ノンフィクションはこれを読め!

おすすめ本レビュー

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『コード・ブレーカー』生命科学の最前線を描く話題作 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『コード・ブレーカー』生命科学の最前線を描く話題作

ぼちぼち年末だというのに、年内に読み切れるのか途方に暮れるくらい注目のノンフィクションが目白押しである。その中でひとつだけ選べと言われたらこの本を推す。本書はなにをおいても読むべき傑作だ。 なにしろ当代随一のノンフィクション作家、ウォルター・アイザックソンの最新作である。アイザックソンはこれまで、スティーブ・ジョブズやレオナルド・ダ・ヴィンチ、アルベルト・ア

『ぼけと利他』唯一無二の往復書簡 書影

教養・雑学 / 社会

『ぼけと利他』唯一無二の往復書簡

「利他」という言葉を本屋さんで見る機会が多くなってきた。大辞林で「利他」を引くと、「自分を犠牲にしても他人の利益を図ること」と書かれてるが、「犠牲」や「利益」という言葉がなんだかピンとこないなぁ。本書の著者・伊藤亜紗さんは、前書きで「利他」について研究を始めたきっかけをこのように話している。 現代においては、「誰かのため」ということがあまりに単純化して考えら

『THE WORLD FOR SALE 世界を動かすコモディティー・ビジネスの興亡』国際政治経済を動かす商社 書影

世界史 / ビジネス

『THE WORLD FOR SALE 世界を動かすコモディティー・ビジネスの興亡』国際政治経済を動かす商社

2021年に原著が発行されて以降、フィナンシャルタイムズ紙や英エコノミスト誌のブックオブザイヤーなど、数々の経済書賞を総ナメにしてきた一冊が翻訳され、遂に日本語でも読めるようなった。 私たちの生活を支えるエネルギーの物流面でなにが起きているのか。メディアではなかなか取り上げられず、業界人ですら知らないことの多いエネルギー物流マーケットの深層が本書では語られる

「老いて衰える」こともおもしろそう『シンクロと自由』 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

「老いて衰える」こともおもしろそう『シンクロと自由』

「ちょっと〜」 「ちょっと〜」 「きませんか」 「きませんか」 草木も眠る丑三つ時、93歳のお婆さんに呼ばれた「ぼく」は、お婆さんのところに行かなければならない。ファンタジー小説ではなく、老人ホームの利用者と職員の話である。呼ばれたぼくは躊躇する。なぜなら、行けば多分「いきませんか」と言われるからだ。 「いきませんか」とは「行きませんか」。 つまり、お婆さん

『人新世の科学』地球の歴史に人間が痕跡を残すかどうかはまだ謎だ! 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『人新世の科学』地球の歴史に人間が痕跡を残すかどうかはまだ謎だ!

地球の歴史に人間が痕跡を残したかどうかが、最近話題になっている。「人新世」(じんしんせい)はそれを論じるキーワードだが、もとは地球史に関する専門用語である。確かに地球46億年の歴史上、人類の活動は大きな痕跡を残しつつある。 コンクリートや金属など人工物の総重量は、全生物の総重量を上回ったという試算がある。20世紀初頭、人工物の総重量は生物総重量の3%に過ぎな

『中国ビジネス法大全』 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『中国ビジネス法大全』

「中国は日本の隣にある現実の並行世界、つまりリアルなパラレルワールドだ」・・・これが本書に通底する重要なメッセージです。 中国の法体系は、日本を含む西側諸国のそれとは成り立ちからして全く異なります。憲法を始めとする法律はもちろんのこと、そこには独特な行政法規や商慣行が存在し、しかもその運用を含めて、日々目まぐるしく変化しています。 既にGDPで日本の3倍以上

もう英語学習なんかいらんのとちゃう?『グローバル×AI翻訳時代の 新・日本語練習帳』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

もう英語学習なんかいらんのとちゃう?『グローバル×AI翻訳時代の 新・日本語練習帳』

素晴らしい本だ。帯文を頼まれたら、「役に立つ、みんな絶対に読むべきだ」という短い激賞文しかない。 タイトルは『新・日本語練習帳』だが、内容は単なる練習帳に留まらない。きわめて簡潔に示されたルールから、機械翻訳に適した日本語やグローバルコミュニケーションの「コツ」がのみこめる。さらには、英語、および英語を通じたコミュニケーションの解説から、逆ベクトルで、日本語

