
おもろすぎっ!!『本当にあった医学論文』
学会の書籍売り場で愕然とした。私としたことが完全に見落としていた。HONZの医学担当(そんなのないけど)として失格である。こんなおもろい本があったんや。それも、昨年11月発売以来、3ヶ月で三刷りと、専門書にしては爆発的な売れ行きだ。 発刊から半年なので、HONZで紹介するには時間がたちすぎているしなぁ、と思ってふと横を見ると、『前作「本当にあった医学論文」大
(2024年当時)
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学会の書籍売り場で愕然とした。私としたことが完全に見落としていた。HONZの医学担当(そんなのないけど)として失格である。こんなおもろい本があったんや。それも、昨年11月発売以来、3ヶ月で三刷りと、専門書にしては爆発的な売れ行きだ。 発刊から半年なので、HONZで紹介するには時間がたちすぎているしなぁ、と思ってふと横を見ると、『前作「本当にあった医学論文」大

さすがは 山本義隆 、と唸るしかない一冊だ。これが予備校での講演録だというから恐れ入る。原子とは何か、原子核とは何か、が、アリストテレスにはじまり、発見の歴史的経緯を追いながら丁寧に説明されていく。多少の数学と物理の知識は必要かもしれないが、古典力学から説き起こされる原子や原子核の話は直感的に捕らえやすく、決して難しくない。 そして、最後は原子力について。核

If politics is the art of the possible, research is surely the art of the soluble. 政治を可能性追求のアートとするならば、 研究は間違いなく問題解決を追求するアートである。 免疫学でノーベル賞を受賞した ピーター・メダワー卿 の言葉だ。この本は、原子爆弾の開発において、この言葉

医学の歴史は、数多くの物語で彩られている。この本は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染を「完治」した二人の『ベルリン患者』に始まる物語だ。偶然にもたらされたといっていいような伝説的な「完治」をヒントに、新しい治療法の開発がおこなわれた。そしてその結末は… HIV感染症といってもピンとこない人が多いかもしれない。HIVとはAIDS(後天性免疫不全症候群)の原因

毎年、年末ぎりぎりに高校の同級生との忘年会がある。過去 10 年以上にわたっておこなわれているのであるが、デジャヴみたいに同じような話が繰り返される。しかし、自分のことが語られていても、自分では覚えていないこともあるし、自分の記憶と違っていることもよくある。 自分が正しいのか、友人たちが正しいのか。もちろん、自分が正しいと思いたいけれど、よってたかって間違え

自慢じゃないが、幸福の国ブータンについての本には造詣が深い。文献派なので、 2010 年の春にブータン旅行した前後に、手当たり次第にブータン本を読んだ。そのころは、まだそれほどのブータン本が出ていなかったので、手に入る本はほとんど読んだ。今は復刊されているが、当時は絶版であった、ブータン本の古典、中尾佐助の『 秘境ブータン 』も、高い古本を取り寄せて読んだ。

「ヒラノ教授、あんたの時代はよかった」。工学部ヒラノ教授シリーズを読んだ現役教授たちは、私とおなじようにつぶやくだろう。ご本人は、どこがよかったのか、とおっしゃるかもしれない。しかし、 20 年ほど前、いろいろと不自由や不条理はあったけれど、国立大学はゆるくてのどかな場所だった。 この本では、その時代にヒラノ教授が(たぶんやむなく)手を染められた不正行為が大

HONZ のレビュアーをしていると、ありがたいことに、あちこちから献本をしていただくことがある。できれば、全部読んで、できるかぎり宣伝に努めたいのではあるが、そうもいかない。パラパラっとめくって、ごめんなさい、してしまうこともある。 しかし、この本は違う。おもわず、これはええわぁ~と言い続けながら、最後まで一気に目を通してしまった。年末のクソ忙しい時期にこん

どんな研究がいい研究か?いろいろな考えがあるだろうけれど、わかりやすい研究がいちばんだ。気の利いた小学生高学年の子にわかるように説明できる研究、というのがひとつの条件だと常々思っている。この本の著者である吉崎さんの研究目的はほんとうにわかりやすい。小学生どころか幼稚園児でもわかるかもしれない。サバにマグロを産ませようというのだ。ほ乳類ではないのだから、より正

