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おすすめ本レビュー

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『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』

一見、ライトノベルを思わせるタイトルだが、本書は紛れもない実話である。ただし著者の半生は、まるでラノベの主人公のようにユニークだ。 著者は1992年千葉県生まれ。昔からどこまでも内向的で、考えすぎる人間だったという。そんな性格もあってか、大学受験や恋愛、就活の失敗などで心を壊し、大学を卒業した2015年からは、千葉の実家で引きこもり生活に突入。週一でバイトは

楽しく読めて役に立つ!医者にかかる前に読んでおきたい『患者が知らない開業医の本音』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

楽しく読めて役に立つ!医者にかかる前に読んでおきたい『患者が知らない開業医の本音』

開業医さんの生活ってどんなんやろ。近所の医院の前を通りかかった時、あるいは、ちょっとした病気でお世話になった時、ふと思ったことのある人は多いだろう。といっても、たぶん、お金持ちなんやろなぁ、とか、気を遣うから大変やろなぁ、という漠然としたイメージしかわかないのではなかろうか。 医学部の出身なので医師の友人は多い。開業医の友人もたくさんいるが、その実態はよく知

『巨大おけを絶やすな!日本の食文化を未来につなぐ』最後の桶屋に弟子入りし大桶作りを習う波乱万丈の奮闘記 書影

民俗・風俗 / ビジネス

『巨大おけを絶やすな!日本の食文化を未来につなぐ』最後の桶屋に弟子入りし大桶作りを習う波乱万丈の奮闘記

日本酒、味噌、醤油。木の大桶で仕込む日本古来の伝統食材だ。 ここ数年、こだわりの食品を好む消費者が増え、ステンレスやホーローなど近代設備で作られた量産品ではなく、“本物”の味が求められているという。 それなのにその大もとになる木桶をつくる職人や工場がなくなっている。著者は食品管理の仕事をしていた20年前にその声を聞いていた。 高さ約2メートル、直径約2メート

目覚めよ!麗しの”桶愛”に 『巨大おけを絶やすな! 日本の食文化を未来へつなぐ』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

目覚めよ!麗しの”桶愛”に 『巨大おけを絶やすな! 日本の食文化を未来へつなぐ』

「桶」である。はて、桶と聞いて何を思い浮かべられるだろう?ちょっと気になって広辞苑で調べてみた。こういうときはなんといっても電子辞書だ。さて、いくつヒットしたでしょう? 答えは、「閼伽桶」(あかおけ:仏に供える水を汲み入れる桶)から「四桶」(よつおけ:長野県筑摩地方で馬に負わせて運ぶ下肥桶。1駄に4個つけたからいう)まで、なんと97個もある。さすがに驚いた。

『小山田圭吾の「いじめ」はいかにつくられたか』情報社会の「災い」の構造を読み解く 書影

人物 / 社会

『小山田圭吾の「いじめ」はいかにつくられたか』情報社会の「災い」の構造を読み解く

東京五輪直前の猛バッシングを覚えている人も多いだろう。世間から指弾されたのは、国際的にもその音楽性を高く評価されていたミュージシャン、小山田圭吾だった。だが彼は本当に悪人だったのだろうか? 本書は未曾有の炎上の背景に分け入り、子細な検証を重ねて、この炎上が理不尽な「インフォデミック」、すなわち誤情報のとてつもない拡散によってもたらされた災いだったことを明らか

『テキヤの掟 祭りを担った文化、組織、慣習』「暴力団博士」が調査する、共同体を成し、落伍者でも受容する商売人たちの貴重な回顧録 書影

社会 / 民俗・風俗

『テキヤの掟 祭りを担った文化、組織、慣習』「暴力団博士」が調査する、共同体を成し、落伍者でも受容する商売人たちの貴重な回顧録

縁日やお祭りの日の思い出の風景といえば、寺社仏閣の境内・参道に立ち並ぶ露店である。焼きそば、お好み焼き、ベビーカステラ、チョコバナナ、等々。ちょっと強面のおじさんが調理してて近寄りがたいけど、周囲の喧噪に呑まれてつい買ってしまう。その後、風の噂で、あのおじさんヤクザらしいよと聞いて、幼心は震え上がる。 しかし、露天商――テキヤを暴力団と同一視するのは誤りであ

