ノンフィクションはこれを読め!

栗下 直也

SM編集長

1980年生まれ、東京都出身。大学院修了後、半年間の無職生活を経て、産業専門紙に記者職で拾われる。現在は電機業界を担当。HONZでは新橋ガード下系サラリーマン担当を自認する。紹介する本は社会科学系、人文系、ルポ、お酒の本が中心。

(2024年当時)

栗下 直也の記事

AUTHOR

189記事

NO PHOTO

事件・事故 / 新刊超速レビュー

『タブーの正体!』新刊ちょい読み

出版社/メーカー: 筑摩書房 メディア: 新書 著者は惜しまれながら04年に廃刊した『噂の真相』(ウワシン)の元副編集長だ。「ウワシン」といえば、首相の買春検挙歴疑惑のスクープなどタブー知らずの中身が売りだったが、本書ではメディアと皇室、右翼、企業、芸能界との関係に踏み込み、「メディアが書けない」タブーはなぜタブーなのか、その内側に迫っている。 正直、ぱらぱ

NO PHOTO

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

Jリーグ、ドーピング冤罪事件の真相『争うは本意ならねど』

出版社/集英社インターナショナル 我那覇和樹。サッカーに興味がある人ならば聞いたことがある名前だろう。5年ほど前、彼はサッカーサークルの中心部にいたはずだ。2006年、我那覇は輝いていた。サッカーJ1リーグの川崎フロンターレに所属していた彼は、その年、リーグ戦32試合で52本のシュートを放ち、18得点を挙げた。ゴール数は日本人最多、シュート決定率は35%で外

年末年始だ!「食べる前に読む」三冊 書影

教養・雑学 / マニアックな3冊

年末年始だ!「食べる前に読む」三冊

今年も残り2日。怒涛の忘年会ラッシュも終えたのも束の間、明日以降は、家族やら親族やら友人やらと食べて飲んでを楽しむ人も多いはず。暴飲暴食になりがちな時期だが、胃薬を食べる前に飲むのではなく、食に関する本を食べる前に読んで、食べ過ぎ飲みすぎを自制するのもありかも。本ならばいくら読んでも0カロリーだし。 年越し蕎麦を食べるし、蕎麦の本でも読むかと軽い気持ちで手に

NO PHOTO

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

一家に一冊『道具と機械の本-てこからコンピューターまで』

出版社/メーカー: 岩波書店 今年も残り10日ばかりだ。学生時代、文系一直線だったからか、30歳を過ぎても変身願望がまだ潰えないのか、今年も「気が進まないが読めたらいいなと思う理系の臭いがプンプンする本」に性懲りもなく手を出してみた。私のレビューは、HONZ副代表の東曰く「色物」が中心だが、一応、「それっぽい本」も買ってはいるのだ。 忘れもしないのは9月。H

NO PHOTO

医学・心理学 / ビジネス

その場でビビってしまう君へ『なぜ本番でしくじるのか』

出版社/メーカー: 河出書房新社 メディア: 単行本 学生時代を思い出すと、「なぜあいつが」という思いをした経験は誰もがあるはずだ。成績は学年でも一桁の順位だったのに入試に失敗したり、部活動で練習試合では抜群の動きを見せるのに公式戦ではいまいちだった友人や知人が周りにいただろう。今でも周囲を見渡せが、「なぜあいつが」はいるに違いない。万全の準備をして問題ない

NO PHOTO

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『ポルノ雑誌の昭和史』

出版社/メーカー: 筑摩書房 「それは書いてほしいな」。HONZ副代表の東えりかは11月の定例会で私の隣で、そう、つぶやいたのである。小声だったが確かに。本書『ポルノ雑誌の昭和史』を紹介した時だ。私はやはり「セクハラの人」なのである。 HONZサイトがオープンした7月。私は困惑した。「HONZ」の面々はレビュアープロフィールを読む限り私を含め一見普通の社会人

