ノンフィクションはこれを読め!

刀根 明日香

1991年、三重県生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業。バスケットボール歴9年。酒飲み。好きなジャンルは歴史、人文系、スポーツ系、ゆるいもの。最近は歌舞伎を始めとする伝統芸能に興味あり。

(2024年当時)

刀根 明日香の記事

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65記事

『ウイルスは生きている』家なき子ウイルスと生命の輪 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『ウイルスは生きている』家なき子ウイルスと生命の輪

「家なき子」のウイルス。生物の細胞という部屋に入って、細胞膜という「壁」に囲まれ、リボソームという細胞内でタンパク質を作る役割を持つ言わば3Dプリンターを自由自在に操り、自身のDNAをたくさんコピーする。部屋が自分のコピーでいっぱいになったら、隣の部屋へと出て行く顛末となる。一見立派な策略を持っていそうなウイルスだが、純化するとただのタンパク質と核酸という分

『ポンコツズイ』ディスって笑え!病気を治せ! 書影

医学・心理学 / 教養・雑学

『ポンコツズイ』ディスって笑え!病気を治せ!

著者の矢作理絵さんが患った病気は、100万人に5人の確率でなる「特発性再生不良性貧血」という厚生労働省指定の血液難病だ。本書では、著者曰く「汚くて、ダサくて、弱くて、もがきあがく、かなりかっこ悪い」闘病生活を追っていくのだが、その語り口が内容に似合わずとてもチャーミング。読み終わったあとには、元気と勇気で心が満たされる、そんな一冊です。 矢作さんは当時33歳

『私のインタヴュー』「女優の私」から「個人の私」へ 書影

教養・雑学 / 人物

『私のインタヴュー』「女優の私」から「個人の私」へ

高峰秀子という大女優が市井の人々に対して抱いた恐れと羨望の気持ちを、本書はとても繊細に表している。 本書が最初に出版されたのは、1958年である。その後、2012年に新潮社より復刊され、今回文庫として再登場した。高峰秀子にとって、『巴里ひとりある記』と『まいまいつぶろ』に続く三冊目となる。今まで自分という人間に焦点を当てることを避けていた彼女が、いきなり堰を

『数学の大統一に挑む』こんな私でも数学を好きになれますか? 書影

サイエンス / 人物

『数学の大統一に挑む』こんな私でも数学を好きになれますか?

「数学なんて勉強する人たちは、いったい何者なのだろう。」ノンフィクションの中でも、私が挫折した本数ナンバーワンは数学本である。目に見えない概念にめっぽう弱いため、数式に拒否反応が出てしまう。しかし、私のこの意見に「同感!」と思った人にこそ、是非とも読んでもらいたい一冊だ。 著者であるエドワード・フレンケル氏が数学者として自分を見出したのは、石油ガス研究所(日

『漫画家、映画を語る』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『漫画家、映画を語る』

忘れられない決め台詞がある。何度も何度も読み返す、あの漫画のワンシーン。そのワンシーンの背後にある、物語、演出、技法、テーマ、著者は一体どのようにしてそこにたどり着いたのだろうか。 アップやロング、カットバックやフラッシュバックなど多用し、コマのなかの絵を三次元的な構図にすることで奥行きをだすこと、これを「映画的手法」という。映画的手法を取り入れた先駆者は、

一人の女性の生き様『ナグネ』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

一人の女性の生き様『ナグネ』

本書は国家や民族、宗教という枠組みを越えた1人の女性の話だ。彼女の生き様には心がぱっと晴れるような力強さがある。そして、彼女の人生を追うことは、日中韓の複雑な政治背景と、日本が忘れかけている負の歴史、また中国で弾圧されているキリスト教信者の見えざる困難を知るきっかけとなった。 著者は『絶対音感』や『セラピスト』を以前出版された最相葉月さんだ。駅のホームで中国

『日本国最後の帰還兵 深谷義治とその家族』 書影

人物 / 日本史

『日本国最後の帰還兵 深谷義治とその家族』

1978年、日中平和友好条約が締結された。その際の政治の駆け引きに利用されたひとりの軍人、それが深谷義治さんだ。深谷さんは、終戦時、当時の上官から「任務続行」の命を受ける。以後、13年間中国に潜伏、中国当局に逮捕され、獄中生活は20年4ヶ月にも及んだ。拷問を受け、生死をさまよい、家族が迫害にあっても守り続けたもの、それは一体何なのか。本書は、義治さんの次男、

世界地図のいろいろ『オン・ザ・マップ』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

世界地図のいろいろ『オン・ザ・マップ』

地図に思いを馳せるーー残念ながら私はそんなロマンチストではなく、地図も全く当てにできない方向音痴だ。しかし、宝の地図や、新大陸と聞けば、やはりワクワクせずにはいられない。古代の人々にとって、地図とはそのようなものであった。南北アメリカが初めて地図に登場した時代、アフリカ大陸の内陸部の状態が分からず空白だった時代、それぞれの時代を生きた人間が持つ世界観や野望が

