ノンフィクションはこれを読め!

おすすめ本レビュー

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ざっかけない変態料理人の本 『おいしいものでできている』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

ざっかけない変態料理人の本 『おいしいものでできている』

昨年、お昼ご飯にレトルトカレーばかり食べている時期があった。なかでも「エリックサウス」の南インド風チキンカレーの味が気に入って、二日に一度は食べていた。お店には行ったことがないのだが、レトルトで病みつきになった。外出自粛の折、ありがたい限りである。レトルトなんて、という評価はいまどき非常識なのかもしれない。 そのスタンスは本書にもある。「ざっかけない(=ざっ

『闇の盾』伝説のトラブルシューターの回想録 書影

人物 / 事件・事故

『闇の盾』伝説のトラブルシューターの回想録

型破りな人物のノンフィクションに時々お目にかかるが、本書は極めつきではないだろうか。 著者は「日本リスクコントロール」という危機管理会社の社長である。ところが「どんな会社?」とググってもホームページは存在しない。電話番号も公開されていない。それもそのはず。同社にアクセスする方法は、紹介者による仲介しかない。 しかも会費がとてつもなく高い。トラブルの最終処理ま

『両義の表現』アートの神髄 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『両義の表現』アートの神髄

芸術家として国際的に活動する李禹煥(リ・ウファン)によるエッセイだ。 著者は1936年に韓国で生まれ、活動拠点を日本へ移し、1970年代からは「もの派」運動の支柱として芸術を解体構築してきた。世界中のビエンナーレに出展し、アンディ・ウォーホルやヨーゼフ・ボイスなどアート史に痕跡を残す作家達との交流を経て、ヴェルサイユ宮殿の彫刻プロジェクトも手がける現役のアー

『沙林 偽りの王国』オウム事件を描いたノンフィクションノベル 書影

事件・事故 / 小説

『沙林 偽りの王国』オウム事件を描いたノンフィクションノベル

1995年3月20日の朝、あちこちの地下鉄で一斉に事件が起こり大混乱となった。後の「地下鉄サリン事件」といわれた前代未聞の毒ガス散布テロだ。 この事件以前からきな臭かった「オウム真理教」関係事件が、ここから一気に噴出する。教団関係者の連日のテレビ出演、識者のコメント、山梨県上九一色村(当時)からの中継、カナリアを先頭にした強制捜査、信者たちの逮捕、麻原彰晃の

『警視庁科学捜査官』平成から令和に渡る捜査現場のリアル 書影

社会 / 事件・事故

『警視庁科学捜査官』平成から令和に渡る捜査現場のリアル

著者はドラマなどでお馴染みの桜田門にある警視庁科学捜査研究所(科捜研)の係長時代、地下鉄サリン事件の緊急鑑定に携わることになる。鑑定資料として車輛床面を拭き取ったものを持ち込んだ捜査員が皆「暗い」と言い、目に縮瞳が起こっていることから有機リン酸系の毒物であると判断。ガスクロマトグラフ質量分析装置によって「サリン」が検出された。 その前年、松本で起こったサリン

『予測不能の時代』体の動きで心を変える、心の動きで組織を変える 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『予測不能の時代』体の動きで心を変える、心の動きで組織を変える

未来は予測不能だ。そんなことは誰でもわかっているし、今ほどこの言葉が実感を伴うときもないだろう。しかし、である。世の中の仕組みの多くは「予測可能」を前提に成り立っているのが実態だ。 例えばルール。過去の経験に基づき作られたルールは、状況が予測不能に変化すると、まったく役に立たなくなる。それどころか、ルールの持つ硬直性が、新たな状況への適応を阻む結果にもつなが

『保身 積水ハウス、クーデターの深層』変われないこの国を描く骨太の経済ルポ 書影

事件・事故 / ビジネス

『保身 積水ハウス、クーデターの深層』変われないこの国を描く骨太の経済ルポ

読み終えた途端、深いため息が出た。かつて「全員悪人」というキャッチコピーの映画があったが、さしずめ本書は「登場人物、全員小物」といったところだ。だが、小物ばかり出てくるのにページをめくる手が止まらない。それはこの小物が私の中にも棲んでいるからかもしれない。この本にはまぎれもなく私たちの姿が描かれている。 そのクーデターが起きたのは、2018年1月24日のこと

