ノンフィクションはこれを読め!

おすすめ本レビュー

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こんなに違う、日米医学事情『医療現場は地獄の戦場だった』 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

こんなに違う、日米医学事情『医療現場は地獄の戦場だった』

本の紹介は1回だけと決めているのだが、今回の『医療現場は地獄の戦場だった!』は例外的に 読売新聞 に次いで2回目。ハーバード・メディカルスクール第2の教育病院、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院の救急治療室、ERに勤務する大内啓医師の本である。 前半は新型コロナウイルス禍におけるERでの出来事の紹介で、信じられないほど凄まじい。文字どおり息をのむような緊迫感だ

『羊の人類史』文化や貿易、軍事まで 羊は世界を変え続けた 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『羊の人類史』文化や貿易、軍事まで 羊は世界を変え続けた

羊といえば、なにを思い浮かべるだろうか。私の場合は、チェスターコートやメリノウールのセーターなど、ふだん愛用している衣類だ。浅はかながら、それ以外に思いつくことがなかった。本書では、羊と人間との思いもよらぬ関係が語りつくされている。文化、貿易、軍事など多くの面で、羊は人類の歴史に影響を与えてきたのである。 例えば、撥水性のある羊毛はモンゴルの遊牧民の移動式住

『黒魔術がひそむ国 ミャンマー政治の舞台裏』呪術合戦は、安倍晴明と蘆屋道満の戦いさながら! 書影

教養・雑学 / 社会

『黒魔術がひそむ国 ミャンマー政治の舞台裏』呪術合戦は、安倍晴明と蘆屋道満の戦いさながら!

ミャンマーはタイと同じ敬虔な仏教国というイメージが強い。2011年には軍事政権から民主政権に移行した。長い軟禁状態から解放されたアウンサンスーチーが16年に国家顧問となって政権の中枢に立ち、昨年の総選挙では与党が過半数を獲得したことは記憶に新しい。 13年にヤンゴンに新聞記者として駐在していた著者は、情報省の中堅幹部との会談で「テインセン大統領の誕生日を確認

まるでホラー映画みたい『妻がマルチ商法にハマって家庭崩壊した僕の話。』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

まるでホラー映画みたい『妻がマルチ商法にハマって家庭崩壊した僕の話。』

この本はある意味でホラーである。もし自分の彼女や親しい友人がマルチ商法にハマったとき、周りの人間はこんなにも無力なものなのだろうか?マルチ商法にハマるのなんて情弱!自業自得だよね。みたいな認識が自分にもあったけれど、この本を読んでからは、その認識を改めた。著者はいう。 言いかたは悪くなるが「マルチ商法なんて頭や心の弱い人が巻きこまれるものだ、自分とは程遠いと

ギネスに届け!爆笑『明石家さんまヒストリー1、1955~1981 「明石家さんま」の誕生 』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

ギネスに届け!爆笑『明石家さんまヒストリー1、1955~1981 「明石家さんま」の誕生 』

かつて『 ヤングおー!おー! 』というテレビ番組があった。大阪の毎日放送が1969年から10年あまりにわたって制作した公開バラエティーで、視聴率が30%を越えたこともある驚異的な番組だった。日曜夕方6時からの1時間番組で、最盛期には、大阪の中高生は全員が見ていたのではないかと思えるほどの人気だった。 スタート時は笑福亭仁鶴と桂三枝(現在の文枝)が司会を務め、

『社会問題とは何か なぜ、どのように生じ、なくなるのか?』こんなを教科書を10代の頃に読みたかった! 書影

教養・雑学 / 社会

『社会問題とは何か なぜ、どのように生じ、なくなるのか?』こんなを教科書を10代の頃に読みたかった!

100万部を突破したハンス・ロスリング『ファクトフルネス』、ビル・ゲイツがここ10年で読んだ最高の一冊と評したスティーブン・ピンカー『暴力の人類史』、暗い時代に明るい未来を想像させてくれるマット・リドレーの『繁栄』、いずれも世界は良い方向に進んでいることを明らかにし、読者に希望を与える書籍である。また、ビル・ゲイツは自身でも「世界は良い方向に向かっている」と

アメリカ発「私たち」のムーブメントが時代を変える『Weの市民革命』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

