
『岐路に立つ精神医学』 明日はどうなる?
もう30年以上も前の話。医学生として、精神科の講義をうけていた。テーマは精神分裂病、いまでいう統合失調症である。先生の話す内容が支離滅裂でまったくわからない。いつもは階段教室の中腹に座るのを常にしていたのであるが、その日は最後列・出入り口近くのアホ捨て山(© 久坂部羊)に陣取っていた。 隣の席にいた年かさの同級生に、まったくわからん、と話しかけたら、物知り顔
(2024年当時)
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もう30年以上も前の話。医学生として、精神科の講義をうけていた。テーマは精神分裂病、いまでいう統合失調症である。先生の話す内容が支離滅裂でまったくわからない。いつもは階段教室の中腹に座るのを常にしていたのであるが、その日は最後列・出入り口近くのアホ捨て山(© 久坂部羊)に陣取っていた。 隣の席にいた年かさの同級生に、まったくわからん、と話しかけたら、物知り顔

その存在は古代エジプトの世から知られていた。存在が知られる前からも、多くの人の命がそれによって奪われていたはずだ。ずっと名前はなかったが、ギリシア時代になってようやく、あの医聖ヒポクラテスによってつけられた。しかし、人々はその本質を見誤っていた。ありもしない『体液』の異常によるものであると思い込まされていたのだ。その実体が、細胞の異常な増殖による、と正しく理

学歴が無用だとか、学歴なんか意味がない、と言われるとどきっとする。大学で禄を食んでいる者としては、『売り物』を否定されるようなものなのだから当然のことだ。しかし、本当のところはどうなのだろうか。どうも優勢な気がする学歴否定派は、学歴があってもこんなアホがおる、とか、学歴がなくてもこんなにすばらしい人がいる、とかいう少数のイメージで論じているようなところはない

今年、 第100回 を無事に終了したツール・ド・フランス。フランス全土、およそ3600キロを23日間(うち2日間は休息日)かけて自転車でかけめぐるレースである。ピレネーやアルプスといった山岳レースも含まれており、連日マラソンを走るほどの過酷さといわれている。そのツール・ド・フランスの歴史、ルール、しきたり、から、名勝負、そして日本人選手まで、すべてがわかるコ
とざい、と~ざい。本日はぁ、HONZはじめてのだしものぉ、HONZプレミアム。レビューしまするは、なかのとぉ~るぅ。(知ってる人は、文楽の口上風に声を出してよんでみてください。) ということで、HONZプレミアム、記念すべき第一回である。日本のノンフィクションを盛り上げようという崇高な使命をもったレビュー軍団HONZには、いくつかのルールがある。その一つは、

深海がブーム。みたいな気がする。NHKスペシャル『ダイオウイカ』の興奮は記憶に新しいし、その本が出ただけでなく、劇場用の映画にもなるらしい。 特別展『深海』 が国立科学博物館で開かれているし、本屋さんでも 『深海本』とでもいうべき写真集 がけっこうたくさん売られている。この原稿を書いているさなかにも、朝日新聞の科学欄に”生命の謎に深く迫る-超深海・熱水域で有

『ゆるキャラ』や『マイブーム』という、いまや一般名詞と認知されるようになった言葉が、みうらじゅんの造語であるというから、そのセンスは尋常ではない。もうひとつ、いまいちひろまっていないが、もらっても少しもうれしくない観光地の土産物をさす『いやげもの』という言葉も、みうらの手によるものである。 今春は大阪で『 国宝みうらじゅんのいやげもの展 』というのが開催され

歳をとったと思うことがある。その最たるものは、老後をいかにして暮らすかを考えるようになったことだ。理想は 高峰秀子 と 熊谷守一 。すばらしいエッセイをたくさん残している高峰さんであるが、80歳を前にして筆を折り、以後はできるだけ家から出ず、人とも会わず、若いころから集められたいろいろな名品に囲まれて、読書に暮らされたという。いいではないか。 百歳近くまで生

『私をメンバーにするようなクラブには入りたくない』と言ったのは、 グルーチョ・マルクス だ。しかし、そんなへそまがりは多くないだろう。とかく人は群れたがる。どんな会にも一切関係していない人というのはいないのではないだろうか。 いや、私はどんな協会にも関与していないという人もいるかもしれない。しかし、協会は世の中にはびこりまくっている。日本放送協会(NHK)