『天人 深代惇郎と新聞の時代』新聞が好きでたまらない連中が新聞をつくっていた 書影

人物 / 社会

『天人 深代惇郎と新聞の時代』新聞が好きでたまらない連中が新聞をつくっていた

朝日新聞の顔とも言える「天声人語」。様々な名コラニストを生んできたが、深代惇郎もその一人だ。初めて新聞をつくる人の素顔を知って、かっこいいなと思った。同時に、新聞が大好きでたまらない人たちがつくった新聞が広く読まれていた時代があったことを知った。 「昭和」と「新聞」、私にはどちらも馴染みがない。私は平成3年生まれ、物心ついたときからインターネットでニュースを

絵筆を捨てて自然に学べ『子どもに伝える美術解剖学』 書影

教養・雑学 / アート・スポーツ

絵筆を捨てて自然に学べ『子どもに伝える美術解剖学』

著者の布施英利先生が行う絵画教室はとてもシンプルだ。絵筆を置いて、自然へと繰り出す。そして自分のはらわたが疼くのを確認したら、素直に絵に描いて表現しよう。「そんなに簡単に言われても」、と困るかもしれないが、自分を表現するには、自然を目の前にして、自分の中で何が起こっているのかを理解しなければならない。 本書は2000年10月に『絵筆のいらない絵画教室』として

わたしたちは星の材料でできている『あなたのなかの宇宙』 書影

サイエンス / 生物・自然

わたしたちは星の材料でできている『あなたのなかの宇宙』

宇宙を知るには、望遠鏡をのぞき、古生物を知るには、顕微鏡をのぞく。プレートテクニクス、または地球温暖化について知るには、私は何を理解すれば良いのだろう。自然科学は、理解に達すればロマンチックだが、それまでの過程が難しくて、なかなか進まない。特に、宇宙は物理や化学が大の苦手な私には手の届かない場所だった。 でも本書を読んで、宇宙のビッグバンについて、はじめて理

最もセクシーでクールな『ロボコン』 書影

サイエンス / 教養・雑学

最もセクシーでクールな『ロボコン』

本書を読み始める前は、「よくある先生と生徒の感動物語かな」くらいに、軽く考えていた。しかし、そこで繰り広げられているロボット選手権があまりにもレベルが高く、ただの感動物語では済ませられない何かがあった。 高校生ロボット世界選手権「FIRST」(For Inspiration and Recognition of Science and Technology)

本が導く「楽しい」のその先 『ROADSIDE BOOKS 書評2006-2014』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

本が導く「楽しい」のその先 『ROADSIDE BOOKS 書評2006-2014』

ページをめくるたびに、心が強く突き動かされる本がある。少し時間が経つと、そのときの興奮や気づきが薄れてしまうものだから、何回も何回も読み直す。忘れた気持ちを拾い集めるために。 都築響一さんが2006年から2014年の間に書いた書評を編んだ『ROADSIDE BOOKS』は、私にとってまさにそういう本だった。 都築さんには、一貫して変わらないスタンスがある。

江戸の科学する心『江戸の理系力』 書影

教養・雑学 / 日本史

江戸の科学する心『江戸の理系力』

「日本を知るには、明治維新前の科学を見るのがおもしろい。」雪の科学者、中谷宇吉郎が自身のエッセイの中で語っていた。日本の科学は、明治以後になって輸入され、模倣されたものが多い。だから中谷宇吉郎は、明治維新前の日本の科学を解釈し、独創性ある隠れた科学を堀り起こした。特に江戸時代は、自然科学に目覚め、数学を生活の中に取り入れ、医療も格段に発展した時期でもある。本

『ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい』

表紙には、マンハッタンのクライスラービルを、窓に手をあてて眺めている少年がいる。しかし、よく見ると彼の右手にはマジックが握られ、窓ガラスには数式がびっしりだ。 野球帽を逆さにかぶった少年の名前はジェイコブ・バーネット。ジェイコブ君は8歳で大学レベルの数学、天文学、物理学のコースを受講し、9歳で大学に入学した、言わば天才少年である。窓ガラスの数式は、大学入学直

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HONZ活動記

HONZ活動記 -合宿レポート@鬼怒川温泉

こんにちは!「2番」の刀根明日香です。なぜ「2番」なのかは、後ほど説明します。今回は、12月6日に行われたHONZ合宿@鬼怒川温泉の模様を、たっぷりとお届けします。とくに後半は、重大な告知もあるのでお楽しみに。それでは、どうぞご笑覧あれ! ある日突然、成毛眞から号令がかかった。12月に合宿を行い、しかも今回は豪華にバスを貸し切るのだという。いずれにせよメンバ

『東洋の至宝を世界に売った美術商: ハウス・オブ・ヤマナカ』 書影

教養・雑学 / アート・スポーツ

『東洋の至宝を世界に売った美術商: ハウス・オブ・ヤマナカ』

「美術品の世界へようこそ!」と両手を広げて迎え入れてくれるのは、本書の著者、朽木ゆり子さんだ。朽木さんが描く、美術品の背後に渦巻く歴史の数々に、読者は息をつく暇もない。ノンフィクション特有の、頭の中に次々とわき起こる知的興奮で四六時中頭がいっぱいになる。そんな著者の代表作、『ハウス・オブ・ヤマナカ』が文庫版として再登場した。 本書の序章だけ紹介したい。タイト