アメリカ発「私たち」のムーブメントが時代を変える『Weの市民革命』

目の前の映像が信じられなかった。あの連邦議事堂が占拠されている。 トランプ支持者によってガラスが割られ、警察が閃光弾を放って群衆を押しとどめようとする映像がニュースではなんどもリピートされていたが、よりショックだったのは建物の中の様子だった。 議事堂になだれ込んだ連中は、まるで場違いな観光客のように、物珍しげに周囲のものを触ったり、はしゃいで写真を撮ったりし

日本からもオーロラが見えた!『日本に現れたオーロラの謎』 書影

サイエンス / 生物・自然

日本からもオーロラが見えた!『日本に現れたオーロラの謎』

日本でもオーロラが見えていたことをご存じだろうか。しかも、直近では昭和33年、約60年前で、これは写真での記録もバッチリあるという。 この本は、タイトルこそ『日本に現れたオーロラの謎』だが、サブタイトルに「時空を超える」や「赤気」という言葉が入り、著者名も片岡「龍峰」さんで、とどめにカバーのイラストで、山から赤いオーラみたいなものが出ている。ぱっと見「スピリ

認知科学の観点から考えた最適の英語学習法──『英語独習法』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

認知科学の観点から考えた最適の英語学習法──『英語独習法』

この『英語独習法』は、認知科学や発達心理学を専門とする今井むつみによる、認知科学の観点から考えた最強の英語学習について書かれた一冊である。 『「わかりやすく教えれば、教えた内容が学び手の脳に移植されて定着する」という考えは幻想であることは認知心理学の常識なのである。』 といったり、多読がそこまで良くはない理由を解説したり、一般的に良しとされる学習法から離れた

『もしわたしが「株式会社流山市」の人事部長だったら』二児の母の小さな挑戦が、まちを大きく変えるまで 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『もしわたしが「株式会社流山市」の人事部長だったら』二児の母の小さな挑戦が、まちを大きく変えるまで

千葉県流山市には、全国の自治体でも珍しい「マーケティング課」がある。「都心から一番近い森のまち」「母になるなら、流山市。」など、子育て世代に刺さるプロモーションを展開し、人口増加率は千葉県内で6年連続1位をキープしている。 本書の著者も結婚を機に流山市に移り住んだ一人だ。移住してしばらくはビジネスパーソンとして忙しい毎日を送っていたが、第一子の出産後育児休業

理解出来るって楽しい!『LIFE SCIENCE(ライフサイエンス)長生きせざるをえない時代の生命科学講義 』 書影

サイエンス / 教養・雑学

理解出来るって楽しい!『LIFE SCIENCE(ライフサイエンス)長生きせざるをえない時代の生命科学講義 』

本書を読んで思ったのは、私も生命科学を理解できるんだな、という単純すぎる驚きです。私は科学に憧れがあったので、流行りのものや面白そうなものは一通り読んでいました。しかし、ワクワクするまではいかない。たとえば、伝記スタイルであれば、科学者の破天荒な人生に惹きつけられて楽しめることもあります。でも、「一から分かる科学〜」のような、科学の魅力をストレートに伝える本

しなやかに死を語る軽やかな対談 『いつか来る死』 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

しなやかに死を語る軽やかな対談 『いつか来る死』

『死を生きた人びと─訪問診療医と355人の患者』(みすず書房)、2年ほど前に本屋さんで購入した。著者の名前、小堀鷗一郎を見ると、わたしと同じく、ひょっとしたらと思われるかもしれない。ご明察、森鷗外の次女、小堀杏奴のご子息である。 食道がんを専門とする外科医であったが、定年後は在宅患者の訪問診療にたずさわっておられる。そして、サブタイトルにあるように355人の

『オードリー・タン 自由への手紙』天才デジタル担当大臣が日本に贈るロードマップ 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『オードリー・タン 自由への手紙』天才デジタル担当大臣が日本に贈るロードマップ

新型コロナ禍でのマスク不足対策で大成功を収め、世界的な脚光を浴びたのが、ジェネレーションYと呼ばれる若い世代を代表する、台湾の「天才デジタル担当大臣」である。そんな39歳のオードリー・タンが、本当の自由とは何か、どうしたら手に入れることができるのかを、「本書を手にした日本のみなさんへ」と語りかけたのが本書だ。 オードリーが表象するものは、あらゆる既成概念から

色覚サイエンスの最先端を知ると、「日本」まで見えてくる――『「色のふしぎ」と不思議な社会』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