『なりすまし 正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験』難病との闘いを経て暴く 「伝説の実験」に潜む真実 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『なりすまし 正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験』難病との闘いを経て暴く 「伝説の実験」に潜む真実

本書の著者でジャーナリストのスザンナ・キャハランは、突然、抑うつ状態におちいった。次に精神病症状が現れ、幻覚を見るようにもなる。症状は悪化していき医療担当チームは彼女を統合失調症と診断、「精神科病院への移送」を検討した。 しかし、それは誤診だった。彼女は自己免疫性脳炎という病を患っていたのだ。ある神経科医が気づかなければ、重度の統合失調症患者として効果のない

『ダチョウはアホだが役に立つ』ダチョウ博士はお金儲けが上手! 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

『ダチョウはアホだが役に立つ』ダチョウ博士はお金儲けが上手!

新型コロナウイルスの流行で世界中が注目し、日本の底力を見せた商品が「マスク」だ。一年前、自分と他人の感染予防に、日本人の多くは当たり前にマスクをつけた。そのため品薄になり買いだめが起こったのは記憶に新しい。 そのマスクの一種に、ダチョウの並外れた免疫力によって生成された抗体を処方した製品がある。医療関係者を始めアメリカ陸軍などでも利用されているこのマスクは、

そうだったのか! 新しい知識を得る快感ここにあり『西暦一〇〇〇年 グローバリゼーションの誕生 』 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

そうだったのか! 新しい知識を得る快感ここにあり『西暦一〇〇〇年 グローバリゼーションの誕生 』

本を読む楽しみはいくつもあるが、全く知らなかった知識を得るのは最大の醍醐味ではないか。この『西暦1000年 グローバリゼーションの誕生』は、そんな一冊。これまで脳に蓄えてきた常識が一気に覆さえていくような快感を味わうことができる。 一般的にグローバリゼーションといえば、15世紀中頃の大航海時代から始まるとされる。しかし、この本の著者、イェール大学歴史学教授の

『文芸ピープル』言葉の壁を越える日本文学 書影

社会 / 小説

『文芸ピープル』言葉の壁を越える日本文学

翻訳は面白い。例えば、松田青子の短編集 『おばちゃんたちのいるところ』 の英訳タイトル Where The Wild Ladies Are を初めて目にした時、「おばちゃん」が“Wild Lady”と訳されているのに笑ってしまった。ワイルドレディー。ひとたび目にするともう、「ヒョウ柄の服を着たやたら圧の強い年配女性」のイメージしか浮かばない。ちなみにこの作品

「買う」が当たり前になっているあなたへ贈る『ギフトエコノミー 買わない暮らしのつくり方』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

「買う」が当たり前になっているあなたへ贈る『ギフトエコノミー 買わない暮らしのつくり方』

コロナ禍でステイ・ホーム時間が増えるなか、断捨離をしたという人は少なくないと思います。最初の緊急事態宣言から1年が経ちましたが、あらためて家を見回してみてください。物を減らして増えたはずのスペースに、また新しい物が増えていませんか? 私たちの日常は「買う」ことの連続です。「買えなくなるかもしれない」と思えば、買い溜めをし、外出しての買い物が難しくなれば、イン

『くらしのための料理学』「手を抜く」のではなく「力を抜く」 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『くらしのための料理学』「手を抜く」のではなく「力を抜く」

毎週『おかずのクッキング』を楽しみに見ている。献立の参考になるのはもちろんなのだが、それ以上に、土井善晴さんの「家庭料理への向き合い方」や料理しながら溢れる言葉の端々に刺激を受け、料理の楽しさを知ることができるからだ。同じ思いで見ているファンは多いだろう。 家庭料理は日常生活の料理。無理せず、自然が与えてくれた恵みを信じて。余計なことはしなくても良いんだよ。

『探偵はここにいる』解き明かされる探偵たちの実像、妖しい不倫現場、そして社会の闇の断片 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『探偵はここにいる』解き明かされる探偵たちの実像、妖しい不倫現場、そして社会の闇の断片

