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出口 治明の記事

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177記事

『スキタイの騎士』by 出口 治明 書影

世界史 / 小説

『スキタイの騎士』by 出口 治明

昨年の6月、 「カールシュタイン城夜話」の書評 で、僕はクプカの歴史物語三部作の残る2作、「スキタイの騎士」と「プラハ夜想曲」を早く読んでみたい、と書いたが、1年も経たずしてその望みが叶えられることになった。出版元である風濤社に深く謝意を表したい。そして、何よりも嬉しいことに本作も面白さにかけては前作に勝るとも劣らないのだ。しかも本書は「スキタイの騎士」と「

『男性論 ECCE HOMO』by 出口 治明 書影

人物 / 世界史

『男性論 ECCE HOMO』by 出口 治明

人間が一番分からないのは、自分自身である。そして、男性が永遠に分からないのは、女性である。逆もまた真である。僕は、本の中では、「ハドリアヌス帝の回想」を偏愛しているが、ハドリアヌスが大好きだと広言している「テルマエ・ロマエ」の著者、ヤマザキマリさんが、男性論を書いたと聞けば、これもまた読むしか他にないではないか。 全く意外な本だった。確かに、男性論の体裁はと

『地図と領土』by 出口治明 書影

小説 / HONZ客員レビュー

『地図と領土』by 出口治明

僕の至福の時間は、大きい本屋をあてもなく歩き回り、目に飛び込んできた本をそぞろ読む時間だった。ベンチャー企業を経営するようになって、時間がなくなり、こうした楽しみは奪われてしまったが(今は、主として新聞の書評で代替している)、どれだけの大書店であっても、本書は、真っ先に目に留ったに違いない。フェルメールの大好きな1枚(の1部分)をそのまま表紙に使っているから

『第五の権力 Googleには見えている未来』by 出口 治明 書影

ビジネス / HONZ客員レビュー

『第五の権力 Googleには見えている未来』by 出口 治明

グーグルほどに興味をそそる企業は他にない。僕は、Gmailの大の愛好者だ。そのグーグルの総師シュミットが、初めて本を書いたという。これはもう読むしか他にないではないか。本書は7章から成っている。「未来の私たち」「アイデンティティ、報道、プライバシーの未来」「国家の未来」「革命の未来」「テロリズムの未来」「紛争と戦争の未来」「復興の未来」。では、グーグルには見

『アラブ500年史:オスマン帝国支配から「アラブ革命」まで』by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『アラブ500年史:オスマン帝国支配から「アラブ革命」まで』by 出口 治明

ムハンマドからウマイヤ朝、アッバース朝などの盛期に至るアラブの歴史は、わが国でも比較的よく知られている、と言っていいだろう。僕たちがいつも戸惑うのは、あの輝かしいイスラーム帝国の時代と、現代のアラブ社会の混迷振りとの著しい落差にある。その間隙を埋める意欲作が現れた。それが、本書である。 本書は、1516年のマルジュ・ダービク(アレッポ郊外)の戦いから筆を起こ

『遠い鏡』by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『遠い鏡』by 出口 治明

かつて書物には、クロニクル(年代記)という分野があった。廃れて久しいものがあるが、珍しく本格的なクロニクルに出会った。それが本書である。1,000ページ2段組みの大作ではあるが、これがなかなか面白くて、一気に読ませてしまうのだ。扱う時代は14世紀後半のヨーロッパ、主人公は、ピカルディーのクシーの殿、アンガラン7世(1340~1397)である。この半世紀は、ペ

『ケプラーとガリレイ: 書簡が明かす天才たちの素顔』by 出口 治明 書影

サイエンス / HONZ客員レビュー

『ケプラーとガリレイ: 書簡が明かす天才たちの素顔』by 出口 治明

とても興味深い本だ。作者は、コペルニクスの地動説を揺るぎないものにした2人の知の巨人を、2人の交換書簡を媒介にして、その素顔を見事に浮かび上がらせた。僕たちの社会常識では、「それでも地球は動いている!」と「ピサの斜塔でおこなわれたことになっている実験」が(どちらも、恐らく創作だが)「執拗に生き続けている」ため、ガリレイは天文学の父として令名赫赫たるものがある

