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おすすめ本レビュー

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医学・心理学 / おすすめ本レビュー

病から医者という「ひと」を見る『患者になった名医たちの選択』

コロナ禍で、改めて社会からの注目と敬意を集めている医療現場。近年は、テレビドラマでも毎クール必ずといっていいほど医療現場を舞台にした作品が放送されている。 人の命に密接に関わる医療の世界と医師という存在に対して、私たちはどこか、特別な感情を抱きやすい。だが、医師たちも同じ人間。彼らにも病は等しく降りかかる。 本書『患者になった名医たちの選択』は、病にかかり「

『仁義なき聖書美術【新約篇】』ヤクザ・宗教・アート 奇跡のコラボレーション 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『仁義なき聖書美術【新約篇】』ヤクザ・宗教・アート 奇跡のコラボレーション

アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせである──よく耳にする言葉である。しかし、組み合わせの新しさにも程があるだろう。本書は新約聖書の物語を、なぜか広島ヤクザ風に語り直して紹介し、それらを題材とした美術作品の読み解き方を教えてくれる一冊なのだ。 かの有名な「最後の晩餐」のシーン。イエスは周囲の面々にこう告げる。「言うとくがの。この中にわしのことを密告(チン

『旅のつばくろ』道中だけが旅じゃない 書影

教養・雑学 / 人物

『旅のつばくろ』道中だけが旅じゃない

二週間前はまだ連休だったことが信じられない。どこにも出かけないGWはあまりにも一瞬すぎて、何をしていたのか早くも記憶がなくなっている。巣ごもり生活にもすっかり慣れ、むしろ快適に感じるくらいだ。これから自粛が解かれていったとしても、しばらくは遠出なしで平気だとけっこう本気で思っている。 本書を読んで、そんな気持ちが変わってきた。日頃の外出は減るとしても、やっぱ

「おもてなし」の職人さん『配膳さんという仕事』 書影

教養・雑学 / 民俗・風俗

「おもてなし」の職人さん『配膳さんという仕事』

陽ざしの強い京都、すだれ、浴衣、冷やしきゅうり……。今年の夏は京都旅行も難しいかな、と残念に思っていたが、本書を読むと京都の街並みが鮮やかに浮かび上がってきた。本書では、今から30年ほど前にタイムスリップ。祗園祭や茶会、料亭、花街などいたるところで活躍するのは「配膳さん」と呼ばれる職業人である。配膳さんはまるで「おもてなし」の職人のようだ。 著者は配膳さんを

超常現象も秘密結社も超古代文明もすべてあります! 創刊40年の歩みを詰め込んだ『ムー ビジュアル&アート集』 書影

アート・スポーツ / 民俗・風俗

超常現象も秘密結社も超古代文明もすべてあります! 創刊40年の歩みを詰め込んだ『ムー ビジュアル&アート集』

本書を見つけた時、テンションが上がりすぎて鼻血を出しそうになってしまった。営業再開を待ち望んでいた紀伊国屋書店新宿本店の店頭だったことも、興奮に拍車をかけたかもしれない。 本書はあの!月刊『ムー』のビジュアル&アート集である。説明するまでもないが、『ムー』は昨年創刊40周年を迎えた日本屈指のミステリーマガジン。本書では1979年の創刊から2019年12月号ま

『大陸と海洋の起源』 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

『大陸と海洋の起源』

世界中で猛威をふるう新型コロナウィルスのため、評者が勤務する京都大学でも新学期は1ヶ月を超える休講から始まった。しかし、こんな時こそ部屋に籠もって科学の古典をじっくり読んでみたい。本書は世界で初めて「大陸移動説」を提唱した地球科学の古典で、後に「地球科学の革命」の起爆剤となった書物である。最初に大陸移動とは何かから説明しよう。 世界地図を広げると地球に関して

『文化大革命 人民の歴史 1962-1976(上・下)』文化大革命が破壊したもの、暴かれる独裁政権の本質 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『文化大革命 人民の歴史 1962-1976(上・下)』文化大革命が破壊したもの、暴かれる独裁政権の本質

