
『死刑でいいです』モンスターと呼ばれて
エロとグロのレビュー担当者を自認しているとはいえ、朝から気味の悪い言葉を記してしまった。山地悠紀夫の言葉である。 2000年、16歳で実の母親を撲殺。少年院を出所後の05年に面識のない姉妹を刺殺。反省を一切見せずに死刑を自ら望み、09年7月28日に25歳で死刑に処せられた山地悠紀夫。本書は彼の人生に迫った一冊である。 親族、医師、同級生、担任教師、少年院仲間
SM編集長
(2024年当時)
189記事

エロとグロのレビュー担当者を自認しているとはいえ、朝から気味の悪い言葉を記してしまった。山地悠紀夫の言葉である。 2000年、16歳で実の母親を撲殺。少年院を出所後の05年に面識のない姉妹を刺殺。反省を一切見せずに死刑を自ら望み、09年7月28日に25歳で死刑に処せられた山地悠紀夫。本書は彼の人生に迫った一冊である。 親族、医師、同級生、担任教師、少年院仲間

テレビはほとんど見ないのだが、NHKで日曜夜7時30分から放送中の「ダーウィンが来た!」だけは見てしまう。そのために受信料を払っているようなものかもしれない。ほのぼのとした気持ちになりたいなど老化のあらわれだろうが、ほぼ毎週見ている。昨日(9日)のタイトルは「アザラシ母さん、愛の猛特訓」。タイトルだけで涙腺が刺激されまくりである。テレビでこのような状態なのだ

朝日新聞の土曜別刷り版「be」の人気連載である人生相談「悩みのるつぼ」。相談内容も幅広く、週替わりの回答者も多彩だが、その中で、なぜか下ネタ系の質問に重点的に答えてくれるのが社会学者で東大名誉教授の上野千鶴子先生だ。 「なぜか」と書いたが、ある意味必然かもしれない。最近は『おひとりさまの老後』でヒットを飛ばしたが、出世作は四半世紀前の著書『スカートの下の劇場

「指揮権」。政治経済の教科書に出てくる「あれ」である。検察は独立性を保障されているが、法務大臣は個々の事案では検事総長を指揮できると検察庁法14条は規定している。過去に発動されたのは戦後一度のみ。1954年、世に言う「造船疑獄事件」で後の首相である佐藤栄作氏に対する逮捕状請求を当時の法務大臣が無期限に延期するように指揮した。その指揮権が実は50年以上の時を経

インターネットを検索していたら、驚くべき事実を知ってしまった。と言っても、たいした話ではないのだが、昨年末あたりから、本書の著者で将棋棋士の加藤一二三九段がテレビによく出ているらしいのである。将棋番組かと思えば、マツコデラックスやビートたけしと共演しているというから腰を抜かした。70歳を超えたけど大丈夫かと思いながらも、youtubeで「加藤一二三 マツコ」

ゴールデンウィーク(GW)に突入である。海に山に忙しい方も多いだろうが、HONZ読者ならば読書にも忙しいはずである。私もレビュー用にここぞとばかりに、アマゾンで『立身出世と下半身』という本をタイトル買いしたら、あらゆる意味で軽薄短小が売りのはずの私の元にタウンページのような厚みの本が届いたのが一週間ほど前。GWに入り、読み進めると、学生になぜセックスを推奨し

「絶望工場」と聞き、多くの人が思い浮かべるのは鎌田慧氏の『自動車絶望工場』だろう。愛知県のトヨタ自動車の工場に期間工として半年間潜入し、書かれたルポである。1973年の作品だ。当時、鎌田氏が描いたのは、工場内の自動化や合理化を進める企業とそこで疎外される労働者の姿だった。それから40年。今や世界の工場となった中国でも日本とは異なる形で「絶望」が生まれている。
仕事を抜け出し、日が高いうちからグイっと飲む。平日の昼酒。私のような小心者の会社員にとっては南米の秘境を訪れるよりも、南の島で美女と戯れるよりも実現が難しく感じる。近くて遠い昼間の居酒屋。本書にはそんな羨ましくてたまらない、散歩がてらの昼酒のエピソードが満載なのである。 著者は大竹聡氏。酒や酒場についての著述を手がけるフリーランサーでサラリーマンではないのだ

「沖縄軍人妻」。響きがたまらない。実は完全なタイトル買いだ。凛とした中に、日活ロマンポルノのタイトルにもなりそうな色香を感じられる。これほど魅惑的な5字の漢字があったのか。「沖縄軍人妻」。 版元は京都大学学術出版会。堅そうである。実際、本書は学術書だ。ポルノ云々言ったことを謝るべきだろうか。私の本棚では圧倒的な存在感を放ち、すでに浮いている。 とはいえ、本書

