ノンフィクションはこれを読め!

おすすめ本レビュー

CATEGORY

3,647記事

あなたがたった今、これを読んでいるという途方もないありえなさ──『生命進化の偉大なる奇跡』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

あなたがたった今、これを読んでいるという途方もないありえなさ──『生命進化の偉大なる奇跡』

本書『生命進化の偉大なる奇跡』はイギリスの解剖学者・人類学者であるアリス・ロバーツによる、人類進化の中でも特に解剖学・発生学を中心としたサイエンス・ノンフィクションだ。彼女はBBCで人類進化をテーマとしたいテレビシリーズにも出演していたり、幅広く一般に向けてわかりやすい科学情報の発信を行なっているが、本書もその成果のうちの一冊である。 中心となるのは、受精卵

『結論は出さなくていい』番組プロデューサーが語る、「脱構築」の指南書 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『結論は出さなくていい』番組プロデューサーが語る、「脱構築」の指南書

本書『結論は出さなくていい』を一言で言い表すなら、現代を支配する浅薄でしかも強固な固定観念を打ち破るための、知的誠実さによって貫かれた、「脱構築」の指南書である。 ここで言う「脱構築」とは、著者曰く、「自らの拠って立つところを自覚し、その足場を相対化し続けること」であり、もう少し分かりやすく言えば、本書は、資本主義社会を前提とする一元的な価値観によって自縄自

『聖❤尼さん 「クリスチャン」と「僧侶女子」が結婚したら』夫婦で綴る笑いと涙の異文化体験 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『聖❤尼さん 「クリスチャン」と「僧侶女子」が結婚したら』夫婦で綴る笑いと涙の異文化体験

露の団姫 は、現役の上方の女性落語家にして天台宗の僧侶。高校時代から宗教の勉強を始め、聖書、コーラン、仏教書などを読み漁るなか、法華経に出会い「お釈迦さまは私の魂の父親だ!」と帰依することを決める。同時に夢であった落語家になるため 露の団四郎 に入門、大師匠の 露の五郎兵衛 宅に住み込みで修業した。 その団姫が運命の出会いをした相手が、 太神楽曲芸 師の 豊

『猫はためらわずにノンと言う』吾輩は吾輩である 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『猫はためらわずにノンと言う』吾輩は吾輩である

最近、静かな猫ブームである。私は元々、猫派で、知る人ぞ知るNHK BSプレミアムの『 岩合光昭の世界ネコ歩き 』も密かに楽しんでいるのだが、飼育のしやすさもあってか、特に都会では猫の人気が急上昇のようだ。「なめネコ」や「ネコ鍋」のように、これまで何度か猫ブームというのはあったが、今回は”This Time Is Different”のような気がする。 ところ

『宗教国家アメリカのふしぎな論理』 矛盾だらけのアメリカを宗教から読み解く 書影

社会 / 世界史

『宗教国家アメリカのふしぎな論理』 矛盾だらけのアメリカを宗教から読み解く

その男は酒もタバコもしない。ギャンブルに手を出すこともない。刺激物はコーヒーすら飲まないのだ。キリスト教の教会に通い、積極的思考(ポジティブシンキング)を実践することで世界一の大国アメリカで人もうらやむ成功を手にした。この禁欲的に思える男の名前は、ドナルド・トランプ。そう、現アメリカ大統領のトランプには奇妙な信心深さがある。 テレビから伝わるトランプのイメー

『ハッパノミクス 麻薬カルテルの経済学』麻薬王は、誰もがみな名経営者!? 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ハッパノミクス 麻薬カルテルの経済学』麻薬王は、誰もがみな名経営者!?

「一般企業もマフィアもやっていることは同じですよ」 もしあなたが真面目なサラリーマンで、誰かに面と向かってこんなことを言われたとしたら、どんな反応を示すだろうか。おそらく内心ムッとするはずだ。そして「とんでもない! 反社会的集団と企業を一緒にしないでください」とかなんとか反論のひとつも付け加えながら、納得のいかない表情を浮かべるのではないだろうか。 だが本書