うつ病やアルツハイマー病もそれと関係しているのか 『脳のなかの天使と刺客──心の健康を支配する免疫細胞』 書影

サイエンス / 医学・心理学

うつ病やアルツハイマー病もそれと関係しているのか 『脳のなかの天使と刺客──心の健康を支配する免疫細胞』

それは脳のなかの「天使」でありながら、ときには「刺客」へと変貌するという。本書の主人公は、非神経細胞のひとつである「ミクログリア」である。 つい最近まで、ミクログリアは脳のなかの端役にすぎないと考えられていた。脳内の情報伝達を担うニューロンや、そのつなぎ役を務めるシナプスといった綺羅星たちと比べると、それが果たす役割はごく些末なものだと考えられていたのである

『「アマゾンおケイ」の肖像』2022年No.1評伝!20世紀を駆け抜けた痛快な女傑の物語 書影

人物 / 社会

『「アマゾンおケイ」の肖像』2022年No.1評伝!20世紀を駆け抜けた痛快な女傑の物語

自らを「アマゾンおケイ」と呼んだ小川フサノは、軍事アナリストの 小川和久 氏の母親ではある。二十世紀を駆け抜けた母の豪快で痛快な一生を息子は全力で書き上げた。 1903年、熊本県八代の山林地主の家に生まれたが、ほどなくして実家は没落。13歳で叔父夫婦とともにブラジル移民となった。 叔父の妻と仲違いし、四十男との結婚を嫌い、ピストルを懐に出奔後、サンパウロで邦

『無人島のふたり』余命宣告された作家の最期の日々 書影

人物 / 小説

『無人島のふたり』余命宣告された作家の最期の日々

訃報はいつだって突然だ。著名人が亡くなると、生放送中のスタジオに報道の人間が原稿をもって駆け込んでくる。速報は一刻も早く放送するのが鉄則だが、そこに記された名前に驚き、思わず足が止まってしまうことがある。訃報にあらかじめ心の準備をしておくことなんてできない。誰かの死に慣れることはこの先もきっとないだろう。 山本文緒さんが亡くなったという報せも突然だった。 2

『年寄りは本気だ はみだし日本論』日本の将来は、なぜこんなにも不安なのだろう 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『年寄りは本気だ はみだし日本論』日本の将来は、なぜこんなにも不安なのだろう

本書は、年寄りが二人、本気で日本の将来を心配して行った真摯な対談である。 まあ、そんじょそこらの年寄りではなく、ひとりは東京大学の名誉教授で解剖学者、『バカの壁』(新潮新書)などのベストセラーを持つ84歳の養老孟司さん。もうひとりは山梨大学や早稲田大学で教鞭をとり名誉教授に。現在では「ホンマでっか⁉TV」で人気を博す75歳の生物学者、池田清彦さんだ。彼らの共

『人体の全貌を知れ』を読め! 人体とそれをとりまくサイエンスが如何に素晴らしいかを知るために 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『人体の全貌を知れ』を読め! 人体とそれをとりまくサイエンスが如何に素晴らしいかを知るために

こういう本を書ける人を心からうらやましく思う。医学や科学についていろいろなところで書いてきたが、まったくレベルが違う。ひとことでいえば、悲しいけれど才能の違いということになるのだろう。それに英語の壁もとてつもなく高い。 著者のダニエル・M・デイビスは英国の免疫学者である。インペリアル・カレッジ・ロンドンの教授で、そのHPを見ると優れた論文をたくさん発表してい

『聞く技術 聞いてもらう技術』聞く力、聞いてもらう力が社会を変えて行く 書影

医学・心理学 / 教養・雑学

『聞く技術 聞いてもらう技術』聞く力、聞いてもらう力が社会を変えて行く

世の中では厳しい言葉が飛び交っている。特にSNSを中心に政治問題や社会制度のあり方を巡り攻撃的な言葉の応酬が日常的に繰り返されている。だが、多くの人が承知しているように、これらの言葉の応酬で何か建設的な議論が生まれることも価値のあるコンセンサスが生まれることもない。ほとんどの場合、相手への敵がい心をむき出しにして、石つぶてのような硬い言葉をぶつけ合い、お互い

