
なぜ東洋医学はわかりにくいのか?『医学問答 西洋と東洋から考えるからだと病気と健康のこと』
この本を読み終えたら、きっと「あぁ面白かった」と思われるはずです。「勝手なこと言うな、なんでそんなことがわかんねん!」とお叱りを受けるかもしれませんが、まずはその理由を。 この本の企画は出版元である左右社の編集者・梅原志歩さんからいただいた企画書に始まります。そこには、 「西洋医学と東洋医学の専門家が『不調と病気との付き合い方』について徹底問答! 西洋医学と
(2024年当時)
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この本を読み終えたら、きっと「あぁ面白かった」と思われるはずです。「勝手なこと言うな、なんでそんなことがわかんねん!」とお叱りを受けるかもしれませんが、まずはその理由を。 この本の企画は出版元である左右社の編集者・梅原志歩さんからいただいた企画書に始まります。そこには、 「西洋医学と東洋医学の専門家が『不調と病気との付き合い方』について徹底問答! 西洋医学と

「宿帳」である。旅館やホテルでの宿泊では記入が義務づけられているとはいえ、最近はネットで予約しがちなので、印刷されたものにサインするだけのことが多い。昭和とはいえ、はて宿帳なんかが本になるのかと思って読み始めたが、宿帳そのものの本ではなかった。 全24話、そのほとんどが昭和の大スターと馴染みの旅館の関係についてのお話だ。当然のことながら、ああええなぁと思える

『あらゆることは今起こる』、芥川賞作家・柴崎友香さんの最新作である。いかにも小説っぽいタイトルだが、そうではない。柴崎さんが40代の後半でADHD(注意欠如・多動症)と診断を受けられ、治療薬のひとつであるコンサータを服用、いかに変わられたか。その自分の経験からADHDやASD(自閉スペクトラム症)といった発達障害について考えていかれるノンフィクションである。

不思議だと思っていた。にぎやかな下町に住んでいるとはいえ、徒歩圏内に「インド料理店」が五軒もある。うち一軒はビリヤニなどもメニューにあるホンモノのインド料理店だけれど、他の四軒は「インド・ネパール料理店」で、メニューも値段もえらく似通っている。 さらに不思議に思ったこともある。ちょうど5年前、トレッキングでネパールへ行った時にわかったのだが、カレーがほとんど

ヘンリー・マーシュ先生。会ったことのない著者は呼び捨てにするのが習わしだろう。しかし、マーシュ先生の処女作を読んだときから、先生とつけて呼びたくなってしまっている。 医学部を卒業したが、医業を営まずに生命科学の基礎研究に従事していた。とはいえ、もちろん医師の友人も多い。医師同士は互いを「○○先生」と呼び合う。いささかおかしな習慣だと思うのだが、たとえ同級生同

「やっぱり自分の考えが正しかったんや!」 思わずそう叫びたくなった。 多くはないが、大勢の意見と自分の考えが違っていることがある。気にしなければいいのだが、どうにもモヤモヤする。そのひとつが「イノベーションは加速化する」というやつだ。ウソとちゃうんか。どの程度のことからをイノベーションというのかは難しいけれど、そもそもイノベーションというものはそうそう出てく

まいどお世話になっております、HONZレビュアーの仲野でございます。このたび、『仲野教授の この座右の銘が効く』という本を上梓いたしました。その経緯を、本の中ほどにコラム「この本ができるまで」として書きました。発刊プロモーションとして、ここに掲載いたしまする。いや、ホンマにおもろうて役に立つ本ですから、みなさんよろしく! ******************

かつての米国科学界における女性に対する偏見と差別がここまですごかったのか。いまさら驚くとはお前の認識不足だろうと言われるかもしれないが、にわかに信じられないような内容が次々と語られる。世代が少し違うからかもしれないし、米国と日本の違いもあるかもしれない。ともあれ、そのような状況からジェンダー公正を勝ち取るべく闘った女性研究者、リタ・コルウェルの記録である。

う~ん、あかんがな。読み始めてすぐにそう思った。エッセイとは本来こういうものを言うのだろう。う~ん。なにがあかんか、まずはその話から。 最相葉月さんといえば、押しも押されもせぬノンフィクションライターだ。『絶対音感』を読んだ時の衝撃-テーマへの迫り方の凄さ-は今でもよく覚えている。それだけではなく、エッセイの名手でもある。 ずいぶんと前になるが、「我が心の町