『武器としてのエネルギー地政学』エネルギーの超基本を徹底解説 書影

社会 / 世界史

『武器としてのエネルギー地政学』エネルギーの超基本を徹底解説

日本でエネルギーがここまで話題になるのは2011年の東日本大震災以来だろうか。ロシアによるウクライナ侵攻に端を発した天然ガス価格高騰、エネルギー価格を中心とするインフレ懸念、カーボンニュートラル取組と、ほぼ毎日のようにエネルギー関連情報がニュースの見出しを飾る日々が続いている。 そうはいっても「そもそもエネルギー問題ってなんぞや」「みな、何を騒いでいるのか」

『東京医大「不正入試」事件』特捜検察のシナリオ捜査が父と息子の人生を狂わせた 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『東京医大「不正入試」事件』特捜検察のシナリオ捜査が父と息子の人生を狂わせた

人の記憶にはバイアスがある。「文部科学省汚職事件」と総称される一連の出来事の中で人々の記憶に今も残るのは、おそらく東京医科大学医学部医学科で行われていた不正入試のほうではないか。 東京医大は一般入試で、女子受験生や4浪以上の男子受験生に差別的な扱いをしていた。3浪までの男子受験生に一定の点数を加える優遇装置を講じていたほか、OBの子供など縁故受験生にも寄付金

富士山は「噴火スタンバイ状態」にあるのか!?『富士山はいつ噴火するのか』 書影

サイエンス / 生物・自然

富士山は「噴火スタンバイ状態」にあるのか!?『富士山はいつ噴火するのか』

新幹線で京都と東京を往復すると、晴れた日には三島駅の北側に富士山がよく見える。その中腹には大きな穴がポッカリと空いているが、江戸時代に大噴火した火口であることを知る人はそう多くない。 もし「こだま」で三島駅に下車する機会があれば、北側の改札を出たところにある溶岩の露頭(地層が見える崖)を見てほしい。三島溶岩と呼ばれる約11,000年前の噴出物で、この現象を現

APU活動記② HONZ定番企画「2022年印象に残った本は何?」 書影

HONZ活動記 / おすすめ本レビュー

APU活動記② HONZ定番企画「2022年印象に残った本は何?」

連載の2回目は、いよいよ2022年に印象に残った本について熱く語り合います! APU活動記①は こちら 立命館アジア太平洋大学(APU)ライブラリーにやってきました。ウェルカムボードを見て、メンバー一堂のテンションが一段と上がります。様々な個性を持ったメンバーが一同に集い、やたらと熱い志で本を紹介する、HONZにとってはお馴染みのコーナー。テーマは「この数年

今週のいただきもの:2023年2月5日週 書影

おすすめ本レビュー / 今週のいただきもの

今週のいただきもの:2023年2月5日週

春の七草の1つでもある「せり」は、若芽が「競り合う」ように一箇所で生育することから名付けられたそうです。旬の時期にスーパーで並んでいるのを見ると、一度はせり鍋をしなければと思います。先日は こちら のレシピをもとに作りました。具材はシンプルな方がせりのおいしさをより味わえますが、上記のレシピにプラスして肉団子を入れるのはオススメです。また、〆は雑炊もいいです

APU活動記① 待ちに待った出口さんとの再会 書影

HONZ活動記 / おすすめ本レビュー

APU活動記① 待ちに待った出口さんとの再会

こんにちは!元学生メンバーの刀根です。久しぶりの合宿レポートに胸が高鳴ります!2023年1月初旬、読売新聞読書委員として活躍された皆様の集まりにHONZもちょこんと乗っけていただき、はるばる大分県まで行ってきました。私、年末からとっても楽しみにしていたのです。だって普段読んでいる本の著者たちに会えるのだから! そして、今回の旅がさらに特別なのは、出口治明さん

『安倍晋三 回顧録』歴代最長政権の舞台裏を明かす 書影

人物 / 社会

『安倍晋三 回顧録』歴代最長政権の舞台裏を明かす

注目の一冊がついに刊行された。巻末の人名索引まで含めると472ページだが、厚さはまったく気にならない。面白すぎて一気呵成に読み終えた。 本書はもともと1年前に出版される予定だったという。ところが、あまりに機微に触れる部分が多く、安倍氏本人から出版延期の申し入れがあった。その後、銃撃事件で亡くなってしまったため、昭恵夫人の同意のもと出版が決まったと聞く。ならば

