ノンフィクションはこれを読め!

塩田 春香

職を転々とした末、現在は出版社勤務。関心のあるジャンルは、自然や生きもの、旅、美術など。好きな花はキュウリグサ。温泉で湯治をしながら、毎日自然観察するのが夢。(プロフィール画像Ⓒべつやくれい)

(2024年当時)

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58記事

命をかけた冒険の果てに、何が見えるか『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』 書影

アート・スポーツ / プレミアム・レビュー

命をかけた冒険の果てに、何が見えるか『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』

転がりながら、つかんだその細い木が手のひらからずるりと抜けていくのが見えた。絶望的な光景だった。その瞬間、自分は死ぬんだと分かったのだ。これから川まで一直線に投げ飛ばされ、激流にもまれながらインドまで流されるのだ。 前回レビューを書いた 『冒険歌手』 を読んでからというもの「冒険ってなんだろう」とモヤモヤし続けていた私は、その簡単には出そうにない答えを求めて

『冒険歌手 珍・世界最悪の旅』これ以上ありえない冒険なんて、ありえない! 絶対にっ! 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『冒険歌手 珍・世界最悪の旅』これ以上ありえない冒険なんて、ありえない! 絶対にっ!

人生がひっくり返るような苦労をしてみるのだ! シンガー・ソングライターの峠恵子さんは、家族にも友人にも仕事にも恵まれて、何一つ悩みのない人生を送っていた。ところがある日、心の中に恐怖が生まれる。 「このままでいいわけがない」 私の最大の弱点――。それは「苦労を知らない」こと。その最大の弱点を不意に突かれてしまえば、きっと私はガラガラと音を立てながら脆く崩れ落

家の前に大きなピレネー犬が倒れていた! さあどうする?『その道のプロに聞く 生きものの持ちかた』 書影

生物・自然 / 教養・雑学

家の前に大きなピレネー犬が倒れていた! さあどうする?『その道のプロに聞く 生きものの持ちかた』

そんなときでも、この本さえあれば、もう大丈夫。 ……って、「普通じゃ~ん」と思ったあなた、い~えいえ違うのです。これは互いの腰に負担をかけず、犬が暴れてもキックされにくく、万が一、落としても着地の危険が少ない、という、じつに考え尽くされた持ち方なのだ。 これで、通りかかった配達のお兄さんから台車を強奪する必要もなくなった。本当によかった、この本があって!!

『慟哭の谷――北海道三毛別・史上最悪のヒグマ襲撃事件』惨劇から100年 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『慟哭の谷――北海道三毛別・史上最悪のヒグマ襲撃事件』惨劇から100年

本書は営林署に勤務していた著者が、事件後46年目に当地区の担当になったことをきっかけに、生存者や遺族、討伐隊に参加した人たちから入念な聞き取り調査を行った記録である。本書の内容は、吉村昭によって『熊嵐』として小説化もされている。 12月――野山一面が雪に覆われ、ヒグマは森で冬の眠りについている……はずだった。最初の犠牲者が出たのは、開拓部落の太田家。寄宿して

リアル怪談をあなたに『山怪――山人が語る不思議な話』現代版・遠野物語に戦慄! 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

リアル怪談をあなたに『山怪――山人が語る不思議な話』現代版・遠野物語に戦慄!

国内の山村にして遠野よりさらに物深き所にはまた無数の山神山人の伝説あるべし。願わくはこれを語りて平地人を戦慄せしめよ。 あまりに有名な民俗学の名著に記された、序文。明治43(1910)年に発表された柳田国男の『遠野物語』である。この時代、『遠野物語』にも登場する河童や座敷わらしは人々の身近に「いた」。しかし、深夜まで煌々と電気に照らし出された現代、そんな不思