『リヒトホーフェン日本滞在記―ドイツ人地理学者の観た幕末明治』by 出口 治明 書影

民俗・風俗 / 日本史

『リヒトホーフェン日本滞在記―ドイツ人地理学者の観た幕末明治』by 出口 治明

長い間、鎖国の殻に閉じ籠っていた幕末明治期の日本は、当時わが国を訪れた外国人の恰好の好奇心の対象となった。彼らは実に多くの著述を残した。僕が覚えている「名作」だけでも軽く10指近くになる。オールコック「 大君の都 」、ハリス「 日本滞在記 」、イザベラ・バード「 日本奥地紀行 」、アーネスト・サトウ「 外交官の見た明治維新 」、ヒュースケン「 日本日記 」、

『いにしえの光』by 出口 治明 書影

小説 / HONZ客員レビュー

『いにしえの光』by 出口 治明

不思議な読後感の残る小説である。ストーリー自体は、一見したところ、込み入っているようにも見えるが、本質は他愛もないと片付けてしまってもいいかもしれない。最愛の娘キャサリン(キャス)を亡くした初老の舞台俳優と、その妻がいる。ポルトヴェーネレ(僕は初秋に訪れた記憶がある。印象に残る美しい町だ)でキャスは自ら命を絶った。子どもを身籠っていた。 老俳優に初めての映画

『ヴェニスの商人の異人論―人肉一ポンドと他者認識の民族学』by 出口 治明 書影

教養・雑学 / 民俗・風俗

『ヴェニスの商人の異人論―人肉一ポンドと他者認識の民族学』by 出口 治明

ダークスーツを颯爽と着こなしたビジネスパーソンが、ビジネスバッグを手に所狭しと歩きまわる、電話を掛ける、キーボードをたたく――20年ほど前にロンドンで観たRSCのヴェニスの商人は、確かそのように始まった記憶がある。本書は、人口に膾炙したこのシェイクスピアの名作を俎上に載せ、片方ずつではあるが聴力と視力を失うという病にみまわれた1人の言語学者が、渾身の力を振り

『歴史学の将来』by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『歴史学の将来』by 出口 治明

碩学の本は、とてつもなく重い。来月、出版予定の歴史をテーマにした拙著の最終校正をしていたが、この本を読んで、一瞬、出版を取り止めようかと思ったほどである。歴史を書くということは、生半可な営為ではないのだ。そのことを、改めて痛いほど思い知らされた。 およそ何事であれ、物事を論じる時には、まず、言葉の定義を明確にしなければならない。ルカーチはオックスフォード英語

『木材と文明』by 出口 治明 書影

生物・自然 / 民俗・風俗

『木材と文明』by 出口 治明

私たちは、ついつい、日本は木の文明で、ヨーロッパは石の文明であると思いがちである。これに対して、「ヨーロッパは木材の文明だった」という歴史的事実の論証を、正面から試みたのが本書である。それだけでも興味をそそるではないか。 本書は5章から成っている。「第1章 歴史への木こり道」では、いわば総論が語られる。「もし我々に木材がなければ、我々には火もないだろう」そう

『人生の塩――豊かに味わい深く生きるために』by 出口 治明 書影

教養・雑学 / 民俗・風俗

『人生の塩――豊かに味わい深く生きるために』by 出口 治明

人であれ本であれ町であれ、人生の出会いのほとんどは、実は偶然からスタートする。著者の名前を目にした時、シチリアのエリチェの街並みが思わず瞼に浮かんできたので、懐かしくて本書を紐解くことになった。驚いたことには、エリチェの町と同じように、小ぶりだが、とても温かみがあり、深い余韻が残る美しくて素晴らし本だった。 著者は、フランスの著名な人類学者で、あのレヴィ=ス