大きいことはいいことか?『巨乳の誕生』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

大きいことはいいことか?『巨乳の誕生』

大きいことは、いいことだ。 高度経済成長期、チョコレートのCMでこのフレーズが流行ったの を年配の人は覚えているかもしれない。20世紀は大きいものが正 義の時代だったのだ。なんせ、野球は巨人、 プロレスはジャイアント馬場である。名前からして、デカい。 ビジネスの世界を見渡しても、米ゼネラルエレクトリ ックのようなコングロマリット(複合的多角化企業) が成功事

”意識”を揺さぶる養老孟司の『遺言。』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

”意識”を揺さぶる養老孟司の『遺言。』

「久しぶりに本を書いた」冒頭の文に、いきなり驚愕だ。なんでも、あの超ベストセラー『バカの壁』以来、ずっと「語り下ろし」だったらしい。ちらっと聞いたことはあったが、噂だけではなかったのだ。そして十年以上ぶりで書き下ろされたのが、この『遺言。』である。はたして何が書かれているのか、いやます期待。 「はじめに」で、早くもその意図は明かされる。「いまの時代は、皆さん

言葉の解釈をめぐる、解決困難な諸問題──『自動人形の城: 人工知能の意図理解をめぐる物語』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

言葉の解釈をめぐる、解決困難な諸問題──『自動人形の城: 人工知能の意図理解をめぐる物語』

本書は、同著者による数学的原理に裏打ちされた傑作ファンタジィ『白と黒のとびら: オートマトンと形式言語をめぐる冒険』、その続篇『精霊の箱: チューリングマシンをめぐる冒険』とはまた違った物語──副題にもある通り、命令を何でもこなしてくれるスゴイ人工知能をつくる上で避けては通れない、コミュニケーションにおける人工知能の意図理解についての一冊である。 図や数式は

『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』「民族協和」を目指した学生たち 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』「民族協和」を目指した学生たち

日中戦争当時、石原芫爾が満州事変を首謀し、満州国を建設後、彼が次に目指したのは将来国を担っていくエリートの育成である。満州国の最高学府として建設されたのが「満州建国大学」。満州国が当時国是として掲げていた「民族協和」の実践場として、日本人の定員を半分に制限し、中国、朝鮮、モンゴル、ソ連のなど様々な国から学生を募った。 本書は、著者が建国大学卒業生たちを訪れ、

『PRE-SUASION: 影響力と説得のための革命的瞬間』 説得上手な人たちは事前に何をしているのか 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『PRE-SUASION: 影響力と説得のための革命的瞬間』 説得上手な人たちは事前に何をしているのか

ひとつ考えてみてほしい。あなたはショッピングモールの一角で、そこを行く人々にアンケート調査への協力を求めている。でも、わざわざ時間を割いて調査に協力してくれる人はごくわずかだ。では、もっと多くの人に協力してもらうためには、あなたは彼らにどういうふうに声をかけたらよいだろうか。 本書は、社会心理学者のロバート・チャルディーニによる単著で、あのベストセラー 『影

『消された一家』北九州・連続監禁殺人事件の発覚から15年、やるせなさと救いが同時にやってきた 書影

事件・事故 / TV・動画

『消された一家』北九州・連続監禁殺人事件の発覚から15年、やるせなさと救いが同時にやってきた

今年もたくさんの新しい本と出会い、様々な刺激をもらってきた。だが今年読んだ本の中で、最も印象に残ったものを挙げよと言われれば、それは「再会」した一冊になる。それが本書『消された一家 北九州・連続監禁殺人事件』だ。 事件の詳細に関する記述はあまりにも凄惨で、この本が置いてある本棚の一角は邪気が漂っているように感じるほどである。数年前に奥の方へと封印したはずのこ

僧侶で歴史は動いた 『日本の奇僧・快僧』 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

僧侶で歴史は動いた 『日本の奇僧・快僧』

奇僧はまだしも、快僧……? 道鏡、西行、文覚、親鸞、日蓮、一遍、尊雲(護良親王)、一休、快川、天海……お坊さんの名前が10人ずらり。共通点は、歴史の教科書で名前を見たことがあること、それから人物がとんでもなくて、おもしろいこと。この10人について、それぞれコンパクトに評伝がまとめてある。醍醐味は、読み通すと日本史が俯瞰できることだろう。 著者の今井雅晴さんは