「これほど読む前から面白いに決まっている本はそうそうないはずだ」 米国の腫瘍内科医であるシッダールタ・ムカジーによるピュリッツァー賞受賞作『病の皇帝「がん」に挑む─人類4000年の苦闘』が『がん─4000年の歴史─』として文庫化された時、次作『遺伝子─親密なる人類史─』への期待をこめて解説の最後に書いた文である。この本の原著 『The Song of the

『昆虫絶滅』、なんとも刺激的なタイトルだ。まずはプロローグで、「昆虫のいない世界」がいかなるディストピアであるかが描かれる。 昆虫がいなくなった世界といえば、およそ半世紀前に出版されたレイチェル・カーソンの古典的名著『沈黙の春』を思い浮かべる人もおられるだろう。殺虫剤や農薬―当時の主流はDDTである―の使用により昆虫がいなくなってしまう。その結果、食物連鎖の

キツネの家畜化実験、 ナショナルジオグラフィックなどで紹介 されたりしているので、その驚くべき成果の概要をご存じの方も多いだろう。かくいう私も人並みならぬ興味を持ってこの壮大な研究を見つめてきたのだが、その裏で、研究成果にも劣らぬ人間ドラマがあったとはまったく知らなかった。主人公はふたり。ひとりはキツネの家畜化実験を考案し、1952年に始動し1985年に亡く

角幡唯介の名を初めて知ったのは二〇一〇年、『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』を読んだ時だった。心底驚いた。探検――子どもの頃から思い描いていたイメージの探検――などというものは、すでに世の中からなくなってしまったと思い込んでいたからだ。しかし、その本には、真の探検があった。誰も踏査したことがないからというだけの理由で、命を懸けた冒険

ご依頼をうけて、キャリアパスとか、人生いかに楽しく生きるべきかとかいう講演をすることがある。我ながら僭越なことではある。ひょっとしたら、面白おかしく過ごしながら、そこそこ業績をあげたおっちゃんと思われているかもしれん。そこはそれレトリックみたいなものであって、本当は血の滲むような努力をし、苦しいことがあっても笑顔で耐えてきたのである。 というのは、やっぱりウ

幸福に生きていくには、『すばやく変化に気づき、最適に対応するための人生戦略』が必要だ。そう力強く説く認知心理学者・神経科学者であるアデレード大学エレーヌ・フォックス教授へのインタビュー。きっと生き方を変えるヒントが見つかるはず! 仲野 長い間、科学者として生活してきました。まずその立場から申し上げたいのは、「切り替える力(スイッチクラフト)」―必要な時には躊

津波について、ほとんど何も知らなかった。この本を読んだ感想をひとことで書くとそういうことになる。本当に勉強になった。世界中で過去におこった津波について、さまざまなエピソードがわかりやすく綴られていく。 よく知られているように、Tsunami は日本語から世界共通語になった数少ない言葉のひとつだ。語源からいくと、「津(=港)をおそう波」、すなわに「港の内部に押

あるんや、ジャパニーズドリームって。この本、山分ネルソンの一代記を読めば、誰もが驚きを持ってそう思うだろう。もうひとつ、私にとっての大きな驚きは、それが身近なところでおこっていたことだ。すこしわかりにくいが、タイトルの「激らせろ」は「たぎらせろ」とルビがふってある。 山分ネルソン祥興、マレーシア出身の50歳。大阪や関西圏以外の人はご存じないかもしれない。私が

『汗と涙のドキュメント日記シリーズ』、ちょっとなさけないイラスト付きの新聞広告を目にされたことはあるだろう。『交通誘導員ヨレヨレ日記』、『派遣添乗員ヘトヘト日記』、『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記』など、すでに10冊以上が出版されている。何冊か読んだけれど、どれもおもろい。しかし、今回の『コンビニオーナーぎりぎり日記』はレベルがちがう。 おもしろさのレベルとい

「○○のすべて」みたいなムックを買うことはけっこうあるが、たいていは拾い読み程度で終わってしまう。いろんな事柄が載っているのはいいけれど、中には興味のない記事もあるからいたしかたなし。しかし、この『桂二葉本』は違った。66年の人生にして初めて、ムックを通しで読破した。桂二葉を知る人はもちろん、タイトルを見て「誰やその桂二葉は」と思った人にとっても絶対におもろ

マッチング・アプリ、まったく未知の領域である。まぁ、66歳既婚者なんだから、当然といえば当然だ。しかし、いまや結婚するカップルの20%が利用するという。知識として知っておくのは悪くなかろうと読み始めたら、いきなり驚きの連続だった。 冒頭で紹介される30代の知人女性Kさん。マッチング・アプリで知り合った男性7人と同時に付き合っているという。へ、二股でもあかんよ

