
『政治の起源 下』 法の支配と政府の説明責任
先史時代にまでさかのぼり、多くの国・地域を比較することで、政治制度の起源に迫っていく本書は、2013年出版本でおすすめNo.1だ。著者フランシス・フクヤマによる起源をめぐる探求は広く、深い。上下巻合わせて700ページ超という大著でありながら、複雑に絡み合った歴史の流れが明快な論理に則って展開されるため、最後までまったく飽きさせない。ページをめくるたびに、1行
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先史時代にまでさかのぼり、多くの国・地域を比較することで、政治制度の起源に迫っていく本書は、2013年出版本でおすすめNo.1だ。著者フランシス・フクヤマによる起源をめぐる探求は広く、深い。上下巻合わせて700ページ超という大著でありながら、複雑に絡み合った歴史の流れが明快な論理に則って展開されるため、最後までまったく飽きさせない。ページをめくるたびに、1行

戦後日本は格差の少ない中流社会だった、小泉改革が格差を拡大させた、日本はいまだに苛烈な学歴社会だ。日本の「格差」を象徴するようなこれらの言説は、マスメディアでも繰り返し喧伝され、広く浸透してきた。しかし、「格差が少ない」とは具体的にどのような状態なのか、格差が拡大するとは何が大きくなることを意味するのか。そもそも、「格差」とは何で、どのように分析されるべきも

あなたはボノボ、それともチンパンジー? 答えに困る質問である。もちろん、私たち人間はそのどちらでもない。しかし、彼らはもっともヒトに近い類人猿だ。ヒトがチンパンジーとボノボの祖先と分岐してから、わずか100万年しか経過していないという。大人になっても遊びをやめないボノボ、集団同士で激しく殺しあうチンパンジーの特徴を本書で知れば知るほど、ヒトと彼らの類似性に驚
HONZは、第2期学生メンバーを募集します。学生メンバー採用関連業務は私、村上浩が担当いたします。 毎月1本の書評(対象はノンフィクションのみ)を書いていただきます。 書評のHONZへの掲載可否については正規メンバーが協議して決定します。 毎月第1水曜日朝7時からのHONZ朝会に出席することができます。(六本木ミッドタウン内) 毎月第3水曜日のHONZ夜会や

「 理論の終焉:データの洪水が科学的手法を時代遅れにする 」 2008年にワイアード誌編集長(当時)の クリス・アンダーソン が、ビッグデータ時代の到来を謳った記事のタイトルである。彼が予見したように、この5年で我々を取り巻くデータは爆発的に増加し、ビッグデータをマーケティングなどに利用した 成功例 も聞かれ始めた。 本当に、大きなデータと強力なコンピュータ
これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば、だが。 イギリス首相として、第二次世界大戦を勝利に導いた ウィンストン・チャーチルの言葉 だ。たしかに、民主的選挙で選ばれた日本の政治家の醜態を見るにつけ、民主主義は最悪の形態だと言いたくもなる。しかし、独裁政治体制下の貧困や拘禁の恐怖におびえる生活を想像すると、民主主義国家以外で暮らしたいと思

世界は多様性に満ちている。 ITの普及とともに急速に平準化されていく世界を描いた『 The World Is Flat 』(邦題『 フラット化する世界 』)の発売から8年以上が経過し、スポーツから経済まで“グローバル化”が合言葉になっている。それでも、世界はまだまだデコボコなままではないか。インターネットの力で世界はより繋がりあったかもしれないが、今もわれわ

世界四大文明といえば? 義務教育時代の記憶を掘り起こせば、センター試験で地理を選択した理系の私でも、エジプト文明、メソポタミア文明、黄河文明、そしてインダス文明の名を辛うじてあげられる。この“四大”文明というくくり方には様々な異論もあるようだが(2009年出版の『 もういちど読む山川世界史 』にも「四大文明」という表現はみられない)、大河に支えられて発達した

ワトソンとクリックにより DNAの二重らせん 構造が明らかにされて60年以上が経過し、私企業のサービスを利用すれば個人でも気軽に遺伝子解析が行える時代となった。アンジェリーナ・ジョリーが自らの遺伝子検査結果をもとに乳房切除を決断したように、遺伝子分析の結果が私たちの意思決定に影響を与える事例もみられる。しかし、わたしたちは自分の未来を委ねられるほどに、遺伝子