色覚サイエンスの最先端を知ると、「日本」まで見えてくる――『「色のふしぎ」と不思議な社会』

「この赤はリンゴの赤だね」と言うとき、どんな赤色を見ているかは、実は人それぞれだ。そもそもヒトがどんな色を視ているかを科学的に考えたことがあまりない。ところがその色覚について、「正常」と「異常」に線引きする時代もあった――それなら色覚とはいったいどういうものなんだ? 猛然と、最先端のサイエンスの知見に挑む著者による、新たな色覚原論の決定版! 著者の川端裕人さ

『東京整形白書 あと1mm』これも現実。 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『東京整形白書 あと1mm』これも現実。

4人の女性が、顔と名前をあかし、before・afterの写真とともに整形体験を語る。いつもHONZに掲載されるノンフィクションと、傾向はちがう。けれど、これも現実、という読後感を持つだろう。 タイトルどおり東京に来たことこそ、彼女たちの転機だった。「東京はデカい、強い、カッコいい!」。華やかで刺激の多い街で生きる。そのためには綺麗になるしかない。 整形なん

おばちゃん牧師の激烈な愛@西成 『愛をばらまけ』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

おばちゃん牧師の激烈な愛@西成 『愛をばらまけ』

新年早々、私は圧倒された。本書は、大阪・西成の小さな教会で、約20人の信徒たちとともに生き抜く女性牧師を描いたノンフィクションである。いや、そんな説明ではミスリードをまねく。教会といっても床が抜けた古い中華料理店の居抜き物件だし、主役は1950年生まれのおばちゃん牧師である。そこはいわば、元野宿者たちとの壮絶な「生きる舞台(=家)」だ。 本書には、想像をはる

『2040年の未来予測』2040年の未来から見た我々は、今、何をしなければならないのか? 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『2040年の未来予測』2040年の未来から見た我々は、今、何をしなければならないのか?

本書を読んで、まずこれはとても正直な本だと思った。未来予測本にありがちな過度な楽観論を振りまく訳でもなく、かと言って日本人特有の過度な悲観論でもない。煽らず卑下せず、必要十分なことが淡々と書かれている。 そして、本書は、とにもかくにも還暦を迎えた私などより若い人に是非読んでもらいたいと思う。と言うより、若い人は絶対に読まなければいけない必読書である。 著者の

『国道16号線―「日本」を創った道―』多数アーティストも輩出 書影

民俗・風俗 / 日本史

『国道16号線―「日本」を創った道―』多数アーティストも輩出

国道16号線は、神奈川県の三浦半島から千葉県の房総半島まで、首都圏を中心にぐるりと環状に結ぶ道路だ。 私が卒業した多摩美術大学は神奈川の橋本駅と東京の八王子駅の間の鑓水にある。16号線沿いで、養蚕が栄えた場所でもある。1960年代、学生運動が激しかった大学を都市部から引きはがす目的で東京の郊外へ移転させたと本書にはある。そのとき都心から通える距離として選ばれ

カエサルの最後の息に含まれた分子を我々は一日に何回吸い込んでいるのか?──『空気と人類 ―いかに〈気体〉を発見し、手なずけてきたか』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

カエサルの最後の息に含まれた分子を我々は一日に何回吸い込んでいるのか?──『空気と人類 ―いかに〈気体〉を発見し、手なずけてきたか』

この『空気と人類』は、『スプーンと元素周期表』など様々な化学/科学系のトピックスを扱ってきた作家サム・キーンによる、気体についてのノンフィクションである。気体! 一緒にいるのがあたり前の相手を「空気のような存在」というぐらいには身近なものだが、その性質、歴史、役割に注意を払う人は多くはないのではないか。 本書の原題は『Caesar's Last Breath

『患者の話は医師にどう聞こえるのか』コミュニケーションにこんなにエビデンスがあるのか! 書影

サイエンス / 医学・心理学

『患者の話は医師にどう聞こえるのか』コミュニケーションにこんなにエビデンスがあるのか!

