ノンフィクションはこれを読め!

おすすめ本レビュー

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3,647記事

『無脊椎水族館』得体のしれない彼らに会えば、人生が救われる、新しい発見がある! 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

『無脊椎水族館』得体のしれない彼らに会えば、人生が救われる、新しい発見がある!

動物園は明るすぎる。園内は賑やかで、陽気で社交的でなければ浮いてしまいそうだ。 その点、水族館は落ち着く。全体が薄暗く静かで、どんなに陰気で孤独でも変に思われない。 水生ほ乳類には興味のない宮田珠己が向かうのは無脊椎動物の水槽の前。たいがいそこは空いていて、思う存分眺めることができるのだ。本書はそんな安寧の場所を求めた国内水族館の探訪記である。 訪れたのは葛

『エンジェル投資家』人が重要なのではなく、人が全てである 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『エンジェル投資家』人が重要なのではなく、人が全てである

本書は、アメリカを代表するエンジェル投資家のジェイソン・カラカニスによる、スタートアップ企業への投資のための指南書である。ベンチャーキャピタルに関する本は多く出版されているが、それより一段早いステージで出資するエンジェル投資家について書かれたものは極めて珍しい。 カラカニスは、ライドシェアのUberがまだスタートアップ企業で、500万ドルの企業価値しかなかっ

『自衛隊失格 私が「特殊部隊」を去った理由』完全燃焼を目指した男がぶつかった官僚組織という壁 書影

人物 / 社会

『自衛隊失格 私が「特殊部隊」を去った理由』完全燃焼を目指した男がぶつかった官僚組織という壁

著者、伊藤祐靖は自衛隊初の特殊部隊である海上自衛隊の「特別警備隊」の創設に携わり、部隊創設後は先任小隊長として技術の向上に努めた人物である。本書は日本初の特殊部隊を創設した男の半生を綴った自伝であり、自衛隊という国防の最前線のリアルを描いたノンフィクションでもある。 そもそも日本は旧帝国陸海軍の時代から特殊部隊という特殊戦の専門部隊というものを持ったことがな

『Bullshit Jobs: A Theory(洋書)』どうでもいい仕事を理論化する 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『Bullshit Jobs: A Theory(洋書)』どうでもいい仕事を理論化する

経済学者のジョン・メイナード・ケインズ(1883-1946年)は、 1930年に”Economic Possibilities for our Grandchildren(孫の世代の経済的可能性)”というエッセイの中で、イギリスやアメリカのような先進国では、テクノロジーの進化によって20世紀末までに週15時間労働が実現しているだろうと予言した。(”Essay

あなたは「神」を信じますか? 『科学者はなぜ神を信じるのか』 書影

サイエンス / 教養・雑学

あなたは「神」を信じますか? 『科学者はなぜ神を信じるのか』

あなたは神を信じますか?こう訊ねられたらどう答えるだろう。日本だと、神様は存在しないと思うけど神頼みはする、というのが多数派だろうか。この本で問われるのは、我々が普段思い浮かべるようないたるところにいる神様ではない。キリスト教の神、創造主としての神である。 科学者のスタンスはどうだろう。『利己的な遺伝子』のリチャード・ドーキンスは『神は妄想である』という著書

『夢の猫本屋ができるまで Cat's Meow Books』猫が本屋を助け、本屋が猫を助ける 書影

教養・雑学 / ビジネス

『夢の猫本屋ができるまで Cat's Meow Books』猫が本屋を助け、本屋が猫を助ける

長く叫ばれている出版不況とはうらはらに、個性的な本屋さんの出店が相次いでいる。HONZでもお世話になった下北沢の 「本屋B&B」 や荻窪の 「6次元」 、本の校閲を行う会社「鴎来堂」がてがける 「かもめブックス」 や中野ブロードウェイにあるサブカルの聖地 「TACO che(タコシェ)」 などこだわりの本屋は盛況だ。開店のためのセミナーもあり、体験談の本も様

