ノンフィクションはこれを読め!

村上 浩の記事

AUTHOR

292記事

NO PHOTO

社会 / 新刊超速レビュー

『援デリの少女たち』新刊超速レビュー

援デリの少女たち 「援デリ」とは、組織的に運営される「援助交際デリバリー」の略である。援デリ業者は、出会い系サイトで集めた男性客のところへ少女を派遣して売春させ、少女が男から受けとった金額の一部、あるいは大部分、を徴収するのだ。これら違法な援デリ業者は、当然通常の性風俗業者のように営業届けを出していない。法の外側を自らの生息範囲に選んだ彼女たちには、様々な危

NO PHOTO

サイエンス / 新刊超速レビュー

『系統樹曼荼羅』新刊超速レビュー

系統樹曼荼羅―チェイン・ツリー・ネットワーク なんとも魅力的なタイトルと装丁である。書店でつい手にとってしまうのは、こういう本だ。タイトルどおり、本書には500年以上前に描かれた系統樹から、ダーウィン手書きの進化論のアイデア走り書き、果ては最先端のコンピュータグラフィック技術を用いて作られたネットワーク図が、これでもかと盛り込まれている。異常な密度で書き込ま

『「黄金のバンタム」を破った男 』 ファイティング原田のいた時代 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『「黄金のバンタム」を破った男 』 ファイティング原田のいた時代

63.7%。この数字は1966年に打ち立てられてから、今でも塗り替えられることのない、ボクシングのテレビ放映における歴代最高視聴率である。日本最長の13連続防衛を達成した“カンムリワシ”具志堅用高も、日本最速(当時)の8戦目で世界王者となった“浪速のジョー”辰吉丈一郎も、本書の主人公ほどには日本全土を熱狂させることはできなかった。 その日本史上最も注目を集め

NO PHOTO

サイエンス / おすすめ本レビュー

『食欲の科学』 どうしてお腹が減るのかな

食欲の科学 (ブルーバックス) 食欲を押さえ込むことだけではない、食べ続けることもまた難しい。この難しさは、ヴァーモント大のグループが行った、200日間ずっと通常の2倍の量の食事を摂り続けるという実験の結果からよくわかる。多くの被験者は、体重が増えるに連れて食べることを苦痛に感じ始め、望んで参加した実験を続々とリタイアしていったのだ。また、実験後に被験者達の

NO PHOTO

サイエンス / おすすめ本レビュー

『ひとの目、驚異の進化』 エイリアンは黒人と白人を見分けられない

ひとの目、驚異の進化: 4つの凄い視覚能力があるわけ 本書で進化理論神経科学者マーク・チャンギージーの論理展開を堪能し終える頃には、あなたの世界の見方は一変しているだろう。難解な科学的事実に対する分かりやすい解説と直観に反するファクト。大胆な仮説とその仮説を支える緻密なデータ。サイエンス本が持つべき美点の全てを兼ね備えているかのような本書を、『 錯覚の科学

『測って描く旅』新刊超速レビュー 書影

アート・スポーツ / 新刊超速レビュー

『測って描く旅』新刊超速レビュー

書名には、著者や編集者たちの色々な思いが込められているのだろう。その思いの丈は、ハッと驚くタイトル、ついつい手に取りたくなるタイトル、そして、二匹目どころか五匹目くらいのどじょうを狙ったタイトルが書店に溢れていることからもうかがい知れる。 本のタイトルは様々であるが、その最も大切な役割は、その本に何が書かれているかを伝えることではないか。「書籍の内容を伝える

『裁判百年史ものがたり』 日本をつくった12の事件 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『裁判百年史ものがたり』 日本をつくった12の事件

1891年5月11日、2週間前に長崎港から来日したロシア皇太子のニコライは、鹿児島、神戸、京都を経て大津にやって来た。昼食をすませた彼は心地よく人力車に揺られながら、今夜の芸妓との楽しい時間に想いをめぐらしていた。少しずつ、だが確実に、死の危険に近づいていることも知らずに。 異国の皇太子目当てに詰めかけた人の群れの中に、鬼の形相でニコライを睨みつける男がいた