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社会 / HONZ客員レビュー

『ビスマルク』 by 出口 治明

明治維新の後、新しい国創りのモデルを求めて欧米諸国に歴訪した岩倉使節団が最も感銘を受けたのは、ドイツ帝国宰相ビスマルクとの会見だったと言われている。明治日本のグランドデザイナー大久保利通や、その衣鉢を受け継いだ伊藤博文は、常に日本のビスマルクたらんと心がけた。こうして、ビスマルクの領導したプロイセンが、明治日本のモデルとなったのである。 本書は、そのビスマル

『問答有用 ― 中国改革派19人に聞く』 by 出口 治明 書影

社会 / HONZ客員レビュー

『問答有用 ― 中国改革派19人に聞く』 by 出口 治明

あなたが、隣人にどうしても馴染めないのなら、引越せばいい。しかし、昔の遊牧民ならいざ知らず、国は引越すことができない。どこかで、折り合いをつけるしかないのである。中国で過激な反日デモに遭遇した記者(著者)は問う。「日本のなかに根強くあった中国に対する『脅威論』と『崩壊論』に、無視を決め込む『消去論』までじわじわと広がる・・・『反日』のこぶしをふりあげて想像を

『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』 by 出口 治明 書影

人物 / 世界史

『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』 by 出口 治明

フェデリーコ(フリードリッヒのイタリア語読み。彼が愛したプーリアでは、今でもそう呼ばれているので、ここではフェデリーコと呼ぶ)のことを識ったのは、ブルクハルトが最初だった。学生時代の頃、愛読していた世界の名著(中央公論社)からである。彼のことを、もっともっと知りたいと思い、13世紀の西洋史の本を探してきては、むさぼり読んだ。パレルモやカステル・デル・モンテ、

『ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅』  by 出口 治明 書影

小説 / HONZ客員レビュー

『ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅』 by 出口 治明

今年は小説が豊饒だ。僕と同年、定年退職した65歳のハロルド・フライのもとに、ある日、1通の手紙が届く。かつての同僚のクウィーニー・ヘンシーからだ。彼女はがんで死にかかっているという。ハロルドは、返事を書き、ポストに向かいはしたものの、どうしても投函できない。20年前の彼女のハロルドに対する誠実さに、この返事は全く見合っていないからだ。次のポストを求めて歩き始

『フラクタリスト~マンデルブロ自伝~』 by  出口 治明 書影

サイエンス / HONZ客員レビュー

『フラクタリスト~マンデルブロ自伝~』 by 出口 治明

日経新聞の「私の履歴書」を長年、愛読している。やはり、本人が直接書いた物が、面白い。現在は、コトラー博士が連載中で、毎日、楽しみにしているが、本書は(尊敬するコトラー博士には申し訳ないが)桁外れに面白い。マンデルブロ集合の発見者、偉大なフラクタリスト、マンデルブロの自伝である。全体は3部から構成されている。 第1部は、生い立ちから20歳まで、第2次世界大戦の

『デモクラシーの生と死』 by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『デモクラシーの生と死』 by 出口 治明

刺激的な本だ。一言でいえば、デモクラシーの世界史である。上下2巻2段組みで900ページに迫る労作だが、知らないことがたくさん書かれており、読者を飽きさせない。本書は全体で3部に分かれており、上巻では「集会デモクラシー」と「代表デモクラシー」が、下巻では「代表デモクラシー」の続きと、「モニタリング・デモクラシー」が語られる。デモクラシーは、要するに、貴族制、王

『罪人を召し出せ』 by 出口 治明 書影

人物 / 世界史

『罪人を召し出せ』 by 出口 治明

いつかは読まなければいけない、誰しもそういった本のリストを持っているだろう。ヒラリー・マンテルの「ウルフ・ホール」は、この2年ほど、僕の読むべき本リストのトップページに、太字で書き込まれていたのだが、読む機会が訪れないうちに、先に続編を読む羽目になってしまった。それが、本書である。ヘンリー8世の右腕として活躍した稀代の政治家、トマス・クロムウェルの評伝のPa