読み始めて、すぐに気がついたことがある。これは、医療の本であると見せかけて、知識に大きな差がある人間関係におけるコミュニケーションの本である、ということだ。中高生に関わる仕事をしているためか、私自身は患者を生徒に、医師を先生に変換して読んだ。親と子、上司と部下、行政と市民など、他の形で変換することもできるだろう。このような関係性を振り返り、新しい関係性を構築

誰もが当事者として考えるべきであるという問題提議 『ルポ 「命の選別」誰が弱者を切り捨てるのか?』 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

誰もが当事者として考えるべきであるという問題提議 『ルポ 「命の選別」誰が弱者を切り捨てるのか?』

命の選別。重く響く言葉である。そして、その現実は暗くて深い。『ルポ「命の選別」 誰が弱者を切り捨てるのか?』では、「優生社会」のさまざまな問題点が明らかにされていく。 優生思想など過去の遺物と思われるかもしれないが、それは間違えている。国家が強制したトップダウンの優生学ではなく、リベラル優生学とも呼ばれる、個人が望むボトムアップの新しい優生学が横行し始めてい

『医療現場は地獄の戦場だった!』社会構造のゆがみがウイルス蔓延につながる 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『医療現場は地獄の戦場だった!』社会構造のゆがみがウイルス蔓延につながる

米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、世界の新型コロナによる死者数が170万人を超えたという(2020年12月22日時点)。最も多い米国では30万人を超え、1日の死者数が3000人以上の日もある。いまだ収束の気配は見えない。 医療現場は果たしてどのような状況にあるのか。本書は、米国で感染が爆発的に拡大する中、ボストンで救急現場に立ち続けた日本人医師の現地

最強&最恐のアートディレクターは時代を超える『TIMELESS 石岡瑛子とその時代』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

最強&最恐のアートディレクターは時代を超える『TIMELESS 石岡瑛子とその時代』

石岡瑛子 、どれくらいの知名度なのだろう。不覚にもまったく知らなかった。あるところで、この本のことが話題になった。誰です、それ?と尋ねたら、あんな有名なデザイナーを知らないのですか、作品は絶対に見覚えがあるはずです。いま展覧会をやってますから行ってみられたらどうですかと教えられた。 東京出張の折りに、 その展覧会 『血が、汗が、涙がデザインできるか』を東京都

『エデュケーション 大学は私の人生を変えた』成長か、それとも変節か。悲哀と戸惑いの成功譚 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『エデュケーション 大学は私の人生を変えた』成長か、それとも変節か。悲哀と戸惑いの成功譚

リベラル・アーツは、「教養」と訳されることが多い。しかしその語源は古代ギリシャにまでさかのぼり、「奴隷ではない自由人として生きるための技術」の意味を持つという。そんな大げさなと思われるかもしれないが、本書からはその意味を十分に感じとることができる。 モルモン教原理主義のサバイバリストである反政府的な両親の下、学校や病院とは無縁の環境で育った少女が、やがて大学

『喧嘩の流儀 菅義偉、知られざる履歴書』「ガースー」を笑えたら・・・。 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『喧嘩の流儀 菅義偉、知られざる履歴書』「ガースー」を笑えたら・・・。

笑えなかった。あなたも、「ガースーです」と自称した菅義偉総理を笑えなかったのではないか。世の中の空気を読みまちがえただけではない。イントネーションもちがう。寿司をひっくりかえした「シースー」のように、平板に言わなくてはならない。 「鬼滅の刃」にあやかって「全集中の呼吸で」を国会答弁でつかったときも、菅総理は「すべった」。つまらないから、だけではない。「202

『エデュケーション 大学は私の人生を変えた』 ターニングポイントは親との決別 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『エデュケーション 大学は私の人生を変えた』 ターニングポイントは親との決別

著者のタラ・ウェストーバーは1986年生まれの34歳。現在ハーバード大学公共政策大学院上級研究員で歴史家。エッセイストでもある。 彼女はアイダホ州クリフトンで父親の思想が強く反映された反政府主義を貫くサバイバリストのモルモン教徒の両親のもと、7人兄弟の末っ子として生まれた。 公立学校へは通わせてもらえず、家庭内で科学や医療を否定した偏った教育を受けて育った。

『ロシアン・ルーレットは逃がさない プーチンが仕掛ける暗殺プログラムと新たな戦争』「ロシアの敵」は世界のどこにいても殺される 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『ロシアン・ルーレットは逃がさない プーチンが仕掛ける暗殺プログラムと新たな戦争』「ロシアの敵」は世界のどこにいても殺される

2018年、イングランドのソールズベリーでセルゲイ・スクリパリと娘のユリアを標的とする毒物暗殺未遂事件が起きた。セルゲイは元ロシア軍大佐で英国の対外諜報機関MI6に情報を提供していた人物だ。ロシアで逮捕された後、スパイ交換により英国に亡命していた。 事件はロシアのプーチン大統領の指示によりFSB(ロシア連邦保安庁)が実行したもので、当然、英国の主権を侵害して

『2016年の週刊文春』個人的2020年のベスト・ノンフィクションはこれ! 書影

社会 / 事件・事故

『2016年の週刊文春』個人的2020年のベスト・ノンフィクションはこれ!