『非道に生きる』 刹那を生きる 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『非道に生きる』 刹那を生きる

本書の著者である映画監督、園子温(その・しおん)の小学校時代の通知表には、教師からのこんな言葉が記されていた。 「落ち着きがない」、「教師の話を聞かない」であれば珍しくはないが、「性的異常」にはなかなかお目にかかれない。子温少年は一体何をしたというのか。 答えは驚くほどシンプル。彼は、全裸で教室に入っていったのだ。 教師から「全裸」であることをこっぴどく叱ら

『日本人のための日本語文法入門』新刊超速レビュー 書影

教養・雑学 / 新刊超速レビュー

『日本人のための日本語文法入門』新刊超速レビュー

これは、エストニア出身の大関・把瑠都が初優勝のインタビューで、国技館まで駆けつけた母親に捧げた言葉である。この台詞は、母親への感謝を表す感動的なものではあるが、何だか違和感がある。あなたが日本人なら、日本語を母語として操るなら、違和感の正体は明らかだろう。そう、こういうとき私たちは、「生んで くれて 、ありがとう」と言うのだ。実際に、このインタビューを伝える

『ヒトはなぜ神を信じるのか』 逃れられない神の目 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『ヒトはなぜ神を信じるのか』 逃れられない神の目

「科学と宗教」という、既に語り尽くされたと思われるテーマに、無神論的心理学者の著者ジェシー・ベリングを向かわせたのは、母の病気である。ベリングが10代のころ、彼の母はがんと診断された。母の病状を聞いたとき、神の存在を微塵も信じていなかった彼の頭に、意外な言葉が浮かんだ。 反射のように浮かび上がった神を、ベリングは理性の力で即座に振り払った。母の症状が科学的に

『中国と 茶碗と 日本と』 文系的センス・オブ・ワンダー 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『中国と 茶碗と 日本と』 文系的センス・オブ・ワンダー

四川省に生まれ、四川大学で日本文学を勉強した著者は、さらなる日本文化の研究のために来日し、日本の大学で修士号、博士号を取得した。異国の地で、異国の言葉で、異国の文化についての本を上梓するほどにまで、この中国人女性研究者を駆り立てたのは、日本の生活を通して感じ続けた感嘆と疑問である。 来日して初めての正月、彼女を驚かせたのは友人に振舞われた 屠蘇酒 (とそしゅ

『「調べる」論―しつこさで壁を破った20人』新刊超速レビュー 書影

人物 / ビジネス

『「調べる」論―しつこさで壁を破った20人』新刊超速レビュー

インタビュアーの肩書きを持つ著者による、『文藝春秋』や『週刊文春』でのインタビュー連載をまとめたのが本書である。20人へのインタビューは5つの章から成っており、終章では著者本人が考える、「インタビュー」論が展開されている。 本書の目次にある20人のインタビューイーの名前を見ると、ノンフィクション好きは本書を購入しないわけにはいかなくなる。なにしろ、1人目から

『なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか』 地獄を見た司令官 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか』 地獄を見た司令官

地獄というものがこの世に存在するのなら、著者が1994年にルワンダで見た光景こそ、そう呼ぶに相応しい。徹底的に破壊された都市、拷問の限りの果てに殺された人の山、その死体を食べて犬の大きさにまで成長したネズミ。そこには、正気を保っているほうが異常であると思われるような、圧倒的な現実が広がっていた。 本書の著者であるカナダ出身の軍人ロメオ・ダレールは、1993年

『文明と戦争』 宿命としての戦争 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『文明と戦争』 宿命としての戦争