『スラッジ: 不合理をもたらすぬかるみ』悪い行動経済学 書影

医学・心理学 / 社会

『スラッジ: 不合理をもたらすぬかるみ』悪い行動経済学

スラッジ(SLUDGE)、直訳すると、泥、ぬかるみである。 煩雑な申請、長い待ち時間、何を書けばいいのかよくわからない書類など、摩擦が大きい故に、合理的に行動を阻むものである。ナッジを世間に広げた法学者が本書の著者である。スラッジとナッジは兄弟のような関係なので、まずはナッジの短い歴史をおさらいしよう。 1999年、アムステルダムのスキポール空港は経費削減を

『傷つきやすいアメリカの大学生たち』「自分の気持ちの安全」が育む激しいキャンセル活動の根源を探る 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『傷つきやすいアメリカの大学生たち』「自分の気持ちの安全」が育む激しいキャンセル活動の根源を探る

昨今話題に欠かないテーマの本なので、まずは著者2人の紹介から始めよう。グレッグ・ルキアノフはアメリカの教育財団FIREの会長兼CEOで、進歩主義者(リベラル)。ジョナサン・ハイトはニューヨーク大学で社会心理学に精通する教授で、中道派。お互い共和党に票を投じたことはないが、保守派知識人の書物も多く読み学んできた、という。 その2人が問題提起するのは、2013年

『ある行旅死亡人の物語』あなたは誰?身元をたどる渾身のルポルタージュ 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ある行旅死亡人の物語』あなたは誰?身元をたどる渾身のルポルタージュ

「行旅死亡人」とは病気や行き倒れ、自殺等で亡くなった身元不明の死者を表す法律用語である。死亡人は身体的特徴や発見時の状況を官報に公告される。 映画やミステリー小説でも良く登場する”誰かわからない”遺体。その身元を新聞記者が突き止める過程を記したのが『ある行旅死亡人の物語』だ。 共同通信大阪社会部の遊軍記者、武田惇志は記事のネタ探しのため官報に掲載されている「

『ネット右翼になった父』「なぜ?」の先に「分断」を解消するヒントが見えてくる 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ネット右翼になった父』「なぜ?」の先に「分断」を解消するヒントが見えてくる

身近な人が豹変してしまうのを見るほど辛いことはない。家族が認知症になったとか、カルトに入信したとか、そんなハードな話なら聞いたこともあるが、著者の場合はいささか変わっている。父親が「ネット右翼」になってしまったのだ。 父親は令和元年(2019年)、改元の4日後にこの世を去った。77歳だった。晩年の父親はネトウヨ的な言説に染まっていたという。近隣諸国や左翼、生

「家族という密室」に戦慄する『母という呪縛 娘という牢獄』 書影

社会 / 事件・事故

「家族という密室」に戦慄する『母という呪縛 娘という牢獄』

恐ろしいものを読んでしまった。 2018年、32歳の女性が母親の殺害と遺体損壊、遺棄の容疑で逮捕された。彼女の名前は高崎あかり(仮名)。あかりの母親は異様なほど娘の学歴に執着し、医学部を9年も受験させた。娘は浪人をしているその9年間ずっと母親の監視下にあり、執拗な虐待を受けていた。母親が医学部をあきらめたことにより、あかりは9年目に医科大学の看護学科に主席で

わからない、でも考えるべきだ。『死刑のある国で生きる』とはどういうことなのかを 書影

社会 / おすすめ本レビュー

わからない、でも考えるべきだ。『死刑のある国で生きる』とはどういうことなのかを

あなたは死刑に賛成ですか? 賛成、反対、あるいは、どちらでもない or わからない。 はたして即答できるだろうか。決して身近な問題とは言いにくいので、普段から考えている人は多くないだろう。しかし、とても重要な問題だ。この問題を考えることは、生きるとはなにか、人権とはなにかという大きな命題に思いを巡らせることになるのだから。 作者の宮下洋一はスペインに根拠を置

なぜ一見何の利益もない嫌がらせ行為を行う人間が存在するのか?──『悪意の科学: 意地悪な行動はなぜ進化し社会を動かしているのか?』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

なぜ一見何の利益もない嫌がらせ行為を行う人間が存在するのか?──『悪意の科学: 意地悪な行動はなぜ進化し社会を動かしているのか?』

最近、仕事中のほとんどの時間は何らかのゲーム配信(最近はLeague of Legends)を垂れ流していることが多い。人気のストリーマーは数千、数万といった視聴者を集める。そうすると、一人用ゲームではない対戦系ゲームを配信で行っている配信者は、少なからぬ「嫌がらせ」行為に遭遇するものだ。 たとえば、配信者がゲームのマッチングを開始したのにタイミングを合わせ