本書の主役はウジ虫。虫嫌いの方はこの時点で、読み進めるのをやめようと思われたかもしれない。確かにウジ虫は、ぶにょぶにょしていて、バイ菌だらけで、気持ちが悪い。これまで、「ウジ虫が大好きだ」という人にはお目にかかったことがない(HONZ虫班の野坂美帆、土屋敦などはもしかしたら好きなのかもしれないが)。しかし、本書にはウジ虫や生々しい傷口の写真は掲載されていない

DeNA創業者の南場智子、IBMを再建させたルイス・ガースナー、フェイスブックCOOのシェリル・サンドバーグ。偉大な経営者として知られる彼、彼女らは、アメリカ発祥のコンサルティングファーム、マッキンゼー・アンド・カンパニーの出身者である。「CEO製造工場」と呼ばれるほど多くの元マッキンゼーが、経営者として大企業の舵を取っている。事実、2008年の『USAトゥ

世界は名前であふれている。 街ゆく若者が凝視する手のひらサイズの四角い機械には「スマートフォン」、鋭い目つきでゴミをあさる黒い鳥には「カラス」、体毛がほとんどなく出歯のネズミには見たままの「 ハダカデバネズミ 」という名前がある。これらの名前はもちろん、自然に授けられたものではなく、ヒトによってつけられたものである。名前のないものを見つけることが難しいほどに

株価の動きに注目していたのは、投資家たちだけではない。1980年10月、多くの科学者たちもまた、ジェネンテックという新興企業のIPO(新規株式公開)の行く末を見守っていた。IPO時点でこの創立4年目のベンチャーが販売していた製品数はゼロ。しかし、1つの製品すら持たないジェネンテックの株価は取引開始20分で35ドルから80ドルに急上昇した。このときジェネンテッ

建築に隠された謎を解き明かす“建築探偵”としてもお馴染み、建築史家・建築家の藤森照信センセイ。大和絵や浮世絵の様式を用いた緻密な画風で知られ、 『ヘンな日本美術史』 でその視点の鋭さをいかんなく発揮した山口晃画伯。この2人が13の日本の名建築を訪ねて、お互いの知識と感性をぶつけ合った対談が、面白くないはずがない。山口画伯によるエッセイ漫画まで添えられているの

どれほどの絶望を、乗り越えなければならなかったのか。 第一次大戦中に捕虜として拘禁された収容所から脱走を試みること6回。その全てが失敗に終わった。ナチス占領下のフランスを離れイギリスで行っていたレジスタンス活動のために反逆者と呼ばれ、祖国から死刑判決を言い渡された。起死回生を期した軍事作戦の失敗で英首相チャーチルの信頼を失い、自ら命を絶つことすら考えた。 普

「この程度の傷、たいしたことではない。」 男は、心の中でつぶやいた。チンパンジー狩りには困難がつきものだ。引っ掻かれ、噛みつかれるのには慣れている。今回の狩りがこれまでと違っていたのは、狩りの最中に負った傷にチンパンジーの返り血を浴びたことくらい。 「いつものことだ。」 男は再びつぶやき、いつものように家路を急いだ。 男の思いもよらないところで、この狩りは、

あなたが見ている空の青さと、わたしが見ている空の青さが同じとは限らない。同じ波長の光が網膜に届いているとしても、その刺激が他人の中でどのような知覚をつくりだしているかを正確に知る術はなく、今あなたの目の前に広がる世界は、あなただけの世界かもしれない。 ヒトはどのように世界を見ているのか。 ヒトはどのように世界と繋がっているのか。 本書はこの捉えどころのない問

2013年6月26日、アメリカ連邦最高裁判所は2つの大きな決断を下した。1つは、「男女間の結婚に与えられる税制優遇などの権利を同性婚のカップルには与えない」とする連邦法( DOMA )は違憲であるとするもの。もう1つは、「同性婚を禁止する カリフォルニア州法 は違憲である」という地裁の意見を維持するとしたものである。 このニュースは全米で歓喜の声をもたらし、

世界中のサイエンス好きが注目するFacebookページがある。 2012年3月にスタートした I fucking love science というちょっと過激な名前のサイエンス情報ページだ。その人気ぶりは凄まじく、開設半年後には「いいね!」数が100万を突破し(2013年6月現在では560万以上)、Facebook上で最も人気のサイエンスページの1つとなった

善次郎は、力の限り走っていた。 右胸と顔を刺されてなお、生きることを諦めてはいなかった。 迫り来る死の恐怖を振り払いながら、彼はどこへ向かおうとしたのだろう。 薄れ行く意識に抗って、彼は何を考えていたのだろう。 80歳を超えた老体とは思えない懸命の走りも、暴漢の追撃を振り切ることはできず、背後から咽頭部を切りつけられた銀行王・安田善次郎は、82年の人生に幕を