文藝春秋は、「文藝」と「春秋」がくっついた会社だとよくいわれる。もちろんこれはふたつの会社が合併したということではない。文藝は文字通り文芸作品のこと、春秋は日々の出来事が積み重なった年月を指す。文藝春秋という会社は、文芸と日々の出来事を追うジャーナリズムとがくっついた会社なのだ。 「春秋」の大きな柱が『週刊文春』であることは誰もが認めるところだろう。いまや飛

『浪花節で生きてみる!』女一匹、魂の咆哮 書影

人物 / 民俗・風俗

『浪花節で生きてみる!』女一匹、魂の咆哮

2017年4月から翌年2月まで、私はほぼ毎月、神奈川県の自宅から亀戸まで、東京都を縦断して「玉川奈々福がたずねる語り芸パースペクティブ」という勉強会に通っていた。 主催者は玉川奈々福。日本にはなぜこんなに多種多様な「語り芸」があるのだろうという疑問のもと、演者や研究者など各方面の第一人者を招き、実演とトーク、および考察をするという壮大な勉強会だった。 20世

『サイバー戦争の今』見えない戦争は既に始まっている 書影

社会 / 事件・事故

『サイバー戦争の今』見えない戦争は既に始まっている

東京オリンピックが狙われている。サイバー攻撃に。 1-2年前から密かにサイバー攻撃の準備がされており、分かっているだけでも日本人4万台ほどの個人パソコンがのっとられている。主導しているのはアジア大国の政府系ハッカーというのがもっぱらの分析だ。具体的に何を仕掛ける予定かはまだ分からないが、経済的な損失よりも東京オリンピックの評判を貶めることを目的にしている可能

『ノーベル平和賞の裏側で何が行われているのか?』世界で最も栄誉ある賞 その知られざる舞台裏 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『ノーベル平和賞の裏側で何が行われているのか?』世界で最も栄誉ある賞 その知られざる舞台裏

カール・フォン・オシエツキーの名前を知っている人が今、どれほどいるだろうか。彼は1935年にノーベル平和賞を受賞したドイツのジャーナリストで、当時のヒトラー政権が受賞に猛反発したことで知られる。ノーベル平和賞の選定理由は時に物議を醸す。激しい議論を呼ぶのは、この賞の注目度の高さの裏返しでもあるだろう。 1901年に創設されたノーベル平和賞は「世界で最も栄誉あ

『LIFESPAN 老いなき世界』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『LIFESPAN 老いなき世界』

最近は横文字そのままのタイトルの翻訳書が随分増えてきた。LIFESPAN(ライフスパン) とは生物の寿命や生存期間のことで、転じて製品の有効期限や耐用期間に使われることもある。そして本書『LIFESPAN 老いなき世界』では、加齢研究の第一人者であるハーバード大学の遺伝学教授が「人の老化は決して避けられぬものではない」と論陣を張る。 巷では昨今「人生100年

『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記 こうして私は職業的な「死」を迎えた』げに恐ろしき、出版界の裏事情を綴る真摯な暴露本 書影

社会 / ビジネス

『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記 こうして私は職業的な「死」を迎えた』げに恐ろしき、出版界の裏事情を綴る真摯な暴露本

この本をここで紹介していいものか迷ったが、著者の真摯な姿勢に心を動かされたので、おもねらずにレビューしてみたい。 本書は、ベストセラー『7つの習慣 最優先事項』の訳で一躍売れっ子翻訳家になった著者が、出版社との様々なトラブルを経て業界に背を向けるまでの顛末を綴った、げに恐ろしきドキュメントだ。 驚くことに、名前こそ伏せてあるが、理不尽な目に遭わされた出版社の

これから先も、株式会社は必要か 『株式会社の世界史 「病理」と「戦争」の500年』 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