NO PHOTO

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

我が身を自身で本気で守ろうと決めた日に読むマニアックな3冊

思春期に、戦争のフィルムを見たりすると、そのたびに思ったものだ。「俺は戦場で生きていけるのだろうか」。そして、貧相な体を鏡で見て、「絶対無理だ」と絶望し、運良く平和な時代に生まれたことに感謝したものだ。 ただ、もはや、そんな悠長なことをいっていられないのかもしれない。戦時体制下でないのは幸運だが、ここ何年もこれまで想像していなかった事態が我々に次々とふりかか

NO PHOTO

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『ふしぎなふしぎな子どもの物語』

出版社/メーカー: 光文社 メディア: 新書 本書はアニメやヒーロー物、児童文学、漫画、ゲームなど様々なメディアで描かれてきた「子どもにまつわる物語」を考察している。変遷をたどると、異なるメディア間でも90年代末以降、子どもの物語は似た傾向を取り始めたことがわかる。世相を反映するかのように、絶対的な主人公はいなくなり、正義と悪の境界はあいまいになり、これまで

NO PHOTO

世界史 / おすすめ本レビュー

『居酒屋の世界史』

出版社/メーカー: 講談社 私は酒癖があまりよくない。正直に言うと、むしろ悪い。知人曰く「絶滅危惧種の昭和時代の酔っぱらい」的醜態をあちこちでさらしているからか、飲む度に知人が減っている気がする。さすがに懲りて、最近、節酒を始めたが、飲まなければ飲まないで意外に平気な自分がいる。もしかしたら酒を好きでないのかとすら思い始めた。ただ、飲まなくて平気でも妙に居酒

『セクハラの誕生』 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『セクハラの誕生』

HONZの実話系担当を自認しているからか(誰も認めてないが)、私生活があまりにも平凡だからか、暴力や性の臭いのするノンフィクションに手が伸びることは少なくない。大抵は失敗に終わるのだが、本書も思わず買ってしまった。タイトルが『セクハラの誕生』で帯に「渾身のノンフィクション巨編!」と書かれたら、買わないわけにはいかない。失礼ながら、後悔する覚悟はできていたが、

『ウォール・ストリート・ジャーナル陥落の内幕』 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『ウォール・ストリート・ジャーナル陥落の内幕』

先週、日立製作所と三菱重工業の経営統合というニュースを聞いて、驚いた方も多いだろう。結果的に、誤報となってしまったことに再び驚いた方も多いだろう。インターネットが普及した今、記者達が血眼になって追う特ダネに新聞社やテレビ局が経営資源をこれまでと同じく投資する意味があるのかと疑問を持つ人も少なくないはずだ。調査報道や背景を深堀する解説記事を増やすべきだという議

NO PHOTO

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『なぜ人妻はそそるのか?「よろめき」の現代史』

出版社/メーカー: メディアファクトリー 「人妻」と聞くと少し変な想像をしてしまうのは私だけだろうか。人妻、人妻とつぶやいていたら、もやもやしてきたので、広辞苑を開いてみたが、我が家にある昭和43(1968)年発行の広辞苑には「ひとづま」という言葉は見あたらない。 仕方がないので、新明解国語辞典(1993年発行)をめくってみると、「すでに他人の妻になっている

『利他学』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『利他学』

「どこの誰かは 知らないけれど誰もがみんな 知っている」というのは確か、月光仮面の主題歌だったか。正体も明かさず、人のために体を張る正義のヒーロー。あれはテレビドラマの中の出来事だよなと思っていたら、昨年は月光仮面ではなかったが、タイガーマスクの主人公である伊達直人を名乗る人物が児童養護施設にランドセルを送る動きが全国で起き、世間の注目を集めた。一部では「迷

『ハウス・オブ・ヤマナカ』 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『ハウス・オブ・ヤマナカ』

明治の揺藍期に日本の美術品が海外に流出したのは広く知られる。海外の美術商が直接買い付けた物もあるが、日本人の手によって広まった物も少なくない。中でも明治期から第二次世界大戦が始まる前まで、欧米で存在感を放ったのが山中商会だ。ニューヨーク、ボストン、イギリスなどに支店を構え、ロックフェラーなどの欧米の富豪に日本や中国の美術品を供給し続けた。本書は、山中商会の事

