ノンフィクションはこれを読め!

東 えりか

HONZ副代表

書評家。千葉県生まれ。信州大学農学部卒。幼い頃から本が友だちで、片っ端から読み漁っていた。動物用医療器具関連会社の開発部に勤務の後1985年より小説家・北方謙三氏の秘書を務める。
2008年に書評家として独立。「週刊新潮」と「ミステリーマガジン」などでノンフィクションの書評担当のほか、「信濃毎日新聞」の書評委員。現在は小説の書評の仕事と半々。「NEWS本の雑誌」の記者でもある。好んで読むのは科学もの、歴史、古典芸能、冒険譚など。

(2024年当時)

東 えりかの記事

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466記事

11月のこれから読む本 その1 書影

今月読む本

11月のこれから読む本 その1

毎月第一水曜の朝7時。HONZ例会の始まりである。前日が徹夜であろうが、飲みすぎ二日酔いだろうが、遅刻もせずに集合する。手にはずっしりと、ここ数日、本屋で漁った新刊が下げられている。 成毛眞が口火を切る。 大人気ない大人である。 今日は欠席者はなし。 久保洋介 もオーストラリアからPC越しに参加。なぜか全員テーブルに本が出ていない。この期に及んでも、まだ隠し

『阿蘭陀が通る』 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『阿蘭陀が通る』

HONZ代表成毛眞の著書に 『本は10冊同時に読め』 がある。私も10冊まではいかないが並行読書をする。小説は一気に読んでしまうが、学術書や研究書、美術書などは時間をかけて読む。今回はあまりの面白さに、1ヶ月かけて読み終えた本を紹介する。 鎖国していた江戸時代、海外との交流は中国を除けば長崎の出島のオランダ人だけだったと日本史で教えられてきた。向学心に燃える

『死にたい老人』 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『死にたい老人』

日曜日の朝っぱらから、なんて本を紹介するんだ!とお叱りを覚悟でこのレビューを書いている。休みの日はアクセス数が少ないのでお許しいただきたい。それにしても、タイトルがいいのだ。思わず手に取りたくなる。発売半月で、すでにベストセラーの仲間入りを果たしたことは、著者にとってうれしいのかどうか、そのあたりを聞いてみたい気がする。 作家・木谷恭介の名前を聞いたことがあ

『新白河原人 遊んで暮らす究極のDIY生活』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『新白河原人 遊んで暮らす究極のDIY生活』

「家を建てる」ということは、多くの男性にとっては大きな夢であるらしい。反対に女は上モノより内側、つまり家庭の安定を求めることが多いのではないか。家の中を飾るのはたいてい女の仕事である。マンション住まいが多い昨今ではあるが、飲みに行ったりすると一軒家に憧れている男性の話をよく聞く。自分の手で家を建ててしまうというのは究極のDIY。『新白河原人』はそんな男ゴコロ

10月のこれから読む本 書影

今月読む本

10月のこれから読む本

10月5日朝7時の六本木。 かつて朝までカラオケしていた町に、こんな時間から会議で来ることになろうとは、思ってもみなかった。その上、雨で寒い。1週間のうちに夏から冬へワープしてしまった。着るものがない…と出かける前にさんざん悩んだ。 さて「HONZ」定例会である。今日は鈴木葉月が遅い夏休みで、栗下直也が仕事の関係で欠席。久保洋介は今回もオーストラリアからスカ

『死のテレビ実験 人はそこまで服従するのか』 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『死のテレビ実験 人はそこまで服従するのか』

芝居じみた仰々しいタイトルである。『死のテレビ実験』とはどんなホラ話が始まるかと思えばあにはからんや。看板に偽りのない内容に驚かされる。 本書の内容を一言で表せば「人はどこまでテレビの言いなりになるか」である。視聴者参加番組に応募してきた人の行動を観察するために、2009年にフランスで行われた実験の詳細な報告書でもある。 基礎になっているのは1960年代にア

9月のこれから読む本 書影

今月読む本

9月のこれから読む本

9月4日は「HONZ」代表、成毛眞の誕生日である。9月の定例会は7日。じゃ、ささやかなお祝いを差し上げよう、ということになった。モノじゃつまんないと誰が言い出したか♪ハッピーバースディ♪をダンスつきでプレゼント。鈴木葉月がマンドリンで伴奏し、新井文月振り付け。15分前に六本木集合。出勤で急ぐ人々の訝しげな目を背中に振り付けを習い、いざ定例会へ。今回から参加さ

『遺品 あなたを失った代わりに』 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『遺品 あなたを失った代わりに』

今年の夏祭りは鎮魂の気持ちを込めた、とても厳粛なものだった。もちろん、跳ね、踊り、歌って楽しく過ごしたのだが、心の底には災害で命を落としたしたり、行方のわからない方、そのご家族への哀悼が込められていたように思う。これを区切りと考える人も多かっただろう。 大震災の後、瓦礫の中から思い出の品物を見つけようとしていたり、自衛隊やボランティアが片付けの途中でアルバム