2021年に発売され、人類の希望をあらためて世に問うた『Humankind』。オランダの若き知性が著した一冊は、その後話題を呼び、この度4万部の部数を突破をしたという。著者のルトガーブレグマン氏に、HONZ仲野徹が迫る!(HONZ編集部) 仲野 「ほとんどの人間は基本的に本質的にかなり善良だ」——ブレグマンさんは『Humankind 希望の歴史』で、こう主張

言語がどのように生まれたかに興味を持つ人は多いのではないか。なによりも人間を人間たらしめている大きな理由のひとつは言語なのだから、当然のことだろう。すこし前に 書評 を書いた『言語はこうして生まれる:「即興する脳」とジェスチャーゲーム』は、そのあたりを論じた本である。 周囲の人に何かを伝えるために言語が生まれた。最初から単語、ましてや文法があった訳ではない。

サーカス、これほど多彩なイメージを喚起する言葉はないのではないか。明るく陽気で楽しいという印象がまず浮かぶ。しかし、それを追いかけるように、もの悲しい、あるいは、陰りのある面が気になってしまう。空中ブランコなどのアクロバットや猛獣使いのショーが前者、ちんどん屋さんのジンタでもおなじみのうら悲しい旋律を持つ「 美しき天然 」が後者の代表といったところだろうか。

二本足で立って走る猫がいるという話をネットで知った。ウソやろ…。即座に思い浮かんだのはもちろんあの猫である。往年の名作『じゃりン子チエ』に出てくる、後ろ足で仁王立ちになったりする小鉄とアントニオJr.だ。おもろそうやないか。 しかし、現実はマンガより奇なり。リアルの二本足猫は、二本の後ろ足ではなく、左側の足二本で立って走るという。ホンマですか?まだ仁王立ちの

開業医さんの生活ってどんなんやろ。近所の医院の前を通りかかった時、あるいは、ちょっとした病気でお世話になった時、ふと思ったことのある人は多いだろう。といっても、たぶん、お金持ちなんやろなぁ、とか、気を遣うから大変やろなぁ、という漠然としたイメージしかわかないのではなかろうか。 医学部の出身なので医師の友人は多い。開業医の友人もたくさんいるが、その実態はよく知

「桶」である。はて、桶と聞いて何を思い浮かべられるだろう?ちょっと気になって広辞苑で調べてみた。こういうときはなんといっても電子辞書だ。さて、いくつヒットしたでしょう? 答えは、「閼伽桶」(あかおけ:仏に供える水を汲み入れる桶)から「四桶」(よつおけ:長野県筑摩地方で馬に負わせて運ぶ下肥桶。1駄に4個つけたからいう)まで、なんと97個もある。さすがに驚いた。

あなたは死刑に賛成ですか? 賛成、反対、あるいは、どちらでもない or わからない。 はたして即答できるだろうか。決して身近な問題とは言いにくいので、普段から考えている人は多くないだろう。しかし、とても重要な問題だ。この問題を考えることは、生きるとはなにか、人権とはなにかという大きな命題に思いを巡らせることになるのだから。 作者の宮下洋一はスペインに根拠を置

売れ続ける芸人、25人について、芸能記者・中西正男48歳が縦横無尽に書き尽くした。大阪を中心に活動する中西なので、ほとんどが大阪の、あるいは、大阪出身の芸人さんたちだ。そのリストを見れば、売れ続けて当然と思える人もいれば、なんでこんなのがと言いたくなる人もいる(<個人の感想です)。しかし、読んでみれば、売れ続けた理由がよくわかる。 ほんまもん 最終的にはこの

ジェームズ・ワトソンの『二重らせん』が、これまで最高に売れたサイエンス・ノンフィクションだ。フランシス・クリックと世紀の大発見ー遺伝情報をコードするDNAが二重らせん構造を持つことーを成し遂げたワトソンによる発見の経緯を記した本だが、決して正確な記録ではない。あくまでも、ワトソン個人から見た二重らせん発見物語である。それでもこの本がすごく売れたのは、サイエン

素晴らしい本だ。帯文を頼まれたら、「役に立つ、みんな絶対に読むべきだ」という短い激賞文しかない。 タイトルは『新・日本語練習帳』だが、内容は単なる練習帳に留まらない。きわめて簡潔に示されたルールから、機械翻訳に適した日本語やグローバルコミュニケーションの「コツ」がのみこめる。さらには、英語、および英語を通じたコミュニケーションの解説から、逆ベクトルで、日本語