オスはみーんな、二重人格?『歌う鳥のキモチ』小鳥のびっくり私生活 書影

サイエンス / 生物・自然

オスはみーんな、二重人格?『歌う鳥のキモチ』小鳥のびっくり私生活

「ことりはとってもうたがすき かあさんよぶのもうたでよぶ♪」 子どもの頃、大好きだった童謡。ただ……ふと思う。小鳥が歌うのって、「好き」だからなの? 早朝、森に降りそそぐ小鳥たちのコーラス。聴く側もさわやかで心地よいけれど、小さな体に似合わぬ大きな声で精いっぱい歌う姿を見ていると、やっぱり「歌が好き」なんじゃない?という気がしてくる。 でも「歌う」ことは、わ

我が意を得たり 『焼肉大学』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

我が意を得たり 『焼肉大学』

忘年会シーズンである。振り返れば近年、焼肉忘年会をした記憶がない。参加者の懐具合に配慮し、幹事さん達は焼肉店を選択肢からはずしているのだろうか。折からのひとり焼肉ブームである。そこで私は、ひそかに決めていた。今年は「ひとり焼肉忘年会」を開催することを(爆)。それを100倍楽しもうと考えていた矢先、本屋さんの店頭でズラリと並んだこの本を見つけたのだ。 著者は、

『絶滅危惧職、講談師を生きる』人気の若手講談師が本気で語る革命的芸道論 書影

教養・雑学 / アート・スポーツ

『絶滅危惧職、講談師を生きる』人気の若手講談師が本気で語る革命的芸道論

先日「笑点」の演芸コーナーに神田松之丞が登場した。わずかな時間の中で講談という芸を説明し、そのさわりを読みたて、大喜利へ笑いを繋いだ。途中くすぐりを入れたにもかかわらず収録会場は一瞬静まりかえる。演者の迫力に押されて、観客は息を飲んでしまったのだ。 神田松之丞は弱冠34歳の二ツ目にして、昨今もっともチケットが取れない芸人のひとりだ。 いまや人気絶頂の落語にく

『パリのすてきなおじさん』人生が醸し出す大人の「絵本」 書影

教養・雑学 / 人物

『パリのすてきなおじさん』人生が醸し出す大人の「絵本」

老いは避けられない。どうせ老いるなら若い人に「素敵なおじさん」と呼ばれたいものだ。おじさんが何歳からなのか、はっきりした定義はないだろうが、30歳からをおじさんと呼ぶのなら、私はおじさん歴9年になる。そろそろ、おじさんも板についてきた頃だろう。しかし未だに素敵なおじさんが、どんなものなのかトンとわからない。おじさんのサンプル集でもあればと思っていたら、出てき

『運慶への招待』一門を纏める仏師 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『運慶への招待』一門を纏める仏師

2017年11月、東京国立博物館にて開催された運慶展は入場者数が60万人を超え終了した。 運慶といえば平安末期~鎌倉時代にかけて活躍した仏師だ。東大寺南大門の金剛力士立像はその代表作だが、全身で8m以上もある。重さは7t。制作年は1203年と制定され、つまり800年が経過しているが、今だもって見る者を畏怖させる。当時の人達は阿吽の仁王から凝視されたら、度肝を

『アフター・ビットコイン』ブロックチェーンが金融界を変える 書影

社会 / ビジネス

『アフター・ビットコイン』ブロックチェーンが金融界を変える

2017年10月末、ビットコインの時価総額は1000億ドルを突破。スマホなどでビットコインを管理するユーザーは全体として11兆円を超える潜在的な購買力を持っていることになる。 2009年10月にビットコインが法定通貨と交換開始されたときのレートは100ビットコインで9円だった。2011年には英字紙「TIME」がビットコイン特集を組んだ。この時点で1ビットコイ

『ぼくは13歳、任務は自爆テロ』日本人の若者が模索するテロリストからの脱却 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ぼくは13歳、任務は自爆テロ』日本人の若者が模索するテロリストからの脱却

テロが起こるのは違う世界の話だと思っていたのだが、ここ数年、そうとは言えなくなってきている。つい先ごろも、ロンドンで爆発のあった地下鉄に知人が乗り合わせていたと聞いた。日本でもいつか起こる、そんな予感は誰もが持っているだろう。だが長い平和を甘受してきた日本人にとって、テロは怖いばかりで具体的に何も対処できていない。 本書は「アクセプト・インターナショナル」と

