HONZ卒業旅行&忘年会 in 伊豆・番外編「今、読んでいる本」
我々が峠恵子さんをお招きしたのは、彼女の歌が聞きたいという思いがあったからでもある。そのため2次会はカラオケルームを確保していた。ほどなくして峠恵子リサイタルが始まるかと思いきや、いきなり本の話へと大きく舵が切られる。峠恵子の歌声と折り重なるように本の紹介が始まり、「あ〜、あれね!」と懐かしい掛け声が飛び交った。往年の名曲たちと最新のノンフィクション本に、時
(2024年当時)
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我々が峠恵子さんをお招きしたのは、彼女の歌が聞きたいという思いがあったからでもある。そのため2次会はカラオケルームを確保していた。ほどなくして峠恵子リサイタルが始まるかと思いきや、いきなり本の話へと大きく舵が切られる。峠恵子の歌声と折り重なるように本の紹介が始まり、「あ〜、あれね!」と懐かしい掛け声が飛び交った。往年の名曲たちと最新のノンフィクション本に、時
HONZ活動記 in 伊豆① は こちら HONZ活動期 in 伊豆・番外編は こちら 海底温泉でウミガメやサメを堪能していたらあっという間に18時になった。さぁ、宴会の時間だ! 一同、宴会場「金波」に集合する。舞台、金屏風、スタンドマイクと会場は整った。皆、浴衣に着替えたかーい? 「昭和の社員旅行」というコンセプトの通り、形式をきちんと守ろう。まず、代表を
2024年7月15日、13年間続いたHONZは遂に幕を閉じた。初期メンバーはたった10人のキュレーター勉強会から始まり、その後メンバーが入れ替わり立ち替わり、24年7月には総勢24人という大所帯にもなったが、「もう、やり切ったかな」というテンションで呆気なく終わった。 「せっかくだから卒業旅行をしよう」成毛眞の呼びかけにより、師走の忙しい時期にもかかわらず2

「私のもの!」という感情が私たちの生活にどのような影響を及ぼすのか。本書を読むと、何気なく過ごしていた日常が全く異なって見える。「座席のリクライニングはどこまで自由に倒せるのか?」「ディズニーランドでお金を支払って最前列でショーを観れるのは、平等なのか?」意識せずにはいられなくなる。 「所有を設計する」とは耳慣れない言葉であるが、社会には「所有」を生かした工

1989年、昭和から平成に変わる時代に、女暴走族を取り上げた『ティーンズロード』という雑誌が並んでいたのをご存知だろうか。初代編集長の比嘉健二さんが当時の回想を交えながら書き上げた本書は、第29回小学館ノンフィクション大賞を受賞した。 女暴走族というニッチなジャンルで賞を受賞!? 小学館ノンフィクション大賞は、「未発表作品に限り、海外冒険旅行や、博物誌、観察

私は本が持つ「熱量」に惹かれる。著者がどうしても書き残したかったものや、誰かに伝えたかったこと、自分にしか出来ないことなどを、汗かきながら書き上げる姿を想像できる本が好きだ。本書『千葉から~』の熱量は計り知れず。私にとって今年No.1の一冊になるだろう。 著者は、1992年千葉県生まれ。大学受験や失恋、就活などを経験する中で、卒業してから引きこもり生活に突入

連載の2回目は、いよいよ2022年に印象に残った本について熱く語り合います! APU活動記①は こちら 立命館アジア太平洋大学(APU)ライブラリーにやってきました。ウェルカムボードを見て、メンバー一堂のテンションが一段と上がります。様々な個性を持ったメンバーが一同に集い、やたらと熱い志で本を紹介する、HONZにとってはお馴染みのコーナー。テーマは「この数年

こんにちは!元学生メンバーの刀根です。久しぶりの合宿レポートに胸が高鳴ります!2023年1月初旬、読売新聞読書委員として活躍された皆様の集まりにHONZもちょこんと乗っけていただき、はるばる大分県まで行ってきました。私、年末からとっても楽しみにしていたのです。だって普段読んでいる本の著者たちに会えるのだから! そして、今回の旅がさらに特別なのは、出口治明さん

「利他」という言葉を本屋さんで見る機会が多くなってきた。大辞林で「利他」を引くと、「自分を犠牲にしても他人の利益を図ること」と書かれてるが、「犠牲」や「利益」という言葉がなんだかピンとこないなぁ。本書の著者・伊藤亜紗さんは、前書きで「利他」について研究を始めたきっかけをこのように話している。 現代においては、「誰かのため」ということがあまりに単純化して考えら