こういう本を書ける人を心からうらやましく思う。医学や科学についていろいろなところで書いてきたが、まったくレベルが違う。ひとことでいえば、悲しいけれど才能の違いということになるのだろう。それに英語の壁もとてつもなく高い。 著者のダニエル・M・デイビスは英国の免疫学者である。インペリアル・カレッジ・ロンドンの教授で、そのHPを見ると優れた論文をたくさん発表してい

おもろい研究をする人がいたもんだ。ハナモゲラじゃなくてホシバナモグラ、って書いても、タモリのハナモゲラを知ってる人も今では少なくなってるでしょうなぁ。と、まぁ、それはええとして、カタニア先生の興味は、キモいというよりも、不思議な生物ばかりである。 名前のとおりに星のような鼻を持つホシバナモグラをはじめとして、エサである魚を口の方へと魔法のように誘導するヒゲミ

初めてお会いしたのは、読売新聞の読書委員会だった。元・防衛大学校長らしく、動作も物の言い方もあまりにキビキビしておられるのに驚いた。なんでも、以前は中国政治思想史を専門とされる慶應大学法学部の教授だったとか。真っ先に「防衛大学校長にご着任される前からこんなにキビキビしておられたのですか」とお尋ねしたのをよく覚えている。残念ながら、そのお答えは記憶にないのだが

思考というと、多くの人は難しいものと考えがちだ。しかし、決してそのようなことはない。とりわけ、科学的な論理思考というのはシンプルだ。いや、シンプルであるべきだ。そうでないと他の人に理解してもらえない。 多くの大学院生を教えてきた。同じ事を繰り返し言うのは嫌いなのだが、何度も何度も繰り返したフレーズがある。それは、「これは前にも言うたやろ」である。多くの場合、

『生命機械が未来を変える』ご恵送いただいたこの本、たいそうなタイトルやなぁと思いつつ軽い気持ちで読み始めたのだが、一気に読了。そして、ふたつのことに驚愕した。ひとつは、もちろんその内容だ。 MIT(マサチューセッツ工科大学) においておこなわれている研究を中心に、生物学と工学を本当の意味で融合させた研究、「エネルギー」、「浄水」、「医療」、「身体」、「食料」

ウクライナについてのニュースを連日見ているのに、その国について何も知らなかった。恥ずかしい限りである。いかに知識がないかを思い知らされながら、新型コロナウイルス感染症 COVID-19のことを思い浮かべていた。医学を学んだのだから、それについては相当な基礎知識がある。なので、一般の人のウイルスについての知識の貧弱さや、ワイドショーなどでのとんでもないコメント

これほどシビれる本に出合うことはそうそうない。それは、真の知的好奇心と創造力を兼ね備えた上に深い思索をできる人がめったにいないからに違いない。そのような希有なる人物、エルノー・ルービック(正しい発音は ルビク・エルネー らしいが)の自伝である。名前を見たらおわかりだろう。誰もが一度は手に取ったことがある ルービックキューブ を発明した人である。 1944年、

動物たちは天才だ! 心底驚いた。こんなに多様で素晴らしいナビゲーションシステムが動物に備わっているとは。 ナビゲーションというのは、採餌や生食などといった動物の生存に必須のものである。だから、何億年という単位での進化により、これくらい巧妙な仕組みが作り上げられても不思議ではないのかもしれない。また、無意識のうちに人間の能力と比較してしまうから、不思議さを感じ

ある種の快感を抱きながら読んだ。漠然とそうではないかと勘ぐっていたことを、ものの見事に説明してもらえたからだ。がんの新薬が次々と登場している。もちろん画期的な薬剤もあるが、喧伝されているほどのことはないのではないか。腫瘍内科医がその真実をさまざまな角度から検証していく。 第1部「がんの薬の効果はどれくらいで、値段はどれくらいか」の冒頭では、いかに「がんの薬は

『すばらしきアカデミックワールド オモシロ論文ではじめる心理学研究』という真面目なタイトルに騙されてはいけない。ひかえめに言って、驚きにつぐ驚き、爆笑につぐ爆笑の一冊だ。 総論文数、数え間違えていなければ84編が真面目に紹介されている。必ずしも心理学に限定されている訳ではないが、すべての論文が素晴らしくおもろい。怪しげな論文がない訳ではないが、きちんとそう注