人類200万年の「戦争の謎」のほとんどに答えを出そうとする野心的な本書は、上下巻合わせて996ページ、総重量1.2kg、翻訳者13名、そして7,560円という規格外のボリュームである。全17章から成る本書は3部構成となっており、それぞれが「戦争は人の本能か、それとも文明による発明か?」、「戦争と文明の発展はどのように相互作用したのか?」、そして「近代化は戦争

『脳には妙なクセがある』をきっかけにサイエンス本の世界にどっぷり浸かる 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『脳には妙なクセがある』をきっかけにサイエンス本の世界にどっぷり浸かる

『 記憶力を強くする 』、『 進化しすぎた脳 』などのヒット作で知られる脳研究者の 著者 による、脳科学の最新知見がこれでもかと盛り込まれたエッセイ集である。349Pの本書の巻末に参考文献として挙げられている論文の数は207にも上り、著者自ら“情報の洪水”と言っているのも頷ける。一見バラバラなトピックの寄せ集めだが、その中核にはきっちり、“脳と身体の因果関係

『アメリカは今日もステロイドを打つ』新刊超速レビュー 書影

社会 / 新刊超速レビュー

『アメリカは今日もステロイドを打つ』新刊超速レビュー

本書は、現在休刊となっているスポーツ雑誌『Sportiva』に2001年から連載されていたコラムをまとめて2009年に発売された単行本を文庫化したものである。単行本発売後に雑誌に掲載されたコラム7本と巻末に大きなオマケが追加されているのに、たったの599円である。これは、単行本所有者にとっても買いの一冊だ。 副題に“USAスポーツ狂騒曲”とあるように、五輪で

『世界でもっとも強力な9のアルゴリズム』で頭を鍛える 書影

サイエンス / ビジネス

『世界でもっとも強力な9のアルゴリズム』で頭を鍛える

著者の定義によると、アルゴリズムとは「問題を解決するために必要な手順を正確に規定したレシピ」である。コンピュータ・サイエンスを専門とする大学教授の手による本書は、現在当たり前のように使われている偉大なコンピュータ・アルゴリズムがなぜ必要とされたのか、どのように考え出されたか、そして、それが実際にどのような仕組みで動いているのかを教えてくれる。 このように紹介

『水危機 ほんとうの話』新刊超速レビュー 書影

サイエンス / 新刊超速レビュー

『水危機 ほんとうの話』新刊超速レビュー

本書は水文学の第一人者である著者による、何とも意外な水のほんとうの姿を教えてくれる、水文学の入門書である。水文学の研究対象は水にまつわる森羅万象であり、本書の範囲も経済、気候、災害等と多岐に渡る。これほど身近な水にこれほど知らないことが多いとは知らなかった。どうやら世の中には、水に関する“ほんとうではない話”が溢れているようだ。 石油、天然ガスやレアメタルは

『ブラジルの不毛の大地「セラード」開発の奇跡』 結果を出した国際協力 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

『ブラジルの不毛の大地「セラード」開発の奇跡』 結果を出した国際協力

絶望的な困難にも挫けることのない現場、ぶれることのない決断を下すリーダー、プロジェクトを土壇場で成功に導くこととなる意外なきっかけ。「プロジェクトX」のような奇跡の物語には、こんなテンションの上がるプロセスが欠かせない。確かに、本書で描かれる奇跡にもそんな胸が熱くなる場面は登場する。しかし、本書で最も“奇跡的”なのは、過程ではなく、なによりもその結果である。

『女性のいない世界』 消えた1億6300万人 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『女性のいない世界』 消えた1億6300万人

この数字は、100人の女子に対してどれだけの男子が生まれるかを表した出生性比と呼ばれる数値である。この数字が何を意味するかは、自然な状態での出生性比105と比べる必要がある。上記の中国の出生性比113と自然な出生性比の差はたった8であり、大きな問題ではないと思えるかもしれない。しかし、この比の差を具体的な人数に置き換えると問題の大きさが見えてくる。 本書で紹

『ウナギ 大回遊の謎』 ウナギ王に!俺はなるっ!! 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

『ウナギ 大回遊の謎』 ウナギ王に!俺はなるっ!!