「幻の生き物」ベスト3 書影

生物・自然 / マニアックな3冊

「幻の生き物」ベスト3

現実と空想の間(あわい)にあるような物や出来事が好きだ。絶対にないとはいえない輪廻転生、地球人以外の生き物、未だ証明されない人間の能力、などの本はいつの間にか手が出てしまう。というわけで、私のマニアックな3冊のテーマは「いるのかいないのか未確認生物」である。 最近書店を歩いていて呼び止められた本がある。棚ざしの片隅が光っているように見えたのだ。それがこれ。

『画文集 炭鉱に生きる 地の底の人生記録』 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『画文集 炭鉱に生きる 地の底の人生記録』

先ごろ、岩手県平泉が世界文化遺産、小笠原諸島が世界自然遺産に認定され、地元は大変な喜びようであったことは記憶に新しい。さらに「世界記憶遺産」に山本作兵衛の炭鉱画が選ばれ、昨日、認定書が田川市に届いたというニュースが入った。 実はユネスコの世界遺産のなかにこのようなジャンルがあることを初めて知った。聞けば「アンネの日記」や「ベートーベンの第9草稿」、「フランス

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今月読む本

8月のこれから読む本

「HONZ」が始まって半月経った。訪問者数も日を追うごとに増え、うれしい限りである。そこで8月の定例会は今後の相談なども含めて初の合宿。一晩、本について語り明かそうという試みである。 食事は料理研究家の土屋さんと不肖・ワタクシが担当し、お酒は成毛さんの提供。すばらしいことにメンバー全部が酒好き。「酒と薔薇の日々」ならぬ「酒と本の一夜」と相成った。 直前に奥さ

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教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『演歌よ今夜も有難う』

(2011/06/25) 都築 響一 商品詳細を見る スナックのカラオケは演歌に限る。 舌が回りきらないような歌詞や「ヘイ!ヨー!」とラップでカッコつけても水割りには似合わない。ロックンローラーを気取っていても、日本人なら演歌の一曲や二曲は歌えるはずだ。セクハラと言われようが会社の部長と「銀恋」を歌えればOLとして一人前なのだ。 「日本人の心」にも例えられる

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医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『私には女性の排卵が見える―共感覚者の不思議な世界』

新書の刊行点数が毎月凄い。 正直、すべての書名をチェックできないので、記憶に残るような過激なタイトルに目がいってしまう。 そうだとしても、これはかなり挑戦的なタイトルだ。 (2011/05) 岩崎 純一 「排卵が見える男」なんて少なくとも女性は気持ち悪くて近づきたくないと思うだろう。 しかし著者の名前に見覚えあった。 (2009/09/16) 岩崎 純一 共

東えりか ノンフィクション(とりあえず)この10冊 書影

東えりか ノンフィクションこの10冊

東えりか ノンフィクション(とりあえず)この10冊

いのちの初夜 (角川文庫) 山崎朋子『サンダカン八番娼館』 サンダカン八番娼館 (文春文庫) 坂口弘『あさま山荘1972』上下 一番多感なときにあったあさま山荘事件。当時下宿屋をしていた実家で、学生さんたちといろいろな話をした。今でも謎だらけだ。 あさま山荘1972〈上〉 あさま山荘1972〈下〉 千葉敦子『乳ガンなんかに敗けられない』 ジャーナリストがすべ

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今月読む本

7月のこれから読む本

本日、7月15日「HONZ」オープン。 これからこのサイトで、様々なノンフィクション作品を紹介していくことになる。 昨年12月、成毛眞さんの呼びかけに応じ書類選考を通った8名と、成毛さん、ワタシ(東えりか)の10名で毎月第一水曜、朝7時から「本のキュレーター勉強会」として新刊で面白い本の紹介や本の選び方などを話し合ってきた。 その経過はワタシのブログ「 本読

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民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

アニエス・ジアール『エロティック・ジャポン』@ミステリマガジン4月号

書店の平台でひと際目を引いていた。しかし手に取るのは躊躇われる。女ならばなおさらだ。しかし、どうしても気になって取り上げ中をパラパラ見て「これは買いだ」と直感した。で、値段を見て仰天、3800円!一度は戻して家に帰ってきたものの、どうしても欲しくて手に入れた本が『エロティック・ジャポン』である。 著者のアニエス・ジアールは新進気鋭のフランス人女性ジャーナリス

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民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

吉岡逸夫『白人はイルカを食べてもOKで日本人はNGの本当の理由』(講談社+α新書)

昨年のアカデミー賞ドキュメンタリー部門を受賞した『ザ・コーヴ』は和歌山の太地で行われているイルカ漁をセンセーショナルに撮影した作品である。先祖代々受けついできた漁業をやめろと声高に叫んだこの映画は、上映問題でもめたので、記憶にある人も多いだろう。 実際、ドキュメンタリーやノンフィクションは撮影者や監督、作者の意図によっていろいろな見方があるから、作品を作るこ