『いまを生きるための政治学』 by 出口 治明 書影

社会 / HONZ客員レビュー

『いまを生きるための政治学』 by 出口 治明

著者の主張には、正直言って、多少の違和感を覚える。例えば、著者は政治的な立ち位置を左のように図示する(p.89)が、私見では、むしろ下のように整理したいところだ。 何れにせよ、僕は、バークやトクヴィルに最も親近感を覚えるので、進歩的な著者とは違って、恐らく心性は「保守」的なのだろう。しかし、政治的立場の違いにもかかわらず、この本は、とりわけ若い世代には、ぜひ

『自然を名づける―なぜ生物分類では直感と科学が衝突するのか』 by 出口 治明 書影

生物・自然 / HONZ客員レビュー

『自然を名づける―なぜ生物分類では直感と科学が衝突するのか』 by 出口 治明

知的興奮を覚える、とても面白い本だ。冒頭から(第1章)「科学者はなぜ魚という群の実在性を否定するのか?」という挑戦状が叩きつけられる。著者は、この本を書くことによって、この一見奇妙に見える問いに答えようと努める。何のために? 始まりは、カール・リンネである。若き天才的な植物学者として人生のスタートをきったリンネは、二名法(人間は、「ホモ・サピエンス」として表

『インダス文明の謎: 古代文明神話を見直す』 by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『インダス文明の謎: 古代文明神話を見直す』 by 出口 治明

僕は「歴史オタク」を自認しているけれど、インダス文明については、「文字が未解読である」「広域文明だった」「王墓がない」ぐらいのイメージしか、すぐには思い浮かばない。確かに、4大文明の中で、インダス文明は最も言及されることが少ない文明だ。それには、文字が未解読であることが大きいと考える。畢竟、歴史とは文字で書かれたものであるからだ。 本書は多くのインダス遺跡を

『絶倫の人: 小説H・G・ウェルズ』 by 出口 治明 書影

人物 / HONZ客員レビュー

『絶倫の人: 小説H・G・ウェルズ』 by 出口 治明

私たちは、「バーティ」あるいは、「H.G.」と呼ばれたH.G.ウェルズについて、何を知っているのだろうか。ジュール・ヴェルヌと並ぶ「近代SF小説の祖」(原子爆弾さえ予見した)であり、世界政府を夢見た理想的社会主義者(国際連盟でも演説した。また、フェビアン協会の有力メンバーだった)、性の自由を主張した華麗な女性遍歴者、また、人類が過去を共有できなければ、未来も

『新・ローマ帝国衰亡史』 by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『新・ローマ帝国衰亡史』 by 出口 治明

5月に出版されたのに、新書なので「薄くていつでも読める」と、ついつい積ん読本になってしまっていた。こんなに面白い本なのに、申し訳ないことをした、という自責の念でいっぱいである。 エドワード・ギボンの「 ローマ帝国衰亡史 」は、長年の愛読書の1冊であるが、この『新・ローマ帝国衰亡史』のどこが面白いのか。それは、ローマ帝国を辺境から眺めているからである。ローマ帝

『HHhH (プラハ、1942年)』 by 出口 治明 書影

小説 / HONZ客員レビュー

『HHhH (プラハ、1942年)』 by 出口 治明

さすがに、読書の秋である。実りは、豊かだ。本書も、まちがいなく、今年度に読んだ小説の中では、トップ3に入るだろう。ナチによるユダヤ人大量虐殺の首謀者で、責任者であったハイドリヒ。「第3帝国で最も危険な男」「金髪の野獣」と怖れられたハイドリヒを、ロンドンに亡命したチェコ政府が暗殺計画を立て(ハイドリヒは、当時、ドイツの保護領であったボヘミア・モラヴィアの総督代

『ヤルタからヒロシマへ: 終戦と冷戦の覇権争い』by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『ヤルタからヒロシマへ: 終戦と冷戦の覇権争い』by 出口 治明

本書は、日本の運命を決したヤルタ会談(1945年2月)からポツダム会談(7月)へ、そして原爆投下までに至る第2次世界大戦末期の激動の6カ月を再現した物語である。新しい発見はないが、関係者の証言が寄木細工のように丁寧に積み重ねられており、読者はまるでその場に居合わせたかのような、迫真の臨場感を味わうことができる。まさに、「神は細部に宿る」のである。 第1部は、