知識が好奇心を育むのだ。好奇心を持続させるために、ノンフィクションを読み続ける。あらためて学ぶことの楽しさを実感したのは、本書『子どもは40000回質問する』を読んだからだ。 本書によると、好奇心は、少し知っていることが肝心だと言う。全く知らないのでは手が伸びない。反対に知りすぎていても好奇心は育たない。その塩梅が大事で、だからこそ広く浅く興味を持つことは、

何かの入り口にいるような予感。芽吹く感じ。社会が、企業が、個人の生活がどんどん変わっていく。不確実な時代と呼ばれているが、芽吹きを肌で感じながら日々を生きている。 本書『自分で始めた人たち』にも、同じような空気感があった。政治に頼らず、市民が自治体と手を繋いで、地域を変える旅に出る。コロナ騒動の最中、また個人の尊厳が注目されている今、地域がどう動き出している

記者の仕事は過程がそのまま表に出てくるのが魅力的だ。記者が何に問題意識を持ち、どう行動して、どんなメッセージを込めるのか。好きな報道や作品には、記者の怒りや悲しみ、執念さえも感じることが出来る。記者一人ひとりの存在自体が物語性を帯びていて面白い。 では、「地方紙」の記者はどうか。全国紙の記者と地方紙の記者の違いについて、私は本書を読むまで考えたことがなかった

2020年感染症のパンデミックのなかで、最初に声を上げたのは、中国・武漢の一人の医師だった。また、私たちの暮らしを守るのは、医療従事者や保健所の職員らの献身的な働きだったり、市民の自粛生活だったりする。はて、国は何をしてくれたんだっけ? 私が国に求めていることと、国がしてくれることには大きな乖離があると気づいた。 私の暮らしには、政治の影響はあまりないように

本書から得られるのは、海上での人権と労働問題、海洋汚染の実態、過剰漁業など表面上の知識だけではない。本気で取り組む際に人間はどこまでやれるかの挑戦であり、そのための準備や緊急時の冷静な対応、大量の情報と感情を文章にする熟練の技など、ジャーナリストがたどり着く1つの到達点だと思う。 私がノンフィクションを読み始めた動機のひとつに、世界のニュースの背景が知りたい

「移民」という言葉を聞いて、構えてしまう人は多いのではないだろうか。 日本生まれ日本育ちの私が、「移民」から連想するのは、難民だったり、昔読んだ井田真紀子の『小蓮(シャオリェン)の恋人』に出てくる残留孤児二世の話だったり。または、一緒に働いているベトナムからの留学生だったり。私は無意識に迎え入れる側の人間となり、社会問題として一歩引いた目線で「移民」を眺めて

内心被曝 ー 南相馬市に住む主婦が口にした言葉である。外部被曝でもなく内部被曝でもない。住民の一人ひとりが東日本大震災深く傷を負い、心の奥に何万シーベルトという放射能を貯めてきた。この言葉を聞くと、おどろおどろしく感じるかもしれないが、ふと自分の生活を省みると、コロナ禍において得体の知らないものに傷つけられてきた心と重なるのではないだろうか。 本書は決して暗

本書を読んで思ったのは、私も生命科学を理解できるんだな、という単純すぎる驚きです。私は科学に憧れがあったので、流行りのものや面白そうなものは一通り読んでいました。しかし、ワクワクするまではいかない。たとえば、伝記スタイルであれば、科学者の破天荒な人生に惹きつけられて楽しめることもあります。でも、「一から分かる科学〜」のような、科学の魅力をストレートに伝える本

本書は東京の自分に問いかける。地方の原発で作り出される電気を頼りに生きる自分の生活を、果たしてどこまで理解しているのだろうか。 本書『白い土地』は、新聞記者である著者が福島県に拠点を置き、そこに生き抜く人々に焦点をあてた人物ルポタージュである。「白い土地」とは、《白地》と呼ばれる「帰還困難区域」の中でも「特定復興再生拠点区域」に含まれない土地を指す。2017

社会人になってよく考えることがある。「仕事中に個人として意見したり行動することって、そんなに良くないことですか?」たとえば、あるミーティングで、私自身の意見を述べるときに、必要以上にプレッシャーを感じて「私個人の意見としましては……」なんて、いきなり真面目口調になってしまう。また、ミーティング後に上司から「会社の発言となるから、勝手な意見は言わないように」と

