
医師にも患者にもバイアスだらけ 『医療現場の行動経済学』
京都大学の本庶佑特別教授のノーベル医学生理学賞受賞が決まり、日本中が湧いている。この素晴らしい快挙の一方で、医療現場では混乱も生じているようだ。がん治療の現場で、医師が手術を選択したにも関わらず、患者側からオプジーボを使用したいと相談があるようなのだ。なぜ、患者側はそう考えるのか。本書は、その「なぜ」に答える本である。 当然のことだが、医師はオプジーボの存在
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京都大学の本庶佑特別教授のノーベル医学生理学賞受賞が決まり、日本中が湧いている。この素晴らしい快挙の一方で、医療現場では混乱も生じているようだ。がん治療の現場で、医師が手術を選択したにも関わらず、患者側からオプジーボを使用したいと相談があるようなのだ。なぜ、患者側はそう考えるのか。本書は、その「なぜ」に答える本である。 当然のことだが、医師はオプジーボの存在

「人間にはこんなことも出来るのか」と驚いたり感心したりした経験、みなさんにもありますよね。スポーツでアスリートの驚異的なパフォーマンスを目にした時なんかは特にそうかもしれません。身近な例で言うと、ある女優に聞いた話が印象に残っています。 きっかけは汗かきの話でした。ぼくは生来の汗かきで、人前で話す時に全然緊張してないのに汗ダラッダラになったりするんですが、き

2018年7月6日朝8時、テレビでニュース速報が流れた。 ―オウム真理教教祖、麻原彰晃こと松本智津夫の死刑が執行された模様― のちにこの日に井上嘉浩、早川紀代秀、中川智正、遠藤誠一、土谷正実、新実智光の6人、7月26日に残る6人の死刑が執行されたことが報じられた。地下鉄サリン事件から23年経っていた。 本書の奥付は2018年7月26日。著者と中川智正との約束

本書はジャイロモノレールについての概説書である。ジャイロモノレールとはレールが一本の鉄道の名称である「モノレール」にジャイロスコープを利用し、無支持で走行できる安定性を付与したものになるが、この技術は20世紀のはじめ頃(1900〜1910年)に開発され、その後大戦に突入したことで開発は中断。そのまま、それを成立させる技術も失われてしまっていた。 もともとモノ

裏社会のノンフィクションはこれまで何冊も読んできたが、最も面白みを感じるのは無秩序のように思える裏社会が、表社会とシンメトリーな構造を描いていることに気付かされた時だ。 しかしここ数年は暴対法による排除が進み、ヤクザの困窮ぶりを伝える内容のものばかり。相似形どころか、このまま絶滅へ向かっていくのかとばかりに思っていた。だから彼らがこんなにも身近なところで、表

この本は、東京大学社会科学研究所教授で政治思想史・政治哲学を専門とする著者が、東京都の豊島岡女子学園中学・高等学校で行った全5回の政治を考えるための講義を取りまとめたものである。大学教授による政治講義とはいっても、本書は学生との対話形式で平易な語り口で進められるので、幅広い層の読者が楽しみながら読み通せるはずだ。本書の魅力は分かり易さだけではない。著者は、政

物を買うお金がない、10代の子どもの非行の入り口、転売目的のプロによる犯行、認知症の影響……。そんなありふれたイメージとは違った角度から万引きについて書かれた一冊だ。 なぜやったのか、常に分かりやすい動機があるとは限らない。周囲から真面目な人だと言われている。経済的に困っているわけでもない。にもかかわらず、繰り返し万引きに手を染める人々が一部に存在する。その

これほど丁寧で網羅的に放射線を説明している本をほかに知らない。この本を書棚に入れておけば、なにか事が起こったときにいつでも引き出して正確な知識を得ることができるだろう。健康診断でCT検査やPET検査を受けるときにも参考になる。しかも、科学に興味のある小中学生なら、最後まで読み終えることができるほどのわかり易さだ。 著者はつくば市にある高エネルギー加速器研究機

文字通り、 元首の主治医は 裸の権力者を見続ける。そのためには、まず元首に気に入られなければならない。その上、お気に召すような治療をしなければならない。一方で、気にそまぬアドバイスをしなければならないこともあれば、病状をひた隠しにせねばならないこともある。権力者の主治医には、医術以外に相当な技量が要求される。 主治医によっては虎の威を借りて権力をふるおうとす