『母という呪縛 娘という牢獄』異常な母娘関係を描いた事件ノンフィクション 書影

社会 / 事件・事故

『母という呪縛 娘という牢獄』異常な母娘関係を描いた事件ノンフィクション

殺人はけっして許されない。人を殺せば刑事罰に処される。それがこの社会の当たり前のルールである。だが時に、その「当たり前」が揺らぐことがある。殺すのも無理はない、やむを得なかったのだと加害者に同情してしまうことがある。本書が描くのはそんな事件だ。 2018年3月、滋賀県・野洲川の河川敷で、女性の切断された遺体が見つかった。警察は同年6月、女性の長女を死体遺棄、

『太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密』子どもたちは生きている。父親に切り捨てられても。 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密』子どもたちは生きている。父親に切り捨てられても。

アフリカ中部に位置するコンゴ民主共和国(旧ザイール)は地下資源に富んだ国だ。1970年代、日本企業はこの地に進出し鉱山を開設、多数の日本人労働者が就業していた。 2016年、朝日新聞のアフリカ特派員だった著者にツイッターを通じてメッセージが送られてきた。当時、コンゴでは日本人労働者と現地女性の間に生まれた子を、日本人医師と看護師が毒殺していた、と報道したこと

火山が大噴火したら地球の寒冷化が始まる!『気候変動と「日本人」20万年史』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

火山が大噴火したら地球の寒冷化が始まる!『気候変動と「日本人」20万年史』

地球科学には「過去は未来を解く鍵」と言うフレーズがある。過去に起きた現象を詳しく分析し、その中で働いているメカニズムを明らかにし「物理モデル」を立て、未来に起きる現象を予測する。 未来を予測・制御するのは自然科学が持つ基本的な機能で、理学も工学も医学も基本的には同じ原理で動いている。ところが地球科学だけは他の理系分野と異なり、過去に起きた現象が138億年にわ

「最近あいつヤバそうだ感」を出そう! 『聞く技術 聞いてもらう技術』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

「最近あいつヤバそうだ感」を出そう! 『聞く技術 聞いてもらう技術』

この本は面白かった。専門知と世間知の間で葛藤する臨床心理士の「現代版赤ひげ先生」が、自慢のヒゲを撫でながら捻りだした一冊だ。わかりやすい言葉、アカデミズムの知識、日常生活人としての思い。その三者が融合し、骨太な大変価値ある本にしあがっている。 タイトルをみればわかるとおり、本書のテーマは情報の交換だ。人類が高度な文明を持つ万物の霊長になり得たのは、卓越した情

『黒い海 』 海の『エルピス』調査報道が明らかにする未解決事件の「真実」 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『黒い海 』 海の『エルピス』調査報道が明らかにする未解決事件の「真実」

興奮冷めやらぬままこれを書いている。すごいノンフィクションを読んだ。大晦日に読み始め、気がついたら年が明けていた。この本は読み始めたら途中で止めることができない。 ある未解決事件の謎に単身挑んだジャーナリストが、ファクトを丹念に積み上げ、真相に迫る。ところが、あらゆる可能性を吟味し、これしかないという仮説に辿り着くが、国の調査結果はこれを否定するものだった。

『なぜ、この芸人は売れ続けるのか?』に成功の秘訣を学ぶ 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『なぜ、この芸人は売れ続けるのか?』に成功の秘訣を学ぶ

売れ続ける芸人、25人について、芸能記者・中西正男48歳が縦横無尽に書き尽くした。大阪を中心に活動する中西なので、ほとんどが大阪の、あるいは、大阪出身の芸人さんたちだ。そのリストを見れば、売れ続けて当然と思える人もいれば、なんでこんなのがと言いたくなる人もいる(<個人の感想です)。しかし、読んでみれば、売れ続けた理由がよくわかる。 ほんまもん 最終的にはこの

数多の「健康で、長生きする」実践的なメソッドが全部まとまった一冊──『科学的エビデンスにもとづく 100歳まで健康に生きるための25のメソッド』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