これから先も、株式会社は必要か 『株式会社の世界史 「病理」と「戦争」の500年』

“コロナ禍による大恐慌は「株式会社」の終焉を招くのか”本書のオビには、こんな惹句が躍っている。『ブルシットジョブ―クソどうでもいい仕事の理論』という本が話題になったり、自らの会社を自虐的に扱う態度が横行しているように、我々は「株式会社」の扱いに大いに困っているように見える。 この時期に「株式会社」について考察を深めておくことは非常に有意義だと感じ、私はこの本

『人間の土地へ』シリアに魅せられた登山家 書影

社会 / 民俗・風俗

『人間の土地へ』シリアに魅せられた登山家

チャレンジすることに躊躇しない人を尊敬している。新しい一歩はなかなか踏み出せないものだ。『人間の土地へ』の著者、小松由佳は、特別に並外れた好奇心と勇気の持ち主だと思うのだ。 2006年、24歳の時、世界で最も困難な山だと言われている世界第二位の高峰、パキスタンのK2に日本人女性で初めて登頂に成功した。2019年まででエベレストに登頂した人は1万人以上いるが、

『元号戦記 近代日本、改元の深層』元号決定過程の秘密 「密室政治の極致」に迫る 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『元号戦記 近代日本、改元の深層』元号決定過程の秘密 「密室政治の極致」に迫る

元号が誰によって考案され、どのようにして決められるのかを知る人は多くない。「令和」の改元準備が約30年前の「平成」改元の頃からすでに始まっていたと聞けば驚くだろう。 本書の著者は、2011年から毎日新聞の政治部記者として7年半、元号取材に奔走した。最大の使命は、次の元号を他紙に先駆けてスクープすることだ。 とはいえ、元号取材は難しい。いつ元号が替わるかは想像

『おばんでございます』サクラギシノを知っていますか? 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『おばんでございます』サクラギシノを知っていますか?

サクラギシノを知っていますか? もちろんラブドール(旧名ダッチワイフ)の桜樹志乃ではなくて、今その受賞作、ラブホテルを舞台に繰り広げられる『ホテルローヤル』が上映中である直木賞作家の桜木紫乃の方。前者はともかくとして、後者をご存じの人は結構おられるだろう。 NHKの『 あさイチ 』に出演された10月23日、ツイッターのトレンディーワードに「桜木紫乃」が大躍進

どうしてあなたはそんなにいい子ちゃんなの? 『目の見えない私がヘレン・ケラーにつづる怒りと愛をこめた一方的な手紙』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

どうしてあなたはそんなにいい子ちゃんなの? 『目の見えない私がヘレン・ケラーにつづる怒りと愛をこめた一方的な手紙』

HONZが送り出す、期待の新メンバー登場! 中野 亜海は三味線と江戸時代を趣味に持ちながら、実用書やビジネス系の本も手掛ける敏腕編集者。今後の彼女の活躍にどうぞ、ご期待ください!(HONZ編集部) 目が見えない、あるいは耳の聞こえない子どもたちは、こう言われて育つらしい。「どうして、ヘレン・ケラーのようにできないの?」 筆者のジョージナ・クリーグは目が見えな

『声が通らない!』居酒屋で店員に声を届かせたい! 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『声が通らない!』居酒屋で店員に声を届かせたい!

こんな経験はないだろうか。 ガヤガヤと混み合う居酒屋で「すいませーん」と店員に声をかける。 だが、まったく気づいてもらえない。 手をピンと伸ばして、もう一度叫んでみても結果は同じ。 「すいませーん!す、すいませーん……。す……すい……」 声をあげるたびに腕が下がっていき、最後は曖昧な語尾とともに萎んでしまう……。 世間には「声が通らない」ことに悩む人たちがい

『最後のダ・ヴィンチの真実』13万の絵が、なぜ510億に? 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『最後のダ・ヴィンチの真実』13万の絵が、なぜ510億に?

アートの価値は誰がどのようにして決めるのだろうか。そして価値と値段は比例するのか。 限りなく正解に近い答えが本書にある。まず作品の価値は、コレクターが貴族など高い地位である場合や、高名な作家がどの経緯で描いたものかなど複雑な要因が絡まり決定する。もちろん偽物については論外だが、ビル・ゲイツが所持するレオナルド・ダ・ヴィンチのレスター手稿などは、英貴族レスター