おもしろいだけじゃ、ダメですか?『ヘンな論文』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

おもしろいだけじゃ、ダメですか?『ヘンな論文』

著者はお笑いコンビ「米粒写経」のツッコミ役、サンキュータツオさん。なぜお笑いの人が論文?と思われそうだが、じつはサンキュータツオさん、一橋大学の非常勤講師もつとめる学者芸人。国語辞典に関する著書も出している。珍論文コレクターとしても知られ、ラジオで紹介するコーナーも持っていた。 本書では選りすぐりの珍論文が登場する。その一部をあげると、たとえばこんな感じ。

嵐の時代が生んだ、奇跡の人間賛歌『園芸家の一年』 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

嵐の時代が生んだ、奇跡の人間賛歌『園芸家の一年』

園芸家は(花の芳香を)すでにあの厩肥の、湯気を立てる藁の山の中に感じている。その香りに酔いながらも注意して、この神の贈り物を庭一面にばらまく。それはまるで、ひと切れのパンにマーマレードを塗って自分の子供たちに与えているようだ。(中略)カツミレよ、なにも言わずに、この馬糞のごちそうを受け取ってくれ。 本書は熱に浮かされたようなその「病気」ぶりを、自身も園芸マニ

『原発事故で、生きものたちに何がおこったか。』もしこの変化が、序章にすぎないとしたら…… 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『原発事故で、生きものたちに何がおこったか。』もしこの変化が、序章にすぎないとしたら……

そんな疑問をもったとき、書店で見かけたのが本書である。子ども向けの写真絵本だが、解説もしっかりとしていて、読みごたえがある。著者は山形県在住の写真家で、原発事故で被害を受けた福島県の阿武隈山地にも昆虫調査で足を運んでいた。 本書のタイトルを見てまず想像したのは、「放射線を浴びた生物に奇形や生殖能力への影響が出たことがショッキングな写真でたくさん紹介されている

何が生死を分けたのか? 日本に住むなら知っておきたい『ドキュメント御嶽山大噴火』 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

何が生死を分けたのか? 日本に住むなら知っておきたい『ドキュメント御嶽山大噴火』

日本の国土面積は世界の陸地面積の0.3パーセント程度にすぎないのに対し、世界の火山の約7パーセントが日本に集中している。 国内には47の常時観測火山があり、規模は別としてひとつの火山が100年に1度噴火すると仮定すると、(中略)単純計算すれば、2年に1度はどこかの火山が噴火することになる。 2014年9月27日11時52分。御嶽山が突然の大噴火を起こすまで、

虫のように生きられたら、きっと人生は素晴らしい『熊田千佳慕のハイカラ人生記』 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

虫のように生きられたら、きっと人生は素晴らしい『熊田千佳慕のハイカラ人生記』

「わたしもカブトムシの幼虫になりたい!」 ある展覧会でその絵を見たとき、心からそう思った。気の遠くなるような無数の点描で描き込まれた、ふかふかの土のベッド。そこにくるまって休む、小さな生き物たち。こんな場所で冬を越せたら、どんなに幸せだろう。 描いた画家の名は、熊田千佳慕(本名・熊田五郎)。明治44年(1911年)、横浜に生まれた。2009年に98歳で亡くな

激ウマ&激マズ。へんてこ生物、捕獲せよ! 笑って、喰らって、ためになる『外来魚のレシピ』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

激ウマ&激マズ。へんてこ生物、捕獲せよ! 笑って、喰らって、ためになる『外来魚のレシピ』

いきなりこんな写真でスミマセン。このワイルドな料理は、「アリゲーターガーの丸焼き」。アリゲーターガーは「顔はワニ、味はトリ」という、北米および中米原産の魚である。いかにも異国情緒漂わせまくりのこの魚が、じつは今、東京や横浜の川にもバッチリ生息している。 本書はタイトルどおり、こうした外来魚を料理して食べたレシピ集……といっても、著者自らが外来魚を求めて日本各

【連載】小林凛くんと国立科学博物館に行く!③ 書影

サイエンス / HONZ活動記

【連載】小林凛くんと国立科学博物館に行く!③

いよいよ本日発売! 待望の小林凛くん2冊目の本。(過去記事はこちら 第1回 、 第2回 ) 本に掲載された俳句を紹介しながらの科博見学レポートも、最終回。ハイライト、特別展「太古の哺乳類展」を見る! 最古の哺乳類は恐竜とほぼ同じ約2億2000万年前、地球上に現れたと言われている。今回の特別展は、1億2000万年前から1万年前まで日本に生息し、絶滅した哺乳類た