『文にあたる』校正の仕事は人生に似ている 書影

教養・雑学 / 小説

『文にあたる』校正の仕事は人生に似ている

本を読んでいて、誤植をみつけてしまうことがある。 粗を探しながら読んでいるわけではないのに、自然と目にとまってしまう。みつけるのは衍字(えんじ、文章の間に入った余計な文字)が多い。「思いった」とか「会社にには」みたいな誤りだ。DTPが当たり前になって、この手の間違いが増えた気がする。みつけるたびに、がっかりする。 がっかりするのは、子ども時代の刷り込みのせい

偶然がもたらした地球上で生きる幸運を知る1冊! 『ありえない138億年史』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

偶然がもたらした地球上で生きる幸運を知る1冊! 『ありえない138億年史』

宇宙の誕生から人類の繁栄まで、138億年にわたる壮大な歴史を興味深く綴った本が出た。著者のウォルター・アルバレス(Walter Alvarez)はカリフォルニア大学バークレー校で地球惑星科学の教授を務める、米国を代表する地質学者である。 実は、私は著者の名前を30年以上も前から知っていた。というのは、恐竜が6500万年前に突如として大量絶滅した原因を見事に解

『Qを追う』〈名無し〉の集団の正体に迫る 書影

社会 / 事件・事故

『Qを追う』〈名無し〉の集団の正体に迫る

「ディープステートが、メディアも、判事も掌握した。証拠がない、なんて言うのは、見ようとしていないからだ。いいか。ここにバドワイザーの缶がある。でも、目を手で覆ったら『見えない』。あるにもかかわらず、だ。証明を拒否しているにすぎない。本当は、証拠はあるんだ」 ダグラス・スイート(58歳)はこう答えた。著者のインタビューを読む限り彼は特段、過激な人物ではない。

『遠い声をさがして 学校事故をめぐる〈同行者〉たちの記録』痛ましい事故はなぜ起こったのか? 書影

社会 / 事件・事故

『遠い声をさがして 学校事故をめぐる〈同行者〉たちの記録』痛ましい事故はなぜ起こったのか?

ときどき、書店で本に呼び止められることがある。棚ざしになっていても、手に取ってくれとアピールするのだ。本書『遠い声をさがして』は久しぶりにそんなふうにして出会った本だ。 2012年の夏休み、小学一年生の浅田羽菜ちゃんは彼女の通う京都市立叡成小学校で、低学年児童69人と一緒のプール学習中に溺死した。水を怖がらず、むしろプール学習を楽しみにしていた羽菜ちゃんに何

『カースト』カーストのプログラムは、我々全員の無意識にインストールされている 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『カースト』カーストのプログラムは、我々全員の無意識にインストールされている

カーストといえば、多くの方がインドを想起するかもしれないが、本書はアメリカの話である。カーストこそがアメリカ社会のヒエラルキー構造であり、社会秩序を維持するための手引きであり、対立の基盤でもあると著者は説く。 著者はアフリカ系アメリカ人の女性。ヒエラルキーに抗うことにより獲得した自由な視点で、自由の国アメリカの水面下に広がる、不自由や差別の構造を鬼気迫る筆致

『LISTEN.』山口智子さんと世界の民族を巡る旅をQRコードで体験する! 書影

教養・雑学 / 民俗・風俗

『LISTEN.』山口智子さんと世界の民族を巡る旅をQRコードで体験する!

俳優の山口智子が世界中を巡り、後世に残る音楽ドキュメンタリーを10年もかけて撮っていた…。 いま、この地上のどこかで民衆が歌う声を残したいという決意。それを彼女はほんの数人の仲間たちと成し遂げようとしている。本書を読み終わって心の底から驚き、感動した。 『LISTEN.』のイントロダクション映像 2011年9月、ハンガリーのブタペストで夜の帳から聞こえた音楽

『終止符のない人生』ピアニスト反田恭平 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『終止符のない人生』ピアニスト反田恭平

