
『誰も農業を知らない』 プロ農家の声に耳をすませば
書名を見て、私はドキッとしました。著者は農家の方なのですが、その著者に「誰も農業を知らない」と言わしめていることに恐怖を感じたからです。なにせ、人は食べないと生きていけません。農業は、まさに生命線です。私たちの将来は、大丈夫なのでしょうか。おっと!冒頭から、小学生の作文のようになってしまいました。 ところで皆さまは、三重県松阪市にある エスカルゴ牧場 をご存
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書名を見て、私はドキッとしました。著者は農家の方なのですが、その著者に「誰も農業を知らない」と言わしめていることに恐怖を感じたからです。なにせ、人は食べないと生きていけません。農業は、まさに生命線です。私たちの将来は、大丈夫なのでしょうか。おっと!冒頭から、小学生の作文のようになってしまいました。 ところで皆さまは、三重県松阪市にある エスカルゴ牧場 をご存

一昨年の夏、ベトナムを旅した評者は、空港から車に乗った途端、おびただしい数のオートバイに圧倒された。 まるで魚の大群のようにオートバイの集団が交差点を横切っていく。気がつけば、こちらの車も前後左右を密集するオートバイに囲まれていた。あの迫力は忘れられない。 ベトナムは2輪車大国だ。年間販売台数およそ330万台(2017年)、このうち75%ほどのシェアを占める

久しぶりに出会った、上品にして趣深いエッセイとして読んでいる最中だ。読み終えるのがもったいないのだ。 全35章。3章ほどをゆっくりと読むために、わざと場所と時間を変えている。早朝のカフェでクロックムッシュと、午後はおにぎりをほおばりながら公園のベンチ、夜はウイスキー片手にベッドの中という具合だ。 広重の「東海道五十三次」をモチーフにしながら、おもに江戸の諸制

絵を描くことで、新たな知覚と気づきが手に入る。 眠っている自分の才能が目覚め、開花する。 はたして本当だろうか。この疑問に対し、本書は一つ一つ実例をあげて答えていく。 「絵が描けることは、0から1を生み出せることにつながります」 アートアンドロジックを主催する著者の増村岳史はそう説く。デッサンを書くことで、右脳と左脳のバランスを生かした思考能力を高める講座だ

告白するが、筆者は数学が嫌いだ。大がつくほどに。中学時代は試験で平均点付近と、なんとかついて行けていたが、高校入学以後は赤点・追試続き。もううんざりだと、大学の進路ははやばやと私立文系で気持ちをかため、授業選択が可能となると数学・化学・物理は一切取らず、尻尾を巻いて逃げてしまった。そのコンプレックスと敗北感を引きずってか、今でも数式を見るとなにやら怖気立って

ここ数年、IT(情報技術)とSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の急速な発展により、人々があらゆる境界を越えてつながり、世界は激変したと実感している人は多いだろう。 ツイッターを活用して膨大な支持者層を手に入れたトランプ米大統領の誕生は、その象徴的なできごとである。 フェイスブックのような巨大IT企業が誕生し、社会の基盤となる一方で、セクシャルハ

「声」は多くのことを教えてくれる。 その人が信頼できる人間か、それとも嘘をついているか。 心から楽しんでいるか、あるいは不安を感じているか。 どんなに表面を取り繕ったとしても、「声」だけはごまかすことができない。 長くラジオの仕事に携わっているとそのことが経験的にわかる。 「声」にはその人の本当の姿が現れるのだ。 1988年8月から翌年の6月にかけて、埼玉と

2019年早々に、記憶にまつわる驚きのニュースが発表された。忘れてしまった記憶を回復させる薬の開発が成功したというのだ。HONZでもときおり著作が紹介される東京大学池谷教授の研究で、記憶回復のメカニズムが解明され、今後ますます効果の高い薬が開発されるかもしれない。仮に記憶が回復できる未来がやってくるとしたら、私たちは脳内の記憶と、どのように付き合っていくこと

この本の原題『メルトダウン』には二つの意味がある。ひとつは文字通り原子炉の炉心融解、もうひとつはシステムが崩壊または故障してしまうこと。もちろんこの本のタイトルは後者を意味している。数多くの事例から、メルトダウン的な大事故はどこにでもおこりうること、そして、いかにすればそのような大事故を防ぎうるか、が豊富な事例を紹介しながら論じられていく。 まず第一部『失敗