『アメリカンドリームの終わり』格差社会は、いかにして助長されてきたのか 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『アメリカンドリームの終わり』格差社会は、いかにして助長されてきたのか

本書『アメリカンドリームの終わり あるいは、富と権力を集中させる10の原理(Requiem for the American Dream: The 10 Principles of Concentration of Wealth & Power)』は、ノーム・チョムスキーへのインタビューによるドキュメンタリー映画『 アメリカンドリームへのレクイエム(Requ

『黙殺 報じられない“無頼系独立候補"たちの戦い』悪戦苦闘の中に見えてくる、選挙制度の問題点 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『黙殺 報じられない“無頼系独立候補"たちの戦い』悪戦苦闘の中に見えてくる、選挙制度の問題点

選挙があると思い出す光景がある。ずいぶん前のことだが、番組でお付き合いのあった関係で、ドクター・中松の街頭演説を見に行った。場所は下北沢駅の北口だった。 ジャンピングシューズをはいたドクターが登場するとたちまち人だかりが出来たが、聴衆はビヨ~ンビヨ~ンと跳ねるドクターの動きにつられて顔を上下させるばかりで、せっかくの演説を誰も聴いていないんじゃないかと思った

『レッド・プラトーン 14時間の死闘』今年一番の戦争ノンフィクション! 書影

教養・雑学 / 人物

『レッド・プラトーン 14時間の死闘』今年一番の戦争ノンフィクション!

戦闘前哨(COP)キーティングはアフガニスタン北東部に位置するヌーリスタン州の山岳地帯に作られた。パキスタンの国境から、わずか22.5キロメートル。9.11以降アフガニスタンに派兵した米軍はアフガニスタン東部での反乱に悩まされていた。アルカイダとタリバンの戦士達はこの急峻な山岳地帯の網の目のような隠れ谷をうまく利用し、戦士や武器をパキスタンから補給していた。

誰か嘘だと言ってくれ、『アベノミクスによろしく』と『異次元緩和の終焉』に 書影

社会 / おすすめ本レビュー

誰か嘘だと言ってくれ、『アベノミクスによろしく』と『異次元緩和の終焉』に

科学者というのは、データを出すことが最も重要である。それに次いで、いや、それと同じくらい重要なのがデータを解釈することである。ライフネット生命創業者の出口治明さんが、物事を決める時に重要、と、おっしゃるところの『数字、ファクト、ロジック』は、科学者にとっての根幹でもある。 経済にはまったく疎い。なので、この二冊の本に書いてあることが真実なのかどうか、正しく判

『レッド・プラトーン 14時間の死闘』耳をつんざく砲弾の音、着弾時の振動、立ち込める煙 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『レッド・プラトーン 14時間の死闘』耳をつんざく砲弾の音、着弾時の振動、立ち込める煙

9.11後、アフガニスタンに派兵したアメリカは、パキスタンとの国境地帯で反乱の急増に悩まされていた。そこで2006年夏、この急峻な山地帯に前線基地を点々と連ねて敵の補給線を分断するとともに、現地の村人には不足している物資を供給し人心を勝ち取るという作戦を立てた。これにより谷間の川沿いにくねくねと伸びている狭隘な道沿いに十数箇所の前哨基地が作られていった。奥へ

『世界を変えた6つの「気晴らし」の物語』 本気の遊びが世界を変える 書影

教養・雑学 / 社会

『世界を変えた6つの「気晴らし」の物語』 本気の遊びが世界を変える

現代の世界は数え切れないほどのイノベーションが連鎖することでかたちづくられた。本書の著者スティーブン・ジョンソンが前著『 世界をつくった6つの革命の物語 』で示したように、ある分野のイノベーションは全く別領域でのイノベーションを誘発し、ときに想像すらできない変化をもたらしうる。印刷機の発明はインターネットを、衛生観念の発達はマイクロプロセッサを生み出した。著

『どん底名人』最後の無頼派棋士の栄光と転落 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『どん底名人』最後の無頼派棋士の栄光と転落

名人4期、碁聖6期、タイトル獲得数35。「最後の無頼派」と呼ばれた囲碁棋士である依田紀基氏の自伝だ。ギャンブルで借金を背負い、家族が離散した「どん底」時代のエピソードまで赤裸々に明かしながら、プロとして勝ち続けるために必要な考え方について語る。勝負師の言葉は全ての職業人に通じる普遍性と重みがあるだろう。 学生時代の著者は絵に描いたような劣等生だった。通知表は