数多の「健康で、長生きする」実践的なメソッドが全部まとまった一冊──『科学的エビデンスにもとづく 100歳まで健康に生きるための25のメソッド』

近年、栄養環境の改善や医療技術の進歩によって人間はより長く生きることができるようになった。ただ、ほとんどの人が望んでいるのは、「長く生きる」ことだけでなく、同時に「健康で」あることだろう。糖尿病などの慢性疾患を発病して、永続的な治療が必要ないのであれば、それが幸いである。 そうした状況と科学の進展も合わさってか、『LIFESPAN: 老いなき世界』など、近年

『国商』権力と一体化した男の実像 書影

人物 / 社会

『国商』権力と一体化した男の実像

政商という言葉はあるが、国商は聞いたことがない。 政商とは、時の権力と結託して特別な利益を貪る商人のこと。国商はさしずめ国家と一体化した商人といったところか。 だいたい異名というのは、尾鰭のついた評判によって肥大化した虚像に対してつけられるものと相場が決まっている。だが本書を読み進むうちに、国商とは実に鋭く故人の本質を突いた呼称ではないかと思った。 2022

『ザ・パターン・シーカー──自閉症がいかに人類の発明を促したか』 if-and-then思考とハイパー・システマイザー 書影

サイエンス / 医学・心理学

『ザ・パターン・シーカー──自閉症がいかに人類の発明を促したか』 if-and-then思考とハイパー・システマイザー

ネックレスや弓矢はけっして偶発的に出来るわけではない。それらを形にするためには、if-and-then思考が必要だ。「それぞれの貝殻に穴を開けて(if)、その穴に繊維を通せば(and)、ネックレスができる(then)」、「伸縮性のある繊維に矢を取り付けて(if)、繊維の張力を緩めれば(and)、矢が飛ぶ(then)」というように。それゆえ、およそ7万年前まで

『オスとは何で、メスとは何か?』性は多様で当たり前 書影

サイエンス / 生物・自然

『オスとは何で、メスとは何か?』性は多様で当たり前

男と女のあいだには、深くて暗い河があるという。それは真っ赤な嘘だった。 男と女、広く生物でいえばオスとメスは、独立して存在しているわけではない。 つまり、オスとメスという性が、確固たるものとして存在しているのではない。実は両者は連続しているという。 太陽光をプリズム(三角形のガラス棒)で分解すると7色の光の帯が出現する。7色はくっきりとわかれているわけではな

『ボーダー 移民と難民』私たちの内なる境界を考える 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ボーダー 移民と難民』私たちの内なる境界を考える

本が好きで良かったことのひとつは、読むたびに自分がいかにものを知らないかを思い知らされることかもしれない。読めば読むほど、無知を痛感させられる。愉快な気分ではないが、何も知らないよりよほどマシだと思う。無知のままで何かに加担してしまうことほど恐ろしいことはない。 本書は日本の難民問題を追ったノンフィクションだ。終末医療を扱った傑作『エンド・オブ・ライフ』でY

今週のいただきもの:2022年12月4日週 書影

おすすめ本レビュー / 今週のいただきもの

今週のいただきもの:2022年12月4日週

微妙に余った冷蔵庫の野菜を消費したい時、私が作るのは韓国料理です。葉物野菜はさっと茹でて、ごま油、塩、すりおろしたにんにく、白ごまで和えます。大根は細切りにして茹で、すし酢とコチュジャンで和えるだけ。きのこやナス、根菜はごま油で炒めて、醤油、コチュジャン、白ごまで和えるのが好みです。 骨つきカルビは、醤油、酒、みりん、砂糖、すりおろしたにんにく、生姜、コチュ

先月出た本 2022年11月 書影

おすすめ本レビュー

先月出た本 2022年11月

ノンフィクション新作の当たり月だった11月。初旬には『ゲノム編集の世紀』と『コード・ブレーカー』というクリスパー革命を描いたノンフィクションが立て続けに発売され書店店頭を賑わせました。11月末には『笑い神 M-1、その純情と狂気』が発売となり、直後から大きな話題となっています。 そんな豊作の11月。他にはどんな本が発売され、売れていたのでしょうか。 注目した

『語学の天才まで1億光年』混沌と放浪の中での語学学習術 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『語学の天才まで1億光年』混沌と放浪の中での語学学習術