『酒の起源―最古のワイン、ビール、アルコール飲料を探す旅』「食」から人類の歩みを知る 書影

教養・雑学 / 民俗・風俗

『酒の起源―最古のワイン、ビール、アルコール飲料を探す旅』「食」から人類の歩みを知る

原書のタイトルを直訳すると「過去を抜栓する」。酒と人類の壮大な物語を描いた本だから、いかにも香り立つようでおしゃれだ。翻訳タイトルは『酒の起源』。もちろん『種の起源』のオマージュだ。こちらも素敵。 版元の白楊社は2016年に『酒の科学』という本を出版していた。こちらの原書タイトルは「プルーフ」。プルーフにはアルコール度数だけでなく、印刷前のゲラという意味もあ

古典文学やベストセラーを統計を通して分析する──『数字が明かす小説の秘密』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

古典文学やベストセラーを統計を通して分析する──『数字が明かす小説の秘密』

小説を評する、分析するといえば基本的には一人の人間が精読することによってそこで用いられている技法や、他の作品との関連、歴史的な意義などをあぶり出していく行為のことである。だが、それだけではなく、統計を通して語句の使用頻度、プロットの盛り上がり、書き出しについてなどを分析する手法も現在では発展してきた。本書『数字が明かす小説の秘密』は、そんな後者のアプローチを

『スモール・スタート あえて小さく始めよう』会社員のうちに始めよう 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『スモール・スタート あえて小さく始めよう』会社員のうちに始めよう

新しいことを始めたい、だけどなかなか始められない。そう思っている人のやらない理由を、一つずつ消していってくれる一冊だ。 著者の水代優さんは、日本橋浜町に Hama House というブックカフェを作ったり、最近では丸の内に Marunouchi Happ.stand&gallery というPOP UP GALLERYを作った人物だ。とはいっても、何をやってい

『ノモレ』アマゾンの先住民を描いたノンフィクション文学の金字塔 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『ノモレ』アマゾンの先住民を描いたノンフィクション文学の金字塔

一昨年夏に放送されたNHKスペシャル「大アマゾン 最後のイゾラド」の姉妹作品である。イゾラドとは、文明社会と接触したことのないアマゾン先住民。狩猟と採取だけで太古から生きてきた自給生活者であり、その姿はまさに裸族だ。現在でも少人数のグループに別れて暮らしているという。 数年前のある日、ペルーの奥地で突然イゾラドが出現し、村々が襲われ、弓矢で村人が殺傷された。

『直島誕生 過疎化する島で目撃した「現代アートの挑戦」全記録』Don’t think. Feel! 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『直島誕生 過疎化する島で目撃した「現代アートの挑戦」全記録』Don’t think. Feel!

秋元雄史氏の『直島誕生』は、現代アートに関わる全ての人々にとって必読の書である。 直島を舞台に、日本における現代アートがどう生まれ、どう育ってきたのか、そしてそれは世界のアートとどう繋がっているのか。その全貌が、直島プロジェクトの始まりから地中美術館の立ち上がりまで、15年間もの長きにわたってこのプロジェクトを率いてきた秋元氏自身の言葉によって語られている。

『経営戦略原論』で理論と実践のギャップを埋める 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『経営戦略原論』で理論と実践のギャップを埋める

理論と実践の間には大きなギャップが存在する。どれだけ明晰な頭脳で組み立てられた瑕疵のない理論でも、現実の世界で役立てるためには様々な困難立ちはだかる。原子核分裂が発見されその原理が明らかになった後も、原子爆弾が開発されるためには、マンハッタン計画による世界中の叡智の結集と膨大な費用を必要とした。 自然科学分野においては、理論の実践にどれだけ困難が伴ったとして

『20億人の未来銀行 ニッポンの起業家、電気のないアフリカの村で「電子マネー経済圏」を作る』 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『20億人の未来銀行 ニッポンの起業家、電気のないアフリカの村で「電子マネー経済圏」を作る』

以前、 HONZでも書評を書かせて頂いた (『宇沢弘文 傑作論文全ファイル』)、経済学者の故宇沢弘文氏の旧宅「宇沢国際学館」に夜ごと集まって、経済や医療や国際関係などの話をする不思議な会合がある。 本書の著者の合田真氏とはその席で隣り合わせて、日本植物燃料という会社を経営しているというから、今関わっているリゾート施設のバイオマス発電の話でもしようかなと思った