銭形平次、人形佐七、三河町の半七…テレビドラマや小説で人気の親分たち。近年では中村梅雀さん演じる黒門町の伝七がよかったなあ。かつて同じ伝七を演じて大ヒットを飛ばした父上・中村梅之助さんから、亡くなる直前に秘蔵の十手コレクションを託されていたとか。劇中で使われていたのがその十手なのかどうかは定かではないが、紫房の十手を大切に神棚に祀る姿は、亡き父上への敬意を胸

エバレット・ケネディ・ブラウン氏は、現代では極めて稀な湿板光画を使ったフォトジャーナリストである。湿板光画とはガラスに感光溶剤を塗布した板で写真を撮影する技法で、1850年代から普及し、乾板写真が発明される1870年代までの短い期間使われていた。日本にも、江戸幕末期の安政年間(1854-1860年)の初めに輸入され、墨絵のような表現力で味のある世界を数多く映

植物状態と診断されながらも、じつは意識がある人たち。そうと示すことがまったくできなくても、たしかな認識能力を持ち、どうしようもない孤立感や痛みを感じている人たち。そうした人たちが置かれている状況を想像し、悪夢とも思えるその可能性に身震いしてしまった経験が、おそらくあなたにもあるのではないだろうか。だが現在の科学は、その可能性を前にしてただ震えているばかりでは

被差別部落や赤線という言葉が、ノンフィクションというジャンルを読み始めて、目に止まるようになってきた。ノンフィクションを読まなかったら、例えば新聞や雑誌でそれらの言葉を目にしたとしても、特別興味をもって立ち止まるようなことはなかったかもしれない。ただ、読む本のジャンルが広がると同時に、それらの言葉が自分が生きる上でとても重要な意味を持つのではないかと思うよう

本書の主題であるユマニチュードは、NHK「あさイチ」などでも紹介された“その人らしさ”を取り戻す、優しい認知症ケアの手法のこと。私が 前作をHONZでご紹介させていただいた 頃に比べると、日本でも、大分浸透してきた印象があります。ただ、介護の現場まで伝わったかというと疑問が残ります。先日、こんな出来事がありました。 私の母が3泊4日のショートステイでお世話に

それは 相模原 事件 がきっかけだった。 知的障害者福祉施設・津久井やまゆり園で、元施設職員が入所者を次々と殺害したいたましい事件だ。犯行前に書かれた「障害者は不幸を作ることしかできません」という言葉を読んだ NHK のディレクター・坂川裕野が反応する。 障害者である妹・亜由未の介助をしながら、1ヶ月間にわたり家族にカメラを向けようというのだ。 「僕は、妹と

会社は、顧客を喜ばせる優れた製品を時間内に提供できるように努めることを除けば、従業員に何の義務もない 会社には、従業員の長年の功績に報いる義務も、中長期のキャリアパスを用意する必要性もない。元ネットフリックス最高人事責任者である著者パティ・マッコードはそう主張する。過激な発言に思えるが、これはまだ序の口。彼女は、人事考課連動型の報酬や仲間意識を育むためのイベ

私は2011年にレーシック手術をして以来、視力矯正の為のコンタクトレンズやメガネを着けていない。変装のために度なしの伊達眼鏡をする程度。それも友人がやっているブランドのものを提供してもらったりするのでいわゆる眼鏡店には全く興味がなかった。 その為眼鏡店の事情にはめっぽう弱い、というか全く興味がない。だから OWNDAYS の事ももちろん全く知らなかった。人混

芸術的な一冊だ。 私達は、さまざまな問題を解決しようとするとき、ついつい今ある意見をまとめがちになる。ただその意見自体が的を得ているのかどうか気づかない場合、粘り強く思考し続けて解決に導くプロセスが、哲学と芸術で非常に似ている。 ドイツの現代アーティスト、ヨーゼフ・ボイスは思想・政治・教育に精通し、政治経済と環境問題の常識を問い直しつづけた。彼の表現自体、フ

知る人ぞ知るノンフィクション作家・宮田珠己は『 日本列島津々うりゃうりゃ 』(幻冬舎)を旅する、もしかすると当代随一の紀行文作家である。ただし、その目的は『 いい感じの石ころを拾いに 』(河出書房新社)とか、『 晴れた日は巨大仏を見に 』(幻冬舎)とかなので、ちょっと変わっている。 あまりの緩さに心を入れ替えて、お遍路に出たと思ったら『 だいたい四国八十八カ