高野秀行さんの著作を最初に読んだのは30年以上前のことだ。『幻の怪獣・ムベンベを追え』という怪しげな本を書店で見つけ、この「早稲田大学探検部」という命知らずの若者たちに熱狂し周囲の人に勧めまくった記憶がある。 しかしその本が出てから著者の行方は杳として知れず、記憶も薄れたころ(正確には9年後だ)これまた書店で高野さんの著作『ビルマ・アヘン王国潜入記』を見つけ

『無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記』『カーザ・ヴェルディ 世界一ユニークな音楽家のための高齢者施設』終の棲家は自分で選ぶ 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記』『カーザ・ヴェルディ 世界一ユニークな音楽家のための高齢者施設』終の棲家は自分で選ぶ

人が死ぬということは世の中から消えることなんだ、と本当に納得できるようになったのはここ最近のことだ。自分の人生の先が見えてきたからだろうか、誰かの死が身に染みて哀しい。 山本文緒さんが膵臓がんで亡くなったことを知ったのは2021年10月のこと。享年58。その直前に新刊の 『ばにらさま』 を楽しく読んでいたから、にわかには信じられなかった。 『無人島のふたり 

『笑い神』漫才とは何か。笑いとは何か。 書影

人物 / TV・動画

『笑い神』漫才とは何か。笑いとは何か。

徒手空拳、という言葉がある。手に何も持たず、身ひとつで何かにのぞむことを指す。 漫才は文字どおり徒手空拳の芸だ。サンパチマイクの前で、全身を客に晒し、しゃべりの技術だけで勝負する。実にシンプルな芸だ。シンプルなだけに、客にも違いはすぐにわかってしまう。上手いか下手か。おもしろいかおもしろくないか。 客ウケが悪いと、芸人の表情はみるみる青ざめていく。脂汗が流れ

『ゼレンスキーの素顔 真の英雄か危険なポピュリストか』 書影

人物 / 社会

『ゼレンスキーの素顔 真の英雄か危険なポピュリストか』

2022年2月24日に開始されたロシアによるウクライナへの全面侵攻は世界を震撼させた。侵攻以前からロシアはウクライナ国境付近に軍を集結させていたが、本当に軍事作戦に踏み切るのか、それともただの脅しなのか、様々な情報が錯綜していた。世界の耳目を集めていた案件だけに、いざ侵攻が始まると既存のメディアはもとよりSNSなどでもロシア軍の動きは逐一報じられ、次々と現地

『シンクロと自由』ホームで暮らすひとりひとりの「わたし」たち 書影

医学・心理学 / 社会

『シンクロと自由』ホームで暮らすひとりひとりの「わたし」たち

著者は「こんな老人ホームなら入りたい」と全国から熱い視線を浴びる、NHKの番組でも紹介された特別養護老人ホーム「よりあいの森」「宅老所よりあい」「第2宅老所よりあい」の統括所長。本書はホームで出会った老人との交流で得た知見をまとめたものだ。 老人たちはゆっくり動く。食事も排泄も思考も移動も彼らのペースで行われる。繰り返しも多いし、すぐに忘れてしまう。 でも、

クリスパーゲノム編集は人類に革命をもたらすか? :『ゲノム編集の世紀』&『コード・ブレーカー』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

クリスパーゲノム編集は人類に革命をもたらすか? :『ゲノム編集の世紀』&『コード・ブレーカー』

ジェームズ・ワトソンの『二重らせん』が、これまで最高に売れたサイエンス・ノンフィクションだ。フランシス・クリックと世紀の大発見ー遺伝情報をコードするDNAが二重らせん構造を持つことーを成し遂げたワトソンによる発見の経緯を記した本だが、決して正確な記録ではない。あくまでも、ワトソン個人から見た二重らせん発見物語である。それでもこの本がすごく売れたのは、サイエン

『天路の旅人』「希有な旅人」の壮大な旅を描く大作 書影

人物 / 民俗・風俗

『天路の旅人』「希有な旅人」の壮大な旅を描く大作

「沢木耕太郎が旅の本を出すらしい」 そんな噂を聞いたのは、そろそろ梅雨も明けようかという頃だった。 書棚からあわてて『深夜特急』を引っぱり出してきて読み始めた。「沢木耕太郎」と「旅」。ふたつのキーワードを耳にして、「沢木耕太郎が自身の集大成となる旅の本を出す」と早合点してしまい、ならば原点ともいえる『深夜特急』を読み直さねばなるまい、と考えたのだ。 すると文