陽ざしの強い京都、すだれ、浴衣、冷やしきゅうり……。今年の夏は京都旅行も難しいかな、と残念に思っていたが、本書を読むと京都の街並みが鮮やかに浮かび上がってきた。本書では、今から30年ほど前にタイムスリップ。祗園祭や茶会、料亭、花街などいたるところで活躍するのは「配膳さん」と呼ばれる職業人である。配膳さんはまるで「おもてなし」の職人のようだ。 著者は配膳さんを

今年も3月を迎えた。2011年3月11日から9年が経ち、毎年震災本が出版され続けている。私も3月は震災ものを読むことを習慣としてきた。楽しみや興味本位からではない。「何も知らなくてごめんなさい。何もできなくてごめんなさい」といつも申し訳なく手に取る。 9年経った今、世の中は変わったのだろうか。現場の第一線で働く人の命と健康を守り、敬意を払う世の中になっている

たとえばあなたが会社員で、「あなたはなぜその部署で働いているのか」と質問されたとしよう。自分で志望した、先輩に推薦された、いきなり指名された、など様々な理由があると思う。そしてあなたは今、その理由を過去に遡り、上司や同僚との会話、これまでの人事移動、そして大学で勉強していた頃の風景を思い返しているかもしれない。 今の自分を鑑みる時、過去を振り返る。過去が今の

いきなりだが、私は自分の頭に自信がない。HONZに学生メンバーで入って早8年。8年の月日は早く、気付けば社会人5年目になっていた。少しずつ仕事を任されるようになったが、「考えて動く」ことの難しさを日々感じている。そして私は心のどこかで同志と呼べる仲間を探している。そして、同志に伝えたい。私たちだって、頑張れば、何かしらになれるってことを。そして、この世には話

著者の小林宙(そら)くんは、15歳でタネの会社を起業した。会社名は、「鶴頸(かくけい)種苗流通プロモーション」。どんな会社かというと、伝統野菜を主とするタネと苗の販売、そして農薬と化学肥料不使用の野菜(伝統野菜)の販売を生業としている。 本書は、宙くんが各地域の伝統野菜を守るために、「流通」を生業とした事業を立ち上げるまでの、ストーリーが綴られている。どうし

著者の出口治明さんは不思議な人である。何が不思議って、分厚い歴史書を何冊も出しているにも関わらず、真の正体はビジネスマンなのだ。今は、立命館アジア太平洋大学(APU)の学長をされている。どうして出口さんは何冊も歴史についての分厚い本を出版するのだろうか。趣味なのか、それとも哲学や宗教に疎い人が増えすぎた日本を危惧して、使命感を持って書かれているのだろうか。

キャスリーン・フリンさん、日本へようこそ!著者のキャスリーン・フリンさんは、前作『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』で日本で熱烈な支持を受け、テレビ番組『世界一受けたい授業』にも出演している。本書は、邦訳された2冊目の本であり、期待を裏切らず、彼女ならではの感性をキュートな言葉にのせ、読者を楽しませてくれる。 前作の原題は、『The Kitchen C

「夜間飛行」という言葉を目にした時、ある人はサン=テグジュペリの『夜間飛行』を、ある人はちあきなおみの「夜間飛行」を、そしてある人は街の一角に佇むバー「夜間飛行」を思い浮かべるかもしれない。本書のタイトルは、主人公がずっと身につけていたゲランの香水の名前からヒントを得たものだ。「女性らしさを失うことなく、男性中心の社会でも自分の立場を貫き、冒険的で志のある女

まだ肌寒い3月、成田空港から11時間のフライトを経て、あなたはオランダ・アムステルダムに降り立った。隣には写真家の植本一子さんがいる。ここからあなたの旅が始まる。オランダ・ドイツ・オーストリア・アイルランド・イギリス・フランス・アメリカー7カ国14都市、17の美術館を巡る旅。全部で35作品、あなたはフェルメールに会いに行く。 あなたはフェルメールについて、ど

被差別部落や赤線という言葉が、ノンフィクションというジャンルを読み始めて、目に止まるようになってきた。ノンフィクションを読まなかったら、例えば新聞や雑誌でそれらの言葉を目にしたとしても、特別興味をもって立ち止まるようなことはなかったかもしれない。ただ、読む本のジャンルが広がると同時に、それらの言葉が自分が生きる上でとても重要な意味を持つのではないかと思うよう

福知山線脱線事故 ー 2005年4月25日、JR西日本の宝塚駅発の電車がカーブを走行中に脱線、107名の死者と592名の負傷者を出した巨大惨事である。加害企業の発表によると、事故原因は「運転手の不注意とブレーキ遅れ」。つまり、107名の命を奪ったのは、あくまでも個人の注意散漫によるミスが原因であると発表した。 少し時が経ち、国土交通省も事後原因を報告したが、