「欲しがりません、勃つまでは」。 新年早々、自らの人格を疑ってしまう書き出しだが、学生時代に読んだ夕刊紙だか実話系雑誌の性に関する特集でのフレーズを時々思い出す。「パートナーが不能になった場合、どうするか」。そんな質問に応じた女性が冒頭の台詞を述べていた。オッサンが好きそうな駄洒落だけにデスクか記者の妄想のような気もしなくもないが、納得したものだ。世の中、無

インターネット上の巨大掲示板『2ちゃんねる』に投稿されたスレッドの転載記事を著者が目にしたのは2011年夏。タイトルは「中国の田舎に住んでるけど質問ある?」。投稿者は雲南省の少数民族の女性と結婚して相手の実家に同居して農業を手がける日本人。虚実が入り交じるネット掲示板であることを知りつつも、著者は書き込みの生々しい情報に惹かれる。村では人さらいが出没したり、

父は国際スパイ、母はナポリの花売り娘。自称イタリア生まれの謎の論客として著者がデビューしたのは2004年の『反社会学講座』。軽い文体ながら、統計資料を使って、世間の常識に物を申すスタイルは当時は斬新で、世間のひねくれ者の喝采を浴びた。あれから8年。いまだに正体を明かさず、イタリア語をしゃべれないイタリア出身の千葉県民というキャラ設定を貫き通す姿勢には敬服する

「ビニ本」漁りがとまらない。誤解しないで欲しいが、ビニールで包装されたポルノ雑誌ではない。そちらも嫌いなわけではないが、私が今、言及しているのはビニはビニでも「コンビニ本だ」。雑誌コーナー近くに売っている、見るからに粗悪な紙でつくられた簡易本である。宇宙人がどうとか山口組がどうとか、HONZ読者が引いてしまうタイトルも少なくないが、中には500円前後の価格以

「三宅本を推す」。 実は著者のことは全く知らなかったが、ものづくり研究の大家である東京大学の藤本隆宏教授が帯に寄せた、このコメントに釣られて買ってしまったことは内緒だ。自分の権威主義的な一面に辟易してしまうが、良い意味で期待を裏切られた一冊である。 本書の主旨は明快だ。エレクトロニクス業界を中心に不振が続く日本の製造業が凋落したのは、技術神話を未だに信奉して

酒とつまみチャンポン―創刊10周年記念なんちゃって傑作選 (別冊酒とつまみ 1) 一部のオジサンに熱狂的な支持を受ける雑誌「酒とつまみ」。というよりも世間一般には知られていない雑誌「酒とつまみ」。 創刊10周年を記念しての傑作企画をまとめたのが本書だ。雑誌不況の荒波の中で10年とはすごいの一語だが、季刊誌を名乗りながら一度も季刊できていない脱力ぶりがその秘訣
愛と欲望のナチズム (講談社選書メチエ) 女子プロゴルファーとの間に最近、第一子をもうけたかつてのトレンディー俳優が言ったかどうかは知らないが、今から約70年前のドイツでナチスの幹部たちはこう叫んでいたはずだ。 ナチズムと聞くと、抑圧的な政策を推進したことで広く知られる。伝統的な道徳観への回帰を説き、性に対する態度もそれは同じであったとの見方が支配的だった。

2月6日、前代未聞の事件が起きた。中国重慶市の副市長の王立軍がアメリカ領事館に逃げ込んだ。地方政府とはいえ共産党幹部がアメリカに助けを求めたのだ。それも、女装姿で他人に借りたジープを駆って。 「薄熙来に殺される」。 ハリウッド映画もびっくりの展開だが、これは当時の重慶市のトップだった薄熙来とそのファミリーが世界を震撼させる序章に過ぎなかった。王立軍が薄熙来の

最後の直線で大外から並ぶ間もなく先頭に立ったとき、誰もが確信したはずだ。「勝てる」。それほど脚色は違った。あとはどれだけ2着以下を突き放すのか。競馬の世界最高峰のレースのひとつである凱旋門賞。日本馬が挑み始めて43年。日本競馬界は悲願の頂に登ろうとしていた。その10秒後にまさか「ぐおおおおおおおお」と声にならない叫びをあげるとは今となっても信じられないが。

企業取材を仕事とするため、経営者に会うことは多い。国内の雇用に対する考え方を聞くことも少なくない。自分でも陳腐な質問だなと思うが、企業の生産拠点の海外移転に伴って国内の雇用縮小などを指す「空洞化」という言葉を一ヶ月に一回は使っているかもしれない。 「空洞化」について個人的に強い関心を持っているわけではない。本音を言えば、相手の答え方次第では記事の見出しが立ち