多くの人を惹きつける謎、答には辿り着けなかったものの手がかりを残した先人たちの苦闘、新たな発見から導かれる刺激的な仮説、目を見張る美しい図版(しかもカラー!!)、自然の神秘に近づくための大航海、共に謎を追い求める仲間、そして、数え切れない失敗の先に待ち受けるクライマックス。本書にはその全てが揃っている。これでワクワクしなけりゃ、これで燃えなけりゃ、どんな本で

強さを追い求め続ける『日本レスリングの物語』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

強さを追い求め続ける『日本レスリングの物語』

2012年5月27日レスリング女子ワールドカップ国別対抗戦決勝、ロシア相手に初戦から4連勝した日本は、絶対王者吉田沙保里の登場を前に6年ぶり6度目の優勝を決めていた。優勝を手中に収めた気の緩みがあったのだろうか、はたまたオリンピックを目前に控えたこの時期コンディションが谷底を迎えていたのだろうか。4年以上ただの一度も負けることなく、連勝を58にまで伸ばした最

『独裁者プーチン』新刊超速レビュー 書影

社会 / 新刊超速レビュー

『独裁者プーチン』新刊超速レビュー

テレビ・スポーツ紙はとにかく選挙一色の一週間だった。国民的行事とばかりにあらゆる媒体で、選挙結果に涙する姿が大写しで報じられていた。全身全霊をかけた勝負が数字という言い訳のできない具体性を伴って示される選挙には、いつの時代も涙がつきもなのか。ネットの一部で“完璧超人”とまで呼ばれるこの男でさえ、選挙後の涙から逃れることはできなかった。 異例の涙が見られたのは

『進化論の何が問題か』 新刊超速レビュー 書影

サイエンス / 新刊超速レビュー

『進化論の何が問題か』 新刊超速レビュー

本書の主役は、『 利己的な遺伝子 』のリチャード・ドーキンスと『 ワンダフル・ライフ 』のスティーブン・J・グールド。言わずと知れたサイエンス界における大ベストセラー作家であり、研究者でもある2人は互いの著作を巡って激しく議論を闘わせていた。そのものズバリのタイトル、『 ドーキンスVSグールド 』という本も出版されている程に白熱した論争である。本書はこの2人

HONZ活動記 ―3冊目 “クーネル・ノ・グーソ”― 書影

HONZ活動記

HONZ活動記 ―3冊目 “クーネル・ノ・グーソ”―

本エントリーは、キュレーター勉強会の募集から合格発表までをお伝えした前回の続きです。まだお読みになっていない方はこちらも是非。 ・ HONZ活動記 -0冊目 キュレーター勉強会って何だ??- さて、キュレーター勉強会の合格発表でひとしきり狂喜乱舞した後、ふと我に返ると少し不安な気持ちが芽生え始めました。 そう、気分はまさに入学式を控えた新入生。とびっきりの期

『ルポ 子どもの貧困連鎖』 見えない苦しみ 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ルポ 子どもの貧困連鎖』 見えない苦しみ

定時制高校2年の久美は自らの体に起こる異変に気づいていないわけではなかった。深夜アルバイトの最中に倒れたことは1度や2度ではなかったし、ぜんそくと腹痛がやむこともなかった。それでも、病院へ行くことをためらったのには理由がある。父親の洋平が営む廃品回収行が赤字続きで、国民健康保険料を滞納していたため、無保険状態だったのだ。家計を支えるために働く久美は、病院へ行

『科学予測は8割はずれる』 新刊超速レビュー 書影

サイエンス / 新刊超速レビュー

『科学予測は8割はずれる』 新刊超速レビュー

「科学」という言葉は明治初期の啓蒙家である西周(にしあまね)によって発明されそうだ。発明されたと言っても何も無いところから西がその概念まで含めて考え付いたわけではなく、scienceの訳語として発明されたのだ( Wikipediaによると 、「哲学」「技術」「芸術」なども西の手による訳語のようだ)。この「科学」という訳語こそが、“日本の科学”と“欧米のsci