あまりにもぶっ飛んだ発想だと思われるかもしれない。でも同時に、それが示す可能性に胸を踊らせずにはいられないのではないか。なんてたって、地球外文明の痕跡を探すことによって、わたしたち人類が地球温暖化や気候変動を生き抜くための方途を見つけ出そうというのだから。 最初に断っておくと、本書はけっして「あっち系」の本ではない。著者のアダム・フランクは、アメリカのロチェ

徳間書店や幻冬舎にてエンターテインメント系小説でヒットを連発。今や大家となった浅田次郎に初めて単行本を書かせた男だ。帯には幻冬舎社長の見城徹が推薦文を寄せる。編集者の自伝となれば、熱い男を想像するだろうが、見事に期待を裏切ってくれる。 文芸の編集者と聞けば特殊な職業と思うかもしれないが、著者は営業マンと変わらないと語る。重要なのは志でなく部数。小説を作家と送

『小さなチーム、大きな仕事』の著者(というか会社)による最新作は、たくさん働いたって成果なんか上がらないしやめようぜ、休暇もいっぱいとろうぜ、という一労働者としては至極ありがたい思想を具体的なメソッドに落とし込んだ一冊である。 著者の一人デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソンはRuby最大のWebフレームワークであるRuby on Railsの開発者であり、

「本書は災害復興についての本ではない。災害の最中にーー警察や消防士たちが到着する前に、レインコートを着た記者たちがやってくる前に、惨事に対する何らかの見方が押しつけられる前にーー何が起こるのかについて述べた本である」 災害・テロ・事件・事故。もしもの時の、とっさの判断が本書のテーマである。有事に何をすべきかを並べたマニュアル的な内容ではない。なぜ、人は非常時

1945年、人類初の核兵器が広島と長崎の一般市民殺戮を目的に使用されてから70年あまり、その後一発も戦場では使われていない。 それは核保有国の倫理観や戦略的自制というよりも、たまたま核保有国間の戦争がなかったからであり、人類にとっては単なる僥倖でしかないのかもしれない。アメリカ、ロシア、中国だけでも合計1万発を超える核兵器を保有していると見られているのだから

世界はどんどんよくなっている。ウソだと思うかもしれないが本当だ。実際に世界の人口のうち、極度の貧困状態にある人の割合は、過去20年で半分になった。そして、自然災害で毎年亡くなる人の数は、過去100年で半分以下にもなった。 この数字自体かなり驚くべきものであるが、さらに驚くべきなのは、この事実を3択問題として出題した時の正答率が、いずれも10%を下回ったことで

昭和42、3年ごろ、文藝春秋社が文芸雑誌で使用した原稿を大量廃棄処分したことがあった。 社名入りの茶封筒に入れられた大量の原稿は、ある古紙問屋に持ち込まれた。その問屋へ毎日通い、本や雑誌を探す“建場廻り”(注:建場は業者がその日に集めた廃品を買い取る問屋。古本業界用語)のK書店が発見し買い取った。専門外のK書店は、近代文学などを得意とするU堂へ連絡。すぐに来

アメリカ陸軍には「デルタフォース」という対テロ特殊部隊が存在する。アメリカのIS掃討作戦の最前線で戦っているのもこの部隊であり、陸軍の最強特殊部隊だ。 秘匿性が高く、その実態はベールにつつまれていたが、同部隊に所属していた元情報分析官による本書によって、その最先端の戦い方が明るみになった。無人航空機、通称ドローンが同部隊の情報収集及び攻撃に多大な貢献をしてい

イノベーションが加速する条件とは何か? 先端テクノロジーの開花か、組織の多様性か、それともポテンシャルのある市場環境か。様々な要素が考えられるが、最も重要なのは人間離れした男たちの、人間らしい競争意識ではないかーーそんなことを痛感させられる。 本書は宇宙ビジネスの最前線を描いた一冊である。数多ある類書と一線を画すのは、イーロン・マスクとジェフ・ベゾスーーこの

戦場は危機に満ちている。いつ敵の襲撃があるかわからない。やるかやられるか。だが、危機は敵だけではない。過酷な環境下、自らの体調を崩すこともある。大病に至らないまでも張り詰めた空気の中、兵士だって行軍中に戦闘中にお腹がいたくなることもある。一体、彼らはどのように内なる危機と向き合っていたのだろうか。 明治以降の日本の公衆衛生を丹念に調べた本書は、誰もがふと気に

本を開いたとき、「ウザすぎる!残業武勇伝」という見出しが目に入った。残業武勇伝とは、「終電まで残業した」「連続で何日も出勤した」などと自慢するアレである。残業に達成感と報酬と成長がついてまわっていた時代の、昔語りである。本書では、冒頭のコラムで当時(昭和)の残業と平成の残業の違いを考察していて、いきなり面白い。 大量生産大量消費の時代には、頑張れば頑張るほど