ショパンコンクールとはショパンの故郷のポーランドで5年に1度開催される、世界三大ピアノコンクールのうちの1つだ。16歳以上30歳以下のピアニスト達が世界中から集まり、予備選を含めファイナルまで計5回のステージで審査される。 1次予選からファイナルラウンドまでの日程は3週間弱。演奏はYouTubeにて配信されるため、世界中の観客が生の感動をチャットで綴る。粛々

先月出た本 2022年9月 書影

おすすめ本レビュー

先月出た本 2022年9月

9月はノンフィクション豊作の月となりました。特に『自民党の統一教会汚染追跡3000日』ほか宗教関連のノンフィクションが大きく注目を集めランキングを牽引しています。翻訳ノンフィクションも『因果推論の科学』や『格差の起源』など大物新刊が相次いで刊行されています。 そんな中で勢いを見せているのが『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記』です。すっかりお馴染みになった日記シリ

『人生はそれでも続く』22人の「時の人」のその後を追う調査報道 書影

社会 / 事件・事故

『人生はそれでも続く』22人の「時の人」のその後を追う調査報道

我々は連日のニュースの多くを娯楽として消費している。事件・事故・災害に憂い悲しみ、スポーツ選手の活躍に喜び、可愛らしい動物の映像に癒やされ、職場や飲み会、SNSにて好き勝手に意見感想を述べる。そして時が経つにつれてあっさり忘れられ、次の話題に移っていく。 しかし、当然ながらどのようなニュースにも当事者がおり、彼らの人生もまた同じように続いている。 あれから、

『ベンチャーキャピタル全史』「スタートアップ創出元年」をかけ声倒れにしないために 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『ベンチャーキャピタル全史』「スタートアップ創出元年」をかけ声倒れにしないために

新型コロナの流行で多くの日本人がファイザーかモデルナのワクチンを接種したと思う。老舗のファイザーに比べて、モデルナは2010年にマサチューセッツ州ケンブリッジで創業されたばかりの新興企業である。これをファイナンス面のみならず開発面からもバックアップしたのが、同じケンブリッジのフラッグシップ・パイオニアリングというベンチャーキャピタルだということは、意外に知ら

『遠い声をさがして』なぜ羽菜ちゃんは亡くなったのか 書影

社会 / 事件・事故

『遠い声をさがして』なぜ羽菜ちゃんは亡くなったのか

子供が巻き込まれた悲しい事故のニュースを目にするたびに胸が痛む。幼稚園バスに置き去りにされた子供たちはどれほど心細い思いをしただろう。そんなことを想像するだけで辛い気持ちになる。 いつものように送り出した我が子が、亡骸となって戻って来る。 あってはならないことだが、時にそうした悲劇が起きてしまう。 一冊の本を紹介したい。2012年、京都市内の小学校のプールで

超高度な ”自由研究” がおもろすぎ! 『カタニア先生は、キモい生きものに夢中!:その不思議な行動・進化の謎をとく』を動画といっしょに楽しもう 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

超高度な ”自由研究” がおもろすぎ! 『カタニア先生は、キモい生きものに夢中!:その不思議な行動・進化の謎をとく』を動画といっしょに楽しもう

おもろい研究をする人がいたもんだ。ハナモゲラじゃなくてホシバナモグラ、って書いても、タモリのハナモゲラを知ってる人も今では少なくなってるでしょうなぁ。と、まぁ、それはええとして、カタニア先生の興味は、キモいというよりも、不思議な生物ばかりである。 名前のとおりに星のような鼻を持つホシバナモグラをはじめとして、エサである魚を口の方へと魔法のように誘導するヒゲミ

『アスリート盗撮』スポーツ界を動かした調査報道 書影

アート・スポーツ / 社会

『アスリート盗撮』スポーツ界を動かした調査報道

世の中を動かした調査報道は、社員寮での会話から始まった。 東京・港区三田に、共同通信東京本社勤務の若手らが住む「伊皿子寮」がある。 「私たち、東京に来てから何もしてないよ。このままだとやばいよね」 2020年8月のある日、寮のロビーでデリバリーの夕食をつまみながら、ふたりの女性記者が話し合っていた。鎌田理沙記者は19年春に入社し、一年間松江支局で勤務した後、

これから出る本 2022年10月 書影

おすすめ本レビュー

これから出る本 2022年10月

9月に入り、カルト宗教関連の本の出版が増えてきています。書店店頭で宗教について考える本のフェアをやっているのもよく見かけるようになりました。興味の高まりを感じる中『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』の予約が伸びています。この他も『 「神様」のいる家で育ちました 』などに注目が集まっています。 この他2022年9月17日時点の予約受注実績からこの先発売にな

『地球の中身』から地球環境の全容が分かる! 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『地球の中身』から地球環境の全容が分かる!

