ノンフィクションはこれを読め!

HONZ客員レビュー

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203記事

『ロマネスク美術革命』 書影

アート・スポーツ / 世界史

『ロマネスク美術革命』

従来は、「ゴシック至上主義者」エミール・マールに代表されるキリスト教図像学者が、「稚拙」なロマネスク美術を発想源とされるテクストとの関連で読み解いてきた。これに対して著者は、「書物よりも大理石を読み解こう」と考え、「反図像学的試み」を主張するマイケル・カミールに親近感を抱く。そして、ヨーロッパの古寺巡礼を始めたのだ。読みながら、ヴェズレ―やオータンなどのロマ

『ヒトはこうして増えてきた 20万年の人口変遷史』 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『ヒトはこうして増えてきた 20万年の人口変遷史』

少子高齢化に悩むわが国では、ようやく人口政策の是非が議論され始めた。しかし人口問題は難度が高い。昨年 「人口の世界史」 (マッシモ・リヴィ‐バッチ)という人口問題を考える上で極めて示唆に富む良書が出版されたが、20万年の人口変遷史を記述した本書もそれに劣らない出来栄えだ。 20万年前(世界人口5千人、以下同じ)に、東アフリカで誕生したヒトの出生と死亡の原像は

『書に法あり』 書影

教養・雑学 / HONZ客員レビュー

『書に法あり』

20年ぐらい前になるだろうか。石川九楊の「書とはどういう芸術か」(中公新書)を初めて読んだ時、書道に対する物の見方が180度変わったことをよく覚えている。本書は、その時に勝るとも劣らない知的でかつ心地よい「衝撃」を与えてくれた痛快極まりないかつそれでいて骨太で本格的な書道論である。書に興味のある人には、必読だろう。 本書は、いくつかのユニークな特徴を持ってい

『文明の誕生 メソポタミア、ローマ、そして日本へ』 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『文明の誕生 メソポタミア、ローマ、そして日本へ』

僕たち人類は、約20万年前に東アフリカのサバンナで生まれた単一種(ホモ・サピエンス)が、世界中に拡がっていったものである。それと同様に、よく知られている4大文明も別々に生まれたのではなく、世界最古のメソポタミア文明が四方に拡がっていったものであるという説が唱えられている。 「ものごとの本質は祖型にこそよくあらわれる」、そうであれば、僕たちの文明がどこへ行くの

『ネオ・チャイナ 富、真実、心のよりどころを求める13億人の野望』 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『ネオ・チャイナ 富、真実、心のよりどころを求める13億人の野望』

『ネオ・チャイナ 富、真実、心のよりどころを求める13億人の野望』は、現代中国の「今」を官と民のせめぎ合いという観点から描いたルポルタージュである。ジャーナリストのふるまいよしこさんは本書を「中国の今を知るための今年一番の良書」と評する。はたして著者のエヴァン・オズノス氏とは、どのような人物なのか? そして本書の読みどころはどのような点にあるのか? ふるまい

『デービッド・アトキンソン 新・観光立国論』 書影

社会 / HONZ客員レビュー

『デービッド・アトキンソン 新・観光立国論』

わが国では社会の高齢化に伴って、毎年1~2兆円ほど社会保障関係費が増嵩していく。それに対応するためには、少なくとも費用を相殺する分だけでもGDPの成長が必要だ。さもなければ、わが国は年々貧しくなっていく他はない。では、どうするか。「議論に関しては、冷静に物事の真をつき自分の感情は一切挟まない英国人」の元アナリストである著者は、人口を増やすしかない、と言う。

『保存修復の技法と思想 古代芸術・ルネサンス絵画から現代アートまで』 書影

アート・スポーツ / HONZ客員レビュー

『保存修復の技法と思想 古代芸術・ルネサンス絵画から現代アートまで』

ウフィツィで修復後の「ヴィーナスの誕生」に再会した時、以前とは異なり余りにも画面が明るくて軽い眩暈のような違和感を覚えたことがある。再建なった薬師寺の西塔を観た時もそうだった。それ以来、文化財の修復とは何だろうとずっと考えてきたが、漸く納得のいく言説に出会えた。それがこの素晴しい本である。 本書は、介入(修復)の4大原則、「可逆性、判別可能性、適合性、最小限

