
あなたにはどんな色に見えていますか?『「色のふしぎ」と不思議な社会 ―2020年代の「色覚」原論 』
色覚異常の本、いや、この本の内容に即していうと「いわゆる色覚異常」の本と言うべきか。かつて色弱あるいは色盲と呼ばれたものについての本である。著者の川端裕人さんと同じく、私も「色覚異常」である。 最初に指摘されたのは小学校3年生か4年生の時。やたらと落ち着きがなく、怒られるために学校へ通うような毎日。そんな子だったので、色覚異常検査表の数字を「読めません」と答
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色覚異常の本、いや、この本の内容に即していうと「いわゆる色覚異常」の本と言うべきか。かつて色弱あるいは色盲と呼ばれたものについての本である。著者の川端裕人さんと同じく、私も「色覚異常」である。 最初に指摘されたのは小学校3年生か4年生の時。やたらと落ち着きがなく、怒られるために学校へ通うような毎日。そんな子だったので、色覚異常検査表の数字を「読めません」と答

本書は、世界的ベストセラーとなった3部作『サピエンス全史』『ホモ・デウス』『21Lessons』の著者であるユヴァル・ノア・ハラリが、本年3〜4月、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが最初のピークを迎えていた中で発表した見解をまとめたものだ。 前半は米国の『タイム』誌、英国のフィナンシャル・タイムズ紙、ザ・ガーディアン紙への寄稿で構成され、後半はNHKの

読売新聞の読書委員を務めるようになってから、これまで以上にたくさんの本が送られてくるようになった。読みたかった本が送られてきたらすごく嬉しい。『炎間の唄』もお送りいただいた本だ。読みたかったし面白そう、だけれど読みきらないだろうと思った。 小田島隆( @tako_ashi )さんの過去10年間のツイートから、武田砂鉄さんが選んで一年ごとに簡単な解説がつけてあ

政治家は孤独な職業だと言われる。未来がどうなるかわからない中、たったひとりで決断を下さなければならないのだから、それも当然かもしれない。「政治家と孤独」で思い出すのがノリエガ将軍のエピソードだ。パナマの独裁者として君臨したノリエガは、当初はアメリカにとって利用価値のある(CIAのアセットだった)人物だったが、次第に目の上のタンコブのような存在となり、ブッシュ

この『アンダーランド』は、山岳の歴史語りや大自然を相手にした旅行記に定評のある、イギリス作家ロバート・マクファーレンによる、地底をめぐる紀行文学である。マクファーレンは本書の中で、イングランド南西部で青銅器時代の墳墓を探索し、ダークマターの検出など、科学的な実験のために用いられている地下科学施設におもむき、ある時は氷河の中にロープを用いて降りていき、最終的に

今年も1年を振り返る時期がやってきた。多くの人にとって、新型コロナウイルスにまつわる出来事が記憶に刻まれた年だったことは疑う余地もない。しかし、「コロナ」はそれだけじゃないとばかりに登場したのが、本書『コロナマニア』だ。 もちろん「コロナ」に関する本ではあるが、ウイルスについての本ではない。本書には、「コロナ」を名前に含む国内外のお店や企業がズラリと並ぶ。事

本書は東京の自分に問いかける。地方の原発で作り出される電気を頼りに生きる自分の生活を、果たしてどこまで理解しているのだろうか。 本書『白い土地』は、新聞記者である著者が福島県に拠点を置き、そこに生き抜く人々に焦点をあてた人物ルポタージュである。「白い土地」とは、《白地》と呼ばれる「帰還困難区域」の中でも「特定復興再生拠点区域」に含まれない土地を指す。2017

中央自動車道の岡谷ジャンクションの近く、諏訪湖サービスエリアは温泉施設が併設されドライバーに人気がある。諏訪湖を一望のうちに見渡せ、まさに絶景のスポットなのだ。 諏訪湖は中央構造線とフォッサマグナの二大断層が交差する地質的に複雑な場所で、温泉が湧き出る理由もそこにある。縄文時代から人が住み、独特の風習や信仰が残っている。 著者の小倉美惠子はドキュメンタリー映

地下愛好家という人々がいるらしい。皆が寝静まった真夜中に都市の下水溝や地下鉄のトンネルに忍び込み、日常では味わうことのできない感覚を求める人々だ。 本書の著者、ウィル・ハントもそんな地下愛好家の1人だ。きっかけとなったのは、16歳のとき、近所の廃棄されたトンネルに潜り込んだ際に見た光景だ。トンネルの奥深く、何者かが作ったバケツの祭壇に天井から染み出た水が滴り