レンブラント、ピカソ、シャガール、モディリアーニ。絵画で名高い作品は多数あるが、その作品自体どのようにして仕掛けられ、世に出ていくのだろうか。 当然ながら、作家1人の力で作品全てを売りさばくことは不可能であり、その歴史の裏側で動く画商と呼ばれる人物像に興味がいく。 著者のフィリップ・フックは、世界最大級のオークション会社サザビーズの取締役である。イギリス出身

本書の帯に、心惹かれるこんな一文がある。 辞書編集とは“刑罰”である。 これは、『日本国語大辞典(日国)』の第二版編集作業中の1999年11月、小学館辞書編集部にふらりと現れた作家の井上ひさしさんが言い残していった話だ。真偽は不明だが、なんでも、19世紀のイギリスでは辞書編集が重い刑罰だったそうである。辞書編集は、語彙採集・用例採集、ゲラ(校正刷り)のチェッ

表紙に、Mistletoeファウンダーで本書を監修している孫泰蔵氏の、「ドヤ顔でエストニアに行ったら、浦島太郎だった」という言葉があるが、本書の内容を思いきり短くまとめれば、そういうことだと思う。 日本と同じような課題を抱えながら、ブロックチェーン技術を活用して、ほぼ100%の電子政府を実現し、ユニコーンと呼ばれる評価額10億ドル以上のベンチャー企業を次々と

すごい本だ。もしこれが小説なら、荒唐無稽と片付けられてしまうに違いない。ノンフィクションの醍醐味をこれほど味わえる本はない。今年最高の1冊と断言しよう。 旧ソ連、ウクライナ生まれの女性狙撃手、 リュドミラ・パヴリチェンコ の自伝である。軍需工場で射撃の経験があったリュドミラは、ドイツ軍のソ連侵攻の翌日、狙撃兵としての入隊を志願する。軍における女性の仕事は衛生

理系か文系か、この二分法は、日常に浸透し、まるで血液型のように、はじめて会う人同士の話題になることが多い。そして、文系であるか理系であるかでレッテルを貼り、個人を理解しようとする。Wikipediaの「文系と理系」というページで展開されている「文系と理系を巡る観念的な印象」は、その代表例である。 4.1数学のできない「普通の」文系、それ以外の「特殊な」理系

もうかれこれ30年くらい前になるだろうか、料理評論家の山本益博さんが食のコラムに、「日本一美味い焼肉屋を見つけた!」と、スタミナ苑のことを書いていた。 こう言われて行かない訳には行かないだろうということで、当時まだ大企業に勤めるサラリーマンだった私は、肉好きの後輩を連れ立って行ってみた。 その時の衝撃は今でも忘れられない。カルビ、ロースなどの特上の肉から、レ

特に病気をしているわけではないのだけれども、自分ももう若くはないせいか、死ぬことについて考えることが増えた。はたして、自分は余命宣告されて、それをスッと受け入れられるだろうか。治療方針や、諦めどころなど、難しい決断を迫られて対処できるだろうか。ただ何も出来ずに生きながらえるだけは嫌だと思うが、死を前にしてそれが自分にいえるだろうか、などなど。 死は一つだが死

第16回開高健ノンフィクション賞受賞作は川内有緒『空をゆく巨人』に決定した。 ノンフィクション好きはこの作者の名に見覚えがあるかもしれない。『バウルを探して地球の片側に伝わる秘密の歌』(現『 バウルの歌を探しにバングラデシュの喧騒に紛れ込んだ彷徨の記録 』幻冬舎文庫)で第33回新田次郎文学賞を受賞した実力派なのだ。バングラデシュの「バウル」という吟遊詩人を追

ここ数年、リカレント教育や「社会人の学び直し」という言葉を聞くことが増えてきた。文部科学省や厚生労働省が予算を付けはじめたことで、大学の公開講座や社会人向けの大学院も増えている。スキルアップや転職に備えて、最新のビジネス知識やテクノロジーを学び直すのが目的だろう。一方で、総合的な教養を学び直したいというニーズもあるようだ。 フェイスブックの投稿を見て、己の教

秋晴れの澄んだ青空に映えて、赤や黄色に色づいた木々の葉がまぶしい。小高い丘を登りきり、小さな盆地を見下ろす高台に建つ飾り気のないコンクリートの建物――それが、無言館だった。 先月、長野県上田市を訪れた私は、せっかく来たのだからと、ガイドブックに載っていたこの小さな美術館まで足をのばした。その受付で販売されていたのが、1992年に単行本として刊行され、今年にな