小笠原は東京から船で24時間以上かかる、東洋のガラパゴスといわれる特殊な自然の宝庫だ。 そこの固有種である「アカガシラカラスバト」は平成5年に国内希少野生動植物種に指定された貴重種だ。2001年ごろには推定個体数30羽。あまりにも少ないため島民も見たことのないこの鳥だったので、関心を向ける人は少なかった。 だがでこの島で産卵、子育てをする小笠原を代表する大型

一般に、本は読めば読むほど物知りになれると思われがちだが、実際は逆だ。読めば読むほど、世の中はこんなにも知らないことであふれているのかと思い知らされる。その繰り返しが読書だ。 「ディアトロフ峠事件」をぼくはまったく知らなかった。これは冷戦下のソヴィエトで起きた未解決事件である。 1959年1月23日、ウラル工科大学の学生とOBら9名のグループが、ウラル山脈北

前作である『サピエンス全史』で著者ユヴァル・ノア・ハラリは、認知革命により、自らが生み出した虚構と共同主観を信じる能力を手にした、私たちホモ・サピエンスが、いかにして農業革命、科学革命を成し遂げ、現代に至ったかを、様々な哲学、宗教、そして最新の科学研究を駆使して論じ、さらに幸福という基準を軸にサピエンスの歴史を包括的に描き出した。 ハラリは『サピエンス全史』

「タイムトラベル」といえばこれを読んでいる多くの人は「あーはいはい」とその意味するところをすぐに理解してくれるだろう。空間のように時間を移動することができて、未来に行ったり過去に行ったりできるアレのことだ。もちろんタイムトラベル事象は我々の生活の身近なところにあるものではないけれども、邦画でも洋画でも、漫画でも小説でも「タイムトラベル」が出てくるものはいくら

端正な本だ。内容に不釣合いなカバーと帯を取りはずすと、表紙には原寸大に近い一面の硯が刷られている。装丁だけでなく、紙質や印刷も素晴らしい。ゆっくりと味わうように読んだ。 著者は書道道具店の四代目。浅草の店では定番の筆や墨なども取り扱っているが、高級な硯は代々の店主がみずから原石を内外で買い付け、手作りで調製したものだ。文化財レベルの硯の修理なども手がけており

本書『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』は、Google、Apple、Facebook、Amazon(GAFA)という巨大テクノロジー企業4社を、それぞれが地上の4分の1を支配し、剣、飢饉、悪疫、獣によって「地上の人間を殺す権威」を与えられた、ヨハネの黙示録に登場する四騎士になぞらえている。 そして、神にも擬せられるほどの力を持つようになっ

『憎悪の世紀』『マネーの進化史』『文明』などで有名なイギリスの歴史家、ニーアル・ファーガソンの新刊である。最も本書は本国イギリスで2003年に出版されていた作品だ。連動して制作されたテレビ・ドキュメンタリー『EMPIRE: How Britain Made the Modern World』ではニーアル・ファーガソン自身が番組の案内役として出演し英語圏各国で

脳の不思議さを描いた古典的名著。VRは『脳の外の幽霊』といえるのかもしれない。 もっとあってもいいはずなのだが、VRについての一般向け書籍は意外と少ない。

本書はニューヨークで英語やジャーナリズムを教える高校教師が、成績を用いず、生徒を評価する挑戦を行った記録である。通知表を捨て、成績をつけないクラスの実験を5年ほど前にはじめた。 淡々とコンパクトに実践の記録をまとめているが、時折顔をのぞかせる著者の成績に対する意見は核心を射抜いている。 成績は、生徒を動機づけたり、罰したりするのに使われます。生徒がしたくない

ゲノム革命は我々の想像を超える速度で進行している。ワトソンとクリックが生命のセントラルドグマを解き明かしてからわずか半世紀と少しの間に、 PCR や CRISPR−Cas9 などの革新的な技術が次々と開発され、SFの世界にしか存在しないと思われたような成果を次々と現実のものとしている。 遺伝子共有サイトのデータが迷宮入りしていた凶悪犯罪の犯人を追い詰めたとい

酷暑もお構いなしに開幕し、熱戦が繰り広げられる全国高校野球選手権大会。21日に決勝戦を迎える。今年は100回の記念大会ということもあり、開幕前から例年以上にメディアで特集が組まれ、書店には関連本が所狭しと並んだ。 本書もその一冊と言えるが、異色の存在だろう。著者はそもそもスポーツライターではない。色街や世界の辺境を取材してきた(前作は『ストリップの帝王』、9