『モーツァルトのむくみ 歴史人物12人を検証する』 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『モーツァルトのむくみ 歴史人物12人を検証する』

歴史上の偉人の死は謎に包まれていることが多い。毒殺など人の手によって殺されたケースは言うまでもなく、病死したケースですら、複数の病気が候補に挙がり、他殺説も飛び交っているのが実情だ。これらの背景にあるのは、死までも偉人を偉人として扱いたい周囲の人間の思惑だろう。 本書は、アレクサンドロス大王からコロンブス、モーツァルト、エドガー・アラン・ポーなど歴史上の12

『ご先祖様はどちら様』 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『ご先祖様はどちら様』

09年の東京都議会議員選挙を控え、私はそわそわしていた。テレビで私の苗字が連呼されていたからだ。「くりした氏」、「くりした氏」と。テレビを注意して聞くと、「くりした ぜんこう」という26歳の若者らしい。くりしたという苗字はありそうだが、実は少ない。自意識過剰なのかも知れないが、何とも落ち着かない。くりした氏の連呼がピークになったのは選挙の翌日以降だ。自民党盤

『名前とは何か なぜ羽柴筑前守は筑前と関係がないのか』 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『名前とは何か なぜ羽柴筑前守は筑前と関係がないのか』

『名前とは何か なぜ羽柴筑前守は筑前と関係がないのか』小谷野敦 青土社 好き嫌いが別れる著者であろうが、私は小谷野敦が好きである。「東大を出たのに何でもてないのだ、おかしいじゃないか」など大人は思っていても言わないものだが、言っちゃうところがよいじゃないか(『もてない男』『帰ってきたもてない男』)。大学院時代、自分より早く脚光を浴びた先輩やらに嫉妬を隠さない

『減速して生きる ダウンシフターズ』 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『減速して生きる ダウンシフターズ』

こういう自己啓発臭がする本はほとんど読まないが、宮崎哲弥だか宮台真司がラジオで「これは勝ち組の本だ」と叫んでいたので少し前に気になって購入。現状よりダウンシフトできるってことは確かに「勝っている」人だろう。現代はダウンシフトできないひとをどうするかが問題なわけだし、ある意味、贅沢な話ともいえる。原発問題で「これからはダウンシフト」とか言っている人が増えている

『かぜの科学』 ジェニファー・アッカーマン 早川書房 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『かぜの科学』 ジェニファー・アッカーマン 早川書房

本書は風邪の解明に挑んでいる専門家のユニークな研究の紹介や、サイエンスライターである著者自らが風邪実験に参加したりして、かぜ(普通感冒)を科学的に検証しようとしている。 くしゃみによるウイルスの拡散の秒速だとかおもしろいデータは満載だが、読み進める内に、途方に暮れるかもしれない。風邪は神経質にならない限りひくし、普通感冒にこれといった治療方法はないのだという

『トラブルなう』 久田将義 ミリオン出版 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『トラブルなう』 久田将義 ミリオン出版

本書は月刊誌『実話ナックルズ』の発行人がこれまでの編集者人生で遭遇したトラブルの数々をまとめた本だ。 実話ナックルズと聞いてもピンとこない人もいるかもしれない。暴走族やら芸能界のスキャンダルが乗っているかと思いきや、非差別部落のルポや殺人事件の真相など硬派な記事も載っている。ゴシップ誌やイエロージャーナリズムといえばそれまでだが、良い意味で文字通り「雑誌」だ

『スピンドクター』 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『スピンドクター』

メディアなどが発信するスクープや横並びでない独自ニュースには誰かの意図が潜んでいることが大半だ。インターネットの掲示板や芸能人のツイッターのつぶやきだって、無邪気な書き込みではないことがほとんどだ。本書は情報操作(欧米では「スピン」と呼ぶ)や、それを担う「スピンドクター」と呼ばれる人々の話だ。 スピンドクターと聞くと何か特別な存在をイメージするかもしれないが