『実に美しい』と、ガリレオの福山雅治のようにつぶやきたくなる写真集だ。人体のいろいろな細胞や組織の写真が300点以上。どのページを開いても、見事に美しいのだからたまらない。 電子顕微鏡は、可視光のかわりに電子線を使い、光学顕微鏡では見ることができないような小さなものまで見ることができる顕微鏡である。それには透過型と走査型があって、透過型は薄い標本を見るための

我が国における生後一ヶ月以内の赤ちゃん1000人あたりの死亡数(新生児死亡率)をご存じだろうか?わずか“1”である。お産における赤ちゃんの死亡(周産期死亡率)は、これより多いが、それでも1000人あたりおおよそ4人。もちろん 世界の最高水準 。先天性の異常など防ぎえない場合もあるので、すでに医療の限界とされている。 フィリピンでの新生児死亡率はどれくらいかと

浜村淳には感謝している。いまこうしてHONZでレビューを書けるのも彼のおかげかもしれない。もう40年も前のことになるが、ノンフィクションの本がこんなに面白いものだということを最初に教えてくれたのだから。柳田邦夫の『 マッハの恐怖 』を紹介することによって。 もうひとつ、 浜村淳 は映画を見ることの楽しみを教えてくれた。『おいおい、浜村淳っていったい誰なんだよ

タイトルにあるとおり、お酒の話である。西原理恵子と吾妻ひでおの本であるし、表紙も楽しそうだから、エンターテインメント系かと思って買ったのであるが、ちがった。もちろん両氏のことであるから、サービス精神満点にすごい経験談がどんどんと繰り出される。しかし、この本の目的はそこにはない。西原がいうように、アルコール依存を正しく理解してもらい、少しでも減らそうという崇高

熊本といえば、阿蘇山であり、熊本城であり、北里柴三郎であり、川上哲治であり、水前寺清子であり、辛子蓮根であり、馬刺だったはずである。しかし、今は違う。熊本といえば、ゆるキャラ界の人気を ひこにゃん と二分する くまモン なのである。『ゆるキャラ格』としては、ひこにゃんに一歩ゆずるような気はするが、関連商品売り上げはすでにひこにゃんを超えている。 ご存知くまモ

生命科学や医学の領域では、物理学や数学のように天才は多くない。しかし、遺伝の法則を見つけ出したグレゴール・ヨハン・メンデルや、進化論を唱えたチャールズ・ロバート・ダーウィンは、まぎれもない天才だ。メンデルとダーウィンは、19世紀の中盤から終盤にかけて、その天才的な洞察力を発揮した。 この二人とほぼ同時代に活躍したルイ・パスツール、それに少し遅れたロベルト・コ

ツール・ド・モンブランという、山好きにはよく知られたトレッキングルートがある。シャモニーからシャモニーまで、約100マイル(168キロ)、累積標高差9400メートルという、いささか厳しいが、すばらしい景色のコースである。通常なら一週間ほどかけて一周するルートであるが、なんと、それを一気に駆け抜ける『 ウルトラトレイル・デュ・モンブラン(UTMB) 』という、

高橋秀実ははいくつもの意味で天才だと思う。 ん? だれも気づかないかとは思うが、高野秀行の 『謎ソマ』レビュー と同じような書き出しである。まず、天才エンタメノンフ作家と推定される高野秀行と名前が二文字しか違わないところが天才的である。かな? そして学歴がすごい。モンゴル語学科なのである。モンゴル語学科といえば、誰がなんと言おうと、司馬遼太郎なのである。これ

高野秀行はいくつもの意味で天才だと思う。 アマゾンで 高野の作品 をみると、31商品ヒットし、そのほとんどが☆四つ以上、中には☆五つもある。そう、どの作品もおもしろいのである。親戚や親しい友人が20名くらいいて、星稼ぎしているという可能性は否定しきれないところではあるが、それはないということにしておこう。しかし、ご本人がおっしゃるところ、あまり売れてないらし

『 裁判長!ここは懲役4年でどうすか 』など、一連の裁判傍聴本で有名な北尾トロであるが、なんといってもこれまでの最高傑作は『 キミは他人に鼻毛が出てますよといえるか 』だと思っている。タイトルにあるように、鼻毛が出てますよと注意する、とか、とんでもなくまずい蕎麦屋でまずいと叫ぶ、とか、まるで、みんなが本音を言いまくる恐ろしい町を描いた町田康の傑作小説『 本音