1958年から61年まで続いた大躍進政策の失敗により、中国は数千万人の死者を出す。この政策で中国の経済は破壊され、農村部は崩壊してしまう。農民たちは飢え・過労と地方の共産党幹部の暴力に苦しみながら命を落としていった。この未曾有の失政により、毛沢東の権威は失墜するのである。 国家的な危機を受けて行われた「七千人大会」で劉少奇や彭真、彭徳懐らをはじめとする多くの

世界の石油市場を動かす『ロスネフチ-プーチンの巨大石油会社-』 書影

社会 / ビジネス

世界の石油市場を動かす『ロスネフチ-プーチンの巨大石油会社-』

2020年3月、原油価格は暴落した。年初、原油の代表指標であるBrentは60~70$/bblで推移していたが、3月6日以降に急降下。一時、20$/bblを割り、その価値は60%以上下がった。別の代表指標であるWTI原油は、特殊要因あったとはいえ、史上初のマイナス価格まで値下がったことも大きなニュースとなった。エネルギーアナリスト岩瀬昇の言葉を借りれば『海図

身近な食べ物ってすごいのだ。→『育ちすぎたタケノコでメンマを作ってみた。』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

身近な食べ物ってすごいのだ。→『育ちすぎたタケノコでメンマを作ってみた。』

小学生男子的な好奇心のままに、日常にある目の前の身近な食べ物を掘り下げる不思議な人がいる。「これなに?」と思ったら猪突猛進、栽培したり採集したりして、食す! 食べることに旺盛な人は楽しく生きている気がするぞ。よくわからないタイトルなのだけれど、その実践指南書の、ご紹介。 著者の玉置標本さんは1976年、埼玉県生まれ。山形で大学時代を過ごしたころに野山の楽しさ

幸せの国へ、巣ごもり旅行 『週末フィンランド』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

幸せの国へ、巣ごもり旅行 『週末フィンランド』

ずっと家にいると、考えるのは本や映画、そして毎日のご飯のことだ。先日ふと私は「かもめ食堂」という映画を観たくなった。決して猛烈な欲求ではない。“ふと”思っただけだ。でも、ネットで探してテレビにキャストしたら、次の瞬間にはその思いが叶えられた。便利な世の中になったものである。 映画「かもめ食堂」は、群ようこ原作、小林聡美主演の2006年の作品だ。舞台は、フィン

『宿無し弘文』ジョブズが師と仰いだ日本人僧侶の生涯 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『宿無し弘文』ジョブズが師と仰いだ日本人僧侶の生涯

禅には昔からおっかないイメージがあった。 それはきっと若い頃に読んだエピソードが強烈だったせいだろう。 禅の始祖である達磨に弟子入りを乞い、覚悟のほどを示すために自らの左肘を斬り落としてみせた慧可のエピソードである。雪舟の国宝『慧可断臂図(えかだんぴず)』にも描かれた有名な場面だ。 この話を初めて知った時、あまりに訳がわからなすぎて混乱した。弟子入りを断られ

『ステレオタイプの科学』 色眼鏡で見られると本当にできなくなってしまう 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『ステレオタイプの科学』 色眼鏡で見られると本当にできなくなってしまう

「女性は数字に弱い」「高齢者は記憶力がわるい」「日本人はアフリカ系の人に比べて身体能力で劣っている」。わたしたちはしばしば過度の一般化を行い、特定のステレオタイプをとおして周囲の人を眺めてしまう。そして、そうしたステレオタイプがときとして深刻な偏見や差別を生み出してしまうことは、多くの人が知っているとおりである。 だが、ステレオタイプがもたらす悪影響はどうや

『カラスは飼えるか』ほかの鳥だって可愛いよん。 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

『カラスは飼えるか』ほかの鳥だって可愛いよん。

「鳥本にハズレなし」というのが私の持論である。鳥の生態が興味深いのは確かだが、それ以上に鳥類学者にはユニークな人が多い。 『鳥類学者無謀にも恐竜を語る』(新潮文庫)の川上和人、『ダチョウの卵で、人類を救います!』(小学館)の塚本康浩など真摯な研究者が真面目に書いた本ほど面白い。 本書の著者はカラス研究者。『カラスの教科書』(雷鳥社、のちに講談社文庫)の単行本

