型コロナではない

本書の著者ファリード・ザカリアは、米CNNの報道番組「Fareed Zakaria GPS」のホスト役を務めている。同時に、ワシントン・ポスト紙のコラムニストを務めるなど、ベストセラー作家であり世界的コラムニストである。 米マイクロソフトの共同創業者であるビル・ゲイツが今回の新型コロナウイルスのようなパンデミックを、2015年のTEDトークで警告していたのは

『首都直下地震と南海トラフ』1000年に一度の「動く大地の時代」の日本列島 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『首都直下地震と南海トラフ』1000年に一度の「動く大地の時代」の日本列島

本書は、今年度で京都大学を定年退官するHONZレビュアーの鎌田浩毅教授の最新刊であり、退官記念論文とも言える力作である。これは全ての日本在住者に等しく関わるものなので、是非、手に取って熟読して頂きたい。 本書のポイントは、1000年に一度という2011年の東日本大震災をターニングポイントとして、日本列島全体が地震の活動期、地球科学的に見た「動く大地の時代」に

『鬼才』不世出の編集者の知られざる生涯 書影

人物 / 社会

『鬼才』不世出の編集者の知られざる生涯

「◯◯の天皇」という形容がある。 最近あまり目にしなくなったが、かつては週刊誌などでよく見かけた表現だ。ただしこの言葉を冠するには、相手もそれなりの人物でなければならない。たとえば「◯◯」に適当な企業や団体の名前でも入れてみれば、天皇になぞらえるには、あまりに小粒な人物しかいないことがよくわかるだろう。 出版界にはかつてこの呼称がぴたりと当てはまる人物がいた

在外日本人の目に映る、世界各国の今 『日本の外からコロナを語る』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

在外日本人の目に映る、世界各国の今 『日本の外からコロナを語る』

コロナ禍に関する本はこれまでに数多く刊行されてきた。世界中の著名人が現状やコロナ後の世界について語っている。どれも示唆に富んでいて刮目するばかりだ。テレビでも、現地に派遣された特派員が各国の状況をリポートする様子を度々観てきた。彼らもコロナ禍での暮らしに不便を感じながら、必死に現地の様子を伝えている。 この本には、それらの本やテレビには映らない世界が広がって

『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』チーム研究の第一人者が唱える「心理的安全性」とは? 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』チーム研究の第一人者が唱える「心理的安全性」とは?

組織の中で、自分の発言が曲解されてしまうのではないかとか、それで足を引っ張られるのではないかと心配しだしたら、表立った発言は控えるようになり、裏で根回しするようになるのではないだろうか。 今回の東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の女性理事登用についての発言も、むしろそうしたありがちな状況を積極的に利用して会議を早く終わらせてしまおうという、いかにも日本的

音楽で生きる、東京で生きる。『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

音楽で生きる、東京で生きる。『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』

近田春夫を知っている人は、すでに読んだにちがいない。知らない人は、いますぐ読んでほしい。音楽で生きる、東京で生きる、その2つを味わえる。日本のロック、パンク、ヒップホップ、さらにはJ-POPやCM音楽まで網羅した音楽史であり、東京でクールに生きてきた大人の足跡を体感できるだろう。 タイトル「調子悪くてあたりまえ」は、ビブラストーンの名曲からとられている。ご存

『アルツハイマー征服』連帯が連帯を生む、絶望の中の希望の物語 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『アルツハイマー征服』連帯が連帯を生む、絶望の中の希望の物語

現在、全世界で約5000万人の患者とその家族が苦しんでいるアルツハイマー病は、完全に治す方法がないことで知られている。高齢化が進む日本で、今後アルツハイマー病による認知症がさまざまな課題を発生させていくことは想像に難くない。 しかしこの病に関する研究が進み、現在では治療への大きな希望が見えてきているのだという。本書はそんなアルツハイマーという病の征服に挑んだ

子はみな幸せであるように『「ちがい」がある子とその親の物語Ⅰ』『こどもホスピスの奇跡』『にほんでいきる』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

子はみな幸せであるように『「ちがい」がある子とその親の物語Ⅰ』『こどもホスピスの奇跡』『にほんでいきる』

国籍や肌の色、病気や障害などに関わらず子どもは幸せになって欲しい。その願いを込めた本を紹介したい。 『「ちがい」がある子とその親の物語』 はアメリカなどで活躍するノンフィクション作家アンドリュー・ソロモンが10年をかけて300組以上の親子を取材し、2012年に出版された。日本では三巻に分られ、その一巻目が上梓された。 この巻で取り上げたのはろう(聴覚障がい)

たまに死者も出る、この特殊な趣味の行方は……?『こいわずらわしい』 書影

生物・自然 / 教養・雑学

たまに死者も出る、この特殊な趣味の行方は……?『こいわずらわしい』

自信を持って断言する。恋愛コラム本なんて、私は買わない。たとえ176頁税別1300円の本が150円で売られていても、買わない。ただし、著者がメレ山メレ子さんならば話は別だ。 メレ山さんは、昆虫大学の学長である。「昆虫大学」が何か気になる方は、検索して調べてみてほしい。そして「虫? そんなのマニアの世界の話でしょ」と思ったみなさん。昆虫は地球の陸上生物では、圧

『スケール 生命、都市、経済をめぐる普遍的法則』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『スケール 生命、都市、経済をめぐる普遍的法則』

地球科学者の私は一般市民とはかなり違う尺度で日常を暮らしている。衣食住は同じでも、頭の中で考えるスケールがいささか外れているのだ。 まず時間軸が異なる。地球は46億年前に誕生し、日本列島は2000万年前にアジア大陸から分離して島国となった。日本の歴史は2000年だが日本列島の歴史は2000万年で、同じ2000でも桁が違う。何億年や何千万年が当たり前になると、