探偵の人生にじっくり焦点を当てた本をずっと読みたいと思っていた。フィクションではなくノンフィクションでだ。結論を先に書いてしまうと、大満足の読書となった。 詳説していこう。本書は、表舞台ではまずお目にかかることのないリアルの探偵9名(と依頼者1名)にインタビューを行い、彼らの仕事内容と複雑な半生を解き明かしたルポルタージュである。著者はフリーランスの編集者で

『2040年の未来予測』今から20年後、国家と大地の両方を揺るがす大変動が起きている 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『2040年の未来予測』今から20年後、国家と大地の両方を揺るがす大変動が起きている

コロナ禍が終息する気配を全く見せない現在、来年の状況を予測するのは極めて難しい。その一方、20年先であれば「歴史を的確に見る目」を持つ人ならば予測が可能となる。 本書は2040年の未来を予測・解析したもので、森羅万象に渡って博識の著者がその炯眼を余すところなく披露する。既に多くの書評によって紹介されているが、2040年というマジックナンバーは遠い未来ではなく

『令和元年のテロリズム』令和日本のいびつな自画像 書影

社会 / 事件・事故

『令和元年のテロリズム』令和日本のいびつな自画像

ひとつの犯罪が時代を象徴することがある。 令和元年(2019年)5月28日、朝7時40分頃、小田急線とJR南武線が交差する登戸駅近くで、男がスクールバスを待っていた児童や保護者らを次々と包丁で刺した。男は終始無言で凶行に及び、20メートルほど走って逃げた後、突然自らの首を掻き切り絶命した。この間わずか十数秒だった。 犯人によって小学6年生の女の子と39歳の保

『越えていく人——南米、日系の若者たちをたずねて』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『越えていく人——南米、日系の若者たちをたずねて』

「移民」という言葉を聞いて、構えてしまう人は多いのではないだろうか。 日本生まれ日本育ちの私が、「移民」から連想するのは、難民だったり、昔読んだ井田真紀子の『小蓮(シャオリェン)の恋人』に出てくる残留孤児二世の話だったり。または、一緒に働いているベトナムからの留学生だったり。私は無意識に迎え入れる側の人間となり、社会問題として一歩引いた目線で「移民」を眺めて

『奴は・・・』写真で辿る小説家・北方謙三の40年 書影

アート・スポーツ / 人物

『奴は・・・』写真で辿る小説家・北方謙三の40年

今では中国ものの歴史小説家というイメージが強い北方謙三。だがデビューは大学時代に書いた純文学で、その後鳴かず飛ばず。十年余りボツ原稿を積み上げ腕を磨いた結果、エンターテインメントに転向、ハードボイルド作家として再デビューした。折からの冒険小説ブームにも助けられ次々と新刊を上梓。一時は年間に12冊の単行本を出し「月刊キタカタ」と呼ばれた時もあった。 それから4

『安いニッポン 「価格」が示す停滞』賃金も生活の満足度も低い 日本の「豊かさ」とは何か 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『安いニッポン 「価格」が示す停滞』賃金も生活の満足度も低い 日本の「豊かさ」とは何か

『安いニッポン』というタイトルは、少し前ならキャッチーなものだったかもしれないが、今となってはうら寂しく感じられる。多くの国民が、世界の先進国と比べると自分たちは「下流」だ、ということに薄々気づいてしまっているからだ。 本書は、一昨年、日本経済新聞に掲載された「安いニッポン」シリーズをベースに、新たな取材から得た話などを盛り込み書籍化したものだ。連載時とくに

『罪を償うということ 自ら獄死を選んだ無期懲役囚の覚悟』無反省は凶悪犯への第一歩 書影

社会 / 事件・事故

『罪を償うということ 自ら獄死を選んだ無期懲役囚の覚悟』無反省は凶悪犯への第一歩

帯にある身も蓋もない惹句のとおり、本書は刑務所に服役する凶悪犯の大多数が自らの犯した罪について何ら反省していないと指摘する一冊である。 著者は、2件の殺人によって無期懲役判決を受け、すでに四半世紀以上服役中の人物。刑期が10年以上で犯罪傾向の進んでいる受刑者を対象とする「LB級刑務所」で日々を過ごす。たいへんな読書家で、支援者を通じて自身の読書遍歴や死刑存廃