続編は前作を超えない、そんな通説を吹き飛ばすような会心の一冊だ。人類の来し方を描き、全世界で800万部を超えるベストセラーとなった『サピエンス全史』。これを受けた本書『ホモ・デウス』では、人類の行く末を戦慄の姿として描き出す。 過去何千年にもわたり人類を悩ましてきた問題、それは飢饉、疫病、そして戦争の3つであった。しかし驚くべきことに、我々は飢饉と疫病と戦争

「この銃はドイツ製だと思う」 「あの場面で出てきた髭を伸ばした人たちはおそらくIS関係だろう」 シリアの内戦下に生きる若者を追った ドキュメンタリー映画『それでも僕は帰る シリア 若者たちが求め続けたふるさと』 の配給をしたときのこと、ある朝日新聞記者にトークイベントで協力してもらった。彼は同社の中東特派員として計5年間、中東・アフリカ圏の紛争取材等にあたっ

羊水穿刺で胎児の染色体検査をうけた。告げられた結果は陰性。しかし、生まれた赤ちゃんはダウン症だった。産科の医師が検査結果を見落としていたのだ。天聖(てんせい)と名付けられたその子にはさまざまな合併症があり、三ヶ月で亡くなった。そして、訴訟がおこなわれた。こう書けばシンプルだが、ここには三つの大きなジレンマがある。 そのうちのひとつは、天聖君への慰謝料請求の妥

働き方改革の旗印のもと、多くの企業では長時間労働の見直しや生産性向上に取り組み、時短や在宅での勤務も珍しくなくなった。反対に誰もが知る大企業が経営不振に陥り、従業員は先行きの不安に怯えている。 そんななか、自分の半径1メートル内の身近な仕事をネットで始めるという話をよく聞く。主婦の間ではメルカリで小遣い稼ぎをするのはもはや当たり前のことになった。 まさに本書

わたしたちが最もよく知っているものでありながら、それが結局何なのかはまるでわからないもの──そう、それが「私」である。「私」とはいったい何であるのか。また、わたしの脳からどうやって「私」が生じてくるのか。本書は、その難問に認知科学者のダグラス・ホフスタッターが挑んだものである。 ホフスタッターといえば、その前著 『ゲーデル、エッシャー、バッハ』 があまりにも

本書は今日の中国の外交・経済財政政策を理解する上で必読の一冊だ。今後、歴史に残るであろう中国の壮大な構想と、その背後にある哲学を理解することができ、また、この構想がアジア域内にもたらす波紋をあたかも現場にいるかのように感じることができる。中国の壮大なビジョンを理解する上で不可欠なガイド本といえよう。 この中国の壮大な構想こそが『一帯一路』または『新シルクロー

かわいくてたまらん出版賞受賞決定! と勝手に叫びたくなる「かわいい」のオンパレード。七五三のあの初々しさ、節句の飾りの華やかさ、と日本の子どもの可愛らしさが凝縮されている、昔ながらの子ども着物。年中行事や年齢に応じた装い、文様、結び方など「日本子ども衣服史」にもなっている。B5判に写真等400点が満載で、「やっぱりかわいい」と後で読み返して頷くこと必至だ。今

この『ゲンバクと呼ばれた少年』は、さながらギリシャ神話の最高神ゼウスが人類最初の女性パンドラに与えた箱の中からあふれ出た、戦争、貧困、疫病、憎悪といった人類を取り巻くあらゆる災禍と、それでも箱の底に最後に残されたかすかな希望の物語のようである。 本書は、昨年8月に放送されたNHK・ETV特集「原爆と沈黙〜長崎浦上の受難〜」の内容を、子ども向けに書籍化したもの

意表を突かれた。企画も内容も構成も、見事という他ない本だ。毎年、終戦の日にむけて様々な本が出版されるが、とりわけ異彩を放つ本である。本書を手にしてはじめて私は、「開戦を人々がどう受け止めたのか」という個々の情報が、ごっそり抜けおちていたことに気づいた。 ものすごく解放感がありました。パーッと天地が開けたほどの解放感でした。 (本書11頁、吉本隆明、原典:三交

「ようこそおこしやす」。そんな言葉が聞こえて来そうだ。”味のある座敷“で、芸妓さんが迎えてくれている……っと、どうやら迎えてくれているのは、芸妓さんだけではなさいようだ。 えええっ? この画像を見たときの衝撃といったら。イクチオステガって、こんなに小っちゃかったのおおお?! 芸妓さんに並んで三つ指(?)ついてかしこまっているのは、イクチオステガ・ステンシオエ