アメリカ大統領選挙は、民主党のバイデン前副大統領が勝利宣言した。 菅首相もさっそく祝意を示し、次期大統領との関係構築に乗り出している。 振り返れば4年前は、大統領選を制したトランプのもとに安部前首相が真っ先にお祝いに駆けつけた。当時の報道を見ると、11月18日にはもうトランプタワーを訪問している。ペルーで開かれるAPECに向かう途中だったとはいえ、各国首脳の

「一体あとどれくらい経済成長すれば人々は豊かになれるのだろうか?」 これが本書の投げかける根源的な問いである。 この問いに対して正面から答えてきた人はどれだけいるだろうか? そして、これこそが、今、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリに代表される世界のジェネレーションZ(1990年代中盤以降に生まれた世代)やジェネレーションY(1980年代序盤から1

レーニン、トロツキー、ピカソ、マネ、ヘミングウェイ、サルトル、藤田嗣治、ボーヴォワール、後に天才と呼ばれる彼らが、まだ何者でもないころ、通いつめ議論した場所がある。パリのカフェ、モンパルナス界隈のドゥ・マゴやロトンド、モンマルトル界隈のラパン・アジルやラ・ヌーベル・アテヌなどである。 常連となった天才以前の彼らは、自分の仕事スペースを確保するために朝一番でカ

先日、東京都調布市で陥没事故があった。地下40メートル付近で行われていた道路の掘削工事との関連が取りざたされているが、原因はいまだ不明である。以来、私は大型トラックの振動で道が揺れると、その下に大きな空洞があることをイメージするようになってしまった。無論、疑心暗鬼になっているだけだ。でも、見えないものはわからない。 そんな時、本書に出会った。著者は、ニューヨ

「あなたがカッコいいと思う人物は?」と聞かれたら、迷うことなく漫画『MASTERキートン』の主人公、平賀=キートン・太一の名前を挙げる。キートンは、軍の特殊部隊で身につけた技術をもとに、危険を伴う保険調査員の仕事をこなしながら、考古学者になる夢を持ち続けている。物語のクライマックスで、たったひとり発掘作業に臨むキートンは本当にカッコいい。たとえひとりきりだろ

「地方は国よりも大きい」などと言うと、そんなわけないだろとツッコミが入りそうだ。でも事実そうなのである。 日本経済全体に占める地方政府(都道府県と市町村全体)の最終支出は、58兆5千億円。GDPの約11%である。一方、中央政府(国)のそれは22兆円あまり(『地方財政白書』平成30年度版)。地方政府の支出は国の2.5倍に及ぶ。 上下水道や道路などのインフラ整備

この1〜2年の間に、ソーシャルメディアがもたらすフェイクニュースの蔓延、政治利用について書かれた本が何冊も邦訳刊行されてきた。 デイヴィッド・パトリカラコス による『140字の戦争 SNSが戦場を変えた』は2014年のガザ侵を取りあげ、SNSがいかに人を動員するのか、しかも多くの人は事実性よりも感情を優先して判断することを描き出していくし、ピーター・ポメラン

本は買った時がいちばん楽しい。半分本気でそう思っている。「本末転倒」「著者に失礼」とお叱りを受けそうだが、そもそも買う楽しさと読む楽しさは別物だったりする。 装丁に目をひかれ、パラパラと目を通して「これは買いだ」と確信。それを何度か繰り返し、店を出て「こんどの休日に読もう」とニヤニヤするところまでがピークだ。慌ただしい日々の中で、「週末のたのしみ」は気づけば

私たちの足下には歴史が埋まっている。 そのことを教えてくれたのが、小倉美惠子氏の傑作ノンフィクション 『オオカミの護符』 だった。 川崎市で古くから農業を営んできた小倉家の土蔵には、鋭い牙を持つ黒い獣が描かれた護符が貼られていた。祖父母が親しみを込めて「オイヌさま」と呼んでいた護符の謎を追ううちに、かつて農民たちの間で広く信仰されていた山岳信仰の世界が見えて

本書は、経営学者の野中郁次郎と竹内弘高による世界的ベストセラー『知識創造企業』の四半世紀ぶりの続編である。ナレッジマネジメント分野では最も重要な文献の1つとされるこの前著では、新しい組織的知識がSECI(セキ)(共同化 Socialization、表出化 Externalization、連結化 Combination、内面化 Internalization)