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事件・事故 / おすすめ本レビュー

畑村洋太郎『危険な学校 わが子を学校で死なせないために』(潮出版社)

※ この書評は時事通信社の依頼で書かれた文章に、現在の状況を加筆してあります。 3月11日の東日本大震災の被害は被災者の数、被害総額ともにかつてない膨大なものとなった。あれから2ヶ月以上経って、ようやく検証がされ始め、対策が練られ始めているが、何もかも失ったところからどうやって回復していけるのか、まだ先が見えない。 その上、未だ先の見えない原発事故は、実はぎ

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事件・事故 / おすすめ本レビュー

スマイリーキクチ『突然、僕は殺人犯にされた』(竹書房)

冤罪、嫌な言葉である。 時によって人は間違うことがあるが、やってもいない罪をかぶせられ、挙句の果てに断罪されるという運命にだけはなりたくない。電車内での痴漢の冤罪を晴らすのに何年もかかかり、殺人事件ではDNA判定の科学的進歩を待たなくてはならなかった。それどころか、検察の目論見のために犯人が仕立てられるとは、なんたることだろうか。無辜の市民が犯人とされ、本人

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民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

みうらじゅん『ムカエマの世界』(ちくま文庫)

私たちの世代は、全共闘から一回り下で、共通一時試験はまだなく国立大学が一期校、二期校と2度受験できた時代だ。思えば遠くに来たものだ、と感慨深いが、それといって特徴のない世代だとも言われてきた。「しらけ世代」だの「新人類」だのと呼ばれたが、人ごとのように聞いていた。校内暴力で学校の窓ガラスを全部割った世代を子供だなあ、と見ていたし、今ほどではないが就職難の時代

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おすすめ本レビュー

2月の新刊書評

毎年毎年「2月は28日までって忘れてたぁ」と言うのがお決まりです。 半分は本当で、半分はうそ。 やっぱり、あっという間に終わってしまいましたが、雑誌などで紹介した新刊はこちらです。 新刊書評 『断捨離』やら『老前整理』やら人生の最後を身奇麗に、という本のなかではピカ1。 美しく賢い女性作家が一人暮らしの中で、たどり着いた結論。 竹田先生、付いていきます! こ

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ビジネス / おすすめ本レビュー

佐々木俊尚『キュレーションの時代―「つながり」の情報革命が始まる』(ちくま新書)

22年勤めた事務所を辞めて独立し、二足の草鞋の替えのほうだった書評が本職となって3年が経った。最初の年、依頼された仕事はできるだけ引き受けることにした。専門学校の講師をしたり、通信講座の添削や小説のプロットを考えたり、個人史をまとめるのを手伝ったりもした。書評もメインのノンフィクションだけでなく、いろいろなものを紹介した。自信をもって言えるのは、全部間違いな

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医学・心理学 / おすすめ本レビュー

上岡陽江 大嶋栄子『その後の不自由 「嵐」のあとを生きる人たち』(医学書院)

毎週土曜日の朝のお楽しみに 週刊ブックレビュー があります。 私も毎年出演させていただくが、意外な人が意外な本読みでとても面白い。 ときどき大議論や徹底批判が行われたりして、ちょっとはらはらさせられるととてもお得な気分が味わえます。 次回の放送、2月12日は、松田哲夫(編集者)信田さよ子(臨床心理士)明川哲也(作家)の3人が合評ゲスト。 松田さんはともかく、

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民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

宮田珠己『だいたい四国八十八ヶ所』(本の雑誌社)

友人からブログの名前がなんで 『本読みの理不尽』 なの?と聞かれた。 いままでブログの ブ の字も考えてなかったのだけど、タイトルはかっこよくしたい。 おお、そうだ、ワタシは仕事に行き詰るとこの本を開いて笑い、心を和ませていたのだ。 昨年 『旅の理不尽』 が復刊されたのだった。 宮田珠己のエッセイはワタシの心のカンフル剤だ。 ここからタイトルをお借りしよう。

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おすすめ本レビュー

1月の新刊書評

1月も今日が最終日。 1月は行く、2月は逃げる、3月は去るとよく言われるけど、今年もあっという間に過ぎそうだ。 覚え書き程度に今月の掲載された新刊書評仕事を一覧にしてみると、あれま、少ない。 やはり年末年始で10日あまり、仕事をしていないから仕方がないか。 これ以外に新人賞の下読みとかインタビューのまとめなど、他の仕事もありますけど。 新刊書評 幼いころから

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教養・雑学 / ビジネス

今野浩『工学部ヒラノ教授』(新潮社)  《2011.1.25刊》

ヒラノ教授、本名は今野博。金融工学の専門家である。 ヒラノ教授は「平教授」と書く。平社員ならぬ平教授になった著者は、筒井康隆『文学部唯野教授』(岩波現代文庫)に影響され、工学部の実態を人に知らしめんがために立ち上がった。権力闘争や誹謗中傷、セクハラ、アカハラオンパレードの新設文系大学と工学部は一味も二味も違うと鼻息荒く書き出したのだ。 著者は東大工学部を卒業