『現代経済学の直観的方法』アフターコロナすら見通せる、現代経済学の最良のテキスト 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『現代経済学の直観的方法』アフターコロナすら見通せる、現代経済学の最良のテキスト

1987年、当時26歳の青年が自費出版した本が大きな評判を呼んだ。著者は大学院を中退したばかりの物理学徒で、「100部も売れれば奇跡」と出した本が、一部の大手書店では一般文芸書を抜いてベストセラーになるほど売れた。この『物理数学の直観的方法』はその後、講談社ブルーバックスに収められ、現在も版を重ねている。 著者の手法は、難解な概念の核心部分を、大胆なイメージ

『両利きの組織をつくる』日本企業の変革を阻む慣性力とそれを打ち破る組織経営論とは 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『両利きの組織をつくる』日本企業の変革を阻む慣性力とそれを打ち破る組織経営論とは

「これまでのやり方が通用しなくなり始めている」 これは多くの伝統的な日本企業が抱いている実感だろう。市場環境の急激な変化、AI(人口知能)を始めとするデジタル技術や新興企業の参入によるディスラプション(創造的破壊)、従業員の価値観の多様化や働き方改革など、企業は従来のやり方では対処できない数多くの現実に直面している。 本書は、2016年に出版された『両利きの

弱い心を何度も叱り、金かりに行く『文豪と借金』 書影

人物 / 小説

弱い心を何度も叱り、金かりに行く『文豪と借金』

文豪と借金というのは切っても切り離せないものなのかもしれない。石川啄木、内田百閒、川端康成など、借金にまつわるエピソードを持つ文豪は枚挙に遑がない。なかでも有名でゲスの極みといっても差し支えないのは石川啄木である。 親友の金田一京助をはじめ、借金に借金を重ねたあげく、金は返さずに踏み倒し、妻子に金をやらずに、手にした金で女遊びに明け暮れていた。本書にはそんな

『地球に住めなくなる日』まであと?年、絶望するより行動を! 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

『地球に住めなくなる日』まであと?年、絶望するより行動を!

大阪大学医学部で病理学を教えている。使っている教科書は Robbins Basic Pathology(ロビンス基礎病理学)の原書、世界一の定番教科書である。そのうち一章がEnvironmental and Nutritional Diseases(環境と栄養による疾患)に割り当てられていて、トップが Health Effect of Climate Cha

『銀河の片隅で科学夜話』「勉強しない子どもたちにイライラし通しの妻が、この本を読んでとても優しくなったんですよね」(※個人の感想です) 書影

サイエンス / 生物・自然

『銀河の片隅で科学夜話』「勉強しない子どもたちにイライラし通しの妻が、この本を読んでとても優しくなったんですよね」(※個人の感想です)

大変だ。これは緊急事態だ。 そんなの、わかってるって? いや、世間じゃなくて、我が家の話なのです。 子どもたちは長引く休校期間を、あろうことか存分に満喫している。 息子は、 『魔術はささやく』 を読んですっかり宮部みゆきにハマり、「全冊読破する!」と宣言したきり引きこもってしまうし(そういえば3日ほど見かけない気が……)、娘はといえば、ネトフリとアマゾンプラ

『旅の効用 人はなぜ移動するのか』STAY HOMEのGWは本を読んで、メンタルタイムトラベルする 書影

教養・雑学 / 民俗・風俗

『旅の効用 人はなぜ移動するのか』STAY HOMEのGWは本を読んで、メンタルタイムトラベルする

2015年には全世界でのべ12億人が外国旅行をしたが、これは1950年の48倍に相当する数である。過去に3度の経済危機で海外旅行者は減ったことはあったが、今回のコロナ禍は、歴史に残る減少幅になるだろう。 多くの旅好きと同じように、このゴールデンウィークは旅行をする予定だった。柄でもなく、半年前もからどこに行こうか、思い巡らせていた。が、もちろん、すべて中止で