『全告白 後妻業の女』67歳で婚活、狙いは寂しい高齢者 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『全告白 後妻業の女』67歳で婚活、狙いは寂しい高齢者

「毒婦」と呼ばれる女性が世間を騒がすことはあるが、見るからに妖艶さを身に纏っていたり、いかにも男性がだまされたりするんだろうなという雰囲気を醸し出したりしている場合は意外に少ない。京都、大阪、兵庫3府県で起きた連続青酸死事件の犯人・筧千佐子(逮捕時67歳)も、どこにでもいそうな気さくなおばちゃん、どころか、おばあちゃんにしか見えない一人だろう。 事件は、20

武士は戦さでポニーを駆る 『武士の日本史』 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

武士は戦さでポニーを駆る 『武士の日本史』

侍ブルーと一銭五厘。本書にあった言葉で私の印象に残ったのは、この二つだった。「サムライブルー」はサッカー日本代表のこと。「一銭五厘」は召集令状の葉書代のことで、兵隊の代わりなど葉書一枚で済むという意味がこめられている。書名にあるとおり、本書はわが国の武士の歴史をまとめるとともに、「武士道」などの精神史もたどっている本だ。 本書を読んだ直後にサッカーW杯を観て

『「在宅ホスピス」という仕組み』 “よりよく死ぬ”ための参考書 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『「在宅ホスピス」という仕組み』 “よりよく死ぬ”ための参考書

一昨年、父を亡くした。倒れる日まで普通に暮らしていた父が、救急車で搬送されて一か月で亡くなってしまうとは思わなかった。ましてや死の瞬間まで苦しみ抜くなんて想像だにしていなかったのだ。 それから私は終末期の過ごし方について多くの本を読んだ。安楽死を含めて、今の日本で許される一番幸せな最期の時を過ごすにはどうしたらいいのかを探し求めた。 本書には私の理想に近いも

『消された信仰「最後のかくれキリシタン」-長崎・生月島の人々』世界遺産から黙殺された人々 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『消された信仰「最後のかくれキリシタン」-長崎・生月島の人々』世界遺産から黙殺された人々

ユネスコの世界遺産委員会で、日本の「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産に登録されることが決まった。国内では22番目の登録遺産となる。 この「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」は、長崎から熊本にまたがる12の構成遺産からなり、その中には、現存する国内最古のキリスト教関連建築物で国宝の大浦天主堂(長崎市)なども含まれる。 一時の熱狂的な

『ノモレ』未知の先住民イゾラドとの100年越しの再会 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『ノモレ』未知の先住民イゾラドとの100年越しの再会

知らないことを知りたい。見たことのないものを見たい。そういう好奇心がなくなったら、人生お終いだと思っている。しかし好奇心が生み出す無邪気さは、時に歓喜と絶望の両方を生み出す。そんなことを痛感させられる一冊だ。 かつてNHKスペシャルで放映された「最後のイゾラド 森の果て 未知の人々」を記憶されている方も多いことだろう。イゾラドとは、文明社会と未接触の先住民を

現在、過去、未来……『AV女優、のち』 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

現在、過去、未来……『AV女優、のち』

晴れのち雨、雨のち晴れ。AV女優、のち――。AV女優の「のち」の後にはどんな言葉が似あうだろう?のちに続く言葉がポジティブなものであればいいなと、心から思う。この本はタイトルが秀逸だ。「その後」ではなく「のち」。「AV女優、のち」言葉の響きがとてもいい。このタイトルに惹かれて、私はこの本を手に取った。 「AV女優、のち」は、みひろ、笠木忍、麻美ゆま、愛奏(元

『政治の衰退 上 フランス革命から民主主義の未来へ』 民主主義は政府運営を非効率にするのか? 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『政治の衰退 上 フランス革命から民主主義の未来へ』 民主主義は政府運営を非効率にするのか?