鷗外、森林太郎は5人の子をなし、上から順に、於菟(おと)、茉莉(まり)、不律(ふりつ)、杏奴(あんぬ)、類(るい)とそれぞれに欧風の名前をつけた。タイトルの『 類 』はLouis、鷗外の三男坊をモデルにした小説だ。 於菟は先妻の子であり、不律は夭逝(ようせい)しているので、類は3人姉弟の末っ子のように育てられた。大文豪であり陸軍軍医総監まで登り詰めた鷗外の子

『ディス・イズ・アメリカ』はTBSラジオの「ジェーン・スー生活は踊る」「アフター6ジャンクション」「荻上チキSession-22」などで放送した音楽特集から、アメリカの政治的・社会的トピックに関連する解説を抜粋し、さらに音楽メディアに寄稿したコラムや評論などをまとめた本だ。激動する近年のアメリカ社会の中でポップミュージックが何をうたってきたのか?を「グラミー

いきなりだが、問題です。さて、あなたは「ウンコ」という言葉を聞いて、どんな言葉をイメージされるだろうか。「汚い」あるいは「臭い」だろうか?「嫌い」という人はいても「好き」という人はおられないかもしれない。しかし、この本を読めば、「好き」とまではいかなくとも、「偉い」、いや、「偉かった」くらいにまでイメージアップするはずだ。 まずは第一章「ウンコとはなにか?」

東京・新大久保といえば韓国のイメージが強い。韓流アイドルの関連グッズや化粧品を求めて客が押し寄せる光景はテレビでもおなじみだ。だが、コリアンタウンとしての顔は一面で、今や「東南アジアの下町」の様相が色濃くなっているというから驚く。本書では、新大久保に魅了され引っ越しまでしてしまった著者が、多国籍タウンの今を描いている。 階下から香辛料の匂いが立ち上り、民族調

遺伝子という単語は、個人の傑出した才能について語るときに使われることが多い。社会や個人を語る際にこの単語を使用することはセンシティブな問題をはらむが、「○○の遺伝子」という言い方には、努力では容易に到達できない才能に対する憧憬の気持ちが込められているのがつねだ。 しかし、遺伝子を単に才能や特徴など個人レベルの違いの源泉とするのは、一面的な捉え方でしかないと本

日経平均株価が史上最高値を出した1989年。日本はバブル経済真っ只中であった。この時代に最前線でがむしゃらに働かされていた都会の二十代半ばの青年たちはみな、景気はさらに上昇し、凋落の時など頭の片隅にもなかったのだ。 著者の山口ミルコさんは1965年生まれ。89年には24歳。新卒時は、まさにバブル期のど真ん中で働く保険会社の普通のOLのひとりだった。あるきっか

「全米が泣いた!」――ひと昔前のハリウッド映画の陳腐な宣伝のようだが、本書はアレックスの死によってまさに「全米が泣いた」場面から始まる。ニューヨーク・タイムズ紙をはじめ、さまざまなメディアが彼の訃報を伝え、著者のもとには多くの悲しみの声や励ましの言葉が寄せられた。 本書は、科学者の著者と、彼女の30年来の研究パートナーであるアレックスとの回想録である。……と

山村美紗の訃報は衝撃的だった。1996年9月、帝国ホテルで執筆中に心不全を起こし62歳の生涯を終えた。 超売れっ子の作家の死は大騒動となる。亡骸は京都に戻り、ゆかりのお寺で葬儀が営まれ、参列者には出版関係者はもとより、テレビ、映画関係者や俳優たちが大勢集まった。 参列者が驚いたのは「美紗さんにご主人がいた」こと。喪主は夫の巍(たかし)であった。 華やかな山村

2017年から香港特別行政区行政長官選挙を普通選挙で行うという約束を、14年に中国政府が反故にしたことに反発する市民らが行った抗議活動、「雨傘運動」は、日本でも大きなニュースになった。この運動で中心的な役割を果たした組織が「学民思潮」だ。本書はこの学民思潮のリーダーのひとり、ジョシュア・ウォン(黄之鋒)による著作だ。 彼の政治活動は14歳にして始まる。香港政

日本ではあまり知られてないが、マサチューセッツ工科大学(MIT)ではSTEM教育だけでなく、人文学や芸術科目にも力が入れられている。なかでも音楽科目の人気は高く、この10年でその比重が増してきているという。本書は、その授業内容を関係者へのインタビューを交えた現地取材でまとめた、非常に興味深い一冊である。 著者は、豊富な取材経験をもつ音楽ジャーナリストである。