『意識は傍観者である』 CEOでもある 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『意識は傍観者である』 CEOでもある

あなたはどんな街に住んでいるだろう。その街に住むことを決めたのはあなただろうか、それとも、あなたの家族だろうか。立地、間取り、価格、様々な要素を比べて、その街に住むことを決めたことだろう。少なくとも、あなたはその街に住むことを決めた理由を述べることができるはずだ。しかし、その街へ住むことを決めたのはあなたの意識の及ばない何かかもしれない。心理学者ブレット・ペ

『ロボットはなぜ生き物に似てしまうのか』 ロボットのカンブリア紀がやってくる 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『ロボットはなぜ生き物に似てしまうのか』 ロボットのカンブリア紀がやってくる

2012年3月末、アマゾン・ドット・コムがある会社の買収を 発表した 。アマゾンにとってはザッポス以来の大型買収となる650億円が、 キバ・システムズ という聞き慣れない会社のために使われたのだ。キバ・システムズは物流ロボットメーカーであり、 リンク先の動画 のようなサービスを提供している。こんなところまでロボットによる自動化が進んでいることに驚かされる。今

NO PHOTO

HONZ活動記

HONZ活動記 -1冊目 アウトプットで繋がる集団-

2011年7月15日のHONZサイトオープンから8ヶ月が経過しました。おかげさまで、順調にアクセス数も伸びており、TwitterやFacebookではHONZ読者の皆様から積読本による自宅スペースの圧迫、書籍代の増加に関する苦情を頂くことも多くなってきました。同じ悩みを抱えるレビュアーの1人としては、同士の増殖を心より嬉しく思っております。今後もおすすめ本レ

『漫画貧乏』 新刊超速レビュー 書影

人物 / 新刊超速レビュー

『漫画貧乏』 新刊超速レビュー

著者の職業は漫画家である。ドラマ化、映画化された著作、『ブラックジャックによろしく』、『海猿』の名前は、普段漫画を読まない人でも聞いたことがあるだろう。10万部に届けばドル箱と呼ばれるコミックス市場において、『ブラックジャックによろしく』は初版で100万部を超えることもあったそうだ。傍から見れば、大成功者、夢の印税生活、という姿を想像してしまうが、著者が感じ

『探求』 終わりなき旅路の道しるべ 書影

社会 / ビジネス

『探求』 終わりなき旅路の道しるべ

バレリー・グライフェルは国営テレビから流れてくるニュースに目を奪われた。ミハイル・ゴルバチョフが超大国ソ連の消滅を宣言したのだ。45万人の部下を率い、西シベリア油田の生産量をサウジアラビア全体に匹敵するまでに拡大させたグライフェルが呆然としていた時間はどれ程の長さだったろう。途方も無い数の部下とこれまでの苦労、どれ程の思いがグライフェルの脳裏をよぎったかは分

『水と人類の1万年史』 人と水と重力の物語 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『水と人類の1万年史』 人と水と重力の物語

“1万年”をひとつの区切りとしたノンフィクションは数多い。『 1万年の進化爆発 』や『 パンドラの種 』、『 加速する肥満 』などはこの1万年間における人類の変化をエキサイティングに教えてくれる。この“1万年”には、数字としての区切りが良いと言う以上の意味がある。およそ1万年前に農耕が始まり、その農耕は人類を根本から変えてしまうほどのものだったのだ。 本書は

『利己的遺伝子から見た人間』 新刊ちょい読み 書影

生物・自然 / 新刊超速レビュー

『利己的遺伝子から見た人間』 新刊ちょい読み

書名にある利己的遺伝子とは、リチャード・ドーキンスの『 利己的な遺伝子 』のことである。500ページを超えるこの大著を通読した人がどのくらいいるかは分からないが、このタイトルは一度は耳にしたことがあるだろう。30年以上も前に出版された本だが、この本が与えた影響の大きさは計り知れない。 高村のレビューした『文明はなぜ崩壊するのか』 もドーキンスの提唱したミーム