【連載】小林凛くんと国立科学博物館に行く!② 書影

サイエンス / HONZ活動記

【連載】小林凛くんと国立科学博物館に行く!②

さて、いよいよ明日発売になる小林凛くんの『冬の薔薇立ち向かうこと恐れずに』と前作『ランドセル俳人の五・七・五』の2冊から俳句を紹介しつつ、国立科学博物館を見学する今回のHONZ活動記、その2をお送りします。(その1は こちら ) いよいよ、折原守理事のご案内で、見学スタート!! 最初に見たのは、常設展・日本館1階「自然を見る技」の展示。トロートン天体望遠鏡が

【連載】小林凛くんと国立科学博物館に行く!① 書影

サイエンス / HONZ活動記

【連載】小林凛くんと国立科学博物館に行く!①

簡単に子どもに対して天才という称号を与えるのはいかがなことかと思う。大人からの過大な賛辞や期待は子どもの成長にとっていかなる負担になるものかとも思う。しかし、少なくとも自分には今もってこのような才能を見いだせない。 2013年5月に投稿され、大きな反響を呼んだ 成毛眞のレビュー 。『ランドセル俳人の五・七・五』は当時12歳だった小林凛くんが、小学校で命に関わ

抱腹絶倒!ただの変人か、南方熊楠の再来か?『裏山の奇人』 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

抱腹絶倒!ただの変人か、南方熊楠の再来か?『裏山の奇人』

生き物に魅せられた怪しい男が、近所の裏山から地球の裏側までを徘徊する 変質者に対する注意喚起の看板ではない。れっきとした大学出版会が出した本の帯に記載された宣伝文である。 しかもタイトルが『裏山の奇人』。「怪しい男」であり「奇人」でもあるその人こそ、本書の著者・小松貴氏。アリと共生する生物・好蟻性生物の研究者で、『 アリの巣の生きもの図鑑 』の著者の一人でも

その気になれば、できるのか?『あしたから出版社』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

その気になれば、できるのか?『あしたから出版社』

電子書籍が普及しても、「本を愛でる」という表現がしっくりくるのは、やっぱり紙の本だろう。装幀などのデザイン、手に取ったときのあたたかみ、ページをめくるときの音や質感、書体やレイアウト。「モノとしての本」にこだわりぬいた本づくりは、出版を生業とする人ならきっと誰もがあこがれる。が、コスト云々という大人の事情で、実現できないことが多い……一般論的に。 しかし、そ

大切な人を、理不尽に喪ったことはありますか?『喪の途上にて――大事故遺族の悲哀の研究』 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

大切な人を、理不尽に喪ったことはありますか?『喪の途上にて――大事故遺族の悲哀の研究』

現実として受け容れ難いほどの大惨事は、誰の身にも起こりうる。東日本大震災、阪神淡路大震災、JR福知山線脱線事故――。しかし、突然の喪失にどう向き合えばよいのか、どうすれば悲嘆の渦中にいる人たちに寄り添うことができるのか?多くの人はあらかじめ、答えを持たない。 その時の道標として読んでおきたい本に出会ったので、紹介したい。1992年に単行本として出版され、この

『エピジェネティクス』見た目や性質は、氏か育ちか、だけじゃない? 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『エピジェネティクス』見た目や性質は、氏か育ちか、だけじゃない?

HONZ内で「これを読んでいないと、まるで話についていけない本」というのが存在する。中でも特に話題に上るのが、岩波科学ライブラリー『 ハダカデバネズミ 』『 クマムシ?! 』『 フジツボ 』の3冊。これらの本が、同じ編集者によって手がけられていたことをご存知であっただろうか。それが今回寄稿いただいた伝説の編集者・塩田春香さんである。 ちなみに上記の3冊は変わ