ついに考古学史上最大の謎を解明!?『土偶を読む』 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

ついに考古学史上最大の謎を解明!?『土偶を読む』

面白い本を読んでいると、きまって他の本も読みたくなってしまう。知的刺激を受けて脳が活性化するのかもしれない。「あの本にはたしか別の説が書いてあった」「あの著者も似たようなことを言っていた」といちいち確かめたくなる。 本書もそう。読み始めてすぐ、あまりの面白さに興奮を覚え、気がつけば本棚からありったけの縄文本をひっぱり出し、それらを時折参照しながら読みふけって

「弱さ」を生かせる社会をつくろう 『マイノリティデザイン』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

「弱さ」を生かせる社会をつくろう 『マイノリティデザイン』

マイノリティというと障害者などの社会的な少数者を想起するだろう。しかしこの本のマイノリティはもっと広い概念だ。例えば、著者は「運動音痴」を「スポーツ弱者」と定義しなおし、そのマイノリティ性に注目して「ゆるスポーツ」を生み出した。私も一人のスポーツ弱者として、この発想の新しさと優しさに感動してしまった。 読みどころは数多あるが、この「ゆるスポーツ」について本稿

『一度きりの大泉の話』初めて明かすあの日の出来事 書影

人物 / マンガ

『一度きりの大泉の話』初めて明かすあの日の出来事

まるで神様が血を流しながら苦しんでいるのを目の当たりにしているようだった。その傷跡からは、半世紀近くたった今も鮮血が滴り続けている……。 1960年代の終わりから70年代にかけて、少女漫画という新しいジャンルが誕生した。女性の漫画家が一斉に登場して、自分たちの読みたい物語を描き始めたのだ。彼女たちの漫画は、それまで男の漫画家が描いていた女の子が主人公の物語と

バックパッカーのリアルな生態を描き出す、小説家による旅行記──『四分の一世界旅行記』 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

バックパッカーのリアルな生態を描き出す、小説家による旅行記──『四分の一世界旅行記』

この『四分の一世界旅行記』はSF・奇想短篇集の『半分世界』でデビューし小説家として活躍している石川宗生によるバックパッカーとしての旅行記である。四分の一世界旅行記と題されているように、訪問する場所は中央アジア、コーカサス、東欧の15カ国。世界一周でもなければ、アマゾンの奥地にひそむ巨大ナマズを見つけるみたいなビッグ・テーマや企画がある旅ではない。旅が好きな作

『世界を敵に回しても、命のために闘う』『分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議』『新型コロナウイルス ナースたちの現場レポート』コロナ最前線 命を救う闘い 書影

医学・心理学 / 社会

『世界を敵に回しても、命のために闘う』『分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議』『新型コロナウイルス ナースたちの現場レポート』コロナ最前線 命を救う闘い

新型コロナウィルス感染症のパンデミックから1年以上が経過した。窮屈な生活にも慣れてきたが、流行初期の恐怖にかられた混乱の経験は多くの教訓と知恵を残している。 『世界を敵に回しても、命のために闘う』の副題は「ダイヤモンド・プリンセス号の真実」。大型クルーズ船内で起きた集団感染は日本が最初にコロナの危機に直面した事件だった。 多くの人は神戸大教授で感染症専門医の

『全員悪人』認知症は、大好きな人を攻撃してしまう病。 書影

医学・心理学 / 社会

『全員悪人』認知症は、大好きな人を攻撃してしまう病。

昨年秋から、姑の介護生活がにわかに始まった。 89歳で乳癌発覚!それだけでも驚くのに、特殊な癌なのですぐに全摘出をせよ、とのこと。衰えたりとはいえ、頭も身体も元気で病気のなかった母にとっては青天の霹靂だ。神戸で一人住まいなので、毎週の検査に付き添うため、遠距離を通うことになった。 そんな日々が続くうち、少しずつ母の言動がおかしくなってきた。そして手術後、想像

『世界のおすもうさん』エッセイとイラストで楽しむ相撲ルポルタージュ 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『世界のおすもうさん』エッセイとイラストで楽しむ相撲ルポルタージュ