文房具フェチである。ちょっとした文房具屋さんがあると、かならず覗きたくなる。ついムダな文具も買ってしまう。しかし、万年筆などに手を出さないかぎり、文房具の値段などしれたものである。文房具関係の本も好きである。いりもしないカタログ系のムックなんぞもしょっちゅう買っている。 この本も、出張前に駅の書店でつい買ってしまった。駄文具、なんじゃそら。著者は『きだてたく

HONZでは、鳥本にはずれなし、という格言(?)がある。鳥をあつかったノンフィクションは間違いなくおもしろいというのだ。異を唱えるものではないが、山本(やまもと、じゃなくて、山の本)にこそはずれがない、というのが持論だ。これまで読んだなかで、一冊たりとも、つまらなかった山の本などない。 ヤマケイ、山に関係ない人にとっては何かわからないかもしれないが、登山雑誌

『氏か育ちか』というのは、生物を語る上で永遠の課題だ。もうすこし学問的な言い方をすると、遺伝素因と環境要因、どちらが重要か、ということになる。食べ物、生活場所、育てられ方、教育、人間関係、などなど、多彩な環境要因をすべて知るということは不可能だ。 一方で、分子生物学の進歩は、遺伝情報というものを、遺伝素因といったあいまいな言い方ではなく、 ゲノム という形で

ビッグデータの時代である。私が生業とする生命科学の分野も例外ではない。全遺伝情報を解析するゲノム( genome )や、タンパク( protein )の発現をまるごと解析するプロテオーム( proteome )など、オーム( -ome )がうるさく幅を利かせるこのごろだ。 『オーム解析』は、私のように、古典的な生物学から研究をはじめ、手作業の分子生物学の時代

素直に驚いた。こんなことができるのか。こんなおもろい研究があるのか。若い頃に戻れたら、こういう研究をしてみたい。いずれ役にたつ、と書かれているが、そんなことはどうでもいい。純粋におもろい研究だ。 絹産業の歴史があるので、いまはかなり廃れているとはいえ、カイコ蛾を用いた研究は日本のお家芸だ。産業的な利用だけではない、絹糸の主成分である フィブロイン というタン

二昔以上も前に世話になったおじさんに逢った。このムックを書店で見かけた時、そんな気がした。いまは亡き 辻静雄 の名前、どれくらいの人が知っているのだろう。『 辻調理師学校 (現・辻調理師専門学校) 』の創始者、といっても、地元大阪ではいざしらず、全国的にはどんなものなんだろう。 グルメという言葉が根付いた頃、後に直木賞を受賞する 海老沢泰久 が書いた『美味礼

5億4千万年前の カンブリア爆発 以来、地球上には『捕食者』がはびこっている。ある意味では我々人類が地球上最強の捕食者なのであるが、そのことは棚上げにして、捕食者というと、どう猛で恐ろしいいうイメージを抱きがちだ。 捕食者のいない世界というのを考えてみてほしい。なんとなく、平穏でのどか、緑ゆたかで桃源郷のような景色が思い浮かばないだろうか。『捕食者なき世界』

分厚い本である。内容もやさしくはない。しかし、10年後には、自分の健康が気になるすべての人が理解しなければならない本だ。千ドルゲノム、我々の細胞がもっているゲノム情報。すなわち、DNAの四つの文字ACGT、その60億塩基対にもおよぶ並び方をわずか千ドルで調べることができる時代がそこまできているのだ。 内容は大きく三つに分かれている。一つは、千ドルゲノムを可能

料理研究家・ 土屋敦が編み出すレシピ は、どれもとてもシンプルで美味しい。だから、ひょっとしたら横着な男なのではないかと思っていた。実物を見ても、なんとなくそういう印象がしないでもない。しかし現実は真逆、オタク的執着心の権化だ。 そうでなければ、豚の角煮のレシピだけを27も集めた本『 なんたって豚の角煮 』など出版するはずがない。世界中のどこに、豚の角煮でそ

まず、ここ数年の間に読んだなかで、いちばん感銘をうけた本といっておこう。憲法改正に、在日差別に、いろいろなバッシングに、新しい視点を与えてくれた。人間の『複数性』が重要であると。そして、『思考欠如』は罪悪であると。 ハンナ・アーレント 。どれくらいの知名度なのだろう。恥ずかしながら、昨年、 この名を冠した映画 を見るまで、その業績はおろか名前すら知らなかった