『降伏の記録』死へ向かう夫へのメッセージ 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『降伏の記録』死へ向かう夫へのメッセージ

この秋、思いもよらない入院生活を体験することになった。幸いにも今後長期にわたる治療が必要になるような病気ではなかったが、それでも2週間ほどの入院が必要だと言われた。 それからが大変だった。ぼくの体調ではない。我が家の生活の話である。子どもはまだ小さいうえに妻も仕事がある。お互いの親は介護状態だったり遠方に住んでいたりで気軽に助けを求められるような状態にはない

白いご飯は味がないから苦手?!『残念和食にもワケがある』 書影

社会 / 民俗・風俗

白いご飯は味がないから苦手?!『残念和食にもワケがある』

まずはこの写真を見てほしい。 幼いころ怒られて教えられた記憶がよみがえる。「お葬式の時にすることだから絶対やっちゃダメ」というのはもはや常識ではなくなってしまったのだろうか? 本書は「食ドライブ調査」に基づいて考察された、現代の日本の食卓にのぼる和食の実態である。たくさんの写真とインタビューから描き出される姿に、あなたは驚くだろうか、それとも何とも思わないだ

現代版「生類憐みの令」『おクジラさま』 書影

生物・自然 / 教養・雑学

現代版「生類憐みの令」『おクジラさま』

(HONZ 東えりかとのクロスレビュー:東えりかの書評は こちら ) イルカとクジラの問題について日本人としてのアカウンタビリティ(説明責任)を問う一冊だ。 捕鯨問題に対して自分なりの意見を表明できるようにすることは、日本人のアカウンタビリティと著者はいう。捕鯨への反感は日本人が想像もつかないほど広く根深く世界に浸透しているからだ。 たしかに筆者も海外で経験

みんな違って、みんないい! それが『すし』だ。 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

みんな違って、みんないい! それが『すし』だ。

すし。 言葉にすると同じなのだけれど、こんなに違うのだね。 そうため息をつくばかりの、お腹が空いてくる、旅をしたくなる、この『すし』。 全国いろとりどり、工夫さまざまの写真が並ぶ様子は壮観だ。なにしろ企画・編集を担ったのは50周年を迎えるという日本調理科学会。こちらの会員(大学・企業・公共機関などの研究者1300名ほど)が47都道府県の聞き書き調査を行った上

『サルは大西洋を渡った──奇跡的な航海が生んだ進化史』 大海原という障壁を越えて進出する生物たち 書影

サイエンス / 生物・自然

『サルは大西洋を渡った──奇跡的な航海が生んだ進化史』 大海原という障壁を越えて進出する生物たち

「ありそうもないこと、稀有なこと、不可思議なこと、奇跡的なこと」。生物地理学者のギャレス・ネルソンはかつてそんな言葉でそれを嘲笑したという。だが実際には、どうやらそれは生物の歴史において何度も生じていたようだ。それというのは、生物たちによる長距離に及ぶ「海越え」である。 本書が挑んでいる問題は、世界における生物の不連続分布である。世界地図と各地に生息する生物

『全員死刑』父も母も兄も弟も死刑確定 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『全員死刑』父も母も兄も弟も死刑確定

2010年11月に刊行された『我が一家全員死刑』(コアマガジン、後にコア新書で再刊)は衝撃的な一冊であった。「人は見た目が9割」ならば確実にお近づきになったらヤバそうな4人の家族の顔写真が表紙にならんでおり、実際、見た目通りヤバかった北村実雄、真美、孝、孝紘の4人は強盗殺人の罪などに問われ、全員死刑が確定している。 本書は、次男の孝紘の獄中手記を中心に構成さ

『レッド・プラトーン 14時間の死闘』ある小隊の対タリバン攻防戦 濃密な描写による記録文学 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『レッド・プラトーン 14時間の死闘』ある小隊の対タリバン攻防戦 濃密な描写による記録文学