まだ肌寒い3月、成田空港から11時間のフライトを経て、あなたはオランダ・アムステルダムに降り立った。隣には写真家の植本一子さんがいる。ここからあなたの旅が始まる。オランダ・ドイツ・オーストリア・アイルランド・イギリス・フランス・アメリカー7カ国14都市、17の美術館を巡る旅。全部で35作品、あなたはフェルメールに会いに行く。 あなたはフェルメールについて、ど

本書は、「欲望の資本主義」「英語でしゃべらナイト」「爆問学問」「ニッポンのジレンマ」「人間ってナンだ?超AI入門」「ネコメンタリー」など、異色の番組を次々と世に送り出してきた敏腕プロデューサー丸山俊一の手による、ドイツの若き天才哲学者マルクス・ガブリエルのドキュメンタリー番組「 欲望の時代の哲学~マルクス・ガブリエル 日本を行く~ 」を、一冊の本にまとめたも

タコというのはなかなかに賢い生き物で、その賢さを示すエピソードには事欠かない。 たとえばタコは人間に囚われている時はその状況をよく理解しており、逃げようとするのだが、そのタイミングは必ず人間が見ていない時であるとか。人間を見ると好奇心を持って近づいてくる。海に落ちている貝殻などを道具のように使って身を守る。人間の個体をちゃんと識別して、嫌いなやつには水を吹き

人類が発明した50のモノを、洗練された筆致で書き綴った、気軽な読み物だ。取り上げられているのは「コンクリート」や「紙」など手で触れられるものから、「経営コンサルティング」や「不動産登記」など目には見えない社会制度までと幅広い。 それぞれの章は独立していて読み切りだ。たとえば「電池」の章では、19世紀ロンドンで絞首刑にあった罪人の逸話から、電池が発明された18

『こわいもの知らずの病理学講義』が7万2千部に! ということでウハウハだという大阪のおっさんこと、ナニワのレビュワー仲野徹先生の新刊登場! 「2匹目のドジョウを狙う」と公言する今回は、ダイエットフェチとしての極意から、お酒との賢い付き合い方、風邪をひいたらどうするか、そしてがんにならないための生き方に至るまで、病気と健康をテーマに笑い語ります。 あのナカノ先

今年読んだ新書の中で、文句なしにNo.1の一冊。平易な文章で書かれ、分量もコンパクトだが、奥が深い。 昨年、『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか』がヒットして以来、教養とビジネスの関係に注目が集まっているが、本書もまた同様の趣きをもっていると言えるだろう。 著者の片山杜秀氏は、クラシック音楽の歴史を追いながら、顧客が誰であったかという点にフォーカスを当て

「歩くたびにおっぱいが大きくなるマシーン」「インスタ映え台無しマシーン」「全ての者が裸に見えてしまうメガネ」「土下座しても悔しくならない無駄装置」「一人でもコックリさんが出来る装置」など、200以上の「無駄なもの」をつくり、 YouTubeで6万人以上 、 Twitterで5万人 近いフォロワーを誇る、発明家の藤原麻里菜さん。 本書『無駄なことを続けるために

2016年10月、東京・新橋の歓楽街の一角。資産家の女性の白骨遺体が発見された。自宅と隣家のせまい隙間に、うつぶせに倒れていた。これだけでも十分きな臭いが、驚くべきことに彼女の土地は何者かによって転売されていた。 地主になりすまして、不動産をだましとる「地面師」の存在は古くて新しい。戦後の混乱期やバブル期に暗躍し、アベノミクスで沸くここ数年、再びうごめき始め

平成最後の年間ベストセラーリストが発表された。メディアでは、当代のベストセラーを振り返る報道が相次いでいる。ここでは、平成のミリオンセラー『超訳ニーチェの言葉』『嫌われる勇気』『漫画君たちはどう生きるか』の振り返りから入りたい。 この三冊は、偉大な哲学者(ニーチェ)や心理学者(アドラー)などの思想を、今の人に伝わるように表現を工夫したものだ。時代の空気を読み

貧困は罪悪であり、病である。すべての悪の根源である。 タカ大丸は英語同時通訳・スペイン語翻訳者のポリグロット(多言語話者)である。テレビ出演も多いのだが、視聴者から「見た目が怪しい通訳」と言われているそうだ。だがその実力は折り紙付きである。2015年 『ジョコビッチの生まれ変わる食卓』 でグルテンフリーという食事の概念を紹介し、その後、大ブームとなったのはご