存在するかどうかも分からないお宝を求めて、未開のジャングルを突き進む。失敗に次ぐ失敗にも諦めることなく、新たな仲間と新たな航海へと旅立つ。本書で追い求められるお宝はゴムの樹であり、お宝の在り処はブラジルのジャングル奥深くである。携帯やGPSはもとより、正確な地図すらない19世紀の冒険が容易なはずがない。地球のあらゆる土地を調べつくし、宇宙や深海にまで行けるよ

鳥を知らない人に、鳥がどんな生き物であるかを簡潔に伝えるには、どうすればよいだろう? 「卵を産む動物」では、カエルやワニも鳥の仲間になってしまう。「クチバシを持つ動物」はいい所を突いているが、イカにもクチバシはある。当然、「空を飛ぶ動物」でもうまくはいかない。コウモリや蚊だって、空を飛べるのだから。 答えは、本書のタイトルでもある「羽」にある。羽こそ、鳥だけ

古書を購入するために1億円以上の借金を背負った。 出版社社屋で寝泊りしながら『 世界大博物図鑑 』を1人で書き上げた。 本の購入資金捻出のために、1日に1回しか食事せず、10年間同じスーツを着続けた。 愛書家 として上記のような 伝説 を多く持ち、「中学生のころから、読んで感激した本の著者に手紙を書いて、勝手に弟子入りを決め込」んでいたというアラマタさんが、

フランスの哲学者・自然科学者パスカルの有名な言葉である。人間が「考える」葦であるということは、葦は「考えない」ということなのだろう。確かに、脳を持たない植物である葦が、人間のような思考を持たないことは疑いの余地がない。 それでは、考えを持たない植物は、世界をどのように見て、感じているのだろうか。そもそも植物に視覚や嗅覚などの、ヒトの五感のような感覚は存在する

ナイジェリアの貧困地区で生まれ育ったアンドリュー・サボルは、家計を支えるために、16歳で廃品回収を始めた。炎天下でゴミ山を漁る過酷な仕事を、アンドリューは1日12時間、16年間に渡ってやり抜いた。そして、その下積み生活で貯めた資金をもとに、リサイクル用廃棄物のディーラーとして独立することに成功した。独立後の彼は、小奇麗なワンルームマンションに住んでいる。今頭

1904年2月8日、旅順港外での日本海軍によるロシア艦隊への奇襲攻撃によって、日露戦争が開戦した。多くの犠牲者を出しながらも終わる気配を見せない戦闘は、次第に激しさを増していく。ロシア相手に勝利を続ける日本であったが、大国相手に長期戦を戦い抜くほどの力は備わっていなかった。また、国力で優りながらも連敗を続けるロシアも、戦闘が長引けば、既に失ってしまった面目以

知的興奮と驚きの事実に満ちた素晴らしい本である。一度読み始めたら、読了するまで眠ることができなかった。こんな本を読みたくて、こんな本を紹介したくてHONZをやっている。「よし、誰よりも早くレビューを書こう」と思ったところで仲野徹がみっちりとレビューしているところに気がついてがっくりきたが、どうしても自分でも紹介したい本なのだ。 本書の主役であるサルファ剤は、

この男ほど、長く闘い続けたボクサーは他にはいない。 この男ほど、多くの国民に愛されたボクサーは他にはいない。 そして、この男ほど、罵声を浴びせられたボクサーは他にはいない。 WBCウェルター級王座を賭けた シュガー・レイ・レナード との闘いを終え、祖国に帰ってきたロベルト・デュランに向けられた感情は、ねぎらいや感謝ではなく、怒りと憎しみだった。人々は彼を「弱

本書の副題にもその名前が使われているように、著者であるプリンストン大学コンピュータサイエンス学科教授のブライアン・カーニハンは、ディジタル界隈では大変有名な先生だ。デニス・リッチーとの共著『 プログラミング言語C 』は、長い間多くのプログラマーに参照され続けているという。しかし本書は、「カーニハンって誰?」と思った人のために書かれている。これは、非技術系であ

この本は、2012年1月に発売された『 Coming Apart 』の邦訳である。本書は、発売直後から ニューヨーク・タイムズ 、 ウォール・ストリートジャーナル などの高級紙に軒並み書評が掲載され、全米で大きな反響を集めた。ノーベル賞経済学者ポール・クルーグマンが ブログ で批判的コメントをする一方、『 マネーの進化史 』のニーアル・ファーガソンは肯定的意