宇宙空間に浮かぶ地球を研究対象とする自然科学の一分野に「地球科学」がある。日本では高校の科目名や大学の学科名として、「地学」という呼び名が一般的に用いられてきた。ちなみに、高校の地学は、物理・化学・生物という理科3教科と比べるとマイナーな扱いだ。 理系科目としては地味だが、大学入学共通テストでは結構人気がある。すなわち、理科が苦手な生徒が選択する科目としては

『語学の天才まで1億光年』超絶面白い語学本! 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『語学の天才まで1億光年』超絶面白い語学本!

表紙をみて思わず笑ってしまった。1光年は、光の速さで1年かかる距離だ。1億光年は1億年である。にもかかわらず表紙に描かれた人物は、遥か彼方の目的地にのんきにカヌーで向かおうとしている。 だが笑った後で、はたと気づいた。言語の習得というのは、まさしくカヌーを漕ぐような行為なのではないか。前に進むかどうかは自分次第。しかも目標に到達するまで気の遠くなるような時間

昆虫がいま、消えつつある──『サイレント・アース 昆虫たちの「沈黙の春」』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

昆虫がいま、消えつつある──『サイレント・アース 昆虫たちの「沈黙の春」』

この『サイレント・アース』は副題に入っているように、殺虫剤や農薬などの化学物質の危険性を訴えた「沈黙の春」の昆虫をテーマにした現代版とでもいうべき一冊だ。 著者によれば、いま世界から昆虫の数が急速に減少しつつあるという。温暖化など環境の変化もあるうえ、森林の伐採など問題は絶えないから、昆虫の数が減っていること自体に違和感はない。では、具体的に何が原因で昆虫は

先月出た本 2022年8月 書影

おすすめ本レビュー

先月出た本 2022年8月

8月の最後になって稲盛和夫さん、ミハイル・ゴルバチョフさんと大きな訃報が続きました。ミハイル・ゴルバチョフについては以前このコーナーでも紹介した『我が人生 ミハイル・ゴルバチョフ自伝』が注目を集めています。 稲盛和夫さんについては、世界的にも注目されている著書も多くありますが、今後自伝などの出版があるのかどうか気になるところです。 8月はどんな本が発売され、

『世界は五反田から始まった』足元から歴史が広がる 書影

社会 / 日本史

『世界は五反田から始まった』足元から歴史が広がる

東京は広い。長いこと住んでいても、まだまだ知らない場所がたくさんある。 著者は東京品川区の戸越銀座で生まれ、現在もそこで暮らしている。著者の家は祖父の代からこの地で町工場を営んでいた。 戸越銀座は五反田から東急池上線なら二駅、都営浅草線なら一駅だ。戸越銀座も五反田もそれなりに知っているつもりでいたが、所詮それはピンポイントの知識に過ぎなかった。本書を読むまで

『キツネ潰し 誰も覚えていない、奇妙で残酷で間抜けなスポーツ』動物虐待とトライアル&エラーの娯楽史 書影

教養・雑学 / アート・スポーツ

『キツネ潰し 誰も覚えていない、奇妙で残酷で間抜けなスポーツ』動物虐待とトライアル&エラーの娯楽史

競技場に、細長い布の両端を持った男女のペアが十数組立っている。合図とともに、会場にキツネが放たれる。怯えたキツネは競技場を走り回り、やがて布を踏む。その瞬間、男女は力を合わせて布を引っ張り、キツネを宙に飛ばす。繰り返し空に投げられるキツネたちは当然のごとく怪我をしていくが、誰も手当などしない。そして競技が終了に近づくと、参加者は弱ったキツネを憐れみながら撲殺

さらなる秘境『防衛大学校 知られざる学び舎の実像』が凄すぎる! 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

さらなる秘境『防衛大学校 知られざる学び舎の実像』が凄すぎる!