HONZは原則として新刊発行後3ヶ月以内にレビューするという掟がある。早く読まないとだめなのであるが、書こうと思って買ったのに、ぐずぐずと読まずにいてしまうことがある。この本がそうだった。”ミシュランの星みたいな、店を記号化するようなことしてる奴はアホやんけ” と、『飲み食い世界一の大阪 そして神戸。なのにあなたは京都へゆくの』というやたら長いタイトルの本で

いままで隠していたが、じつは建築ファンである。たぶんノンフィクションと同じくらい好きである。であるから、もちろん建築系ノンフィクションもよく読むのであるが、なぜかこれまで紹介する機会がなかった。今回、満を持して-というほどのことはないけれど-紹介するのは、『 鴨川ホルモー 』や『 プリンセストヨトミ 』でおなじみの万城目学が、作家・門井慶喜といっしょに近代建

闘病記というジャンルがある。もちろんノンフィクションである。そんなの読んだことがないという人が多いかもしれないが、大きな本屋さんでは、そのための棚まであるくらいだから、けっこう人気のある分野なのだ。たいへんな病気を明るく描いた大野更紗さんの『 困ってる人 』がベストセラーになったのも記憶に新しい。 かつて、医学生の時代から医師として働いていた3年の間、何かの
ダムの科学 -知られざる超巨大建造物の秘密に迫る- (サイエンス・アイ新書) 高度成長時代、安定した電力を供給するため、たくさんのダムが造られた。そのころ、ダムといえば未来に羽ばたくまばゆい存在であった。ところが最近は、不要な公共事業の代表にされ、環境破壊の悪玉にされ、どうも評判がよろしくない。これはいささか理不尽ではないか。ダムはどっしりと大きくかまえ、じ

子どもの頃、家の近くに映画館がたくさんあった。そのひとつ、エロ映画ばかりを上映していた「千林劇場」の看板が駅のガードにあって、いけないと思いながらいつも見ていた。なかでも鮮烈な破壊力のあったのが谷ナオミ主演のSM映画の宣伝であった。縄で縛られた裸体とともに、なんともおそろしい原作者の名前「団鬼六」が私の脳裏に深く刻み込まれた。 結局のところ、解禁の18才にな
わたしは菊人形バンザイ研究者 一冊もご本を読んだことはないのであるが、出久根達郎さんが好きである。どうして好きなのかというと、『 世にも奇妙な人体実験の歴史 』 の 朝日新聞・書評 の最後に「軽妙な訳文が読みやすく、仲野徹の解説も要領よく秀逸である。」とお誉めいただいたからである。ご本を何冊か読んでからお礼状をと思いつつほったらかしになっているので、ここにお
東電OL事件 - DNAが暴いた闇 HONZのメンバーがとりあげる本は多種多様である。しかし、成毛はメカ系、麻木はナショナリスト系、栗下はアレ系、といったように、好みの分野があって、仲野には、伝記系、生命系に加え、殺人事件系がけっこう多いのである。とりわけ殺人事件が好きというわけではないが、佐木隆三が言うように、殺人事件には人間の業とでもいうものが詰まってい
創造力なき日本 アートの現場で蘇る「覚悟」と「継続」 (角川oneテーマ21) 村上隆は単なるクリエイターではない。「カイカイキキ」というアート集団をまとめあげ、そのサステイナビリティーを追求する経営者でもある。『芸術闘争論』で垣間見せたその一面を、若手を育てるという観点から論じた一冊だ。タイトルは『創造力なき日本』になっているが、『世界を相手にする芸
世界珍本読本―キテレツ洋書ブックガイド めったにないだろうが、ある本に出会ったがために、それまでの人生がガラガラと音をたてて崩れてしまうようなことがあるはずだ。時と場合と人によって、そのような本はさまざまであり、マルクスの『資本論』であるかもしれないし、デヴィ夫人や野村沙知代の写真集であるかもしれない。『世界珍本読本』、不用意に読んでしまうと、あまりの内容に

買(こ)うてや、買うてやぁ~! 安いで安いでぇ~。なんと、こんだけ大きいて立派な本が5千と7百円っ! 税金入れても、6千円で15円のおつり。え? 6千円もする本は高いて? アホなこというたらあかんがな。ものを買うかどうかは、値段で決めたらあかん。値打ちで決めなあかん。学校で習わへんかったんかいな。うそ言わへん。こんだけの本が6千円でおつりっちゅうのは、びっく

なんとかオロジー=~ology というのは、「学問」を示す接尾辞である。したがって、タイトルにあげた「チンポロジー」は「ち◎ぽ」の学問。 という訳ではなくて、「チンプ」すなわちチンパンジーについての学問である。 われわれ人類と700万年前に枝分かれしたチンパンジーをめぐり、その生態、知能、進化、病気、言語能力、などなど、研究の歴史から最新の知見までをこれでも