『名もなき人たちのテーブル』 by 出口 治明 書影

小説 / HONZ客員レビュー

『名もなき人たちのテーブル』 by 出口 治明

9部門のアカデミー賞を受賞した名画「イングリッシュ・ペイシェント」の原作者であるオンダーチェの新作なら、これはもう読むしかあるまい。そう思って手に取ったが、想像を遥かに超える素晴らしい佳品で、すっかり嬉しくなってしまった。 スリランカに住む11歳の少年マイナが、たった1人で大型客船オロンセイ号に乗って、母の待つ英国へ3週間の船旅をする。この小説は、成長して作

『ライス回顧録 ホワイトハウス 激動の2920日』  by 出口 治明 書影

人物 / HONZ客員レビュー

『ライス回顧録 ホワイトハウス 激動の2920日』 by 出口 治明

上下2段組みで650ページを超える分厚い本だ(訳者も4名で分担している)。しかし、どうして読まずに済ませることができようか。これは、9.11、米軍のアフガニスタン侵攻、イラク戦争、北朝鮮の核問題、リーマン・ショックと21世紀初頭の激動の日々を、ジョージ・W・ブッシュ政権の「頭脳」として大統領を支え続けたコンディ(コンドリーザ・ライスの愛称)の回顧録なのだから

『醤油と薔薇の日々』 by 出口 治明 書影

教養・雑学 / 民俗・風俗

『醤油と薔薇の日々』 by 出口 治明

タイトルに魅かれて読んでしまった。誰でも思うはずだ、「酒と薔薇の日々」に決まっているじゃないか、と。それを、よりによって「醤油」とは。 本書は、何気ない日常席活を綴った68本のエッセイをまとめたものである。初出は1993年とあるから、相当に古い。しかし、長谷川町子の「サザエさん」が永遠に新しいように、人間の本質は少しも変わっていないのだから、いいものはいいの

ヴァスコ・ダ・ガマの「聖戦」』 by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

ヴァスコ・ダ・ガマの「聖戦」』 by 出口 治明

1543年9月、倭寇の頭目の1人であった王直の船が、種子島に漂着し、乗っていたポルトガル人が、わが国に鉄砲を伝えた。これが、日本と西洋の初めての出会いであった、と言われている。このこともあって、ポルトガルはわが国には馴染の深い国ではあるが、では、どうしてポルトガルが逸早く海に乗り出し、海洋帝国を築き上げたのか、ということは、あまり知られていない。本書は、ヴァ

『都市の誕生: 古代から現代までの世界の都市文化を読む』by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『都市の誕生: 古代から現代までの世界の都市文化を読む』by 出口 治明

旅の楽しみの極みは、初めて訪れた見知らぬ街を当てもなく彷徨い歩くことに尽きる。「迷子になることは、都市を本当に体験する唯一の方法なのだ。」 著者は、「この本は、自分の好きなページから読んでもらいたい」と、まえがきで述べる。8章から構成されたオムニバス映画のような本書は、読者を積極的に迷子に誘うのだ。「迷子になることは心配しなくてもいい」と。 「第1章 到着」

『気候で読み解く日本の歴史―異常気象との攻防1400年』 by 出口 治明 書影

生物・自然 / 日本史

『気候で読み解く日本の歴史―異常気象との攻防1400年』 by 出口 治明

歴史は文系の学問ではない(そもそも、大学が文系・理系と分かれているのは、先進国ではわが国ぐらいのものではないか)。グローバルには、自然科学の知見を存分に活用し、例えばBC1200年のカタストロフィや、モンゴル・ウルス崩壊など、歴史的な超大イベントの原因を気候変動に求める見解が有力であるが、日本史においては、著者の作品以外にそういった書物にはこれまであまり出会