著者フランシス・フクヤマは『 政治の起源 』で、人類誕生以前からフランス革命までの歴史を振り返りながら、「国家」、「法の支配」、「政府の民主的説明責任」という3つの重要な政治制度がどのように生み出されたのかを巧みに説明した。この『政治の衰退』は『政治の起源』の姉妹編であり、フランス革命以降の過去2世紀の間にこの3つの制度がどのように相互作用しながら発展してき

巨大企業を創り上げた男たち 『闘う商人 中内㓛 ダイエーは何を目指したのか』他二冊 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

巨大企業を創り上げた男たち 『闘う商人 中内㓛 ダイエーは何を目指したのか』他二冊

万一、日本に戻れたら、なによりもすき焼きを食べようと思った フィリピンのジャングルでの壮絶な飢餓体験こそが中内㓛の原点だ。終戦後、米軍の生活物資を見てその豊富さに圧倒され、庶民が豊かになり、美味しいものをたらふく食べられるようになるには流通が重要だと痛感する。 『闘う商人 中内㓛 ダイエーは何を目指したのか』 は、側近の一人であった 小榑雅章から見た、ダイエ

あなたはなぜ特定の色を好むのか?──『好き嫌い―行動科学最大の謎―』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

あなたはなぜ特定の色を好むのか?──『好き嫌い―行動科学最大の謎―』

あなたは何色が好きですか? と聞くと大抵の人はペラペラとこんな色が好きですと答えてみせる(僕は灰色だ、地味だから)。初対面同士の飲み会ならなんか嫌いなものor食べたいものでもあります? と聞くものだし、映画や小説など、作品を鑑賞する際にも、好みは密接に関わってくる。巨大人型ロボット物は嫌い、という人もいれば巨大人型ロボット物ならなんでも大好き! という人もい

『ウィスコンシン渾身日記』を読んで幸せになろう! 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『ウィスコンシン渾身日記』を読んで幸せになろう!

無名人の留学記である。そんなもん誰が読むねん、というのが、とりあえず大多数の人たちにとっての率直な感想だろう。ごもっともである。 それ以前に、留学記というものが読まれなくなってきているような気がする。かつては、小澤征爾の『ボクの音楽武者修行』や藤原正彦の『若き数学者のアメリカ』といった名作があって、いまも文庫におさめられている。もしかすると、情報が少なく、外

『進歩 人類の未来が明るい10の理由』悲観に入れ込みすぎないように 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『進歩 人類の未来が明るい10の理由』悲観に入れ込みすぎないように

ニュース番組を見て憂鬱になる。新聞やインターネットの記事を読んでげんなりする。暗い内容ばかりだからだ。シリア情勢、温暖化、テロに凶悪犯罪、不況、所得格差、貧困、差別、少子化・高齢化、災害。マスメディアは脅威を報道するのが基本だし、これらすべて顕在化している問題であるとはいえ、連日こうしたニュースを見ていると、そんなにメンタルの強くない筆者などはすぐ気が滅入っ

『細菌が人をつくる』糞便移植も効果アリ?! 細菌100兆個の最新知識 書影

サイエンス / 医学・心理学

『細菌が人をつくる』糞便移植も効果アリ?! 細菌100兆個の最新知識

ここ数年、腸に関する話題が増えてきている。山中伸弥教授が司会を務めたNHKスペシャル「人体」では、腸は全身の免疫を司り、万病を撃退すると放送された。いささか誇張しすぎだと思うのだが、興味深い番組だった。 じっさい、コンビニの棚にはビフィズス菌や乳酸菌、食物繊維を含む食品がずらりと並んでいるし、サプリメントも次々と発売されている。花粉症などのアレルギーを抑制し

『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』 数学破壊兵器は知らぬ間にあなたをの運命を決めている 書影

サイエンス / 社会

『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』 数学破壊兵器は知らぬ間にあなたをの運命を決めている

アメリカのワシントンDCで教師をしていたサラ・ウィソッキーは、突然の解雇通知に驚いた。教師歴はまだ2年と浅かったものの、懸命に仕事に向き合い、生徒や保護者から高い評価を得ていたから解雇はより大きなショックをもたらした。 彼女を解雇に追いやったのは、IMPACTと名付けられた教師評価ツール。生徒の学力向上に対する教師の貢献度を計算するIMPACTは、業績の低い

『どもる体』読む人の「しゃべる」を引き出す、触媒のような本 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『どもる体』読む人の「しゃべる」を引き出す、触媒のような本