医療ミステリー作家・久坂部羊の本はすべて読んでいる。熱烈なファンなのである。かというと、そいういう訳でもない。久坂部羊こと久家義之クンは、阪大医学部時代の同級生であり、いまでもしょっちゅう飲みに行く友人である。出版のたびに恵送してくれるので、礼儀正しい私としては、ついすべて読んでしまっているだけのことである。 しかし、久坂部羊の本がたくさん売れたところで、私

街中で少しでも時間があると本屋さんに入ってみる。出張で札幌に行った時、地元ならではの本はないかと入った書店で偶然に見つけたのがこの本である。そんな状況で掘り出した本なので、「新刊超速」というには恥ずかしいタイミングになっていることはお許しいただきたい。しかし、出版後一ヶ月で版を重ねているから、この本、地元では結構売れたようだ。 次から次へと「どこどこ(地名)

人生に困った時、この本をひもとけば必ず何らかの打開策を得ることができる。なんとも画期的な本である。おもろい人生相談だけでなく、その回答にいたる思考回路を惜しげもなく披瀝し、その方法論を一般化したこの本は、かの古典的名著、デール・カーネギーの『 道は開ける 』 に匹敵すると言っても過言ではない。 朝日新聞の土曜版に掲載されている『悩みのるつぼ』の回答陣の一人、

ご存じ三菱グループを創った岩崎弥太郎にはじまり、知る人ぞ知る優れた建築家であり、メンソレータムの近江兄弟社を興したヴォーリズまで、明治時代に活躍した48人の企業家についての図説集である。いいかえると、ふんだんな写真がちりばめられた48人の簡略な伝記集でもある。そう、伝記読みには何ともそそられる本なのである。 こういうオムニバス形式の本というのは、拾い読みには

人生相談が好きである。どれくらい好きかというと、伝記を読むのと同じくらい好きである。他人の人生を覗いてみたいというお下品な趣味ねと人は嗤うかもしれない。が、ちょいと言い訳をさせてもらうと、私にとっては、伝記と同じように、人生相談も、ある意味で人生のテストパターンなのである。 悩みというのは、もちろん、フィリピンと台湾とポーランドに愛人がいて、それぞれに7人ず

ヒトのDNAを用いる研究では、匿名化や厳重な保管など、サンプルの扱いに厳しい制限がかけられている。個人のゲノムが遠からず千ドルで読めるようになろうかという時代である。どのようなものを食べているかで、どのような人間であるかをあててみせる、と、『美味礼賛』のブリア=サヴァランは言ったが、それどころではない。ゲノムがわかれば、その人のいろいろなことがわかってしまう

おもしろいノンフィクションを紹介するという『HONZ精神』にのっとり、手に取るや置くにあたわず一気読みした本をレビューする、というのを原則にしている。が、今回だけは例外である。内容の重さに、何度も何度も天井を仰ぎ見なければならなかった。しかし、それでも皆さんにご一読をお薦めしたい。親子とは何か、という、おそらく多くの人は気にしたこともないが、根源的な問題を真

「あれ?同じ本が立て続けにHONZに紹介されてる。なにかのミスか、はたまたHONZメンバーの共食いか。」と、思われた方もおられるやもしれませぬ。しかし、じつはどちらでもないのでございます。不肖、巻末に解説を書かせていただいたご縁から、文藝春秋(平成24年8月号)の『本の話』に、この面白本の紹介をさせていただくこととなりました。せっかくのことでもあり、その紹介

驚愕の一冊である。老スナイパーの名は中村泰(ひろし)。1930年生まれのこの男、岐阜刑務所に服役中。しかし、この本のタイトルになっている1995年の国松警察庁長官狙撃事件による服役ではない。その罪状で訴追され、「救国」のために狙撃したことを世に知らしめたいという中村。しかし、自らの「救国」の行動により「チェ・ゲバラ」になりたかったというその夢はかなえらてはい

二日連続で、殺人者本のレビューである。しかし、この本、すこしも「超速」レビューになっていないのである。すみません。遅れたのにはいささかの理由がある。以前、沢木耕太郎訳、というのにつられて、『 殺人者たちの午後 』という本を買った。英国での殺人者たちへのインタビュー集である。怖かった。最後まで読み切れなかった。そんな経験があったので、この本、出版されてすぐに購