映画「ALWAYS三丁目の夕日」が公開されて以降、昔を懐かしむ声をよく聞くようになった。社会学者の宮台真司などは「当時ってあんなに町並み綺麗じゃないだろ。ドブくさくてたまらないだろ」と突っ込みをひたすら入れ続けているが、ノスタルジーに浸りたい人びとは意外と多いのだろう。05年に一作目が公開されて以降、人気は根強く今年初頭には第三作目が封切られた。高齢者の方が

サブカルライターであり書評家であり、「プロインタビュアー」を名乗る吉田豪がサブカル業界人10人に迫ったインタビュー集だ。雑誌「クイック・ジャパン」の連載をまとめたもので、インタビュー対象はリリー・フランキー、大槻ケンヂ、松尾スズキ、みうらじゅん、菊池成孔など一定の知名度があると思われる人から杉作J太郎など一部のマニアには熱狂的に受けそうな人まで。狭いのか広い

現代を代表する歌人の河野裕子が亡くなったのは2010年の夏だ。河野の死後、夫の永田和宏が妻の遺品の整理をしていて、ティッシュ箱を捨てようとしたときに目に入ってきたのが箱の上面の文字だった。横や裏にも文字は並んでいた。薄い文字で書かれていたが間違いなく歌の断片だった。ティッシュの箱だけでなく、薬袋や封筒にも文字は残されていた。死後、細胞学者であり歌人でもある永

日本語の語源を解説する書籍は書店でもよく見かけるが、本書は悪態・罵倒語に絞ってとりあげ、使用法の変遷を振り返っている。なぜその言葉が使われるようになり、使いつづけられるのか。新聞や、各種文学作品、古事記や日本書紀などの古典、国会会議録などから用例を地味に拾っている。その地味な作業と対照的に目次は過激な文言が並ぶ。罵倒語の本だから当然といえば当然だが。 目次を

「9」日は眠れない。9日、19日、29日の夜、私はビール片手にうなっている。HONZのレビューを翌朝までに仕上げなければいけないからである。HONZの熱心な読者ならばご存じかもしれないが、HONZのレビューは輪番制。10日、20日、30日とゼロの付く日が私の当番日であるため、前日の夜ともなればオリンピックどころではないのである。 だが、考えてみれば、私の当番

7月26日にプロ棋士歴代2位タイとなる通算1308勝を記録した加藤一二三九段の著作。「加藤一二三九段」と書いても将棋に一切興味がない人には何段か、わかりにくいかもしれないが九段である。「かとう・ひふみ・くだん」と区切る。本書は、「神武以来の天才」とかつて呼ばれた加藤氏がこれまで対戦してきた名人たちとの対決を振り返りながら、自らの将棋観を語る内容になっている。

著者は酒飲みの間では有名なあの大竹聡氏である。「ああ~」という声が聞こえてきそうなのは私だけだろうか。そんなことはない。居酒屋のオヤジたちは今の文部科学大臣を知らなくても大竹氏は知っているはずだ。JR中央線の各駅のホッピーを提供する店をマラソンと称して巡った名著『中央線で行く東京横断ホッピーマラソン』で酒飲み達の注目を集めたあの大竹氏である。酒飲みなら誰もが

HONZサイトが開設してもうすぐ1年。仕事や家庭や髪型が劇的に変わったHONZメンバーは少なくないが、本の購入代金はともかく、本の趣味は各人、大きくは変わっていないのではないだろうか。本日紹介するのは、日本各地の被差別部落を追った『日本の路地を旅する』で一昨年の大宅賞を受賞した上原善広氏の新刊。私がHONZのレビュアー(正確には前身の「本のキュレーター勉強会
先日、外国人の経営者にインタビューをした時、「最近、アインシュタインの言っていた狂気の意味がよくわかるよ。何回も同じことを試みながら、その度に違う結果を期待する。これこそ狂気だよ」と熱く語られた。彼は日本の電機産業について言及したのだろうが、取材の帰り道、私は深く考え込んでしまった。もしかしたら顔面蒼白だったかもしれない。「私のHONZ夜会での振る舞いこそ、

175センチで60キロ台半ばの私がダイエットに関する本を取り上げるのは出すぎた真似かもしれない。だが、私は怖いのである。油断すると70キロをらくにこえ、増量がとまらなくなる自分が。日常的に運動をしている身でもないので、筋力が増すわけでもなく、腹の周りにだらしなくつきまとう肉の重みが増すだけである。風呂の鏡をみて「これが俺か」と愕然として節制に励むが、このぎり