読後感はひとこと「凄絶にして重厚な戦争映画を飽きることなく最後まで観てしまった」である。 400ページを超える大部であり、行間も狭くて、文字がぎっしりと詰まっているレイアウトだ。読み通すまでには数日かかるであろう。 しかも本書はアフガニスタンの一拠点における14時間の攻防戦を記述しているだけの、いわば記録文学だ。にもかかわらず、大切な仕事を後回しにしてまでも

『幻の惑星ヴァルカン』 それはいかにして「発見」され、いかにして葬り去られたのか 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『幻の惑星ヴァルカン』 それはいかにして「発見」され、いかにして葬り去られたのか

水・金・地・火・木・土・天・海・冥。かつてそう教えられた太陽系惑星のなかから、2006年に冥王星が除外されたことは記憶に新しい。だがじつは、19世紀後半にはそれら惑星候補のなかにもうひとつ別の名前が挙げられていた。本書の主役は、その幻の惑星たる「ヴァルカン」である。 ヴァルカンはその生い立ちからして冥王星とは異なっている。というのも、そもそもそんな星は存在す

Imagine there's no cars. 『対岸のヴェネツィア』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

Imagine there's no cars. 『対岸のヴェネツィア』

振り返るのはまだ早いが、今年は 『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』 と 『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』 という本が、とにかく良く売れた。100歳まで生きるという前提で人生設計を組み直す必要があることや、少子高齢化を前提とした働き方に変えなければならないことは、良くわかった。 その他にも変化はいくつもあるが、ガソリン車から電気自

『ヒトラーの原爆開発を阻止せよ! “冬の要塞”ヴェモルク重水工場破壊工作』戦記物では収まらない大作!! 書影

サイエンス / 人物

『ヒトラーの原爆開発を阻止せよ! “冬の要塞”ヴェモルク重水工場破壊工作』戦記物では収まらない大作!!

本書は第二次世界大戦のさなか重水をめぐり行われた連合国とナチスとの攻防に脚光を当てた作品だ。舞台はノルウェーのオスロ西方にあるテレマルク県に広がるハンダルゲン高原という荒涼とした大地。極寒の地で冬には雪で閉ざされ、地元の猟師が時々、トナカイをしとめに足を踏み入れるくらいの場所だ。夜になると急激に気温が下がるため、地元では「炎さえ凍る」と実しやかに囁かれる厳し

『麿赤兒自伝』憂き世 戯れて候ふ 書影

アート・スポーツ / 人物

『麿赤兒自伝』憂き世 戯れて候ふ

著者は舞踏家の麿赤兒(まろあかじ)。劇作家である唐十郎の状況劇団に参加し、それから土方巽に師事した。その後に舞踏集団「大駱駝艦」を立ち上げ、国内外に舞踏を知らしめた人物だ。 舞踏は日本で発祥した半裸で踊るスタイルだが、疾走する身体というよりむしろ動かなかったりする。一見、死を匂わせる静止した肉体かと思いきや、いきなり生に執着する表情をとり、口を全開させ呼吸音

『だから、居場所が欲しかった。バンコク、コールセンターで働く日本人』日本社会の持つ偏見のるつぼ 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『だから、居場所が欲しかった。バンコク、コールセンターで働く日本人』日本社会の持つ偏見のるつぼ

水谷竹秀はフィリピンを拠点にするノンフィクション作家。 『日本を捨てた男たちフィリピンに生きる「困窮邦人」』 (集英社)で現地の人々の情けを受けて生きている日本人を描き、第9回開高健ノンフィクション賞を受賞した。 この作品は、私の価値観をひっくり返した。生活する姿だけをみれば惨め以外の何ものでもない日本人が、なんの柵(しがらみ)もないことで、とてもいきいきし

『どうしても欲しい! 美術品蒐集家たちの執念とあやまちに関する研究』理想の自分に近づきたくて 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『どうしても欲しい! 美術品蒐集家たちの執念とあやまちに関する研究』理想の自分に近づきたくて

世の中にはコレクターと呼ばれる人たちがいる。特定の事物を徹底的に蒐集する人々のことだ。切手や古いコイン、宝石といった貴重品から、食玩フィギュアのような玩具、映画の半券、果ては牛乳瓶のフタやら変な形の小石やら、ありとあらゆるジャンルに彼らは存在する。 そうした蒐集の中で、おそらく最も長い由緒を持つのが、古美術品蒐集だ。本書は、古美術品の私的コレクションを築き上