日本人の人生ってこうなんや『人生の歩みを追跡する』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

日本人の人生ってこうなんや『人生の歩みを追跡する』

世間様のあれこれについて、なんとなくこうなってるんやろうなぁと思っていることは多い。ただ、それは、身の回りで見聞きしたことに、ニュースなどから得た知識を加味した漠然たるイメージでしかない。いったいそれって正しいんやろうか。 厳密に調べ上げるのは不可能だろうが、およその傾向ならわかるかもしれない。しかし、そのための調査があるとは知らなんだ。2007年からおこな

『世界史の針が巻き戻るとき 「新しい実在論」は世界をどう見ているか』哲学界の若き天才が提唱、新実在論と倫理資本主義 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『世界史の針が巻き戻るとき 「新しい実在論」は世界をどう見ているか』哲学界の若き天才が提唱、新実在論と倫理資本主義

現代社会において、ポストモダニズムからポストトゥルース(ポスト真実)が広がり、それがトランプ米大統領誕生やブレグジットに見られるポピュリズムの台頭につながっている。哲学界の若き天才マルクス・ガブリエルの「新実在論」は、こうした閉塞感を打ち破る、新しい哲学である。 新実在論の新しさは、現実は物理的な対象だけではなく、それに関する見方、心情、信念、思想、空想とい

『FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略』

「意志の強さは成功するかどうかと無関係」と喝破するビジネス書が現れた。確かに仕事がうまくゆかないとき、「自分の意志が弱いから」と落ち込む人は少なくない。「意志力の不足」が一番の原因と考える経営者も多い。 しかし、気合いを入れても集中力が続かないことはよくある(恥ずかしながら私自身、しょっちゅうそうだ)。本書はそうした悩みを持つ人に一筋の光をもたらす優れた自己

『「間合い」とは何か』日本流ソーシャル・ディスタンスの研究 書影

サイエンス / 社会

『「間合い」とは何か』日本流ソーシャル・ディスタンスの研究

いまや「ソーシャル・ディスタンス」という言葉を聞かない日はない。 「社会的距離」などと直訳されるけれど、ちょっと芸がないなぁと思う。 だって日本語にはもともと「間合い」という言葉があるからだ。 「間合い」とは、単純に考えれば「相手との距離」である。でもよく考えると、この言葉はけっこう深い。実際この言葉には豊かな意味合いが含まれている。 真っ先に思い浮かぶのは

『ヤクザときどきピアノ』50代ヤクザ専門ライター、憧れのピアノに挑む 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『ヤクザときどきピアノ』50代ヤクザ専門ライター、憧れのピアノに挑む

運動でも始めようか、せめて食生活を変えようかと決意して何回目の春を迎えただろうか。実は、腹まわりがここ5年で10センチメートル増えた。かけ声だけは威勢がいいのだが、見た目が物語るように動きが重い。私のように、いま動かないでいつ動くんだ、と思いながらも動けない人に、本書は最適な一冊かもしれない。 50歳を過ぎたオジサンが、譜面の読み方も知らないところからピアノ

『夢の正体 夜の旅を科学する』今こそ、夢を楽しむべき時 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『夢の正体 夜の旅を科学する』今こそ、夢を楽しむべき時

まさかなるべく家に引きこもってろと叫ばれる時代が到来するとは思わなかった。評者はどちらかと言えばインドア人間なのでそこまで苦ではないが、あちこち出かけて買い物したり映画を観たり飲み歩いたりするのが楽しみな人にとってはつらい日々だと想像する。このうえ毎日暗いニュースばかり流れてくるし、世界も日本も自分の生活もどう変容していくかわからないし、気が滅入る一方である

『忍者学講義』忍者、お主は何者ぞ⁉ 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『忍者学講義』忍者、お主は何者ぞ⁉

「忍者学」は立派な学問である。三重大学では、伊賀地域を中心とした忍者に関する教育研究を推進し、その成果を広く国内外に発信する国際的な忍者研究の拠点として、また伊賀の地域創生に資することを目的として2017年7月1日に 国際忍者研究センター を開設し、忍者研究に取り組んでいる。 『忍者学研究』は副センター長で三重大学人文学部の山田雄司教授のもと、文系だけでなく

『クリーンミート』パンデミック防止の救世主!? 書影

サイエンス / ビジネス

『クリーンミート』パンデミック防止の救世主!?