『不健康は悪なのか』はスゴ本 書影

医学・心理学 / HONZ客員レビュー

『不健康は悪なのか』はスゴ本

今週日曜日に行われた、 HONZイベント@d-labo二子玉川 。終了間際の質問コーナーにて、観客席にいた一人の眼光鋭い男性から『不健康は悪なのか』という本を紹介された。その男性の口からは、次々に知る人ぞ知る名著の名前が飛び出し、HONZメンバーもたじたじに。聞けば、 スゴ本ブログ でおなじみのdainさんであるという。イベント終了後すかさず交渉に入り、レビ

『ティラノサウルスはすごい』by 出口 治明 書影

生物・自然 / HONZ客員レビュー

『ティラノサウルスはすごい』by 出口 治明

ところでティラノサウルスは、いつどこにいたのか?6600万年前までの600万年間、ララミディア(北米大陸の西)に住んでいた。最初の化石が発見されたのは1900年。そしてこれまでに50体弱が発掘されている(第1章)。ティラノサウルスはどのように描かれてきたか。最初はゴジラ型(僕の子どもの頃)。そして最近は水平型(第2章)。では、覇者の身体能力はどうか。圧倒的な

『重力との対話』by 出口 治明 書影

人物 / HONZ客員レビュー

『重力との対話』by 出口 治明

初めて山海塾の舞踏を観たのは、何年前になるだろうか。あれほどいやでも凝視せざるを得なかった濃密な舞台は、67年の人生の中でも数えるほどしか観た覚えがない。その山海塾の主宰者、天児牛大の半生記が初めて出たと聞けば、これはもう読むしかないではないか。そういえば、東京都現代美術館で6月28日まで開かれていた素晴らしい展覧会、「 山口小夜子 未来を着る人 」にも、山

『アルタイ』by 出口 治明 書影

小説 / HONZ客員レビュー

『アルタイ』by 出口 治明

ルネサンスの工房を彷彿とさせるルーサー・ブリセット・プロジェクトの4人組が傑作「Q」を世に問うて10年。本書は、後継ユニット(ウー・ミン)の4人組が、「Q」のいわば続編として構想したものである。一般に、傑作の続編は退屈なものが多い。しかし、「アルタイ」はそうではない。全く独立した物語として、極上のエンターテイメントに仕上がっているのは、さすがという他はない。

『老北京の胡同』by 出口 治朗 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『老北京の胡同』by 出口 治朗

僕は、本と旅の他にはさしたる趣味がない。初めて訪れた異国の町、特に下町をあてもなく歩き回るのが何よりも好きだ。そんな時、岐路にさしかかると、雑然とした方、怪しげな方に自然と足が向く。人間の都市とは何か、ジェイン・ジェイコブズの直観は正しかったのだ。20年ほど前、仕事で毎月のように北京に通ったことがあった。胡同と出会い、よく「胡同」歩きをしたものだ。本書は、そ

『葬送の仕事師たち』 死の「裏方」を知る 書影

民俗・風俗 / HONZ客員レビュー

『葬送の仕事師たち』 死の「裏方」を知る

母は十年かけて少しずつ死んでいった。体中の機能が失われていき、やがて口を動かす機能が失われた。口が動かなければ食べられない。ある日、母のからだに直接栄養剤を送り込むための胃瘻の手術をし、その帰りがけに、中華料理屋で母のいない食卓を囲んだ。母が二度と食べることのなかった、あの餃子の味を、私は忘れることができないだろう。 あれは生きながら母を弔う通夜だった。母が

『後白河天皇』by 出口治明 書影

人物 / 日本史

『後白河天皇』by 出口治明

本書は、定評のある「ミネルヴァ日本評伝選」の1冊である。わが国で武家政権が成立する前夜、源平が相争う激動の時代に君臨した後白河天皇、稀代の暗君か謀略の策士か、評価の分れる「日本第一の大天狗」の生涯を描いた力作だ。 即位の可能性が低かった青少年時代、後白河は今様(流行歌)に狂う。陰謀の中、即位した後白河は、実兄の崇徳上皇と争う保元の乱に見舞われる。「保元の乱の