ここで不思議なことが起こります。スタジオには、同じく吃音当事者の落語家、桂文福さんがゲストとして来ていました。その文福さんが、吃音症状の出ている八木さんに向かって、「タン・タン・タン」と規則的に舌を打ち始めたのです。商売道具の扇子を横に振りながら、口拍子をとっていく文福さん。すると、まるで金縛りが解けたような変化が起きたのです。数秒前の吃音症状はどこへやら、

『3000万語の格差 : 赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話しかけ』3歳までの言語環境に、3つのTで 書影

サイエンス / 医学・心理学

『3000万語の格差 : 赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話しかけ』3歳までの言語環境に、3つのTで

育児には神話がある。また、周囲の友人や口コミサイトからの情報に溺れ、真偽を判断する余裕もない。情報に溺れることなく、なるべく子どもと過ごす時間を増やしたいのだが、子どものためにやるべきことは尽きない。ギリギリまで手抜きしてズボラに育児がしたいが、それで、ちゃんと育児やっているんだろうか、できていると思えるのだろうか、悩む。 そんなふうに自分もなるんだろうなと

『ロマンで古代史は読み解けない』科学者が古代史を研究するとこうなった! 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『ロマンで古代史は読み解けない』科学者が古代史を研究するとこうなった!

古代史=神話というイメージが拭えない。確かにロマンあふれる物語だが、真実ではないだろう。だが日本には『古事記』や『日本書紀』という過去の偉人たちが積み上げてきた第一級の資料が残されている。 ならば徹底的に科学で解明しようというのが本書の狙いである。著者は大学共同利用機関法人自然科学研究機構の科学者だ。坂本は「生理学研究所」でヒトの脳機能を、共著者の渡辺英治は

生物から生まれるイノベーション『生物模倣』 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

生物から生まれるイノベーション『生物模倣』

このように、近年、生物に着想を得たテクノロジーが増えてきている。「生物模倣」(ビオミミクリーやバイオロジカリー・インスパイアード)と呼ばれる、現在注目集める新たな分野だ。 イカの皮膚機能に似た軍事迷彩服の開発、ナマコの硬軟接続を真似したインプラント開発、トカゲ型ロボットなど、奇抜なテクノロジーが本書では数多く紹介されている。 私たち人類は自分たちがついつい動

『歴史は実験できるのか 自然実験が解き明かす人類史』 比べることで歴史の”なぜ”に答えを出す 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『歴史は実験できるのか 自然実験が解き明かす人類史』 比べることで歴史の”なぜ”に答えを出す

歴史に“もし”はない。もし奴隷制がなければアフリカはもっと経済発展を遂げただろうか、もしイギリス統治がなければインドの識字率はもっと高くなっていただろうか、もしフランスではなくスペインに支配されていればハイチはドミニカよりも豊かになっていただろうか。想像力豊かに刺激的な虚構のストーリーを作り上げることはできても、時計の針を巻き戻し、ありえたかもしれない結末を

海鮮寿司とは違います 『旅する江戸前鮨』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

海鮮寿司とは違います 『旅する江戸前鮨』

月に数回、私は本屋さんに足を運び、本を数冊買い、そこから一冊を選んでご紹介させていただいている。今回は『旅する江戸前鮨』である。どのように書けば、本書の良さを引き出すことができるのか。料理の仕方を様々に考えながら、鮨をにぎる。いや、文章を書く。何度も読み返しているうちに、本は手になじんでいく。 本書の定義によると、新鮮な魚を単に酢飯の上にのせて出すのが「海鮮

『プーチンのユートピア 21世紀ロシアとプロパガンダ』プーチン・イリュージョンの裂け目から見えるリアリティー・ショー 書影

教養・雑学 / 社会

『プーチンのユートピア 21世紀ロシアとプロパガンダ』プーチン・イリュージョンの裂け目から見えるリアリティー・ショー

近くて遠い国ロシア。プーチンという独裁者によって支配されるこの国は、国際社会において特異な存在感を示してきた。だが、この国で起きていることを知るのは意外に難しい。特にマスメディアに関することになると、なおさらだ。本書はそんな状況下にあるロシアのテレビ局TNTでプロデューサーを勤めたロシア系イギリス人が、ドキュメンタリー番組制作のために取材した市井の人々を通し