文楽、である。人形浄瑠璃ともいう。300年もの歴史を誇る日本の伝統芸能であり、世界文化遺産にも登録されている。しかし、はたしてどれくらいの人が鑑賞したことがあるのだろう。えらそうなことはいえない、私だって4~5年前から見始めたところである。 しかし最近はかなりはまっていて、義太夫教室に通い出したりしている。その関係で、この4月には、大阪にある落語の定席・ 天

『 背信の科学者たち 』、この刺激的なタイトルの本が 化学同人から出版された のは四半世紀前。1988年のことである。かけだし研究者であったころにこの本を読んだ。驚いた。捏造をはじめとする論文不正を中心に、科学者のダークな事件をあらいだし、その欺瞞から科学をとらえなおそうという試みである。最初におことわりしておくが、この本、後に講談社ブルーバックスとして出版

インフォームドコンセントの世の中になって、お医者さんはたいへんだ。相当時間をかけて説明しても、頭のなかに『?』しか残らない患者さんや患者さんの家族がかなりの割合でおられるにちがいない。 医業を営んでいないといっても、医学部を出ているので、近所のおばばとかに病気の相談をされることがある。どのあたりの基本的なことから、どの程度の詳しさで話をしたらいいかが難しい。

学問においていちばん大事なのは、問題をどう解くかではない。どのような問題を設定するかである【アルキメデス】。 アルキメデスが言ったというのはウソだけど、どういう問いかけをするかが重要というのはホントである。この本が問いかけるのは、ドーナツを穴だけ残して食べることができるか、という哲学的命題だ。この、まったくどうでもいい問題を聞いておもしろがれるかどうか、で、

最相葉月 さん、やっぱりうまい。いまさらながら感じ入った。『 絶対音感 』以来、大ファンなのである。こういうのは言い続けているといいことがある。一年半ほど前、元阪大総長である 鷲田清一 先生が最相さんと対談された時、ファンであることをご存じであった鷲田先生が、その後の食事に誘ってくださった。( 対談録はこちら:pdf ) 対談は『わが心の町 大阪君のこと』と

地味といえば地味な学術書である。はっきり言って4千円は高いし、ほとんどの人は買おうと思わないだろう。しかし、この本のあらすじは知っておいて損はない。江戸時代の知識階級のレベルがいかに高かったがよくわかる。 天然痘 は感染力が強く、致死率も高いおそるべき伝染病である。いや、その撲滅が人類によって成し遂げられた唯一の疾患なのだから、『であった』が正しいのかもしれ

出版されるやいなや、タイムラインには読み巧者たちによる絶賛の言葉がならんだ。しかし内容は重そうだ。まずはウォーミングアップにと、前作『 桶川ストーカー殺人事件-遺言 』を読んだ。そこには、桶川事件について抱いていた漠然としたイメージとはまったく違うドキュメントがあった。 そしてこの本。読み出すと文字通り止まらなかった。ここにもおぼろげに知っていると思っていた

読み応えのある本だ。 新書版で上下 600 ページ近く。それもやさしい本ではない。しかし、『科学を楽しみ、神経系がどのようにして学習し、記憶するかについての驚くべき新発見に興味を持つ一般読者』を想定して書かれたというこの本のもくろみは十分に達成されている。 専門用語がたくさん出てくるので、本屋さんでこの本をぱらぱらっと見たら、それだけで尻込みしてしまうかもし

好むと好まざるとにかかわらず、職業はその人の考え方に大きな影響をおよぼすものだ。私が生業とする科学者とて例外ではない。 まず、科学者は考え方が厳密である。悪いことではないが、一般の人から見ると、融通が利かない感があるに違いない。しかし、この厳密性のイメージがあるからこそ『科学』という名がタイトルにつけば、その本に正しそうな雰囲気をもたらしてくれる。 もうひと
あけましておめでとうございます。お正月の三箇日はいかがすごされましたでしょうか。私儀、元旦の朝から、大阪は天満天神繁昌亭へ行き、贔屓の 笑福亭福笑師匠 に大笑いさせてもらってきました。 そこから復興できたのは、後に四天王と呼ばれるようになる四人の落語家、 六代目笑福亭松鶴 、 桂米朝 、 三代目桂春団治 、桂小文枝(後の 五代目文枝 、いまの 文枝 =以前の

ノンフィクションファンの人たちにとってHONZが恐ろしいのと同じ意味において、私は恵文社一乗寺店が怖い。 関西地区では、そのイメージキャラおねえさん『 おけいはん 』で知られる京阪電鉄。その終点の出町柳は、比叡山方面へ向かう叡山電鉄、いまだにICカードを導入していない奥ゆかしき小さな私鉄、の始発駅でもある。 ワンマン電車にとことこ揺られて三つ目の駅が一乗寺。