『死刑執行人の日本史』 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『死刑執行人の日本史』

裁判員制度が施行された約2年前に、「死刑を求刑する場に立ち会いたくないから嫌だ」と叫ぶ人は多かったが、「死刑判決を出すことで、刑務官に死刑を執行させるのが嫌だ」という人はほとんどいなかっただろう。裁判官が死刑を言い渡し、いざ、死刑が執行されるとなると、当然だが、死刑を執行する人が必要になる。その人は「ひとを殺す」行為に荷担するわけだ。「仕事だから」という人が

『閃け!棋士に挑むコンピューター』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『閃け!棋士に挑むコンピューター』

『閃け!棋士に挑むコンピューター』 田中徹&難波美帆 梧桐書院 棋士の田丸昇八段のブログによれば、1996年の『将棋年鑑』のアンケートで後に永世名人になる森内俊之は「コンピューターがプロ棋士を負かす日は?」という質問に「2010年」と答えたという。森内の予言通り、2010年、コンピューター将棋システム「あから2010」が公式の場で初めて女流棋士を破った。それ

『津山三十人殺し最後の真相』 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『津山三十人殺し最後の真相』

昭和13年5月21日未明、岡山県の寒村で一人の若者による大量殺人事件が起きた。死者数は、わずか1時間あまりで30人。横溝正史の小説『八つ墓村』のモデルになった事件としても知られるこの事件が、世に言う「津山三十人殺し(津山事件)」である。本書は発生から70年以上経つ今、同事件を再考し、新たな事件像を提示している。 単独犯としては最多の被害者を生んだ「津山三十人

『中原昌也 作業日誌2004→2007』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『中原昌也 作業日誌2004→2007』

学がある人は永井荷風あたりの日記を読むんだろうが、私はこれ。著者は暴力温泉芸者のユニット名で活動するミュージシャンであり、作家で(一応、三島賞作家。芥川賞も候補になったことがあるが選考委員に完全に無視されるという放置プレイを喰らう)、映画評論も手がける。 作業日誌とあるが、音楽や小説の創作活動に対する前向きな姿勢は一切出てこない。ひたすら、聞いたこともないよ

『警察の誕生』 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『警察の誕生』

警察関係者を身内に持つ方には申し訳ないが、私は警察が怖い。町で警察官を見ると思わずうつむいてしまう。何も悪いことをしたわけでもないのだが、何かされるのではと感じてしまう。私はおかしいのだろうか。本書を読めばわかる。私はおかしくない。古今東西、警察はきらわれ、おそれられる存在であったのだ。 本書は古代ギリシャから中世ヨーロッパ、そして近代を通じて警察がどういう

『日記逍遥 昭和を行く』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『日記逍遥 昭和を行く』

現代は老いも若きも日記が大好きである。市井の人間が、ブログなどで、日記をつづり、頼まれもしないのに家族写真まで公開したりする。「誰がそんなもん、読むんだ」という指摘もあるだろうが、私は嫌いじゃない。どこの誰とも知らぬ人の日記を夜な夜な読んでいた時期もある。暇人を自称する私の密かな楽しみだったのだ。 ただ、密かな楽しみは時として奪われた。ひとたび、過剰なねたみ

『戦艦武蔵ノート』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『戦艦武蔵ノート』

日記と言えば、、、これも 吉村昭の名著『戦艦武蔵』の執筆に際しての取材過程をつづった日記である。本書を読んだのは、大学院を出て、現在、勤務している業界紙に就職したばかりのころだったと思う。実は『戦艦武蔵』は未読だった。取材というものがよくわからず、いろいろな人の取材談を読みあさっていた時期だ。 吉村昭と言えば、徹底的に対象に迫ることで有名だ。江戸時代の話を書

『日本の路地を旅する』 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『日本の路地を旅する』

本書の「路地」とは被差別部落の意味である。著者は中上健次の小説に習い、被差別部落に「路地」という言葉をあて、部落が身近に存在することを指摘したかっという。確かに東京の外れに住む私は、関西と違い同和問題とは無縁で、被差別部落と聞いても、白土三平『カムイ伝』の印象しかないが、それは差別されない側の無自覚、無責任さなのだろう。 著者は大阪の被差別部落で生まれ育った