『行商人に憧れて、ロバとモロッコを1000㎞歩いた男との冒険 リアルRPG譚』 絶倫ロバと歩いた3カ月 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『行商人に憧れて、ロバとモロッコを1000㎞歩いた男との冒険 リアルRPG譚』 絶倫ロバと歩いた3カ月

春間豪太郎は海外旅行にまったく興味のない青年だった。昼は大学生で、夜は音楽系専門学校を掛け持ちしつつ、バンドでドラムを叩き居酒屋でバイトもしていた。だが親友がフィリピンで行方不明になったと聞き、救出に向かう。親友は無事だったのだが、この旅行が彼の好奇心に火を付けた。 一人旅で野宿をしながら海外をまわっているうちに、“GO”(外国用の通名)の冒険への関心は高ま

自然と全力で格闘する科学者たちの姿『生物模倣――自然界に学ぶイノベーションの現場から』 書影

サイエンス / 生物・自然

自然と全力で格闘する科学者たちの姿『生物模倣――自然界に学ぶイノベーションの現場から』

生物模倣、バイオミミクリーという用語がある。 これは端的にいってしまえばアリやハチが持っている、生物が進化の果てに築き上げた独自の機能を模倣し、技術として取り込もうという考え方のことである。本書では、そうしたバイオミミクリー(または、「生物に着想を得た」バイオインスパイアード)の事例──具体的には、イカにナマコ、ゴキブリにヤモリ、生態系そのものから着想を得て

『宇宙ビジネスの衝撃 21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ』 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『宇宙ビジネスの衝撃 21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ』

「これからは宇宙ビジネスの時代だ」と言うと、大抵の人は何のことだか分からず困惑するようだ。日本では下町企業のロケット打ち上げが感動物語として映画になってしまうくらいなので、宇宙ビジネスと言われても余り実感が湧かないのかも知れない。 そもそも、普通の人が宇宙空間をどこまで正確に理解しているかも怪しいので、まずこの点の整理からしておきたい。 宇宙ビジネスの対象と

『ユリイカ 2018年6月号』左脳で楽しむバーフバリ 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『ユリイカ 2018年6月号』左脳で楽しむバーフバリ

今、映画を大ヒットさせられるかどうかは、公開前の段階で8割方勝負がついてしまう。数ヶ月前から情報を小出しにすることで期待値を高めていき、公開直後から期待に違わぬことを示すポジティブな口コミが広がっていけば、ヒットがヒットを生み出す自走状態に入っていける。 一方で、 インド映画『バーフバリ 王の凱旋 』。日本での上映前に今の状況を予想することが出来た人は少なか

『不合理だらけの日本スポーツ界』日大タックル問題はなぜ防げなかったのか 書影

アート・スポーツ / 社会

『不合理だらけの日本スポーツ界』日大タックル問題はなぜ防げなかったのか

日大アメフト部による悪質タックル問題がいまだに世間を騒がしている。監督からの直接的指示の有無があったかが最初の焦点だったが、世の中の関心は日大の広報対応や会見の司会者の素性、過去のアメフト部内での暴力問題にまで飛び火した。 もちろん、今回の問題は監督やコーチの属性による部分も少なくないだろう。だが、一方で全てを個人の問題として捉えてよいのか。日本の大学スポー

『馬・車輪・言語』 ステップを駆けたライダーたちがこの世界にもたらしたもの 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『馬・車輪・言語』 ステップを駆けたライダーたちがこの世界にもたらしたもの

複数の角度から証拠となるものを収集し、それらを慎重かつ巧妙に組み合わせながら、歴史の大きなうねりを炙り出していく。研究の醍醐味、そして読書の醍醐味をこれほど堪能させてくれる本はそうないだろう。 本書の主題は、インド・ヨーロッパ語族の拡散だ。英語、スペイン語、フランス語、ドイツ語。そして北欧や東欧の諸言語に、ウクライナ語、ロシア語、ギリシャ語。さらにはペルシャ