辞書を引く、という言葉はすでに死語なのかもしれない。なんといっても電子辞書やコンピューターでの検索が速くて便利である。辞書をひいたついでに、まわりの単語をチラ見しながら、ふむふむそうか、というようなという楽しみがなくなってしまった。紙の辞書を捨てたわけではないのだから、いつでもできるのであるが、わざわざするようなことでもない。 かつては、ジャポニカ百科事典の

エンターテインメントノンフィクション、縮めてエンタメノンフの姉御格、内澤旬子さんの『捨てる女』。売れているらしい。ならばレビューを書くこともないかという気もする。しかし、書きたい。それくらいおもしろかった。こんなに小気味よくポンポンと書かれていて、笑えて、その上、どん引きさせられ、最後にディープに考えさせられる本など読んだことがない。 子供のころから何でもか

かの歴史家アーノルド・トインビーは、単独で通史を書くことの意義を語っている。というか、語っている、という話を聞いたことがある。通史となると、膨大な資料からなるのであるから、詳しさや正しさにおいて、一人で書くと不十分にならざるをえないかもしれない。それでも、通史にはおもしろさがある。 この本ほど、そのおもしろさが抜きんでている本はそうないだろう。まず、登場人物

長らく思い込んでいたことが、記憶ちがいであったりする経験はないだろうか。タイトルに使った『人生に迷ったらバーテンダーに訊け』というのは、誰もが知る格言の一つだと思っていた。しかし、まわりに尋ねても知らない。『人生、バーテンダー、迷う』でググってもひっかからない。 自分で思いついたにしてはしぶすぎるフレーズだ。しかし、いつか人生に迷う時があったら相談してみたい

ここまであたらないものか。かつて、フランスのノーベル賞学者 フランソワ・ジャコブ はその著書『 ハエ、マウス、ヒト 』で、『予測不可能性は科学の性質に含まれている』と喝破した。もっとはっきり、科学予測は基本的に不可能である、と考えておいた方がよさそうだ。 1960年に出版された本の復刻版である。今はなき 科学技術庁 が『識者』に依頼し、来たるべき21世紀、4

ぎりぎりのタイトルである。帯には『明日、人類はこうして絶滅する!』とまである。下手をすれば「とんでも」系の本になりかねない。こういう時、まずチェックするのは、著者の経歴である。これまでの著作に『UFOは真実だった』とかいうのがあったら、HONZの対象外、とんでもフィクションである可能性が高い。 しかし、著者のフレッド・グテルの経歴を見ると、『ニューズ・ウィー

面白いだろうと思って買った本が面白かったらうれしい。しかし、まぁ教養のために読んどこかぁ程度に思って買った本が面白かったら、もっとうれしい。すこし失礼かもしれないけれど、わたしにとって、『冷泉家八〇〇年の「守る力」』は、そんな本だった。 藤原定家の息子、初代の冷泉為家まで800年を遡ることができる、天皇家に仕えた和歌の家系。日本でも屈指の名家の話である。タイ

HONZメルマガ が熱い。編集長が月替わりから栗下直也専任になって、面白さが激増である。その栗下に『「今月読む本」に『おっぱいの科学』、直近のレビューが『生理用品の社会史』です。「どこに行くんだ!大先生」って感じです。』と 誉められた 。けど、どっこも行きません。毎日、ちゃんと大学に来て仕事してますから。 『いずれの本も密かに私が狙っていたからです。ディスプ

偉人伝にも、はやりすたりがある。野口英世やシュバイツアーの凋落は著しい。ユーリ・ガガーリンも、世代によってずいぶんと知名度が違う偉人のひとりだろう。知っている人にはいうまでもないが、『地球は青かった』という名言とともに記憶されている世界最初の宇宙飛行士だ。 ソビエト社会主義共和国連邦の秘密主義というのはここまですごかったのかということがよくわかる本でもある。

読んでよかった、という本がある。いろいろな場合があるけれど、そのうちのひとつは、その一冊を読んだら、この分野では、もう本を読む必要がないだろう、と思わせてくれる本である。『暗号本』はたいがい好きであったけれど、サイモン・シンの『 暗号解読 』を読んで、もうそれ以上は読む必要がなくなった。『野口英世本』は何冊読んだかわからないが、イザベル・プレセットによる『