生きている動物ではなく、生物の細胞を使って食肉を生産する研究が進んでいます。この食肉生産方法は「培養肉」と呼ばれる新技術で、10年後までには店舗で販売される見込みです。培養肉はまぎれもない動物の肉ですから、既存の植物由来のフェイクミートと混同しないようにしてください。昔ながらの肉と同じ味の培養肉の安全性が長期にわたる調査で確認され、手ごろな価格で販売されたと

『コロナの時代のぼくら』コロナ後の我々は、何を守り、何を捨て、どう生きていくべきなのか? 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『コロナの時代のぼくら』コロナ後の我々は、何を守り、何を捨て、どう生きていくべきなのか?

日本では4月24日発売予定の、イタリアの小説家パオロ・ジョルダーノ*によるエッセイ『コロナの時代の僕ら』の全文が期間限定で公開されていたので、早速、読んでみた。 このエッセイは、イタリアでコロナウイルスの感染が広がり、死者が急激に増えた2月下旬から3月下旬に綴られたものだという。著者は、この本の印税収入の一部を、医療研究と感染者の治療に従事する人々に寄付する

『紳士と淑女のコロシアム 「競技ダンス」へようこそ』青春とは心の奥底にしまった段ボール箱のようなものである 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『紳士と淑女のコロシアム 「競技ダンス」へようこそ』青春とは心の奥底にしまった段ボール箱のようなものである

競技ダンスの世界にまったく興味はなかったが、それでも本書を読んでみようと思ったのは、この著者の作品であったことが大きい。 著者の二宮敦人氏は『最後の秘境 東京藝大』や『世にも美しき数学者たちの日常』など、身近にある知られざる世界を紹介することに長けた作家である。 本作は著者の自伝的ドキュメントノベルという形式をとっているが、これはプライバシーへの配慮によるも

巣ごもりして探求の根を伸ばせ 『13歳からのアート思考』 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

巣ごもりして探求の根を伸ばせ 『13歳からのアート思考』

子供がウチで過ごす時間が増えている。我が家もその例にもれない。異なっているのは、一家の大黒柱たる私も一緒にウチにいることである。会社を辞めた私は、テレワークをする必要もない。ただダラダラとした時間を過ごしている。様々なものにボンヤリとした興味を抱きながら、目的を見いだすことができずにいる。そんな日々だ。 基本的には一緒にサッカーゲームやトランプなどをして遊ん

自分だけの答えが見つかる『13歳からのアート思考』 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

自分だけの答えが見つかる『13歳からのアート思考』

唐突ですが、少し芸術史の話をします。 かんたんなアートの歴史です。本書の要約でもありますが、私個人の見解を入れさらに圧縮しています。アートって苦手と思う人ほど、ためしに読んでみてください。 タイトルにある「13歳」というキーワードですが、これは学校の好きな教科アンケート※で美術の時間がワースト1位になるタイミングだそうです。 ポイントは3人の芸術家になります

『下級国民A』格差社会が生み落とすもの、美しい国の不都合な真実 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『下級国民A』格差社会が生み落とすもの、美しい国の不都合な真実

本書は62歳で「住所不定無職」の新人作家として鮮烈なデビューを果たした作家、赤松利市が経験した、東日本大震災の復興事業に関するルポルタージュだ。 著者、赤松は35歳で起業し、一時は年収2000万円を超えていた。しかし、ある事情により会社は倒産。以後、厳しい生活を強いられる。 そんな折、東日本大震災が発生。土建業を営む知人の社長から相談を受ける。震災後の復興バ

『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』鎮痛薬が人々の命を奪う、恐るべき薬物汚染の実態 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』鎮痛薬が人々の命を奪う、恐るべき薬物汚染の実態

2019年4月、プロゴルファーのタイガー・ウッズがマスターズ・トーナメントで5度目の優勝を飾った。この優勝は、オピオイド(鎮痛薬)依存を克服しての勝利だったため「奇跡の復活」と称賛された。長く腰痛に悩まされ、鎮痛薬が手放せなくなっていたウッズは、17年に「薬物影響下での自動車運転」の容疑で逮捕されている。逮捕時の虚(うつ)ろな目をした写真を覚えている人も多い