『だまされて。-涙のメイド・イン・チャイナ』 中国5000年の交渉術 書影

社会 / ビジネス

『だまされて。-涙のメイド・イン・チャイナ』 中国5000年の交渉術

著者のポール・ミドラーはペンシルベニア大学のウォートンスクール出身のMBA保有者で中国広州在住のコンサルタントである。世界の工場と呼ばれるまでになった中国のものづくり現場の実態を赤裸々にあぶりだした本書は出版されるや否や大きな反響を呼び、英国 Economist誌の 2009年度Book of the Year に『 リーマン・ショック・コンフィデンシャル

『渡り鳥の世界‐渡りの科学入門 』 知られざる鳥能力 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

『渡り鳥の世界‐渡りの科学入門 』 知られざる鳥能力

人類誕生以来の夢であり、誰でも一度はそう願ったことがあるはずだ。 「願ったことがあるはずだ」とは書いたものの、本当に“鳥のように”飛んでみたいと思ったことがある人などいるのだろうか。少なくとも私はそんなことを願ったことはない。 レビュー冒頭から何を自問自答しているんだと思われるかもしれないが、懐疑的であることは科学的であるためには必須の条件だと聞いたことがあ

『世界鉄道史 血と鉄と金の世界変革』歴史も続くよどこまでも 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『世界鉄道史 血と鉄と金の世界変革』歴史も続くよどこまでも

電車が好きである。どの乗り物が好きかと問われれば、迷わず電車と答える。 車を運転していては本が読めない。飛行機は酔ってしまうのでよほど体調が良い時でなければ本が読めない。船は体調が良かろうが悪かろうが酔ってしまうので本は読めない。タクシーの後部座席で本を読むなど考えるだけで恐ろしい。三半規管の発達が未熟な本読みの移動は電車と決まっているのだ。なので、電車が好

『快感回路』には逆らえない? 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『快感回路』には逆らえない?

「腰痛いし、煙草臭い。終電で帰ろうと思ったのに、もう朝かよ。徹夜の麻雀はやらないって決めてたのに・・・」 お酒を飲む人、ギャンブルをする人であれば一度はこのような感想を持ったことがあるはずだ。お酒やギャンブルをやらない人でも、ついつい食べ過ぎてしまったり、夢中になってテレビを見ていて一日が終わってしまったりしたことがあるのではないだろうか。好きでやっているは

『ブーメラン 欧州から恐慌が返ってくる』 新刊ちょい読み 書影

社会 / ビジネス

『ブーメラン 欧州から恐慌が返ってくる』 新刊ちょい読み

本書の物語はサブプライムローンの裏で大儲けした人々に迫った傑作『 世紀の空売り 』のために行ったインタビューを振り返るところから始まる。「物語」とは言っても、本書は当然ノンフィクションだ。統計だらけのスカウト戦略だろうが、CDS、CDO等の金融用語が飛び交うサブプライムローンだろうが、ヨーロッパの国家財政危機だろうが、この男の手に掛かれば目の離せない一級の物

心地よく驚くために 『マジックにだまされるのはなぜか 「注意」の認知心理学』 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

心地よく驚くために 『マジックにだまされるのはなぜか 「注意」の認知心理学』

先ずは1分少々のこちらの動画であなたの「注意力」をチェックして欲しい。やるべきことはひとつだけ。“白いシャツ”を着ている学生が何回バスケットボールをパスしているか数えるのだ。 わが身を振り返ると、「もっと注意力があればこんなことには・・・」、と思ったことが何度もある。センター試験ではとんでもないケアレスミスをしてしまったし、上司に誤字脱字を指摘さたれこと、名