歩くという行為に魅せられた冒険者は、世界の隅々まで足を運び、新たな発見を得る。それが未開の地であろうと、多くの人が足を運ぶ場所であろうと、日数をかけて歩くと、頭がスッキリして、自分の価値観が明白になる。本書の著者、小島聖は歩くことで何をみつけたのだろうか。 彼女が最初にトレッキングに魅せられたのは、初めて訪れたネパールでのこと。カトマンズ市内を観光し、ポカラ

爆弾が降りしきる中、私と同じように生活を営む人がいる。そんな当たり前のことを、本書を読むまで忘れかけていた。銃撃戦がひどい地域の住民は全員避難して、住居のなかは空っぽになっているというのは自分勝手な思い込み。バナは爆撃と銃撃戦が日々繰り返される街で生活していた。 バナの家族は、お父さん、お母さん、弟のモハメッド、戦争の最中に生まれた弟のヌール(光という意味)

日中戦争当時、石原芫爾が満州事変を首謀し、満州国を建設後、彼が次に目指したのは将来国を担っていくエリートの育成である。満州国の最高学府として建設されたのが「満州建国大学」。満州国が当時国是として掲げていた「民族協和」の実践場として、日本人の定員を半分に制限し、中国、朝鮮、モンゴル、ソ連のなど様々な国から学生を募った。 本書は、著者が建国大学卒業生たちを訪れ、

「疾風(はやて)」。離陸速度、最高速度、旋回、急降下等、その性能の高さは世界の中でも群を抜き、第二次世界大戦中、米国軍に「悪魔の機体」と名付けられた。それだけではなく、何よりもパイロットの安全を考え、彼らが迅速に機外脱出出来るよう設計されていた。戦後、米軍はその性能を分析し、驚愕した。 本書は「疾風」を世に生み出した中島飛行機と、そこで生きた人間の物語である

粉の飛散が少なく人の肌にやさしい「ダストレスチョーク」と、ガラスやホワイトボードなどつるつるした素材に発色良く書くことができ、濡れた布で簡単に消すことができる筆記具「キットパス」。活気的な2つの文房具を開発したのは、日本理化学工業という会社だ。 チョークは0.1mm単位の品質基準が求められる。JIS規格に適合するチョークの太さは11.2mmで、許されるのは±

4年前に読んだ『マチュピチュ探検記』が面白くて、その後は本屋さんに行く度に冒険記を手に取るようになった。この本のなかで、遺跡探検の背後では、歴史や文化、権力闘争や学界論争などが何重にも折り重なって物語が形成されていることを知った。さらに夢中になったのは、遺跡探求には決してゴールがないことだ。例えばマチュピチュでは、後に発見される資料から以前に発見されていたこ

本書は人気作家たちによる、どんぶり愛あふれるエッセイ集である。各章をずらりと並べると、「天丼」「カツ丼」「牛丼」「親子丼」「海鮮丼」「いくら丼」「まだまだあるぞ丼」「うな丼」と続く。お昼には牛丼、ちょっと気合いを入れる時はカツ丼、お出かけ先で海鮮丼、今日はお腹の調子が良いという日に天丼、なんて感じに気軽にどこから読んでも楽しい一冊である。 私は牛丼が好きだ。

『MUJI式 世界で愛されるマーケティング』は、無印良品の商品開発やブランドを理論と実践の二つの側面から解説した一冊だ。ブランドのエッセンスが非常に容易な言葉で描かれており、MUJIの世界観を分かりやすく伝えてくれている。 私が初めて無印良品と出会ったのは、コンビニで文房具を買った時のことだったと思う。コンビニなのに明らかに洗練されたノートやペンが揃っており

別世界、別次元を楽しむための小説の一節に不意にドキッとさせられることがある。「これ今、私の目の前で起こっていることじゃん!?」「あの生意気小僧、この主人公にそっくりだな。」「あのおばさんも確かにこんな感じだった。」「これ今の日本の状況と同じだな。」 フランス文学の面白いところは100年以上前に他国で書かれたものなのに、現在の日本を正確に捉えていて、現実世界と

本書は、ノーベル賞受賞講演「自然が答えを持っている」を含めた、大村智先生のエッセイ集である。研究以外のいろんな側面、例えば絵画との出会いや、ふるさとへの想い、夢を追いかけることなどがメインとなっていて、大村先生を多方面から知ることが出来る魅力的な一冊だ。ノーベル生理学・医学賞を受賞した先生は信じられないほどたくさんのことをやってのけている。 まず、大村先生の