『殷』 by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『殷』 by 出口 治明

遥か昔の物語には、何故かロマンをそそられる。チョガ・ザンビールのジッグラトに登った時、また、殷墟の王墓を訪ねた時の、あの高揚感は今でも忘れることができない。本書は、甲骨文字の第一人者が、膨大な数の甲骨文字を読み解いて中国最古の王朝、殷(商)の実像を詳らかにしたものである。殷はBC16世紀から500年以上続いた王朝である。前期の200年は安定して領域を拡大した

私とともに在る人と 『漢方水先案内 医学の東へ』を読んで――客員レビュー by 上橋 菜穂子 書影

医学・心理学 / HONZ客員レビュー

私とともに在る人と 『漢方水先案内 医学の東へ』を読んで――客員レビュー by 上橋 菜穂子

最新作『鹿の王』で 「2015年本屋大賞」を受賞された 、上橋 菜穂子さん。西洋医学と東洋医学の背景にある世界観の違いを描き出した筆致は「医療サスペンス」のようとも言われ、「日本医療小説大賞」なども受賞されている。そんな上橋さんをして「最近、最も夢中になって読んだノンフィクション」と言わしめたのが、『漢方水先案内――医学の東へ』である。彼女は本書をどのように

『電車道』by 出口 治明 書影

小説 / HONZ客員レビュー

『電車道』by 出口 治明

人はなぜ本を読むのか。それは、何よりも先ず面白いからだと、僕は思う。とりわけ小説を読むときはそうだ。頁をめくるのがもどかしいくらいに、急かされる時が最高だ。「電車道」はそんな小説である。一気に読み終えたのは去年の「水声」以来のことではないか。 ところで、「水声」の端正で古典的な佇まいに比べれば、「電車道」はむしろ読みにくい部類の小説だ。第一、章立てがない。文

『石の物語』by 出口 治明 書影

教養・雑学 / 小説

『石の物語』by 出口 治明

タイトルを一瞥しただけで、もうこれは読むしかないと観念させられるタイプの本がある。本書のサブタイトルに紅楼夢の文字を見出した瞬間に、紅迷の僕は観念した。本書は、中国の石伝説と、冒頭がいずれも石から始まる「紅楼夢(石頭記=石の物語)」「水滸伝」「西遊記」を論じたものである。 本書は6章からなる。第1章は「テクスト相関性と解釈」。先ず「他のテクストから完全に自由

『フランソワ一世』by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『フランソワ一世』by 出口 治明

大航海時代(もっとも鄭和艦隊に比べれば小航海に過ぎない)が、実質的に始まった16世紀前半のヨーロッパには、個性豊かな君主たちがひしめきあっていた。ヘンリー8世、カール5世、フランソワ1世の三つ巴の争い、それにスレイマン大帝やマルティン・ルター、メディチ家のレオ10世が絡むのだ。役者を一瞥しただけでも面白くないわけがない。ところが、この豪華絢爛たる顔ぶれの中で

『蒙古襲来』by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『蒙古襲来』by 出口 治明

力作である。鎌倉幕府は蒙古襲来に全精力を使い果たしてやがて滅んだが、蒙古襲来の実相については、あまり語られることは無く、漠然と神風(台風)が吹いて蒙古の船が沈んだ(ほぼ全滅した)という常識が長い間罷り通ってきた。本書は、日本、朝鮮、中国の史料を丁寧に渉猟して、蒙古襲来の実像をできる限り正確に(合理的に)復原しようとする意欲的な試みである。そして、著者は「蒙古

『ヨーロッパは中世に誕生したのか?』by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『ヨーロッパは中世に誕生したのか?』by 出口 治明

人間は、「パウロの回心」のように、何か画期的な出来事があって初めて次のステージへ進めるという思考に囚われ易い。「起業を目指したそもそものきっかけは何か」などの質問や「ヨーロッパでは、西ローマ帝国が滅びて暗黒の中世が始まり、輝かしいルネッサンスが起こって近代が始まる」といった思考がその典型だろう。 アナール派の重鎮である著者は、歴史を、不連続(断絶、画期)では