『マチュピチュ探検記 ― 天空都市の謎を解く 』 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『マチュピチュ探検記 ― 天空都市の謎を解く 』

私が本書を読む前、マチュピチュは「アンデス山脈の頂きに建つ、精巧な石積みによるインカの遺跡」程度の知識しか持ち合わせていなかった。たしかインカ皇帝の財宝が隠されているとか……。現在この問いに対して、確かな答えは見つかっていない。あらゆる学者が独自の答えを持ち、証明しようと躍起になっている途中だ。あらゆる仮説が飛び交うなか、本書の著者が見つけた答えは美しい。

素晴らしき世界の食卓『小泉武夫のミラクル食文化論』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

素晴らしき世界の食卓『小泉武夫のミラクル食文化論』

「(4年目にして)授業に出て、勉強しよう」と思い立った矢先、就活が始まった。説明会や面接に時間をとられ、授業に出る暇もない。全くストレスが溜まる。鬱憤を晴らすために手に取る本は、小泉武夫先生の著書だ。就活なんて止めて、辺境に食べ歩きに出かけようか。未来を案ずるより、食卓に並ぶ納豆、キムチ、くさやが気になる。ああ、お酒が飲みたい。先生の著書は私のオアシスである

あやつられたのは人間?『欲望の植物誌』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

あやつられたのは人間?『欲望の植物誌』

人間の欲望をあやつる植物。気がついたら植物の虜となり、子孫繁栄のための奴隷となる。なんて怪しい。一体どんな色、形なのだろう……。 なんてことはない。本書の主役である4つの植物とは、リンゴ、チューリップ、マリファナ、そして、ジャガイモである。これらは人間が思うがままあやつりたくなるほど魅力的である。リンゴは甘ければ甘いほど良く、季節問わず食べられるなら最高に嬉

『世界ふしぎワンダーライフ50』新刊超速レビュー 書影

生物・自然 / 新刊超速レビュー

『世界ふしぎワンダーライフ50』新刊超速レビュー

写真集は人の個性を十二分に表す。写真家の個性はもちろんだが、それを手に取る読者の個性も赤裸々に映し出す。例えば、鰐部祥平は 『朽ちる鉄』 を手に取る。土屋敦は 『温泉川』 を手に取る。内藤順は 『パイスラッシュ』 を手に取る。それぞれどんな内面を写真集が代弁しているのか、読者の想像にお任せしよう。そして、私が手に取ったのはこの写真集である。 本書で紹介される

3.11後の世界『線量計と機関銃』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

3.11後の世界『線量計と機関銃』

線量計と機関銃。ふたつは戦時と現在をまたいで同じ役割を果たしている。戦時中、機関銃は科学の発達により「誰でも簡単に大量殺戮が可能な」兵器として発明された。機関銃を背負った人々は誰でも簡単に、躊躇せず、敵を打ち負かす。専門的な技術を必要としない武器は、当時の人々に衝撃を与えた。 そして3.11後の現在。人は線量計を片手に取り、原発と向き合う。かつて、エネルギー

今年の夏はどこへ行く?『日本全国津々うりゃうりゃ』 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

今年の夏はどこへ行く?『日本全国津々うりゃうりゃ』

夏だ! 海だー! 海へ行こう! 最近、夏のにおいがむんむんする。こういう日は、海でバシャバシャしたい。共感する人も多いのではないか。そこで、今日はとっておきの一冊。海といったらあの人、宮田珠己。違いますね。海の変な生き物といったら、宮田珠己。まだ、彼の最強脱力系お笑いエッセイを読んだことない人、海! 海! と気持ちが先走っている人、旅に思いを馳せる人、必見で

内田先生に学ぶ『街場の読書論』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

内田先生に学ぶ『街場の読書論』

本書は著者がブログの中の読書関連エッセイと、活字媒体に発表した文学と書物についてのエッセイをまとめたものであり、ウチダ思想がぎっしりつまっている。400ページあり、たった1680円。かなりお買い得であろう。「文芸棚」、「人文棚」、「ウチダ本棚」、「教育棚」、「著作権棚」、そして「表現とリテラシー」と、全部で5つの本棚と1つのウチダ論という構成である。本書は「

『とは知らなんだ』を一般教養のテキストに! 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『とは知らなんだ』を一般教養のテキストに!

著者の本に出会ったのはHONZで 『馬車が買いたい!』の書評 を見つけたときだ。成毛代表の言うとおり、純粋に本を読み、楽しみ、気がついたら私はフランスのまっただ中にいた。 『とは知らなんだ』は著者が「オール讀物」に連載したエッセイの2005年5月号から2008年4月号までの分をまとめたものである。今回は、フランスブームの代わりに「鹿島ブーム」が私に到来した。