2020年1月に中国武漢市で初めて確認された新型コロナウィルス感染症は、瞬く間に世界中に広がった。 20年1月末、武漢から帰国した在留邦人の患者を収容した都内の病院の一つが都立駒込病院だ。1879年に感染症の専門病院として開設された経緯から、新型コロナ治療でも最前線を担っている。 1975年には、「がんと感染症」に重点を置く総合病院に生まれ変わった。高度で専

新田次郎の 『劒岳〈点の記〉』 は、日露戦争直後の1907(明治40)年、前人未到とされ、また決して登ってはいけない山と恐れられていた北アルプスの剱岳(標高2999m)の登頂に挑んだ測量官を描いた山岳小説の傑作である。 物語は、設立間もない日本山岳会との初登頂争いの形をとりながら進んで行く。 実際はこの登攀争いはフィクションらしいのだが、剱岳が当時、未踏峰と

ビジネスパーソンにとって数学を学ぶ意義は、世間に溢れる色々な 数値を正しく読み取ることにあるだろう。ネットやテレビや雑誌に 出された数字をパッと見たとき、そのまま鵜呑みにせず隠れたから くりを見抜くには、数学の素養が必要である。 その一方で、「数学」と聞くと顔を曇らせる人は少なくない。文系 一直線で会社を切り盛りしてきた部長が、夜半に数学の入門書をこ っそり

新型コロナウイルスは私たちに人類史上初めての体験をもたらした。世界中の人々が同じ危機に遭遇するという体験である。 感染したかどうかにかかわらず、今回のパンデミックが引き起こした事態からは誰も逃れられなかった。確実にいえるのは、誰にとってもこれが初めての体験だったということだ。何が正しいのかわからないまま、私たちは右往左往しなければならなかった。だからこそ、他

しかし入学以降、自分は周りとはどうやら違うらしいということに気づき始める。 例えば、授業で「好きな食べ物を書きましょう」と言われた時。クラスメイトたちはオムライスやハンバーグ、ウィンナーなどと書くなか、著者が挙げたのは、キムチやピビンバ、テンジャンチゲなどコリアン料理ばかり。韓流ブームの兆しすらまだなかった当時、クラスメイトたちからすれば、未知の料理ばかりだ

ソ連が西側のエージェントを使って米国の政治動向をコントロールする。冷戦時代にそんな小説が書かれていたら、とんでもなく陳腐なストーリーと思われたことただろう。しかし、現在は違う。ロシアがケンブリッジ・アナリティカ(CA)という会社を使って、トランプの大統領選に大きな影響を与えたのである。 そんなもの陰謀論のたぐいではないかという人にこそこの本を読んでほしい。ぶ

本書は、米ハーバード大学医学大学院教授で長寿と加齢研究の世界的権威であるデビッド・A・シンクレアらによる、われわれの生命観と人生観を覆す、まったく新しい生命科学書である。 本書の要旨は、「老化は自然の摂理ではなく病気で、治療によって治すべきだし、実際に治すことができる」というものだ。もちろん、2000年前に秦の始皇帝が不老不死の薬を求めたような怪しげな話では

病気、それも大きな病気を経験した人の多くは「食べることの喜び」をしみじみと感じる瞬間を経験したはずだ。手術をすれば何日も食事が許されないことがある。慢性の病なら様々な食事制限もある。カロリー制限、塩分制限、糖分制限、脂肪制限、たんぱく質制限云々。がんで抗がん剤治療を受けると、吐き気や食欲不振などに苦しんで「食べていい」と言われても食べられないということもある

本書は、マルクス・ガブリエル(ボン大学教授)と中島隆博(東京大学東洋文化研究所教授)という、ドイツと日本を代表する哲学の泰斗が、これまでとは全く異なる視点で哲学のあり方を論じた新しい啓蒙書である。 これは、世にありがちな哲学の解説書でもなければ、哲学者が自分のべき論を世に訴える思想書でもない。本書の何が秀逸なのかと言うと、哲学は何のために存在するのか、哲学が

この興奮が醒めないうちに書いておきたい。凄い本を読んだ。 マルクスを現代にアップデートさせた研究で世界的な注目を集める俊英・斎藤幸平の『人新世の「資本論」』である。 新書の世界には何年かに一度、画期的な本が現れる。 物事の見方に新しい方向から光を当てたり、これまでにないアイデアを提示したりして、読者の世界の見え方を一変させてしまうような本だ。ここでは細かく挙