突然だが、「さかな、さかな、さかなー、さかなーを食べるとー」という歌詞が最近、頭から離れない。ウィキペディアで調べたところ、20年前に作られた曲だった。市販化されたのは10年前で私の記憶はこの時のものだろう。曲名はご存じの方も多いかもしれないが『おさかな天国』であり、オリコンで最高3位に位置したという。 歌詞からわかるように「魚をもっと食べようよ」という水産

先日、好評を博したHONZ内藤の活動期をぼけーと読んでいたら「栗下直也が真面目な本ばかり取り上げていたら、病気の可能性も否定はできない」と書かれていた。考えてみれば、最近、変な意味でなく、びんびんに元気なので直近の自分のレビューを振り返ってみたら「家のみ」、「ゴキブリ」である。そして今回も、びんびんは続くのかもしれない。「毒婦」である。 「えっ、この本、どこ

「昆虫を食べる」と聞くと眉をひそめる人も少なくないだろう。だが、世界では90カ国で1400種以上の昆虫が日常的に食べられている。タイなど現在進行形で昆虫をわんさか食べている国もあるし、日本でもついこないだまでは羽音が聞こえるくらいバリバリと昆虫を食べていたのだ。1986年に生態人類学者の野中健一氏が食用昆虫の都道府県別の在否を調査したところ、イナゴやハチの子

「居酒屋で、じゃこと大根サラダのじゃこだけを閉店まで食べたい。ただ、大根はいらないが、チキンハートの俺にはじゃこだけ大盛りでくださいとは言えない」(32歳男性) 「クルトン入れ放題の店で『入れ放題』って書いてあるからといっても控えめな自分がいたりする。クルトン入りのスープでなく、スープがついた大量のクルトンをビールで喰らいたいのに」(32歳男性) 子供じみた

サッカー日本代表で「海外組」という言葉がある。普段はJリーグではなく「海外」のチームでプレーしている選手たちだ。この場合の海外とはドイツやイタリアなどサッカー先進国を指す。つまり、国内よりも確実にレベルが高いリーグで戦う彼らに対する敬意がこめられているのだろう。この本もある意味「海外組」に焦点を当てた本だ。ただ、本書の「海外」はベトナムやマレーシア、アルバニ

タイトルが何ともすごい。「原発」と「アウトロー」と「青春白書」をつなげてしまったのである。ピーコのファッションチェックなら「あなた、ちょっと」と激怒されそうな組み合わせだが、内容は良い意味で期待を裏切らた。 本書は福島県の原発がある街で育ち、震災前から原発で働く3人の若者に焦点を当てている。当事者中の当事者である彼らが原発が日常にある街でどのように育ち、なぜ
出版社/メーカー: NTT出版 売れ線を狙った邦題だなというのが第一印象か。帯には「ヤバクない経済学!」ともある。この時点で『ヤバい経済学』を意識しすぎて、やばさはプンプンなんだが、原題は「FILTHY LUCRE Economics for People Who Hate Capitalism(不正利得-資本主義が嫌いな人のための経済学)」。実は、ほぼ原題
出版社/メーカー: 宝島社 ここ数年、日本の精神医学の遅れを指摘する本が以前よりも目に付くようになってきた。その中に必ず出てくるのが長期の入院患者の存在だ。入院期間が半世紀近くに及ぶ人もいるという。そして、彼らの中には、一見、入院の必要性を感じさせない普通の人々も少なくないという指摘もある。果たして彼らはどのような経緯で今に至ったのか。何を考えているのか。状
自分が関係しているサイトを持ち上げるのも、気恥ずかしいのだが、最近のHONZで紹介されている本は面白いだけでなく何気におしゃれである。直近の3つだけ見ても民藝にピアニストにデザインである。雰囲気がある。私もその流れに続いて、おしゃれ度の向上に寄与したかったのだが、残念ながら締め切り当日になった今、断念した。おしゃれタスキをつなげそうもない。表紙とタイトルのお
出版社/メーカー: NHK出版 10年ほど前は、コンビニの店員が外国人だったりすると「おっ」と思うこともあった。ただ、最近は都心部などでは全員が日本人であるケースが逆に珍しかったりする。それもそのはずだ。現在、日本には約210万人(不法残留者含む)の外国人が暮らしているといわれる。私やあなたが、仕事以外の生活世界で外国人と関係するのも日常の風景になっているの

最近、街を歩いていても「子ども」に目がいってしまう。下は赤ん坊から上は小学生くらいまでか。我ながら怪しいと思うが、別にロリコンではない。近々、育児に対応する可能性が高く、大量にいろいろと本を読んだからか、子どもで頭が膨らみ、つい観察してしまうのだ。私は養老孟司氏が主張するように「昆虫採集してたら子供は育つ」派なのだが、残念ながら、休日の公園などでは、携帯電話