2021年の大相撲三月場所は関脇・照ノ富士の優勝で幕を閉じた。この一年、無観客開催や感染力士の休場など、新型コロナ禍で大相撲は大きな試練にさらされてきた。 だがファンは健在だ。おすもうさんへの愛と行動力は半端ない。「スー女」(相撲好き女子をこう呼ぶ)で名高いライター和田靜香さんとイラストレーター&文筆家の金井真紀さんが意気投合し、多種多様の相撲を国内ばかりか

超人?それとも悪魔?『フォン・ノイマンの哲学』 書影

サイエンス / 人物

超人?それとも悪魔?『フォン・ノイマンの哲学』

天才には世界がどう見えているのだろうか。 これは凡人には一生わからない謎かもしれない。 たとえばアイザック・ニュートンは、なぜあれだけ物理法則を発見することができたのか。同じように夜空を見上げても、凡人はせいぜい月がきれいだと感心するくらいなのに対して、ニュートンは「なぜ月は落下してこないのか」と考えた。天才の目にはどうやら凡人とは違うものが見えるらしい。

ジェンダーを越え、世界に広がる「おすもう」の世界『世界のおすもうさん』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

ジェンダーを越え、世界に広がる「おすもう」の世界『世界のおすもうさん』

力士というと、いかついイメージがある。でも、おすもうさんというと、なんだかほのぼのした感じがする。タイトルどおり、世界のおすもうさん、いろんな場所でおこなわれるさまざまな相撲についてのイラスト付きルポルタージュだ。 執筆は女性ライターがふたり。ひとりは、音楽や相撲についてのライターである和田静香さんで、相撲道場で稽古をつんだことがあり「マイまわし」まで持って

『WAYFINDING 道を見つける力: 人類はナビゲーションで進化した』使わないには、失うには、惜しすぎる 書影

サイエンス / 医学・心理学

『WAYFINDING 道を見つける力: 人類はナビゲーションで進化した』使わないには、失うには、惜しすぎる

北極圏は氷と雪と岩ばかりの地表である。季節ごとに雪が積もり、氷が溶け、景色は移ろいでいく。イヌイットはその中から場所を特定する手がかりを見つけ、獲物を探し、そして迷うことなく家に戻る。アボリジナルがオーストラリア大陸の広大な砂漠を横断するために実践するナビゲーションの技は、祖先たちの足跡を刻む曲がりくねった道を参照にすることだ。太平洋諸島のカヌー乗りたちは天

『完落ち 警視庁捜査一課「取調室」秘録』 落としのプロはいかに犯罪者を自供させたか 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『完落ち 警視庁捜査一課「取調室」秘録』 落としのプロはいかに犯罪者を自供させたか

2021年1月24日、伝説の人物が亡くなった。元警視庁捜査一課長の寺尾正大氏である。78歳だった。亡くなられていたのがわかったのは2月に入ってからで、新聞もテレビもこぞって「ミスター一課長」の死を報じた。地下鉄サリン事件という歴史的事件の捜査の陣頭指揮を執ったこともあってこれだけの扱いになったのだろう。追悼記事にあった「癖の強い異能の刑事を使うのがうまかった

『ソニー 半導体の奇跡 お荷物集団の逆転劇』経営と現場との板挟み 苦闘する管理職の視点 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『ソニー 半導体の奇跡 お荷物集団の逆転劇』経営と現場との板挟み 苦闘する管理職の視点

日本の電機メーカーが半導体事業で世界を席巻した1980年代、蚊帳の外だったのがソニー(現ソニーグループ)だ。同社の半導体部門は、社内でも十数年前まで「お荷物」扱いだった。 それが今では、全社利益の約4分の1を稼ぎ出し、スマートフォンなどに使われる画像センサーでは世界シェアの約5割を握る。日本企業の半導体部門は事業縮小と撤退を重ね、世界の最前線から脱落したが、

深遠なる新政の世界『The World of ARAMASA 新政の流儀』 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