『わが父 塚本邦雄』by 出口 治明 書影

教養・雑学 / HONZ客員レビュー

『わが父 塚本邦雄』by 出口 治明

どうしてこの本を手に取ったのだろうか。それは塚本靑史の愛読者であったからだ。父君が超有名な歌人であることは知っていた。しかし僕は短歌や俳句にはほとんど興味がない。それにも関わらず、この本はとても面白かった。実の親子でしか語れない日常生活の卑近な部分が、素直にしかもクールに書かれていて読者の興趣をそそるのだ。 ところで、邦雄はどんな人だったのか。「一番嫌うのは

『快楽について』by 出口 治明 書影

教養・雑学 / HONZ客員レビュー

『快楽について』by 出口 治明

かつて「コンスタンティヌスの寄進状」と呼ばれた世紀の偽書があった。その内容は「ローマ司教(ローマ教皇)に自分(ローマ皇帝)と等しい権力を与え、全西方世界を委ねて、自分はコンスタンティノープルに隠居する」というものであった。もちろん、ガリア(フランス)を根拠地としたローマ皇帝たるコンスタンティヌス大帝がそのような文書を残すはずもなく、これは8世紀ごろにローマ教

『進化とは何か?』by 出口 治明 書影

サイエンス / HONZ客員レビュー

『進化とは何か?』by 出口 治明

「私たちはなにもので、どこから来て、どこへ行くのだろう」有史以来人間はずっとこの根源的な問いを考え続けてきた。人間は動物で星のかけらから作られている、そして進化を続けてきて今日の姿になったのだ、ということを現在の僕たちはよく知っている。僕たちが宇宙論や生物学や進化論が好きなのは、きっとどこかに自身のルーツを確かめたい気持ちがあるからに違いない。 本書は、とり

『現実を生きるサル 空想を語るヒト』人間らしさを知ることは、社会の未来を見据えること 書影

サイエンス / HONZ客員レビュー

『現実を生きるサル 空想を語るヒト』人間らしさを知ることは、社会の未来を見据えること

ヒトとその他の動物を隔てるものは何か?それを様々なアプローチで描き出していくのが、本書『現実を生きるサル 空想を語るヒト』である。人間らしさの根源を突き詰めることは、すなわち人間と機械の共生が叫ばれる現代社会の将来を占うことにも、つながっていくのかもしれない。 ビックデータやIT関連書籍の翻訳を数多く手がけられ、また「 シロクマ日報 」などのブログでも知られ

『孝謙・称徳天皇』by 出口 治明 書影

人物 / 日本史

『孝謙・称徳天皇』by 出口 治明

意欲作の多いミネルヴァ日本評伝選の1冊である。異例の女性皇太子を経て即位、恵美押勝の乱に勝利し、道鏡を用いて仏教を基軸とする政治を推進した奈良時代最後の天皇を描いた力作である。専門書に近い内容で簡単に読み進める訳ではないが、この個性的な女帝の評伝としては本書の右に出るものはないのではないか。 奈良時代は女帝の世紀と呼ばれたりするが、持統、元明、元正、孝謙・称

『偽装された自画像』by 出口 治明 書影

アート・スポーツ / HONZ客員レビュー

『偽装された自画像』by 出口 治明

人間と同じように、本にも「出会い頭」というものがある。シエナの至宝の1つで、ミケランジェロが感服したルネサンス最高の女性画家アンギッソーラの表紙を見た瞬間、「これは読むしかない」と観念してしまった。頁を開いてみると、とても読みやすい本で、通勤の地下鉄など移動時間中に読み終えてしまった。でも、なかなかに面白い。 本書は自画像を読み解いたものである。自画像は「演

『海賊たちの黄金時代』by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『海賊たちの黄金時代』by 出口 治明

ジョニー・デップ扮する海賊ジャック・スパロウは世界中で大変な人気者である。僕も大好きだ。それは何故だろうか。本書を読めばその答が分かるというものだ。なるほど、そうだったのか。合点がいった。 海賊の黄金時代は1710年代・20年代だった。スペイン継承戦争(1702~13)の後、海賊が急増したのは、連合王国の王立海軍が約3万6千人の人員削減を行い、また私掠免許状