初めてお会いしたのは、読売新聞の読書委員会だった。元・防衛大学校長らしく、動作も物の言い方もあまりにキビキビしておられるのに驚いた。なんでも、以前は中国政治思想史を専門とされる慶應大学法学部の教授だったとか。真っ先に「防衛大学校長にご着任される前からこんなにキビキビしておられたのですか」とお尋ねしたのをよく覚えている。残念ながら、そのお答えは記憶にないのだが

『暴れ川と生きる 筑後川流域の生活史』川と人間の共生を実現させるために 書影

生物・自然 / 社会

『暴れ川と生きる 筑後川流域の生活史』川と人間の共生を実現させるために

筑後川は「筑紫次郎」の異名のとおり「坂東太郎」の利根川「四国三郎」の吉野川とともに日本の暴れ川と言われている。さらにここ10年あまり、九州に打ち続く豪雨は毎年のように筑後川とその支流に大水害を起こす。 著者は2009年から九州北部を流れる広大な筑後川流域の全域で、川と人間の共生の歴史を調査してきた。 本書の冒頭に掲げられた筑後川全域の地図を見ると、その広さに

『ストーリーが世界を滅ぼす』我々が物語を所有しているのか? 物語が我々を所有しているのか? 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ストーリーが世界を滅ぼす』我々が物語を所有しているのか? 物語が我々を所有しているのか?

世界はどんどん良くなっている。世界の人口のうち、極度の貧困状態にある人の割合は、過去20年で半分になった。そして自然災害で毎年亡くなる人の数は、過去100年で半分以下にもなった。 一方で、世界はどんどん悪くなっている。政治の分極化、止まらない環境破壊、野放しのデマゴーグ、混迷きわめるウクライナ情勢、終わりの見えないコロナ禍。 一体どちらが、本当の姿なのだろう

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おすすめ本レビュー

これから出る本 2022年9月

コロナ影響で自殺者が増加したというニュースが駆け巡りました。パンデミック関連の書物の出版は少し下火になってきた感もありますが、自殺や貧困といった社会問題に取り組む本の出版計画が増えてきているようです。予約ランキングにも『ルポ自殺』が入ってきています。 著者の渋井哲也さんは長年にわたって自殺問題を取材し続けてきました。今の時代をどう見ているのでしょうか。 この

通史を1人で書き上げる知力に脱帽!『人類5000年史 Ⅳ—1501年~1700年』 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

通史を1人で書き上げる知力に脱帽!『人類5000年史 Ⅳ—1501年~1700年』

ちくま新書で『人類5000年史』というシリーズが刊行中だが、文明の誕生から現代まで人類史を簡潔に一望できる。今回紹介する第4巻では、1501年から1700年までの通史がシリーズ通し番号の第9章・第10章として充てられている。 かいつまんで紹介すると、銃を手に銀を求めて海を渡ったコンキスタドール(征服者)が、交易の時代を押し開いた。宗教改革という狼煙が上がった

(宿題に使えるかもしれない)親子で読んで考える新刊ノンフィクション5冊! 書影

サイエンス / 社会

(宿題に使えるかもしれない)親子で読んで考える新刊ノンフィクション5冊!

著者は2015年の「世界コピーライターランキング1位」を獲得したクリエーティブ・ディレクター。レニングラード生まれ、両親の仕事の関係で小学1年から中学3年の間にロシア、日本、イギリス、フランス、アメリカ、カナダの6カ国で9回の転校を経験している。4つの言語で教育を受け、学制がちがうため小学校は3回卒業した。 国によって教育方針も方法も、文房具も科目も全部違う

『朝日新聞政治部』ある新聞記者のセルフドキュメント 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『朝日新聞政治部』ある新聞記者のセルフドキュメント

冒頭、著者の鮫島浩は横浜中華街の料理店に妻と二人で入る。2014年当時、朝日新聞の特別報道部デスクを解任され、ある記事の責任を問われて蟄居謹慎の身だった。そこで演奏される二胡の音に涙した鮫島に妻の放った言葉は強烈だった。 あなたはね、会社という閉ざされた世界で『王国』を築いていたの。(中略)あなたがこれから問われる罪、それは『傲慢罪』よ! 『朝日新聞政治部』