深遠なる新政の世界『The World of ARAMASA 新政の流儀』

日本酒の新時代を牽引する酒蔵がある。新政酒造だ。秋田にある酒蔵で「No.6」「ラピス-瑠璃-」「亜麻猫」などの日本酒を醸している。ネーミングセンスが独特で、変わったところでは、宮沢賢治の作品名から採った「農民芸術概論」や、ギヨーム・アポリネールの作品から採った「異端教祖株式会社」といったお酒も造っている。新政は熱狂的な人気を誇る酒蔵だ。人気すぎて需要と供給が

『分水嶺』専門家たちの葛藤を描いた傑作ノンフィクション 書影

サイエンス / 社会

『分水嶺』専門家たちの葛藤を描いた傑作ノンフィクション

何か不測の事態を前にすると、本読みの習性でつい本に手が伸びてしまう。 中国・武漢で発生した原因不明の肺炎に世間が注目し始めた頃、読み直さねばと書棚からひっぱり出したのは、 『パンデミックとたたかう』 という本だった。 この本は、SF作家の瀬名秀明氏が東北大学医学系研究科教授(当時)の押谷仁氏と新型インフルエンザについて議論を交わしたものだ。2009年に出た本

『土葬の村』消えゆく弔いの習慣 忘却されていく情景 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『土葬の村』消えゆく弔いの習慣 忘却されていく情景

本書を数ページめくっただけで、2つの驚きがあった。1つは、火葬が当たり前とされる今日でも、まだ土葬というスタイルが残っていたこと、2つ目は、その土葬がここ数年急激に減少しており、今まさに消えようとしていることだ。 意外なことに、国の定める墓地埋葬法では、土葬が禁じられているわけではない。しかし、ここ半世紀ほどの間に、全国で火葬場が整備され火葬が一気に広まった

国際政治経済を動かすコモディティ商社『The World For Sale』 書影

世界史 / ビジネス

国際政治経済を動かすコモディティ商社『The World For Sale』

日本語翻訳版が待ち遠しい一冊だ。 ESG意識の高まりから、CO2を排出する従来型エネルギーへの風当たりはつよく、石油や石炭といったエネルギー資源は苦境にたたされている。そんな悪環境下でも最高益をたたき出しているエネルギー関連企業群がいる。今はやりの再エネ企業ではない。コモディティ商社という業種だ。 ウォールマートやアマゾンが消費材を人びとに届けると同じように

こんな本を待っていた! 『取材・執筆・推敲〜書く人の教科書』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

こんな本を待っていた! 『取材・執筆・推敲〜書く人の教科書』

こんな本を待っていた! そんな一冊に挙げられそうな、あの超絶ベストセラー『嫌われる勇気』の古賀史健さんの新刊だ。3年間かかりっきりだったとも聞く内容は、タイトル通りの「取材」「執筆」「推敲」という対象に、真正面から取り組んでいて、圧倒される。 現物を手にすると、書籍でよくある四六版のサイズよりも大ぶりだ。カバーには、シンプルにタイトルや著者名がポンと載せてあ

『新時代の江戸前鮨がわかる本 訪れるべき本当の名店』寿司評論家による30年ぶりの本格的な江戸前寿司の紹介本 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『新時代の江戸前鮨がわかる本 訪れるべき本当の名店』寿司評論家による30年ぶりの本格的な江戸前寿司の紹介本

久しぶりに江戸前寿司について、アップデートされた情報満載の本が出版された。 江戸前寿司に関しては、その昔は北大路魯山人の『握り寿司の名人』(1952年)、最近では川路明の『江戸前にぎりこだわり日記―鮨職人の系譜(御馴走読本)』(1993年)が極めつけだった。その後は、寿司ブームに乗って似たり寄ったりの本がたくさん出版されたが、どれも物足りなかった。有名な店を

一気読み必至の警察ノンフィクション!『警視庁科学捜査官』 書影

社会 / 事件・事故

一気読み必至の警察ノンフィクション!『警視庁科学捜査官』

読み始めた途端、あの日の記憶が鮮明に甦った。 1995年3月20日、月曜日の朝だった。地下鉄で「異臭事件」が発生したとの一報を警視庁記者クラブで聞いた。当時の無線記録によれば、通信指令本部に八丁堀駅での乗客の異変を知らせる無線が入ったのは8時21分である。3分後、築地駅から「ガソリンがまかれた」との情報が入り、他の駅からも相次いで被害報告が入った。建物を飛び