『水声』by 出口 治明 書影

小説 / HONZ客員レビュー

『水声』by 出口 治明

僕が小説を読む時のクセの1つだが、テーマと構成とテクニックを考えながら読むというのがある。この3つを高い完成度で兼ね備えた小説には、そうそうお目にかかれるものではない。それだけに3つが揃った素晴らしい小説に遭遇すると、とても嬉しくなるのだ。 「水声」のテーマは、おそらく、現代人の孤独(寂寥)である。動物である人間は長い間群れの中で次の世代(子ども)を育てなが

『黒の文化史』by 出口 治明 書影

アート・スポーツ / 民俗・風俗

『黒の文化史』by 出口 治明

ややペダンチックな本ではある。でも美術好きにはたまらないだろう。なにしろ、扉絵がダ・ヴィンチから始まるのだから。光がない光源色としての黒、光の反射率がゼロですべての波長の光を吸収する物体色としての黒、黒は生命に敵対する色とも言われるが、世界の喪服には黒と白がある。また結婚式の礼服も白と黒。本書はこのように、極めて多義的な(両極端の意味とも結びつく)黒に捧げら

『ヴァロワ朝』by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『ヴァロワ朝』by 出口 治明

1328年、フランスでは、341年続いたカペー朝が断絶し、261年続くヴァロワ朝が始まった。ところで、新王フィリップ6世は、カペー朝最後の王シャルル4世の従兄なのだ。それが、何故王朝交替と呼ばれるのか。本書は、そこから筆を起こして、ヴァロワ朝13人の王の事跡を順に紐解いていく。 幸運王フィリップ6世は、しかし、我こそ王位継承権者だと名乗るイングランド王エドワ

『ニッポン景観論』by 出口 治明 書影

民俗・風俗 / HONZ客員レビュー

『ニッポン景観論』by 出口 治明

人間誰しも、自分のことは実はよく分からない。第3者の目を通して、初めて自分のことがよく分かる。本書は、日本をこよなく愛するアメリカ人が、日本の景観を「国際的な目線」で、縦横に論じたものである。指摘が全て的確で痛快極まりなく、またそれだけに読み終えて、とても恥ずかしくなった。 日本で暮らしているとなかなか気がつかないが、「日本は電線・鉄塔の無法地帯」である(第

『江戸しぐさの正体』by 出口 治明 書影

教養・雑学 / 民俗・風俗

『江戸しぐさの正体』by 出口 治明

『 知ろうとすること。 』を読んで、僕の心に一番強く残ったのは、「トンデモ論に対して、正しいデータを出して、誠実で揺るぎない態度で撃破することが大切だ」という趣旨のところだった。まさにそれを文字通り実践した本に出合った。それが本書である。 「江戸しぐさ」については、昔、確か地下鉄の広告で見かけた記憶がある。「傘かしげ」「肩引き」「こぶし腰浮かせ」が3大江戸し

『中国人物伝1』by 出口 治明 書影

人物 / 世界史

『中国人物伝1』by 出口 治明

中国文学の面白さを縦横無尽に語ってきた最高の語り部、井波律子が中国人物伝(全4巻)を出すという。その話を聞いただけで、これはもう読むしかないと観念した。第1巻は、春秋戦国時代から秦漢帝国まで、春秋五覇の斉の桓公から東漢の班超までを取り扱っている。 本書は2部構成をとる。第一部は「乱世の生きざま-春秋戦国時代」。まず呉越の戦い。何回読んでも臥薪嘗胆の物語は面白

『エカチェリーナ大帝(上下): ある女の肖像』by 出口 治明 書影

人物 / 世界史

『エカチェリーナ大帝(上下): ある女の肖像』by 出口 治明

もう35年ほど昔のことになるだろうか、アンリ・トロワイヤの「女帝エカテリーナ」を読んだのは。トロワイヤのペンの力に魅せられて、「大帝ピョートル」「アレクサンドル1世」「イヴァン雷帝」などロシア宮廷を題材にした一連の著作をむさぼり読んだことを懐かしく思い出す。そう言えば、池田理代子の「女帝エカテリーナ」もトロワイヤを下敷きにした作品だった。本書は、トロワイヤを