『特派員ルポ サンダルで歩いたアフリカ大陸』by出口 治明 書影

社会 / 民俗・風俗

『特派員ルポ サンダルで歩いたアフリカ大陸』by出口 治明

次はアフリカの時代が来る、と言われて、久しいものがある。マリでの騒乱や、それと関連したアルジェリアでの人質事件、エジプトの混迷ぶり等、アフリカから発信される情報は、このところ、後向きのものが多い。それに、アフリカは、何しろわが国から遠い。私たちは、この古くて新しい大陸について、一体、何を知っているというのだろう。 僕は人が学ぶ方法は、3つしかないと考えている

『愛国・革命・民主:日本史から世界を考える 』  by 出口 治明 書影

日本史 / HONZ客員レビュー

『愛国・革命・民主:日本史から世界を考える 』 by 出口 治明

「花には香り、本には毒を」という言葉が好きだ。ベンチャー企業を経営するようになって忙しくなり、めっきり読書量が落ちたが、それでも平均すると週に4~5冊は読んでいるのではないか。本と旅しか趣味がないからではあるが。このコラムは、その中で、体内に毒がまわったものを選んで書き連ねているのだが(毒気を感じるのは、4~5冊に1冊くらい)、このところ、嬉しいことに、毒気

『チーズと文明』 by 出口 治明 書影

民俗・風俗 / 世界史

『チーズと文明』 by 出口 治明

偶に芳醇な赤ワインを飲み、フランス料理をいただくと、何故か、食後に無性にチーズが食べたくなるときがある。でも、これは何も人間に限った話ではない。9,000年前に、西アジアで生まれたチーズは、神々も大好きだったのだ。何しろ、シュメールの豊饒の女神イナンナは、チーズに魅かれて夫に羊飼いのドゥムジを選んだくらいなのだから。 本書は、人間の文明史と交差するチーズ9,

『ユートピアの歴史』 by 出口 治明 書影

アート・スポーツ / HONZ客員レビュー

『ユートピアの歴史』 by 出口 治明

まことに、「百聞は一見に如かず」である。本書には、カラーの図版がふんだんに使われており、読者は、天国(例えば、「ムハンマドの楽園」、図版6)や楽園(例えば、「神々のいるアルカディアの風景」、図版12)が、およそどのようなものか、一目で了解できるのだ(因みに、このような図版入り書籍が発展したのは、大元ウルス治下のことである。全相本とよばれていた。宮紀子「モンゴ

『ローマ政治家伝I カエサル 』 by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『ローマ政治家伝I カエサル 』 by 出口 治明

20世紀の初め、現代につながるローマ共和性研究の基礎を築いた碩学ゲルツァーは、共和制末期のポンペイウス、カエサル、キケロの伝記を書いた。嬉しいことに、この3冊がゲルツァーの弟子の手により、揃って訳出されることになった。本書はその第1巻である(9月1日現在、カエサルとポンペイウスの2巻が出版されている)。 ゲルツァー史学の特徴は、何よりも人間関係に着目し、当時

『社会心理学講義』by 出口 治明 書影

医学・心理学 / HONZ客員レビュー

『社会心理学講義』by 出口 治明

ど真ん中の直球を投げられた。これはもう振り切るしかないと念じて、必死でバットを振り抜いた。どうにか当たることは当たったのだが、想像を絶するほどの、とてつもなく重いボールだった。例えてみれば、こんな感じだろうか。 冒頭から著者の挑戦状が、読者に叩きつけられる。本書は、社会心理学を俯瞰する教科書ではない、と。人間をどう捉えるか、願いはそれだけだ、と。生物や社会を

『シャルル・ドゴール  民主主義の中のリーダーシップへの苦闘』 by 出口 治明 書影

人物 / HONZ客員レビュー

『シャルル・ドゴール  民主主義の中のリーダーシップへの苦闘』 by 出口 治明

8月15日は、日本がポツダム宣言を受諾して第2次世界大戦が終結した日であるが、欧州の戦いでは、「自由フランス」を率いてドイツに徹底抗戦したのがドゴール将軍であった。ドゴールは、レジスタンスに象徴される救国の英雄であったが、臨時政府首相を1946年初頭に辞任した後は、不遇の時代(本人の弁では「砂漠の横断」)を過ごした。そして、1968年、67歳の老雄は、アルジ