『巧拙無二 近代職人の道徳と美意識』武術家と刃物研究家との”真剣”対談 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『巧拙無二 近代職人の道徳と美意識』武術家と刃物研究家との”真剣”対談

※ ネットでは hontoで取り扱っています。 真剣での立ち合いを見るような、ヒリヒリと緊張感漂う対談である。 一人は武術家甲野善紀。日本古来の武術を伝書と技の両面から独自に研究している。もう一人は土田昇。東京の三軒茶屋にある土田刃物店三代目店主で、明治から昭和にかけて活躍した不世出の道具鍛冶、千代鶴是秀作品の研究家。父、一郎が遺した多くの手道具を所持し研究

『着せる女』は男のファッションバイブルだ! 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『着せる女』は男のファッションバイブルだ!

おおよそ世の中の中高年男性というのは、衣服を買いに行くのが苦手とちゃうんか。自分がそうだから、そう思うだけかもしれない。しかし、いつも買いに行くお店、たいがいが奥さん、あるいは、奥さんとおぼしき人と買いに来てるおっちゃんが多い。もちろん、わたしも妻についてきてもらう。 スーツやブレザー、パンツ、シャツ、思えば、ほとんどがその店である。特に似合うからとかいうよ

『餃子のおんがえし』何でも包んでしまう小宇宙 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『餃子のおんがえし』何でも包んでしまう小宇宙

私が料理なるものをやり始めたのは高校生の時だった。ずっと専業主婦だった母が、離婚を見据えて働き始めた頃で、弟や妹の食事の支度は私の仕事になったのだ。といっても別に料理好きでも何でもなく、とにかく食べ盛りの弟妹の空腹を満たすものを作るのだ。 年中作っていたのが炊き込みご飯。残り物の野菜だのツナ缶だの適当に放り込んでしょうゆ入れて炊く。ほぼ毎日作っていた。炊き込

『野球と暴力』「暴力なし」でも強くなれる! 書影

アート・スポーツ / 社会

『野球と暴力』「暴力なし」でも強くなれる!

新型コロナウイルス禍でスポーツイベントが次々と中止になっている。 春の選抜高校野球も残念ながら中止の憂き目にあった。甲子園でプレーするのを楽しみにしていた子どもたちは気の毒だが、その一方で、当たり前のようにあったものがなくなったことで、これまで放ったらかしにされてきた様々な問題を、あらためてゆっくりと考える時間ができたのではないだろうか。 たとえばそのひとつ

『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』メガテクノロジーがもたらす世界の高速変化とは 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』メガテクノロジーがもたらす世界の高速変化とは

本書にも書かれているように、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授は、これからの時代は「何をやっているかわからない人が強い」と言っている。 京都大学、東京大学修士、三菱UFJニューヨーク、米ハーバード大学理学修士、グーグルを経て、現在は日米にまたがるベンチャー投資のかたわら、ハーバード大学客員研究員やテレビコメンテーターなどを務める38歳。この世界では超有

『ふくしま原発作業員日誌』原発作業員が安心して働ける社会を目指して 書影

社会 / 事件・事故

『ふくしま原発作業員日誌』原発作業員が安心して働ける社会を目指して

今年も3月を迎えた。2011年3月11日から9年が経ち、毎年震災本が出版され続けている。私も3月は震災ものを読むことを習慣としてきた。楽しみや興味本位からではない。「何も知らなくてごめんなさい。何もできなくてごめんなさい」といつも申し訳なく手に取る。 9年経った今、世の中は変わったのだろうか。現場の第一線で働く人の命と健康を守り、敬意を払う世の中になっている

舞妓さんの秘密――『花街と舞妓・芸妓の世界』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

舞妓さんの秘密――『花街と舞妓・芸妓の世界』

舞妓さん? 京都で歩いているのを見たことがあるかな。そう、多くの人にとっては、観光の景色のひとつか、映画の世界だろう。そこになんと、リアルな舞妓さんの世界を京都5ヶ所、東京7カ所、ほか全国各地を含め合計25カ所の花街で追究し、写真満載で紹介する豪華本が登場だ! 掲載された写真は、ざっと数えて630点は優にある(地図と図版を入れるともう少し増える)。しかも、大