幽体離脱、金縛り、死者との遭遇。本書には、テレビや雑誌で「奇跡の瞬間」として紹介されるようなスピリチュアル体験が数多く紹介されている。しかし、本書はいわゆるオカルト本の類ではない。本書は、ケンタッキー大学・神経学教授の著者が、これらのスピリチュアル体験を最新の脳科学で解き明かしていくサイエンス本だ。 スピリチュアル体験者はどのような環境で、どのような体験をし

これは、2013年度の私立麻布中学校の入試問題である。東大合格者を多数輩出する名門校が用意したこのユニークな、そして、科学の本質に迫る問いは ネットでも大きな話題 となった。実際の問題には答えを導きやすくするための補助が添えられているが、小学生のみならず、大人の知的好奇心もくすぐる良問だ。あなたなら、この問いにどう答えるだろう。 生物ではない理由を考えるため

音楽ソフト(CD、DVDなど)の売り上げ低下、アイドルたちに独占されるヒットチャート、若者の音楽離れ。音楽業界には悲観的なニュースが飛び交っている。日本ではもう新たな音楽は生まれていないのか、ぶつける先のない思いを音に託す若者はいなくなったのか。もちろん、そんなはずはない。 著者である都築響一は、今いちばん刺激的な音楽は地方から発信されているという。大手レコ

これは、本書で紹介されているトーマス・マンの『魔の山』(1924年発表)の中で医師が主人公に語りかける台詞の一部である。80年以上も前の作品が指摘した表皮と脳の類似性は、最新の研究成果によって、科学的に立証され始めているという。皮膚は、熱さ寒さや痛さを脳に伝える以上の働きをしているのだ。 本書で著者は、皮膚や知覚、感覚にまつわる多くの研究を引きながら、皮膚の

1845年元日の早朝、ロンドンに向かう列車の中に息を押し殺す男がいた。その男の名は、ジョン・タウェル。列車に飛び乗る直前、彼は愛人のセアラ・ハートを毒殺していた。今ごろ警察が殺人に気がついたとしても、大都会ロンドンの雑踏に身を潜めれば逃げ切れる、この殺人犯はそう考えていた。しかし、彼はあっけないほど簡単に捕まってしまう。ロンドンの警官たちが、駅でタウェルの到

なぜ、「におい」に名前をつけることは困難なのだろうか? この問いに答えるためには、先ずその困難さを理解する必要がある。においを表す言語的表現を思い起こせば、必ずといっていいほど比喩が付いて回る。コーヒーのようなにおい、腐卵臭、バラの香り。これらは、においに名前をつけたというより、においをもたらす物質を表記したものと言えるだろう。 「刺すようなにおい」や「甘い

ずるをしたことがない、と断言できる人はどれ程いるだろう。私は一度もしていない、と思った人は自分がずるをしていることに気が付いていないだけかもしれない。自分をごまかすことは、想像以上に簡単なのだ。 『 予想どおりに不合理 』で人の不合理性を、『 不合理だからすべてがうまくいく 』でその不合理性がもたらすポジティブな影響を明らかにした行動経済学者ダン・アリエリー

豪華なインタビュー集である。何が豪華かというと、本書で取り上げられる6名のインタビュイー達の顔ぶれだ。その名前を見るだけでもわくわくしてくる。 ・『 銃・病原菌・鉄 』の進化生物学者、 ジャレド・ダイアモンド ・『 生成文法の企て 』の言語哲学者、 ノーム・チョムスキー ・『 妻を帽子とまちがえた男 』の神経学者、 オリバー・サックス ・『 心の社会 』のコ

本書の主役である「すべてを変えた一冊」とは、地球が世界の中心ではないことを明らかにしたガリレオの『 天文対話 』でも、生命に進化という概念をもたらしたダーウィンの『 種の起源 』でもない。暗黒の中世に別れを告げ、大航海時代を迎えようとしていた1417年のヨーロッパで、その一冊は1人のブックハンターの手によって発見された。 その一冊とは、紀元前1世紀頃に著され
三重スパイ――CIAを震撼させたアルカイダの「モグラ」 2009年12月30日、アフガニスタン北東部にあるホースト基地のCIA局員達は、ある男の到着を心待ちにしていた。その男とは、フアム・アル‐バラウィ。このヨルダン人医師は、CIAから大きな注目を集めていた。それは彼が、最強国家アメリカをもってしても長年近づくことのできなかったアル・カイダの中枢に入り込み、